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危険運転致死…煽る必要がわからない。

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なんでこんなことをするのか…

起訴状によりますと、堺市南区の元介護士・A被告(28)は去年3月、堺市南区の幹線道路「泉北1号線」で普通乗用車を運転中、同一方向にバイクで走っていたBさん(当時28)に対して“あおり運転”を行いました。

A被告が急にハンドルを切って、車をBさんのバイクの目の前に割り込ませた結果、バイクが被告の車に衝突、はずみでバイクは道路際の柵にぶつかり転倒しました。Bさんは延髄(脳の最下部で脊髄につながる部分)を断裂するなどして即死しました。

A被告は警察に殺人容疑で逮捕・送検されましたが、取り調べ段階で殺意を否認。大阪地検堺支部は去年4月、「捜査を尽くしたものの、殺意を認めるに足りる証拠収集に至らなかった」として、危険運転致死罪で起訴しました。

 

【裁判詳しく】あおり運転でバイク男性死亡「(男性が車を)足で蹴った。困惑して話を聞こうと追跡」と弁護側 検察側は「命を奪われなければならない落ち度はあったのか」(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
大阪府堺市で去年3月、“あおり運転”の末にバイクに乗っていた20代男性を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われている男の初公判。男は起訴内容を認めた上で「ぶつける意図もなければ逸走させる意図もな
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危険運転致死

おそらく、自動車運転処罰法2条4号の「通行妨害目的危険運転」で起訴していると思われますが、

 

(危険運転致死傷)
第二条
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

以前もちょっと書いたように、この規定は「目的犯」なので通行妨害目的の故意がないと成立しない。

 

報道をみても、イマイチどっちの主張なのかよくわからない。

事実としては間違いありません」と起訴内容を認めた上で、「ぶつける意図も逸走させる意図もなかった」と述べました。

(中略)

危険運転致死罪の成立は争わないが、悪質で理由のない他のあおり運転とは異なる」と主張し、情状酌量を求めました。

 

【裁判詳しく】あおり運転でバイク男性死亡「(男性が車を)足で蹴った。困惑して話を聞こうと追跡」と弁護側 検察側は「命を奪われなければならない落ち度はあったのか」(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
大阪府堺市で去年3月、“あおり運転”の末にバイクに乗っていた20代男性を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われている男の初公判。男は起訴内容を認めた上で「ぶつける意図もなければ逸走させる意図もな

通行妨害目的の故意を否認しているようにも取れるし、危険運転致死罪の成立は争わないとしている。

 

ところで。
以前も書いてますが、危険運転致死傷罪を創設した当時の説明で、「通行妨害目的には積極的意図が必要で未必的な認識では足りない」という説明がなされています。
目的犯として規定した以上、未必的な認識ではダメで積極的に妨害する意図が必要と。

 

ただし判例の立場としては、こんな感じ。
まずは「通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない」とした東京高裁判決。

これらの事実に照らすと,被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる。
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。
3 以上からすると,被告人には,対向車両の通行を妨害する目的があったということができるから,その目的を肯定して,被告人に刑法208条の2第2項前段の危険運転致死罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはない。

 

