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原動機を使わずに惰性で下った原付は「運転」と言えるか?

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ちょっと面白い判例があるのですが、判例タイムズ2023年7月号(1508号)に掲載されたものです。
詳しくは判例タイムズを買って読みましょう笑。

 

下り坂をエンジンを使わずに惰性で進行した原付は「運転」と言えるか?が争点です。

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エンジンを使わずに惰性で進行

判例は福岡高裁 令和4年11月30日。
道路交通法違反(無免許)被告事件です。

何が問題になっているかというと、解説書ではエンジンを止めて惰性で下る行為を運転とは見なさない傾向にあるわけです。
今回のケースでは以下の流れです。

 

①自宅から原動機を使い進行(約87m)
②下り坂で原動機を止めて惰性で進行(約405m)
③交差点を押し歩き(約44m)
④原動機を使わずに下り坂を惰性進行(約186m)

 

③を除く行為について「運転」と認定。
被告人は運転免許を保有しておらず、約678mを無免許運転した罪に問われています。

 

一審判決(大分地裁杵築支部)は①、②、④の行為について「運転」に当たるとして、懲役4月の実刑判決。
「運転」と言えるのは①の数十メートルにとどまるから可罰的な違法性がないとして控訴しましたが(後に撤回し、「可罰的違法性が乏しいから量刑不当」の主張に変更)、福岡高裁 令和4年11月30日判決は無免許運転した距離を約678m(①+②+④)と認定し、可罰的違法性が乏しいとは到底いえないとして控訴棄却。

 

なお、現在は最高裁判所に上告しているようです。

 

なお、「運転」に該当するか否かについての最高裁判例は以下があります。

しかしながら、道路交通法2条17号によると、改正前の道路交通法117条の2第1号にいう「運転した」とは、「道路において車両等をその本来の用い方に従つて用いた」との意味であるところ、自動車の本来的機能および道路交通法の立法趣旨に徴すると、駐車中の自動車を新たに発進させようとする場合において、右にいう自動車を「本来の用い方に従つて用いた」とは、単にエンジンを始動させただけでは足りず、いわゆる発進操作を完了することを要し、かつ、それをもつて足りるものと解するのが相当である。本件において、第一審判決および原判決の認定した被告人の前記所為は、自動車の発進操作を完了するまでには至つていないものと認められるから、被告人の右所為は、自動車を運転したことにはならないものというべきである。そうとすると、右所為が自動車を運転したことにあたるとして、これに改正前の道路交通法117条の2第1号を適用して有罪とした第一審判決を是認した原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり、これを破棄しなければ著るしく正義に反するものといわなければならない。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月10日

駐車中の自動車を新たに発進させようとする場合においてはエンジンを掛けたのみでは「運転」とは言えず、発進することを要するとしています。
今回の事案については、②については①における「原動機による運転」からの一連の流れとみなせますが、④も運転と認定して有罪。
たぶん、道路交通法に詳しい人なら④について「運転」とみなした点を疑問に感じるかもしれません。

最高裁は何か語るのか?

最高裁は基本的にほとんどの上告や上告受理申立について棄却もしくは不受理の門前払い。
いわゆる三行決定という奴で、「適法な上告理由にあたらない」という理由以外に書いてないのが通常です。

 

道路交通法マニア的には興味深い案件かと思いますが、詳しい判決理由などは書きません。
判例タイムズを買いましょう笑。
なお、なぜに執行猶予無しの実刑判決なのか?という疑問についても、判例タイムズを買いましょう笑。

 

ただまあ、この被告人は当時短大生とあります。
懲役4月とはいえ実刑判決なので、無免許運転とかグレーゾーンのプレイとかすると大変なことになるとしか。

 

無免許運転でお務めに行くというのも馬鹿馬鹿しい話だし、ちゃんと免許を取れば問題ないのですけどね。
最高裁判所は何か語るのか、それともいつもの上告棄却決定なのか。

 

ところで道路交通法違反については、令和になってからも不思議な争いが時々あります。
例えば、赤信号無視について最高裁まで争った事案とか。

 

交通取締が変わったかもしれない判例。
判例を調べている段階でちょっと面白いのを見つけました。 車の交通違反は、原則として切符を切り反則金を支払えば刑事訴追されないシステム。 赤信号無視で違反切符を切ろうとしたけど、本人は黄色で通過したと思っているので拒否し、パトカーの車載カメラ...

