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北海道警、白バイに「最高速度は時速100キロの通達(一般道)」を出していた…

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ちょっと前になりますが、時速約120キロで交差点を直進していた白バイと対向右折車が衝突した事故について、右折車のドライバーが「過失運転致死罪」に問われ裁判が始まったという報道がありました。

 

右折車は、120キロで進行する直進車を予見可能なのか?
先日不可解な報道がありました。 弁護側は「時速120キロという高速のバイクの接近を予見回避することは不可能。被告に過失はない」と無罪を主張しました。 白バイが非緊急走行で120キロで直進し、右折車と衝突。 検察は不起訴にしたものの、検察審査...

 

弁護側は「時速120キロという高速のバイクの接近を予見回避することは不可能。被告に過失はない」と無罪を主張しました。

 

白バイと衝突し警察官死亡、初公判で被告の弁護側「時速120キロのバイクの接近を予見回避することは不可能」と無罪主張(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
2021年9月、北海道苫小牧市で大型トラックを運転中に、白バイと衝突し警察官を死亡させた罪に問われている男の裁判が始まり、弁護側は無罪を主張しました。  砂川市の無職、谷口訓被告(55)は、21

白バイが非緊急走行で120キロで直進し、右折車と衝突。
検察は不起訴にしたものの、検察審査会の「起訴相当」を経て起訴した事件です。

 

それについて続報が出ています。

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一般道で最高速度100キロの通達?

この中で検察は、事故直前の白バイの速度118キロについて、警ら中で、法律上は問題ないとしながらも、北海道警察は事故防止に向け、最高速度は100キロの通達を白バイにしていたことも新たに明らかにしました。

当時、この通達を20キロ近く超える速度で走行するほどの緊急性が白バイにあったのかなどは、説明されていません。

 

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を10

さてこの事件。
報道だけを見ると若干論点がおかしくなっているような気がしますが、あくまでも犯罪の成立は「被告人(右折車ドライバー)に注意義務違反があって、注意義務違反の結果死亡事故が起きたか?」になります。
白バイvs右折車ドライバーだと勘違いする人がいそうですが、刑事事件なので「どちらが悪いか?」を決めるのではなく、右折車ドライバーに右折に関する注意義務違反があったかが争点。

なので通達がどうのこうのは右折車ドライバーには関係がないことですが、要は法定の上限を越えた最高速度を容認した通達を出していたという点は非難されるもの。
なのでこれについては右折車ドライバーの過失とは「別」に考える必要があります。

 

緊急車両の最高速度は一般道だと時速80キロになりますが、この事件では白バイがサイレンを鳴らしていなかったため、緊急車両扱いではありません。

 

勘違いしやすい点ですが、仮に被告人である右折車ドライバーが有罪になったとしても、白バイの速度が合法だとお墨付きを与えるものではありません
ここを勘違いする人が多いので書いておきますが、あくまでも争点は「交差点を右折する際に、高速度で直進する車両があることを予見する注意義務があるか?」になります。

 

しかしまあ、なんでこのような謎通達を公判に出してきたのかはわかりませんね。

直進優先の原則

交差点を右折する際には、直進車が優先になるという大原則がありますが、

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

このルールには「速度」について規定がありませんが、既に確立した考え方として「適法に直進する車両が優先」。

道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

最高裁でも概ね10~20キロの速度超過車を予見して注意する義務を認めていますが、大幅な速度超過車を予見する義務はない(信頼の原則)というのが一般的。

 

ところが、このような主張をしている様子。

これまでの公判で弁護側は「時速120キロという高速のバイクの接近を予見し、回避することは不可能、被告に過失はない」と無罪を主張。

これに対し、検察は「当時、白バイは警ら中で、赤色灯を点灯させながら、118キロほどで走行していたが、トラックを見つけて、88キロまで減速したトラックは、右折先の反対車線に停止していた車両の内側を進行しようとして、安全確認を怠り、事故が起きた」と指摘していました。

 

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」 | TBS NEWS DIG (1ページ)
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を100キロと… (1ページ)

そもそもの事故態様はこうみたいです。

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」 | TBS NEWS DIG (1ページ)
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を100キロと… (1ページ)

文章とイラストを見て、下記のどっちを意味するのかはよくわかりません。

①右方道路の右折車はまだ右折してない

②右方道路の右折車が右折した瞬間に右折した

②の状態であれば、対向直進車に対する注意を怠って右折を開始したとみなせる余地がありますが、かといって対向車が著しく高速度で進行してきたらどのみち無理がある。

 

この事故態様において、著しい速度超過車を予見する注意義務があるか?が争点になるのかと。

 

なお、「著しい速度超過車を予見する注意義務はない」という信頼の原則が既に確立していますが、信頼の原則には条件がついています。
「特別な事情」がある場合には信頼の原則が適用されない。

自動車運転者としては、特別な事情のないかぎりそのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。そして、原判決は、他に何ら特別な事情にあたる事実を認定していないにかかわらず、被告人に右の注意義務があることを前提として被告人の過失を認めているのであるから、原判決には、法令の解釈の誤り、審理不尽または重大な事実誤認の疑いがあり

