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信頼の原則を採用しない「特別な理由」。

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優先道路(交差点内にセンターラインあり)を進行する車両と、一時停止規制がある道路を進行する車両の関係では、優先道路を進行する車両が優先するのは当たり前ですが、

「一時停止無視車両」と「優先道路を進行する車両」が衝突したときに、優先道路を進行する車両が罪に問われることがあります。

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信頼の原則を否定

判例は東京高裁 昭和55年3月4日。
業務上過失致死事件です。

 

被告人は優先道路を進行していましたが、交差道路から一時停止無視車両が進行。
衝突し一時停止無視車両が死亡した事故について、優先道路を進行していた被告人が業務上過失致死罪に問われたもの。

 

当然ですが、優先道路を進行する車両は「非優先道路側が進行妨害しないことを期待して進行してよい」という信頼の原則が働きます。

たしかに、本件における被告人車両の進行道路は道路交通法上の優先道路であり、その一方、相手方車両の進行してきた交差道路には交差点入口手前に一時停止の道路標識が設けられ、かつ、一時停止線が標示されているものであるから、通常このような場合、優先道路上の車両の運転者としては、相手方車両が交差点入口付近で一時停止し、かつ自車の進行を妨害するような行動に出ることはないと予想するのが自然であろう。しかし右はあくまで通常の場合においてである。例外的に、相手方が一時停止することなく交差点へ進入してくる明らかな気配の窺われる場合等であつて、両車両がそのまま進行を続けるにおいては両車両がそのまま進行を続けるにおいては衝突の危険必至であるというような特別の事情があるときには、右の予想乃至期待の前提は既に失われており、優先道路の進行車両といえども危険を察知し、すすんでは臨機の措置にでて結果を回避すべき義務を負うものである。

 

東京高裁 昭和55年3月4日

さて、信頼の原則を否定するには「特別な事情」を認定する必要がありますが、理由はこちら。

叙上の見地から本件における具体的事実関係をみると、被告人は、実況見分調書添付現場見取図に基づいて、自分はその(2)点付近を時速約70キロメートルで進行中、相手方車両が時速2、30キロメートルで交差道路右手から進行してきて見取図(A)点付近にまで差しかかつたのを認めた旨述べており、右供述は捜査過程から原審公判廷を通じ一貫しているものである。
してみると、右の、被告人が相手方車両を認めた時点においては、それは既に交差点入口に4m足らずまで、しかも時速2、30キロメートルのまま接近進行してきており、かりに相手方がそこで急停止を試みたとしてももはや交差点内への進入を避けがたいという走行状況を客観的に示していたことに外ならず、加えるに、時刻は恰も午前6時15分ころ、現場は交通整理の行われていない閑散とした市街地外れの交差点であつて、経験上公知であるように、一時不停止、速度超過等の道路交通法違反が比較的生じ易い条件下にあつたものである。

このような特別の事情が存する本件においては、前記(2)点付近の時点で既に、平均的運転者に対し相手方車両の一時停止と自車の進行不妨害とを予期させるべき前提事実は、客観的に存しなくなつていたものと認めざるを得ない。そして、制限速度の毎時40キロメートルを遵守し、その結果毎時70キロメートル走行時に比しておのずから格段精度の高くなる前方注視を尽くしつつ、(2)点付近に差しかかつた平均的運転者であるならば、相手方車両が一時停止することなくそのままの速度で交差点に進入してくる切迫した気配のあることを状況上察知し得た筈であると推認するにもかたくない。もとより、優先道路上の運転者といえども、交通安全のための注意義務の見地から最も基本的である制限速度遵守、前方注視の義務一般については、これを免れ、若しくは通常の場合に比してとくに軽減されるべきいわれはないのである。結局被告人は、その高速進行と道路標識に気をとられたこと等に起因する前方注視の低下のため、前記(2)点付近において危険を察知できなかつたものであると認めることができる。