 

「ドラレコなんてないよ」と警察官が言ったから否認事件とした事案です。

 

検察に出頭して初めてドラレコ映像を見せられて、赤信号無視が明らかだったから「認めます。やっぱり反則金でお願いします」と言ったものの、起訴されたもの。
大阪高裁が「ドラレコ見せない警察官が悪いヨ。悪いのは警察官だから裁判打ちきりにするわ」という画期的な判決を出してしまい、最高裁が全否定した事件です。
この信号無視事件については、交通取締が変わるかもしれないと一部では注目されていましたが、最高裁が全否定。

 

さて、「運転」については最高裁は何か語るのか?


コメント

  1. upmoon より:

    車両等の「その本来の用い方に従つて用いた」が乗車や牽引して移動や運搬ってことだと考えると、原動機が始動してるからどうかは関係ないのかと思います

    電源を切っただけでは原付のままだったのでglafitのモビチェン作られたり、牽引される故障車にも区分にあった免許が必要と規定してるのを考えると坂道を下るのも当然免許が必要かな

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      通説的見解では、エンジンオフで惰性で下ることは「車両」だけど「運転」には該当しないとされてますが、判例はないそうです。
      ただし、②のようにエンジンを使って進行中にエンジンオフにした場合については、「運転」として一体的にみなす見解が多いので、異論が出るのは④かと。

  2. ゆき より:

    個人的なお気持ちだと、「人力では不可能な、各部の機能に頼る事前提の操作」をするなら運転って感じかなぁ。
    これなら原動機の掛かっているか否かはあまり関係ないし、昭和48年の事例とも矛盾しない。(まだアクセル踏んで発進してないから)

    それなりの質量のある物体を公道で動かすから、自分や周囲の安全を守るために免許制度があると思うと、ブレーキ使う事前提であろう、跨って坂道を降りるのはたとえ最初から無動力だろうとアウトにしてほしい気がします。

    ただ、一律アウトだとバイク屋のバイクの移動や駐輪場の管理とかが大変だから、「人力でどうにか出来る範囲内なら免許が無くても『物として』動かしても良いよ」という例外規定で、必要なハンドル操作や、安全のためにブレーキ位は使っても黙認するよみたいな感じかな。

    無動力とはいえ運転席に座って下るとなると、それなり速度は出るだろうから、
    途中に交差点が有っても、免許保有者ならかならず知ってるはずの交通ルールの知識がなければ優先や一時停止を無視って飛び出しする可能性がある訳ですし。
    ※知識があることを第三者が担保してるのが免許ですし。

    バイクではなく、自動車を坂道から下ろすだけだからと、無免許の人がエンジンかけずに下ると考えたら大半の人は恐怖でしかない。

    この事例の車種が何だったかは書かれていないのでわかりませんが、
    バイクだって、自転車に毛が生えた程度の数十kgから、数百kgの鉄の塊(倒れたら起こすだけでもスキルと体力を要求される)まで幅広いですし。
    もしも大型の300kgオーバーの重量級でやったのなら、そりゃそうよでしかないかなぁ。
    原動機付自転車だとしても、ベンリィとか重たい車種は車体だけで100kg超えますから、歩行者に突っ込まれたら普通に危ないですし。

    まぁ、全部お気持ちでしかないのでアレですね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      以前から「エンジンオフの惰性進行は運転ではない」とする解説には疑問がありましたが、そもそもこの件は判例がないらしく、それもあって注目されているようです。

      まあ、この事例についてはそもそも三回目の無免許運転なのでさほど同情できる要素はないのですが。

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