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日

過去に右折時に著しい速度超過車を予見する注意義務を認めた判例があるにはありまして、仙台高裁 平成5年2月5日判決では制限速度40キロのところを時速70~80キロで直進した2輪車に対し、右折車が衝突。
右折車を有罪(業務上過失致死)としていますが、普段から60~70キロで直進する車が多いことを知っていたことや、時速70キロ超で直進する車があることを知っていたとして信頼の原則を否定しています。

司法警察員作成の前記実況見分調書及び平成4年2月10日付け捜査報告書によれば、本件事故現場付近の国道は、最高速度が時速40キロメートルと指定されているものの、本件事故は前記のとおり午後10時8分ころに発生したものであり、この夜間の時間帯は、交通量が閑散としており制限速度を遵守せず、時速60ないし70キロメートルで進行する車両も稀でなく、時速70キロメートルを超過している例も認められる。被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書によれば、被告人は本件事故現場を日頃頻繁に通行しており、このような交通事情については知つていたものと推認される

 

4  本件において、前述のとおりA車は時速70ないし80キロメートルで進行してきたものであり、被告人が当初〈3〉地点で〈ア〉地点にいたA車を認めた時点で直ちに右の高速走行まで予測すべきであつたと断定するのは躊躇されるとしても、右折車の運転者たる被告人としては、対向直進車であるA車の動静を注視すると共にA車の接近にもかかわらずなお安全に右折できるか否かを確認すべきであり(本件当時は夜間で、二輪車の対向直進車の速度の確認は昼間に比べてより困難であるから、一層その必要性があるといえる。)、しかるときは、A車が右のような高速走行をして更に接近することも当然認識し得るに至ると考えられるから、A車が通過するまで進行を一時差し控えて事故の発生を回避すべきであり、これを要するに被告人には〈3〉地点で〈ア〉地点のA車を認めた際その動静に注視し、一時停止して同車の通過を待つなどA車の進路を妨害しないようにして右折進行すべき業務上の注意義務が課せられていたといわざるを得ない。なお、この場合、右のように高速走行車とはいえ優先通行権のあるA車の接近する状況下にあつては、いわゆる信頼の原則を認めて右折車の運転者たる被告人にA車の動静注視等の注意義務を免除するのは相当でない。しかるに、関係証拠によれば、被告人は、A車に対する十分な動静注視を怠り、A車が二輪車か四輪車かの識別もせず(被告人の原審及び当審公判廷における各供述参照)、その速度の確認も十分しないままA車の到達前に右折を完了することができると安易に思い込み、そのまま右折・進行したため本件事故に至つたことが明らかであるから、被告人にはA車に対する注視を怠つた過失があるというべきである。

 

仙台高裁 平成5年2月5日

制限速度40キロの道路にて30~40キロ超過した直進車があることを予見して注意する義務を認め有罪にしていますが、今回の報道の事故のように「ショートカット右折」をした場合、そもそも対向直進車に対する注意を怠っていたとも取れなくはないため、検察審査会が「起訴相当」にした理由はこれなのかもしれません。

 

なお、事故態様に争いはないみたいですが検察官が証人申請して認められたとあります。

その後、検察が事故の目撃者の証人尋問を求めたの対し、弁護側は「事故態様に争いはないため、目撃者の証言は、被告の過失を明らかにするものではなく、不必要」と反論。

主張が分かれましたが、札幌地裁は証拠として採用したため、12月1日に予定の次回の公判で、目撃者の証人尋問が行われます。

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」 | TBS NEWS DIG (1ページ)
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を100キロと… (1ページ)

目撃者は何を語るのでしょうか?
あと、「事故態様に争いはない」とあるように、争点は事実認定ではなくあくまでも注意義務の有無が争点です。
その意味でも、証人が「事実」を語ることに何の意味があるのかもよくわかりませんね。

著しい速度超過車を予見する注意義務があるか?

著しく速度超過した対向車を予見する注意義務があるか?という話になりますが、ちょっと無理があると思う。
ただし今回のようにショートカット右折をするに当たり、どのように判断されるかはちょっとビミョーです。

 

そしてそれとは別に、北海道警が内部で「時速100キロでOK」という謎通達を出していた点についても、法定上限を越えた速度を組織として容認していたわけなので、それはいかんだろと。

 

しかしなぜ行政の恥部に当たる謎通達を出してきたのかも不思議ですね。
警察組織の中でダントツ評判が悪いのはKNGW県警で、「電動キックボードは玩具になったから好きに遊んでOK」と回答するヤバい組織ですが、北海道警も大丈夫なのか不安です。

 

悲報!?神奈川県では7月1日から電動キックボードが「玩具」扱い笑。
神奈川県警は凄まじいなあ… 神奈川県警の交通相談に電話をして聞いてみたところ、こちらが絶句する回答が返ってきた。 「はぁ? 歩道を走れる電動キックボードは、『玩具』扱いですよ。おもちゃと一緒です。保安部品も必要ありません。自転車と同じです。...

