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狭い道路で歩行者よりも車両が優先?

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こちらで取り上げた件。

 

「標識、標示に従わねばならないというのはない」
最近、おかしな道路交通法の読み方をする人が増えているのだろうか?と心配になる今日この頃。 こういう意見は本当に心配になります。 「標識、標示に従わねばならないというのはない」 「信号機に従う義務があるけど標識や標示に従う義務が規定されてない...

 

信号に従う義務は規定されているけど、標識や標示に従う義務は書いてないなどとトンデモ解釈してますが、

 

これを書いている人は、ちょっと心配になる。

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車両が優先?

(通行区分)
第十条 歩行者等は、歩道又は歩行者等の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

この規定は優先を決めるわけではなく、単に通行する位置を指定しているだけなので、優先とは関係ない。

 

しかも、この規定が昭和46年に規定されたわけで、

(左側寄り通行等)
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において歩行者の側方を通過するときはこれとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。

狭い道路で歩行者がいたら安全側方間隔(1~1.5m)又は徐行。
狭い道路の場合には現実的に安全側方間隔を保持できないため徐行義務があると解釈されてますが、「狭い道路を速度を落とさず走れる」ことは全く無い。

 

ひどい解釈しているな…

日本の道路交通法って「遵守されるなら」歩行者の安全をかなり意識してまして、例えば見通しが悪い交差点での徐行義務(42条1号)。

42条1号の除外は「優先道路」「信号交差点」ですが、非一時停止側つまり優先になる側にも徐行義務を課している理由は、歩行者の安全も考慮しているから。

道路交通法第35条第36条(昭和39年法律第91号による改正前のもの)が、交差点における互に違つた方向からこれに進入する車両相互間の優先順位を定めたものであるに対し、同法第42条は左右の見とおしのきかない交差点に進入する車両に対し総べての通行者との間の危険防止を目的として制定されたものであり、同法第35条第36条のように歩行者を除いた車両相互間の関係のみを規制したものではないのである。従つて、右法意に照らすと、たとえ、交差する車両に対しては優先する場合であつても、そのために同法第42条の一般徐行義務が解除されるものではなく、又同法第43条も公安委員会が特に必要があると認めて指定する交差点において、車両等に対して一時停止義務を課し(通行人にはその効力は及ばない)、これと交差する道路の車両等に優先通行を認めたに過ぎず、そのために優先車両に対し同法第42条の徐行義務までも解除したものとは解し難い。

 

東京高裁 昭和41年11月22日

本件のように、あまり広くない道路で、しかも交差点の見とおしのきかない場合には、歩行者の安全も考慮しなければならないことは、原判決も説示するとおりであり、このことも前記解釈の根拠となり得るであろう。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日

昭和46年改正で42条の見直しを迫られて除外事由を「優先道路(交差点内にセンターラインか車両通行帯)」と「信号交差点」のみにした理由も、

 

なぜ?優先道路を進行中なら見通しが悪い交差点でも徐行義務がない理由。
読者様から質問を頂きました。 だいぶマニアックな話ですね。 見通しが悪い交差点での徐行義務 左右の見通しが悪い交差点では徐行義務がありますが、42条1号では交通整理と優先道路の場合が除外されています。 (徐行すべき場所) 第四十二条 車両等...

 

いろいろ見ていけばわかるように、歩行者の安全を最大限確保する趣旨なのよね。

 

しかしまあ、18条2項から狭い道路で歩行者がいたら徐行義務があることは明らかなのに、真逆に捉える団体とは一体…

そもそも18条2項が昭和39年に新設されたときはこうでした。

2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行するときは、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。

昭和39年に新設された時点では罰則がありません。

 

昭和46年改正時に現在の形に改めた上で罰則を設けた形ですが、

(左側寄り通行等)
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において歩行者の側方を通過するときはこれとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。

「歩行者の通行を妨げないようにしなければならない」

「これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない」

 

になったのは義務として弱めたわけではなくて、同一方向、対向方向に歩く歩行者との関係において「妨げる」が明確ではなかった点を明確にし、さらに罰則を設けたので事実上規制強化。

現行規定においては、歩道と車道の区別のない道路を通行する車両に対して、歩行者の通行を妨げてはならない義務を課しているが、さらに歩行者保護の徹底を図るため、今回に改正により、車両は歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、または徐行しなければならないこととした。