東京高裁 平成25年2月22日

次に「人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含む」とした大阪高裁判決。

ア 本件罪の立法経過等に鑑みると,本件罪が「走行中の自動車の直前に進入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し」たこと(以下「危険接近行為」という。)に加えて,主観的要素として,通行妨害目的を必要としたのは,従前,業務上過失致死傷罪等で処断されていた行為のうち,極めて危険かつ悪質で,過失犯の枠組みで処罰することが相当でないものについて,故意犯と構成することによって,その法定刑を大幅に引き上げる一方,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じ,これを避けるために,危険接近行為に及んだ場合など,悪質とまでいい難いものについては,本件罪の成立を認めないとすることにより,処罰範囲の適正化を図ったものと解される。
そうすると,本件罪にいう通行妨害目的の解釈は,上記のような立法趣旨に沿うものである必要があると考えられるところ,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられる。したがって,そのような場合もまた,通行妨害目的をもって危険接近行為をしたに当たると解するのが合目的的である。
ところで,本件罪は目的犯とされているから,通行妨害目的の解釈も,目的犯における目的の解釈として合理的なものである必要があるところ,目的犯における目的の概念は多様であり,各種薬物犯罪における「営利の目的」のように積極的動因を必要とすると解されているものもあれば,爆発物取締罰則1条の「治安ヲ妨ゲ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」のように未必的認識で足りると解されているものもあり,さらに,背任罪における図利加害目的のように,本人の利益を図る目的がなかったことを裏から示すものという解釈が有力なものもある。これを本件罪についてみると,本件罪において通行妨害目的が必要とされたのは,外形的には同様の危険かつ悪質な行為でありながら,危険回避等のためやむなくされたものを除外するためなのであるから,目的犯の構造としては,背任罪における図利加害目的の場合に類似するところが多いように思われる。そうすると,本件罪にいう通行妨害目的は,目的犯の目的の解釈という観点からも,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することのほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解することに,十分な理由があるものと考えられる。
以上のとおり,本件罪にいう通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合をも含むと解するのが,立法趣旨に沿うものであり,かつ,目的犯の目的の解釈としても,理由のあるものと考えられるから,結局,本件罪の通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。
イ 原判決は,本件罪にいう通行妨害目的は,運転の主たる目的が人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することになくとも,自分の運転によって上記のような通行の妨害を来すことが確実であることを認識して当該運転行為に及んだ場合にも肯定されると解するとして,東京高等裁判所平成25年2月22日判決・高刑集66巻1号3頁を援用しているから,同判決同様,そのような認識で当該行為に及んだ場合,自己の運転行為の危険性に関する認識は通行の妨害を主たる目的とした場合と異なることがないことを,上記のような解釈を採る理由としているものと解されるが,認識の程度が同じであればなぜ目的があるといえるのか不明であるし,なにより,そのような解釈を採ると,自分の運転行為によって通行の妨害を来すことが確実であることを認識していれば,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じこれを避けるためやむなく危険接近行為に及んだ場合であっても本件罪が成立することになり,立法趣旨に沿わないものと考えられる。また,原判決がいう「確実であることを認識して」とは,結局のところ,確定的認識をいうものと解されるが,確定的認識と未必的認識は,認識という点では同一であり,ただその程度に違いがあるにとどまるに過ぎない上,その判定は,確定的認識について信用できる自白がある場合や,犯行の性質からこれを肯定できる場合はともかく,当時の状況等から認識自体を推認しなければならない場合には,甚だ微妙なものにならざるを得ないから,そのような認識の程度の違いによって犯罪の成否を区別することが相当とも思われない。
検察官は,目的犯における「目的」の意義は多様であり,外国国章損壊(刑法92条)等のように,その目的が,構成要件的行為自体,または,その付随現象から,おのずと実現されるため,客観的構成要件該当事実を認識していれば,同時に,目的を有しているとも見られる犯罪類型にあっては,未必的認識で目的が充足されるとすると,故意とは別に目的を要求した意味がなくなり,そのため,このような場合の目的としては,目的の実現に対する未必的認識では足りず,目的が実現することを確実なものと認識することが必要であると解すべきであるとした上で,通行妨害目的は,まさにこのような場合であるから,相手方の自由かつ安全な通行を妨げることが確実であることを認識することが必要であり,このような認識がありながら,あえて危険接近行為に及ぶような場合には積極的な意図がある場合と同視し得るとして,通行妨害目的についての原判決の解釈に誤りはないというが,認識があることを前提としながら,その認識の程度によって犯罪の成否を区別するのが相当でないことは前記のとおりである。なお,検察官のように,「通行妨害目的」を肯定するためには通行妨害について確定的認識が必要と言い切ってしまうと,嫌がらせ目的で危険接近行為をしたが,通行妨害についての認識は未必的であったという場合,本件罪は成立しないことになりそうであるが,それが妥当であるかも疑問である。
一方,弁護人は,本件罪の立法過程では,行為者の主観的事情として,人の死傷に対する認識認容を求めないものとしたために,処罰範囲の拡大が懸念され,暴行や傷害等に準じた重い刑罰に見合った「極めて危険かつ悪質なもの」に処罰範囲を限定し,かつ,その範囲を明確にするために目的犯とされ,この点について,立法担当者が,「妨害する目的で著しく接近し」とは,「相手方が自車との衝突を避けるために急な回避措置を余儀なくされる」ことを「積極的に意図して自車を相手方の直近に移動させること」をいう旨明らかにしているから,本件罪では,客観的行為態様に加えて,主観をも考慮に入れて行為の危険性を判断しなければならないのであり,通行妨害目的が認められるためには,確実な認識が必要であるとともに,積極的意図も必要である旨主張する。
しかし,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に極めて危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられることは,前記のとおりである。
ウ 以上の次第で,本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。

 

大阪高裁  平成28年12月13日

報道をみる限り、

A被告が急にハンドルを切って、車をBさんのバイクの目の前に割り込ませた結果、バイクが被告の車に衝突、はずみでバイクは道路際の柵にぶつかり転倒

 

【裁判詳しく】あおり運転でバイク男性死亡「(男性が車を)足で蹴った。困惑して話を聞こうと追跡」と弁護側 検察側は「命を奪われなければならない落ち度はあったのか」(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
大阪府堺市で去年3月、“あおり運転”の末にバイクに乗っていた20代男性を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われている男の初公判。男は起訴内容を認めた上で「ぶつける意図もなければ逸走させる意図もな

ハンドルを切らなければならないやむを得ない理由はないでしょうから、「通行妨害目的」は普通に認定されるでしょう。
なので大筋としては争わないというところなんですかね。

なんでこんなしょーもないことを

以前も書いてますが、煽り運転したうちら「後悔していない」が56.5%。

 

煽り運転「後悔してない」。
なんですか、この記事は? 煽り運転「後悔してない」 「“あおり運転”をしたことを後悔しているか」を聞くと、「後悔している」が43.5%、「後悔していない」が56.5%となり、「後悔していない」が半数を上回る結果となりました。 おい! 後悔は...

 

意味がわからない。

 

ところで、道路交通法にも「通行妨害目的」として規定された妨害運転罪がありますが、妨害運転罪ってほとんど検挙も起訴もされてない。
以前書いたように目的犯として規定した以上、警察が「執拗性」にこだわっているように思えますが、

 

「執拗性」をなぜ求めるか?
こちらの続きです。 執拗性をなぜ求めるか? まずはおさらいから。 ……… 妨害運転罪(道路交通法117条の2の2第1項8号)はこのように規定しています。 第百十七条の二の二 八 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であ...

 

「通行妨害目的」については危険運転致死においてはまあまあ判例が出ているわけで、大阪高裁判決のように「人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含む」でいいんじゃないかと思ったりします。

 


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