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報道内容から妄想してないか?自転車事故について。

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こちらの報道。

11日午後4時ごろ、大阪市阿倍野区松崎町の信号のない交差点で、自転車に乗った小学6年生の男の子(11)とワンボックスカーが出合い頭に衝突しました。

 

自転車で車にはねられ意識不明の男子小学生(11)が死亡 警察はヘルメット着用を呼びかけ 大阪(読売テレビ) - Yahoo!ニュース
今月11日、大阪市阿倍野区で、自転車に乗った男の子(11)と車が衝突した事故で、意識不明の状態で治療を受けていた男の子が死亡しました。  11日午後4時ごろ、大阪市阿倍野区松崎町の信号のない交差

他の報道を含めて判断すると、クルマは画像の方向に進行し、自転車は右側(一方通行規制)から進行したものと考えられますが、かなり違和感がありまして。

 

違和感というのは、自転車やクルマの行動詳細が何ら報道されてない中で「自転車が一時停止違反だ」と決めつけるような解説。

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双方の義務を確認する

この場合、双方に課された義務はこうなります。

クルマ 自転車
徐行義務(42条1号) 一時停止かつ交差道路の進行妨害禁止(43条)
(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

※優先道路とは交差点内にセンターラインか車両通行帯があること(36条2項参照)。「左右の見通し」とは片方のみ見通しが悪くても義務があります。

この見とおしは、もとより左右いずれか一方がきかないもので足りる。

 

名古屋高裁 昭和44年2月6日

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

なのでこの状況においては、クルマが優先権を持ちます。
ただし、クルマが絶対的な優先権を持つのかというと、違います。
道路交通法の優先関係の基本は「適法に通行する者が優先」なので、クルマが優先権を主張できるのは「徐行ないし徐行に近い速度」の場合。

 

一つ判例を示します。
判例は最高裁判所第三小法廷  昭和48年12月25日。

・優先道路は無し
・東西道路に一時停止規制
・交差点の全方向にブロック塀があり見通しは悪い
・南北道路の制限速度は40キロ
・道路幅は同程度

被告人車(青)は一時停止規制に従い一時停止した後、左方道路の見通しが悪いため徐行前進。
左方道路から進行してくる車との距離が約37mだったことから進行したところ、北進する車の速度が速く衝突した事故です。

これについて、一時停止規制側車両に信頼の原則を適用。

南北道路は優先道路ではないから、A車のように南北道路を北進して交差点に進入しようとする車両は、東西道路に一時停止の標識があつたとしても、本件当時施行の道路交通法42条に従い、交差点において徐行しなければならないのである(最高裁昭和43年7月16日第三小法廷判決・刑集22巻7号813頁参照。)。
しかるに、原判決の確定した事実によれば、Aは、制限速度を超えた時速約50キロメートルで進行し、交差点手前約20. 5メートルに至り、初めて被告人車を発見し、急制動の措置をとつたが間にあわず、交差点内で被告人車に衝突したというものであつて、本件事故は、主としてAの法規違反による重大な過失によつて生じたものというべきであり、このことは、原判決も認めているところである。
しかし、進んで、原判決が説示しているように、被告人にも過失があつたかどうかを検討してみると、本件のように交通整理の行なわれていない、見とおしの悪い交差点で、交差する双方の道路の幅員がほぼ等しいような場合において、一時停止の標識に従つて停止線上で一時停止した車両が発進進行しようとする際には、自動車運転者としては、特別な事情がないかぎり、これと交差する道路から交差点に進入しようとする他の車両が交通法規を守り、交差点で徐行することを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件A車のように、あえて交通法規に違反し、高速度で交差点に進入しようとする車両のありうることまでも予想してこれと交差する道路の交通の安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

 

最高裁判所第三小法廷  昭和48年12月25日

非一時停止規制側には徐行義務があるので、徐行義務を果たさないばかりか高速度進行した場合には「優先権はない」。
もちろん、信頼の原則は「特別な事情」があるときは適用しないという原則もありますが、基本原則は「適法に進行する車両が優先」です。

報道についてみると

さて戻って「報道の事故の件」。

 

自転車で車にはねられ意識不明の男子小学生(11)が死亡 警察はヘルメット着用を呼びかけ 大阪(読売テレビ) - Yahoo!ニュース
今月11日、大阪市阿倍野区で、自転車に乗った男の子(11)と車が衝突した事故で、意識不明の状態で治療を受けていた男の子が死亡しました。  11日午後4時ごろ、大阪市阿倍野区松崎町の信号のない交差

 

報道を見る限り、自転車が一時停止したか、クルマが徐行していたかは全くわかりません。
そうすると以下のパターンが想定されます。

 

①自転車が一時不停止、クルマが徐行義務違反(双方違反)
②自転車が一時不停止、クルマが徐行していたが避けられなかった(自転車の違反)
③自転車が一時停止したものの、クルマの速度が速すぎて進行するタイミングを見誤った(クルマの違反)
④自転車が一時停止し、クルマが徐行ないしそれに近い速度だったが、自転車が飛び出すタイミングを見誤った(自転車の違反)