次にいわゆる結果回避可能性とその義務についてみると、本件において被告人車両がもし時速40キロメートルで走行していたならば、その反応・空走距離に推定滑走距離を加えた合計、即ち約17.4mの所要距離をもつて急停止しえていたという所論の算式はこれを是認できるところ、前記(2)点から現実の衝突点までは約27.4m、(2)点を過ぎて(3)点にいたる半ばの地点からさえ約21mだというものであるから、被告人において前述予見義務を尽くし、つまり制限速度を遵守して前方注視を怠らず(2)点付近において危険を察知していたならば、例えば急制動を講ずることによつて本件衝突は十分回避しえていたということになるものである。

以上を総合していえば、被告人は、制限最高速度を遵守しかつ前方を注視して進行すべき業務上の注意義務を怠り、毎時約70キロメートルという高速でかつおのずから前方への十分な注視を欠いたまま(2)点付近を進行していたため、右の義務を尽くしておればその付近で当然気付くべきものであつた相手方車両の異常な動静と危険性とに思いいたらず、それゆえまた、可能な事故回避の策に直ちにでることもなかつたものであり、漸く(3)点付近に到つて遅ればせに危険性を察知したときには既に事故を回避しうる機会を失してしまつていたということである。

 

東京高裁 昭和55年3月4日

ちょっと珍しいというか、

時刻は恰も午前6時15分ころ、現場は交通整理の行われていない閑散とした市街地外れの交差点であつて、経験上公知であるように、一時不停止、速度超過等の道路交通法違反が比較的生じ易い条件下にあつた

早朝の閑散とした交差点だから一時不停止が比較的発生しやすいという点を挙げています。
そもそも、制限速度から30キロオーバーで走っていた点を問題にしてますが、制限速度を遵守して前方注視していれば衝突は回避し得たとしています。

優先権と適法行為

このような判例もあります。

 

非一時停止側は見とおしが悪いので徐行義務がありますが、徐行せずに時速50キロで突っ込んできたもの。
一時停止した被告人車には信頼の原則を認めています。

本件のように交通整理の行なわれていない、見とおしの悪い交差点で、交差する双方の道路の幅員がほぼ等しいような場合において、一時停止の標識に従つて停止線上で一時停止した車両が発進進行しようとする際には、自動車運転者としては、特別な事情がないかぎり、これと交差する道路から交差点に進入しようとする他の車両が交通法規を守り、交差点で徐行することを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件A車のように、あえて交通法規に違反し、高速度で交差点に進入しようとする車両のありうることまでも予想してこれと交差する道路の交通の安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

 

最高裁判所第三小法廷  昭和48年12月25日

適法に通行する者が優先なわけで、徐行義務がある場面で爆走して優先権を主張できるわけでもない。

 

速度超過はあらゆる可能性を消し去るわけですが、制限速度を大幅に超過して「優先!」とは言えないのです。


コメント

  1. きこり より:

    コメント失礼します。
    先日T字路交差点で青信号で横断歩道を渡ろうとしたときに、交差点内で停車中だった車が走り出してきて危ないところでした。
    渋滞気味だったようで、前の車がつめたことでぎりぎり横断歩道より奥に入れそうだったみたいです。
    この場合、車はどうすべきだったのでしょうか?
    そもそも交差点内は駐車禁止ですし、信号無視でもあるのですがそのままだと右左折しようとする車の邪魔になってしまいます。
    歩行者がいるのに走り出すのは論外として、横断歩道上に駐車すべきなんでしょうか?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      ちょっと状況がよくわからないのでコメントのしようがありませんが、その場合は駐停車の問題ではなく50条の問題なのではないかということと、信号無視は赤信号になってから停止線を越えることを問題にしているので、何らかの理由で青信号で交差点内に進入したけど、その後生じた事象により交差点内にとどまることは信号無視ではありません。

  2. きこり より:

    返信ありがとうございます。
    下手な説明で申し訳ないです。
    要するに渋滞などの理由で赤信号中に交差点内で停車してしまった場合、その後どうすればいいのか教えてほしいです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      安全を確認しながら進行するか、安全が確認できないなら止まるかしかないです。
      一概に言える話ではありません。

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