 

法令上限を越えた著しい速度超過を事実上容認していた北海道警も無いなと思うし、著しい速度超過車を予見する注意義務が通常ないとはいえ、ショートカット右折をしていたならそもそも対向車の確認が不十分だった可能性もあるし、裁判所がどう判断するかは注目です。


コメント

  1. ななこ より:

    管理人さんはパトカーの速度が違反だと捉えているようにお見受けしましたが、北海道道路交通法施行細則3条の2(2)イで「専ら交通の取締りに従事する自動車」が最高速度の規制対象から除外されているので、パトカーの速度は違反ではないのではないかと思うのですがいかがでしょうか?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      確かに「専ら」交通の取締りに従事する自動車については最高速度の規制対象から除外されているのですが、報道によると「警ら中」。
      この規定を設けている趣旨ですが、他県警の解説になりますが以下になります。

      2 最高速度の規制対象から除く車両

      警察用車両の最高速度については、道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)では、専ら交通の取締りに従事する自動車(以下「交通取
      締車」という。)
      であっても、最高速度の違反の車両等を取締中の緊急自動車を除いては、最高速度の規定(法第22条)の適用を除外する規定がない。したがって、交通取締車であっても、公安委員会の最高速度の規制(以下「指定最高速度」という。)に従わなければならないので、これらの車両をあらかじめ指定最高速度の対象から除外し、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号。以下「令」という。)第11条に定める60キロメートル毎時を最高速度とする。ただし、指定最高速度が60キロメートル毎時を超えているときは、指定最高速度を交通取締車にも適用するものである。
      なお、交通取締車が指定最高速度の規制の対象から除かれたのは、指定最高速度の規制区間内において、速度違反の車両等を追尾する場合の適応性を担保するためのものである。

      https://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/information/upload/kisei20150731-3_1.pdf

      ⑵ 最高速度の規制から除く車両
      法は、緊急自動車及び専ら交通の取締りに従事する自動車について、最高速度の規定(法第22条)の適用を除外する特例を設けていないため、公安委員会が最高速度の規制をした場合には、標識標示主義によりこれに従わなければならないこととなる。
      そこで、これらの車両については、あらかじめ公安委員会が行う最高速度の規制の対象から除外し、緊急自動車については、令で定める80キロメートル毎時(高速自動車国道においては100キロメートル毎時)まで、専ら交通の取締りに従事する自動車については、令で定める普通自動車又は自動2輪車の最高速度(60キロメートル毎時。高速自動車国道においては100キロメートル毎時)まで出せることとされたのである。ただし、専ら交通の取締りに従事する自動車については、公安委員会の最高速度の規制が60キロメートル毎時(高速自動車国道においては100キロメートル毎時)を超えている場合には、この規定を適用せず、公安委員会の規制した最高速度まで出せるように規定されている。
      (第2号イかっこ書き)
      なお、専ら交通の取締りに従事する自動車が最高速度の規制から除かれているのは、速度違反車等を追尾する場合の適法性を担保するためのもので、これによって従来の取締方法が変更されるものではない。
      従って、速度違反車の追尾等で赤色燈を点燈し、サイレンを吹鳴しても支障のないものについては、すみやかに緊急自動車に切り替える等してこの規定を乱用しいよう留意すること。

      https://www.pref.shimane.lg.jp/police/06_information_disclosure/kunrei_tsuutatsu/koutsuu/koutsuu.data/3kaisyaku.pdf

      「専ら交通取締に従事する自動車」というのは意味合いとして現に交通取締中を意味すると考えられ、しかも当該規定を設けている趣旨はあくまでも速度超過車の取り締まりに対応するためのものだと考えられますので、いわゆる「警ら」についてまで適用する趣旨ではないと思います。

      なので報道にある「警ら中で、法律上は問題ないとしながらも」という検察側の主張自体が誤りなんじゃないでしょうか?

      • ななこ より:

        わざわざ記事を作っていただきありがとうございました。こちら拝見しました。

        https://roadbike-navi.xyz/archives/44491/

        運転レベル向上委員会さんの動画を見てコメントを書きましたが、こちらの解説を見て運転レベル向上委員会さんが間違いだと理解できました。ありがとうございました。

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          あー、あそこですか…
          確認してみましたが、あまり調べないまま発信することが多いように思うので、ご本人に間違いだと指摘してあげたほうがよろしいかと思います。

  2. . より:

    速度出てても緊急車両なら右折が悪いやろー
    でもサイレン鳴らしてないならほなちゃうかー
    (事故図見て)ショートカット右折やと右折が悪いやろー

    と脳内ミルクボーイが漫才してた

    とりあえずショートカット右折はやめよう
    今回関係ないけど連続右折も
    前の車は行けたけど確認せず行くと直進車と事故るぞ!

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      白バイの速度に問題はあるし、右折車の右折方法にも問題はあるし、いろいろ怠ると事故るという話なんだと思います。
      ただし、右折方法が死亡事故との関係で過失になるかはまたビミョーです。

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