普通に自転車に乗って走っているときに、道路工事で通行制限されていて「自転車は歩道から通って!」と言われた経験がある人は多いと思いますが、
個人的に思うこと。
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非普通自転車
普通自転車のサイズを越えた自転車には、マウンテンバイクやビーチクルーザー、タンデム車やサイクルトレーラーなど様々ありますが、
交通整理をしているおっちゃんにそんな知識はないと思いますよ。
歩道を通行できるのは普通自転車のみ…なんて知らないと思うし、そもそも普通自転車、非普通自転車なんて知らないかと(警察官ですら…)。
一応、警察官の指示であれば非普通自転車が歩道を通行することはできます(道路交通法6条2項)。
けど権限がない交通整理のおっちゃんに従うべきなのか、従ってはダメなのかについては、
従う義務はないとして突っぱねることも問題はないですが。
突っぱねたところで、なんか雰囲気が悪くなりそうな。
参考までに、私人の交通整理に従って起こした事故について、信頼の原則を適用した判例があります。
原判決は、以上のような事実を前提として、「右Bの交通規制は、単に前記作業現場(北方)から本件交差点に進入する同作業所関連の大型自動車に対し注意を喚起するためのものであつて、道路交通法42条にいう交通整理にあたらないから、本件交差点は交通整理の行なわれていない交差点で被告人の進路から見て右側の見とおしのきかないものであり、被告人の進路である東西道路が昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法36条1項にいう優先道路の指定を受けているものではなく、またその幅員が南北道路に比し明らかに広いともいえないから、同交差点に進入する被告人の車輛には道路交通法42条の徐行義務がある。一般的にみて、道路交通法所定の義務と業務上過失致死傷罪における業務上の注意義務とは、一応別個に考えなければならないが、道路交通法42条の徐行義務の懈怠は、交差点における出合頭の衝突事故を誘発する蓋然性が極めて高いものであるから、同条に該当する交差
点に進入する自動車運転者にとつて、右徐行義務は業務上の注意義務に当然含まれる。さらに、本件のように、交通整理の行なわれていない右方道路に対する見とおしのきかない交差点に進入する際には、前記のようにBが赤旗で北方から進入する車輛に対し停止の合図をしていた事実があつても、交通整理の専門家でない私人の自主規制には時として過誤を生じ易く、これを過信することはすこぶる危険であるから、なお右方道路に対する交通の安全を確認すべき業務上の注意義務があると解すべきである。したがつて前記Bの交通規制があつた事実をもつて、信頼の原則により前記徐行義務、右方確認義務が免除されるものではない。」としているのである。
しかしながら、右Bによる交通規制が、道路交通法42条にいう交通整理にあたらないことは、原判決の判示するとおりであるが、右Bが北方から本件交差点に進入する車輛に対し赤旗により停止の合図をしていたものである以上、東方から同交差点に進入する車輛の運転者としては、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図に従うことを信頼してよいのであつて、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図を無視し同交差点に進入してくることまでを予想して徐行しなければならない業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日
業務上過失致死傷罪における注意義務と道路交通法の具体的義務は違うので、非普通自転車が歩道を通行することは結局違法にはなりますが、事実上としては私人の交通整理を警察官の指示や信号に近いものと捉えることはできるし、「歩道から進行して」と言われて従ったことを違法だと捉えることにムリがあるような。
なので結論としては、どちらでもいい気がします。
あまり気にしなくても
似たような判例として、ガードマンの誘導に従い横断歩道直前で一時停止することなく進行して起きた事故について、信頼の原則を適用した大阪高裁 昭和62年5月1日判決がありますが、
これも業務上過失致死傷の判例。
信頼の原則は過失犯の注意義務を制限するようなものですが、道路交通法の具体的義務を帳消しにはできないものの、普通に考えて誘導員に従って違反というのはムリがあるかと。
もちろん、従う義務もないので道路交通法の原則通りにしたところで問題はありません。
ちなみにですが、仮に非普通自転車が歩道を通行して歩行者と事故を起こせば過失割合は100%になりますが、それは普通自転車でも同じ。
歩道で歩行者に衝突するなんてあってはならないことだし、工事現場を回避するために歩道を通行するならより慎重に通行するから問題ないと思いますが。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
いつも楽しく拝読させていただいてます。
かなり以前工事に際しての、”誘導員”の安易な「歩道通って!」で、
物理的に通れず押し問答したことがあります。
市発注の水道工事でした。歩道は全てほじくり返し、オフロード。
車道も半分幅で穴掘り中。片側交互通行。
で、その歩道が、、、アスレチックで歩行者で大渋滞。
30cmの段差上り下り、50cm幅の平均台、とどめは40cm幅で隙間通過です。
車椅子なんって絶対無理です。
自転車のハンドルが引っかかって隙間抜けられず、戻ったところ、
「渋滞しちゃうから、自転車は歩道を通って!」「通れないぞ!」
「作業の人に頼んで!」「自転車は無理だと言われたぞ。」
「車道に自転車通すと車が混んで苦情が来ちゃう。通れなければ
迂回して!」
あんまり腹が立ったので、(当時は若く、血気盛んだった)公衆電話から
(まだ携帯無い頃)市役所の担当者に「すぐ来い!、現場見て見解を出せ!」
と迫りました。
1時間近くなんだかんだしましたが、(私は暇だった)
私他にも歩行者から詰め寄られた(さすがに平均台は文句いっぱい)
市役所の担当は、「今すぐ作業やめて!。まず歩行者、自転車が通れる場所を作れ!」
と明確な指示を出したんですが、工事の責任者は、「いや~、車を待たせると
警察に苦情が入って、警察から文句が来るんですよぉ。道路使用許可の兼ね合いも
有って、どうしても歩道の方は通りにくくなっちゃうんですぅ」言い訳してました。
まあ、最近は警察の道路使用許可の条件にも{歩行者用の通路の確保}が
入っているようなので、ひどい状況は無くなりましたが、それでも
”誘導員”(権限のある警察官では無い)の「歩道通って!」はよく遭遇します。
”自転車は車道を通行、歩道は例外!”が当たり前になるには、まだまだ時間が
かかりそうです。
鬱憤や愚痴、長々失礼いたしました。
コメントありがとうございます。
私は誘導員に怒鳴られたことがありますが、歩道を通行したらおかしな方向に行くことになるので説明してもダメでした笑。
大変でしたね笑。
御愁傷様です。