これとの間に安全な間隔を保ち、または徐行しなければならないという車両の義務は、歩道と車道の区別のない道路を通行する場合に限らず、歩行者の側方を通過するすべての場合に課される義務である
この場合の「歩行者」とは、歩道と車道の区別のない道路を通行している歩行者だけでなく、車道を横断する歩行者や歩道上にいる歩行者も、これに含まれる。

「安全な間隔を保ち、または徐行しなければならない」というのは、歩行者との間に安全な間隔を保つか、それができないときは徐行しなければならないということである。
この場合の「安全な間隔」とは、歩行者の行動に不測の変化があったとしても歩行者の安全が図られるような間隔であり、車両の速度により一概にはいえないが、最低1メートルは必要だと考えられる。歩行者の側方を通過する車両は、歩行者との間にこのような安全な間隔を保つことができないときは、直ちに停止できるようなおそい速度で進行しなければならないことになる。

 

「道路交通法の一部を改正する法律」(警察庁交通企画課)、月刊交通、昭和46年8月、東京法令出版

狭い道路で歩行者がいたら、安全な間隔を保つなんて不可能。
なので事実上徐行義務があると解釈されますが、道路交通法を真逆の意味に解釈する団体っていったい…
むしろ、昭和39年改正→46年改正の経緯からしても、狭い道路では歩行者優先と受け取れる。

 

本来、道路交通法を全て理解して遵守すれば歩行者保護をかなり重視しているわけで、狭い生活道路なんて見通しが悪い交差点は徐行、歩行者がいたら事実上徐行。

 

遵守されてない点に問題があるのに、法律の意味を真逆に捉えるというのは勉強不足かなんかなのだろうか。

 

18条2項を改正した昭和46年に「その他の場合」を含め、さらに今まで不明確だった「妨げないように」とはなんなのかを具体化し、罰則も設けた。
優先権はどちらにもないけど、相対的な優先関係で言えばむしろ車両が劣後すると解釈することが妥当。

 

おかしな解釈が流行る原因になるから、ワケわからん解釈をやめて欲しい。

道路交通法は

道路交通法の規定を全て統合すれば、車両側には強く歩行者保護を規定しているわけですが、要は全く遵守されないからおかしな方向に進んでしまうわけ。
見通しが悪い交差点での徐行義務にしても、最高裁判決で下された解釈では困るから昭和46年に再規定して明確化したわけですが、結局のところ徐行義務を死守したかった理由は「歩行者」なのよね。

 

真逆に捉えて何のメリットがあるのか知らないけど、ちゃんと理解してない人は何も変えられないのよ。
何か提案したところで、根本的に間違っているから的外れになるのがオチ。

 

なお、10条で「車両は歩行者を妨げてはならない」みたいに書いていない理由は説明するまでもないですが、10条は歩行者に対する命令で、車両に対する命令は18条2項など車両の規定に分けているからですね。

 

しかしまあ、道路交通法をここまで曲解する人がいるとなると、そりゃメチャクチャになるよ。
標識に従う義務が書いてないと読み取る人がいたら、そりゃメチャクチャ。

 

ついでに

18条2項に関係する判例をいくつか挙げておきます。

被告人は、原判示のとおり、普通乗用自動車を運転して、本件事故現場付近道路(幅員約7m)に時速約40キロでさしかかつた際、前方約60mの地点左側に、被害者ほか一名(被害者の兄当時10才であつたA)の児童が遊んでいるのを見かけ、同兄弟の右側を通過しようとしたのであるが、このような場合、自動車運転者としては、警音器を吹鳴してこれに注意を与えるなり、同人らの不測の行動に備えて、何時でも停止あるいは避譲できる程度に減速徐行する等の適切な措置を講ずべき業務上当然の注意義務があるのにこれを怠り、同人らの動静に細心の注意を払わず、ただ時速約25キロに減速したのみで、漫然進行をつづけた過失により、僅か約5mの至近距離に迫つたとき、それまで自己の運転する車両に背を向けていて、全くこれに気付かなかつた被害者が、いきなり右斜め前方にかけ出したのを認め、急遽右にハンドルを切り、かつ、制動をかけたが間に合わず、遂に自己車両の左側前部を被害者に衝突させて同人を前方にはねとばし、本件事故を発生させたことが明瞭である。

