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片側二車線道路と追いつかれた車両の義務。

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だいぶ不思議に思うのですが、こちら。

追いつかれた車両の義務違反だと指摘する声がなぜか多い。
追いつかれた車両の義務は「車両通行帯が設けられた道路を通行する場合を除き」ですが…

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

さてここで問題。
複数車線の道路でも、「車両通行帯」があるかないかはわかりません。
車両通行帯は公安委員会が意思決定した複数車線道路のみなので、公安委員会が意思決定してない複数車線道路には車両通行帯がない。

さいたま簡易裁判所は,平成23年4月21日,「被告人は,平成20年11月18日午後4時35分頃,埼玉県三郷市栄1丁目386番地2東京外環自動車道内回り31.7キロポスト付近道路において,普通乗用自動車(軽四)を運転して,法定の車両通行帯以外の車両通行帯を通行した。」旨の事実を認定した上,道路交通法120条1項3号,20条1項本文,4条1項,同法施行令1条の2,刑法66条,71条,68条4号,18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6000円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,平成23年5月7日確定した。
しかしながら,一件記録によると,本件道路は,埼玉県公安委員会による車両通行帯とすることの意思決定がされておらず,道路交通法20条1項の「車両通行帯の設けられた道路」に該当しない。したがって,被告人が法定の車両通行帯以外の車両通行帯を通行したとはいえず,前記略式命令の認定事実は,罪とならなかったものといわなければならない。

 

最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日

さて、どのように考えるのでしょうか?

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車両通行帯がある場合

まず、片側二車線道路で、かつ車両通行帯がある場合を考えます。

この場合、クルマは追いつかれたか否かにかかわらず第一通行帯の通行義務がありますが(20条1項)、第一通行帯に車両がそれなりにいる場合には

第一通行帯に戻ると車間距離不保持(26条)の違反になってしまう。

なので第一通行帯に戻らなくても20条3項の「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」に該当するため、第一通行帯に戻る義務がありません。

(車両通行帯)
第二十条
3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。

なお,「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」とは,その車両が通行すべき車両通行帯が道路の損壊,道路工事等のため通行することができない場合等をいうが,追越しのため,その直近の右側の車両通行帯を通行して追越しを終わり,元の車両通行帯に戻ろうとする場合において,元の車両通行帯を通行している車両が多く,戻れないまま変更した車両通行帯を通行することも,「その他の事情によりやむを得ないとき」に当たるものと解される。

 

横浜地裁  平成21年12月14日

かといって速度超過して第二通行帯を通行すれば速度超過の違反になるため、第一通行帯に戻ることが車間距離不保持の違反になる場合には、第二通行帯を制限速度内で進行することは違反ではありません。

車両通行帯がない場合

車両通行帯がない片側二車線道路の場合、理屈としては「追いつかれた車両の義務」が発生します。

第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。

さて。
「できる限り」の意味を勘違いする人がいますが、客観的可能な限度と解釈されます。
意味合いとしては「できる限り左側端に寄って」とは「左側端に寄って、ただし道路の状況その他の事情によりやむを得ないときはこの限りではない」という意味。

 

「できる限り」左側端。
こちらの記事について。 確かに左側→左側端となり、「できる限り」が付属してます。 「できる限り」 以前どこかで書いた記憶がありますが、 「左側端に寄って」 「できる限り左側端に寄って」 この差はなんなのか?という話になります。 これ、一番分...

 

そうなると、左側端に寄るために第一車線に入ろうとすれば

車間距離不保持の違反になるので、どのみち「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」になるため、第二車線をそのまま通行することが追いつかれた車両の義務違反になるわけではありません。

もちろん第二車線のまま速度超過することもできません。

 

なので車両通行帯の有無は、実質的に同じ状態になるため無関係です。

速度超過車に対する「追いつかれた車両の義務」

そもそもの話になりますが、追いつかれた車両の義務は一種の優先規定。
優先規定は「適法に進行する者を優先する」わけで、速度超過車に対して進路を譲れという話ではありません。

2 車両通行帯が設けられていない道路の中央(一方通行となっているときは道路の右側端)との間に追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合に、できるだけ道路の左側端に寄ってこれに進路を譲らないとき。ただし、追いついた車両が明らかにその道路の最高速度より速い速度の場合には適用しない

https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/menkyo/menkyo20230330_44.pdf

優先規定はほかにもありますが、例えば38条1項や38条の2(ともに横断歩行者の優先規定)。
どちらも「赤信号無視した歩行者」については書いてありませんが、

(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。

当たり前の話として、「適法に横断する歩行者を優先せよ」という規定。
38条の2が再定義された昭和42年にこのように説明されています。

この改正内容の第二点は、従来の第一項および第二項の区別を廃止したことである。改正前の第38条は交差点における交通整理の有無によって第一項と第二項を分けて規定していたが、車両等の義務の内容としてはいずれも「歩行者の通行を妨げてはならない」ことを規定していた。したがって、規定をこのように分けていた実益は、交通整理の行われている交差点において優先の適用を受ける歩行者を「信号機の表示する信号または警察官の手信号等に従って横断している」歩行者に限っていたことにあると考えられるが、本来このような優先の規定は適法な歩行者にのみ適用になると解するのが当然のことであるので(注2)、今回の改正を機にこの区別を廃止したのである。

 

(注2)この点については、改正前の第71条第3号すなわち改正後の第38条第1項の規定についても、信号無視の歩行者に優先権を与えたものでないのは解釈上当然のことであると考えられていた

 

警察庁交通企画課 浅野信二郎、警察学論集20(12)、p37、立花書房、1967年12月

ほかにも道路交通法37条は右折劣後、直進優先を規定していますが、

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

直進優先とは言え、直進車が速度超過している場合については記述がない。
しかし当たり前のようにこうなる。

昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである

 

富山地裁  昭和47年5月2日

追いつかれた車両の義務についても、速度超過している車両を優先する規定ではありません。
ましてや車間距離不保持で詰める行為が違法なわけで、自己防衛として譲るのはまだしも、法的義務として進路避譲を負うわけではない。

第一車線に戻れる状況なのか?については前方カメラがないとわかりませんが、速度を上げて煽る車両が優先だと思い込む人がまあまあいるのは、ちょっと怖いですね。
ある種の暴力性すら感じますが。

 

譲っている後続車にしても車間距離保持がビミョーになる状況で第一車線に進入しているので、あまり好ましくないように見えてしまいますが、みんな仲良く通行している中で速度を上げ車間距離を詰めて乱しているのは誰なのだろうか。


コメント

  1. 山中和彦 より:

    ハイエースの前を走ってたシルバーのミニバンは、どう見ても、ハイエースに煽られて車線変更した感じですね。
    ただ、第2通行帯を走ってるのに、第1通行帯を走ってるクルマにどんどん抜かれてるので、第2通行帯そもそも走るな、と言われてるように思います。
    跡のほうで、ツイ主が、先々で右折するつもりだったが、第2通行帯に入るのが早すぎた、と言ってますので、どっちもどっちですね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      なかなかこのような問題は難しいのですが、だからといってゴリゴリ車間距離を詰めていい理由もない、という話です。

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