追いつかれた車両の義務は、時に一時停止義務を負うのか?という話がありますが、道路交通取締法時代からの流れをみるに、義務としては「できる限り左側端に寄る」だけなんだろうと思われます。
けど、場合によっては一時停止義務を負うと考える人もいるのが事実。
解釈上不合理
軽車両は追いつかれた車両の義務から除外されているのは明らかですが、
原付は対象です。
仮に「場合によって一時停止義務を負う」と解釈した場合、
原付 | 自転車 |
左側端によって一時停止 | そもそも進路避譲義務の対象外なので18条1項により左側端によって通行する |
なんで追いつかれた原付が一時停止義務を負うのに、追いつかれた自転車はそのまま通行できるのか意味がわからない状況に陥ると思うのですが笑。
支離滅裂な状況ですよね。
さらに言えば、仮に「一時停止義務を負う」という立場に立つと、例えば後続車が立て続けに20台きたら発進不可能に陥るわけです。
不合理過ぎて笑えない。
もちろんこれらが「根拠」と言えるわけではありませんが、全て総合的に考えると「左側端によることのみが義務」と解釈することが妥当でしょう。
そもそも、27条2項の「義務部分」の英語版をみても、この内容から「一時停止義務を負う場合もある」とは読めないかと。
日本語版からも読み取れないけど。
the driver of the first vehicle must give way to the second vehicle by bringing the first vehicle as close as possible to the left edge of the road.
27条の法意
27条の法意って「追い越し時の安全と円滑」なのであって、だから「第四節 追越し等」に規定されているところを理解していない人が多い気がする。
ちなみに執務資料に書いてある内容については、執務資料オリジナルの考えな上、一部明確に間違っているので気をつけたほうがよいと思う。
軽車両も対象という点は明確な間違いだし、「期待可能性」がどうのこうのもあくまでも執務資料の著者の私見です。
もちろん道路交通法ハンドブック(警察庁交通企画課)にも書いてありません。
道路交通法の解釈を検討するときに、一つの解説書にこだわるとろくなことがないので、総合的に考えたほうがよいと思います。
解説書複数、改正時の考え方(警察学論集など)、判例、他の条文との整合性などから考えないと、どこか辻褄が合わないし不合理になるので。
以下、オススメを。
・条解道路交通法(宮崎氏)
→道路交通取締法からの相違点など、道路交通法制定時の考え方に強い。
・注解道路交通法(宮崎氏)
→昭和30~40年代の考え方に強い。
・注釈道路交通法(横井氏)
→後に最高裁判事になった横井氏の力作
・詳解道路交通法(木宮氏)
→注釈道路交通法の改訂版
・最新道路交通法辞典(東京地検交通部)
→古い解説書の内容をほとんど網羅している
・逐条道路交通法(交通法令研究会)
・道路交通関係実例判例集
→重要判例を網羅している
・警察学論集など
→改正時の経緯に強い
ちなみにですが、古い判例集ですがこちら。
昭和60年の判例集なので古い本ですが、判例数がかなりある上に1000円ちょっとで買える(古本ですが)のでまあまあ重宝します。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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