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右折車は、120キロで進行する直進車を予見可能なのか?

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先日不可解な報道がありました。

弁護側は「時速120キロという高速のバイクの接近を予見回避することは不可能。被告に過失はない」と無罪を主張しました。

 

白バイと衝突し警察官死亡、初公判で被告の弁護側「時速120キロのバイクの接近を予見回避することは不可能」と無罪主張(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
2021年9月、北海道苫小牧市で大型トラックを運転中に、白バイと衝突し警察官を死亡させた罪に問われている男の裁判が始まり、弁護側は無罪を主張しました。  砂川市の無職、谷口訓被告(55)は、21

白バイが非緊急走行で120キロで直進し、右折車と衝突。
検察は不起訴にしたものの、検察審査会の「起訴相当」を経て起訴した事件です。
右折車のドライバーが過失運転致死に問われています。

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右折車の注意義務

右折車は直進車を優先させる義務がありますが、

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

この規定、あくまでも制限速度に近い速度で直進する車両が優先だと解釈されます。

道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

ただし10~20キロ程度の速度超過を予測する注意義務は最高裁も認めている通り。

 

道路交通法違反ではなく過失運転致死罪なので、それ以上の速度超過を予見して右折する注意義務があるか?になりますが、「特別な事情がない限り」大幅な速度超過直進車を予見する注意義務はありません。

 

いわゆる信頼の原則ですね。
「特別な事情がない限り」は暴走直進車を予見する注意義務はありませんが、特別な事情を認めた判例としては仙台高裁 平成5年2月5日判決があります。

 

この判例は制限速度40キロのところを時速70~80キロで直進した2輪車に対し、右折車が衝突。
右折車を有罪(業務上過失致死)としていますが、普段から60~70キロで直進する車が多いことを知っていたことや、時速70キロ超で直進する車があることを知っていたとして信頼の原則を否定しています。

 

さて。
120キロの直進車を優先する注意義務がないのは明白な気がしますが、どうもその前に白バイが減速していたとか。
減速具合から右折車に注意義務違反があったとしているのか、信頼の原則を覆す「特別な事情」があったとしているのか、報道からはさっぱりわかりません。
一度不起訴にしたものを検察審査会がひっくり返したので、何かあるのかもしれないし、ないのかもしれないし。

そもそも

大分の時速194キロ直進車の件でも、道路交通法37条ガー!と語り右折車が悪いなどと恐ろしいことを語る人すらいますが、もちろんそんなわけはない。

 

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。 第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。 ※直進車が違法走行した事例をメイ...

 

時速120キロで直進するオートバイを予見する注意義務があるとは思えませんが、信頼の原則を覆す「特別な事情」があるのか、もしくは回避可能と判断するだけの証拠があるのかはわかりません。
けど、スピード超過ってあらゆる回避可能性を消し去るわけで、なんだかなあと思うところです。

 

信頼の原則を否定した仙台高裁 平成5年2月5日判決↓

最高速度が時速40キロメートルと指定されているものの、本件事故は前記のとおり午後10時8分ころに発生したものであり、この夜間の時間帯は、交通量が閑散としており制限速度を遵守せず、時速60ないし70キロメートルで進行する車両も稀でなく、時速70キロメートルを超過している例も認められる。被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書によれば、被告人は本件事故現場を日頃頻繁に通行しており、このような交通事情については知つていたものと推認される。

 

4  本件において、前述のとおりA車は時速70ないし80キロメートルで進行してきたものであり、被告人が当初〈3〉地点で〈ア〉地点にいたA車を認めた時点で直ちに右の高速走行まで予測すべきであつたと断定するのは躊躇されるとしても、右折車の運転者たる被告人としては、対向直進車であるA車の動静を注視すると共にA車の接近にもかかわらずなお安全に右折できるか否かを確認すべきであり(本件当時は夜間で、二輪車の対向直進車の速度の確認は昼間に比べてより困難であるから、一層その必要性があるといえる。)、しかるときは、A車が右のような高速走行をして更に接近することも当然認識し得るに至ると考えられるから、A車が通過するまで進行を一時差し控えて事故の発生を回避すべきであり、これを要するに被告人には〈3〉地点で〈ア〉地点のA車を認めた際その動静に注視し、一時停止して同車の通過を待つなどA車の進路を妨害しないようにして右折進行すべき業務上の注意義務が課せられていたといわざるを得ない。なお、この場合、右のように高速走行車とはいえ優先通行権のあるA車の接近する状況下にあつては、いわゆる信頼の原則を認めて右折車の運転者たる被告人にA車の動静注視等の注意義務を免除するのは相当でない。しかるに、関係証拠によれば、被告人は、A車に対する十分な動静注視を怠り、A車が二輪車か四輪車かの識別もせず(被告人の原審及び当審公判廷における各供述参照)、その速度の確認も十分しないままA車の到達前に右折を完了することができると安易に思い込み、そのまま右折・進行したため本件事故に至つたことが明らかであるから、被告人にはA車に対する注視を怠つた過失があるというべきである。

 

仙台高裁 平成5年2月5日

個人的には、時速20キロしか出ない特定小型原付と、時速120キロでかっ飛ばす白バイさんのどっちが危険なのかは明らかな気がしますが、もうみんな特定小型原付+リアカーでも乗ればいいんじゃないかとすら思う。


コメント

  1. 危険運転 より:

    高知白バイ事故を思い出させる冤罪に感じます。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      高知白バイ事故は事実関係(動いていたor止まっていた、法定速度付近or明らかな速度超過)を争っていたわけですが、今回の報道の件は事実関係の争いではなく予見可能性の争いと思うので、ほとんど共通点がないように思われますが…

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