等々…

 

報道からみると、「クルマが悪くない」といえるのは徐行義務を果たして前方左右を確認していたけど、自転車が飛び出してきた場合のみ。

以下の判例があります。
報道とかなり似た状況ですが、クルマは見通しが悪い交差点だから徐行義務(42条1号)、交差道路から一時不停止の2輪車が進行してきた事故。
クルマの運転者を徐行義務違反の過失を理由に業務上過失致死傷罪に問われています。

原判決に示された法律判断によれば、自動車運転者は、本件交差点を西から東へ進行する場合には一時停止又は徐行(最徐行)をして左右道路の安全を確認すべき業務上の注意義務があるとしているところ、本件交差点が前説示のように左右の見通しの困難な、交通整理の行なわれていない交差点であるから、車両の運転者に道路交通法上の徐行義務があることは明らかであるが(道路交通法42条)、さらに進んで一時停止の業務上の注意義務があるかはにわかに断定できず、本件交差点は一時停止の交通規制は行なわれていない場所であるから、業務上の注意義務としても特段の事情なき限り、一時停止義務はないものというべきである。けだし、道路交通法は交通の安全と円滑を調和せしむべく徐行すべき場所或いは一時停止すべき場所を決めているのであって、例えば車の鼻先を出しただけで衝突を免れないような交差点や優先道路との交差点などでは、別に一時停止の交通規制を行つているのが通常であり、規制のない場合には、業務上の注意義務としてのものであつても、一般的には一時停止義務を課することは相当でないというべきである。

(中略)

そこでさらに進んで被告人の徐行の注意義務違反の有無について考察すると、道路交通法上徐行とは車両が直ちに停止することができるような速度で進行することをいうと定義されている(道路交通法2条1項20号)が、具体的に時速何キロメートルをいうかは明らかではないとしても、前記認定の時速5キロメートル程度であれば勿論、時速10キロメートルであつても徐行にあたるものというべく、本件において業務上の注意義務としての徐行としても、時速5キロメートル程度のものであれば、これにあたると解するのが相当である。原判決は本件のような交差点に進入する車両には単なる徐行より一段ときびしい最徐行義務があるかの如き説示をしているのであるが、最徐行とは具体的にいかなる速度をいうのかの点は暫らくこれを措くとしても、前記のように被告人が時速5キロメートル程度の速度で進行していたとするならば、被告人において徐行(最徐行を含めて)の注意義務はつくしているものと認めるのが相当である。従つて、被告人には公訴事実にいう徐行の注意義務を怠つた過失はないというべきである。

 

大阪高裁 昭和59年7月27日

被告人は徐行義務を果たしていたから無罪。
報道の件についても、クルマが悪くないと言えるのは徐行義務を果たしていた場合のみになりますが、

警察は車のスピードの出し過ぎが事故の原因の可能性もあるとみて、容疑を過失運転致死に切り替え捜査しています。

 

自転車で車にはねられ意識不明の男子小学生(11)が死亡 警察はヘルメット着用を呼びかけ 大阪(読売テレビ) - Yahoo!ニュース
今月11日、大阪市阿倍野区で、自転車に乗った男の子(11)と車が衝突した事故で、意識不明の状態で治療を受けていた男の子が死亡しました。  11日午後4時ごろ、大阪市阿倍野区松崎町の信号のない交差

今のところ、クルマの速度も不明だし自転車が一時停止したのかも不明。
なのでどっちが悪いかなんて話を報道からすることは不可能になります。

それぞれの義務を

報道を見る限りではクルマも自転車も挙動は不明だし、どっちが悪いとか過失割合がどうとか言える材料が見当たりませんが、みんな好きだよね。
想像のみで決めつけて語るのは。

 

わからない以上、双方にどのような義務があるかの話にしかならないし、この場合の優先権とはどのような場合に優先なのか?くらいしか語ることはできません。

 

ところで、そもそもなぜ見通しが悪い交差点に徐行義務を課しているかですが、上の最高裁判例のようになるからというのが一つ。
そして「歩行者」には一時停止規制がかからない上、横断歩道がない交差点での歩行者優先義務(38条の2)などが関係しているものと考えられます。

 

なぜ?優先道路を進行中なら見通しが悪い交差点でも徐行義務がない理由。
読者様から質問を頂きました。 だいぶマニアックな話ですね。 見通しが悪い交差点での徐行義務 左右の見通しが悪い交差点では徐行義務がありますが、42条1号では交通整理と優先道路の場合が除外されています。 (徐行すべき場所) 第四十二条 車両等...

 

報道された事故について、判決文をみるとそもそも報道内容とは違うんじゃね?と感じることはありますが、どっちが悪いかは結果論の話。
結果に至る前の義務の話をした方が有益かと思いますが、そもそも徐行義務があることを理解してない人もいますから…

 


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