(中略)

所論のいわゆる「信頼の原則」なるものは、近時高速度交通機関や医療行為その他の社会的効用の高い危険業務が拡大するにつれて意識にのぼり、その注意義務の負担に合理的限度を設けることを要請されるにいたつた結果、これらの危険業務に携わる者に課せられるべき刑罰法令上の注意義務の具体的内容を定める基本原則として、次第に容認されつつあるものであり、右のような沿革上、その多くは、鉄道職員または医療関係者などのように共同して危険防止にあたり、協力関係にある者相互間の、事故防止のために負担すべき注意義務について論ぜられているのである。されば、本件のように自動車交通事故のなかでも、特に車両相互の関係でもない、ただ、無心に路上ないしその付近で遊ぶ頑是ない幼児に対する関係の事案においては、もともとこれを適用し難い要素が存するのであつて、すなわち、この原則が適用されるためには、何よりもまず、その前提として、行為者たる被告人にとつて、信頼されるべき他の交通関係者たる本件被害者の危険回避措置を期待し得る状況がなければならなかつたにかかわらず、本件においては、何らそのような状況は見当らず、よしんば所論のように、本件被害者が、かねて学校ないし家庭で、道路交通の安全に関する特別の教育をほどこされ、あるいは道路における通行や遊戯につき再三の注意を受けていたとしても、また、これまで本件に事故現場付近路上で、交通の妨害にわたる挙動に出で、運転手などから叱責されるようなことがあつたとしても、本件当時、これらの事実を未だ確知する由もなかつた被告人としては、世上よく「子どもを見たら赤信号と思え。」といわれているのに、本件被害者が、それゆえに道路の交通秩序を守り、自動車の交通による危険の有無をよく理解して行動する能力があるものと考え、本件事故回避の措置に出るべきものと期待し得るはずもなかつたわけである。とにかく本件は、既に約60mの手前から被害者らの遊んでいるのを望見した被告人が、特にそのうちの被害者は背を向けて被告人車両の進行に全く気付かぬままの状態であつたのであるから、容易に不測の行動に出ることを予想されたにもかかわらず、ほんの一挙手一投足の労を惜しみ、警音器を吹鳴する等の注意義務を怠つたことが主因となつて発生した事故と認められるのであつて、いわゆる「信頼の原則」を適用すべき余地は全く存しないこと明らかである。

東京高裁 昭和42年9月21日

本件事故現場の幅員は3.9mの狭隘な道路でその南側に電柱が一本あり、為に同所の有効幅員はこれよりなお狭隘となること、一方被告人運転の自動車は大型乗合自動車で、車巾は2.46m、長さ10.02mで、運転席は右側にあり、運転席からはバツクミラーによらなければ車体左側の歩行者の状況は見難い状況にあること、当時は午前8時10分頃で学童の登校時にあたり、同自動車が道路西方より東方へ進行現場附近に差しかゝつた際前方北側を被害者を含む20名位の小学生が一団となつて反対方向から歩行して来ていたこと、そのうち数名は被告人の自動車を認めて道路北側の小路又は人家の玄関先に分れて待避していたが、被害者を含む一部学童はなお歩行中であつたことが認められる。このような学童(而も低学年の学童)が多数通行する狭隘な道路を大型自動車で通過するに当つては、自動車運転者としては、できるだけ道路の右側により学童との間隔をとるべきであるのは勿論であるが、学童の年令から考えて何時不測の行動に出るかも知れないことを慮り、自ら学童の挙動に周到な注意を払うとともに、それが困難のときは、同乗の車掌をして学童の通行状況に同様十分な注意を払うように指示を与え、時にはこれに誘導させる等して無事通過し終るまで何時でも停車できる程度に最徐行し、もし現に接触の危険が感じられた場合は直ちに停車し、以て事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるものというべきである(道路交通法71条2号参照)。

大阪高裁 昭和40年7月31日

あえて古い判例にしましたが、狭い道路でクルマが優先になるなんてワケがないのですけどね。
10条は単に通行位置の指定、車両には18条2項など様々な義務として歩行者保護を規定しているのだから。


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