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結局、パトカーと白バイのこの規定は何なの?という話。

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先日もちょっと書いた話ですが、

 

結局、白バイの速度(118キロ)は法律上問題なしと言えるのか?
こちらの続きです。 そもそもの事故&裁判報道はこちら。 これらについて、質問を頂いた内容がこちら。 Aさん 管理人さんはパトカーの速度が違反だと捉えているようにお見受けしましたが、北海道道路交通法施行細則3条の2(2)イで「専ら交通の取締り...

 

北海道道路交通法施行細則のこれ。
何のためにある規定なのか?という話。

第3条の2 法第4条第2項の規定により交通規制の対象から除く車両は、道路標識等により表示するもののほか、次の各号に掲げるとおりとする。
最高速度の規制の対象から除く車両
専ら交通の取締りに従事する自動車(高速自動車国道の本線車道にあっては100キロメートル毎時、その他の道路にあっては60キロメートル毎時を超える最高速度の規制を除く。)
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何のためにある規定なのか?

要はこの規定、「専ら交通の取締りに従事する自動車」であれば、都道府県公安委員会が設置した速度標識(法4条1項)に従う義務を免除する。
しかし、「専ら交通の取締りに従事する自動車」は「速度標識がない道路」を通行することと同じになるため、法22条、令11条により法定最高速度60キロに従う義務があるという解釈になります。

 

で。
こういう規定が道路交通法にありますが、

(緊急自動車等の特例)
第四十一条
2 前項に規定するもののほか、第二十二条の規定に違反する車両等を取り締まる場合における緊急自動車については、同条の規定は、適用しない。

速度超過車の取締りにあたる「緊急自動車」は、速度超過することが許されてます。
しかし「緊急自動車」に限定されているので、緊急自動車の要件を満たさないといけない。

(緊急自動車の要件)
第十四条 前条第一項に規定する自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定(道路運送車両法の規定が適用されない自衛隊用自動車については、自衛隊法第百十四条第二項の規定による防衛大臣の定め。以下「車両の保安基準に関する規定」という。)により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。ただし、警察用自動車が法第二十二条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。

速度超過車の取締りをする「緊急自動車」の要件として、サイレン不要、赤色灯必須。

 

で。
細則が定める内容って、「緊急自動車ではない専ら交通の取締りに従事する自動車」について、指定最高速度を遵守する義務から免除するけど、法定最高速度の60キロには従いなさいという意味。
つまり、一般道においては「専ら交通の取締りに従事する自動車」であればサイレンも赤色灯も不要なまま指定最高速度を越えて60キロまではいいですよという話です。

 

法41条2項の規定が「緊急自動車」に限定していることが原因のようです。
40キロの標識があっても、速度超過車の追尾なら赤色灯なしで60キロまではかまわないというだけ。

 

そして法定最高速度の60キロを越えて追尾するには、赤色灯をつけて緊急自動車にクラスチェンジしないと違法になります。

 

ただまあ、ちょっと面白い判例を見つけました。
指定最高速度50キロの道路において、被告人が時速85キロ(35キロの速度超過)で通行。
パトカーが赤色灯をつけずに追尾したので、パトカーも理屈の上では違法になりますね。
法定速度の60キロまでなら細則の除外規定で赤色灯不要ですが、60キロを越えて追尾するなら赤色灯をつけて緊急自動車にクラスチェンジしないと違法。

 

被告人の言い分がこう。

弁護人は、「本件覆面パトカーの警察官が赤色警光燈を点燈せず被告人車を追尾し、その走行速度を測定したのは違法であり、違法に収集した証拠を根拠として被告人を起訴したのは違法であるから、本件公訴は棄却されるべきであり、また、本件覆面パトカーの運転者たる警察官にも道交法違反が成立するのに、その刑事責任を追求することなく、もつぱら被告人の刑事責任のみ追求するのは許されず、本件公訴提起は、検察官の訴追裁量権を逸脱してなされた無効なものであるから、公訴棄却されるべきである。」と主張する。

①赤色灯をつけずに追尾したから違法だし、違法に証拠収集したから無効
②俺だけ起訴しやがって!警察官も起訴しろや!

①については以前示したように、後に最高裁が判断しているのでいいとして。
被告人としては、警察官も同じ違反をしたのだから起訴しろや!という話なんですね笑。

 

これについて、以下の判示。

しかしながら、本件覆面パトカーの警察官が被告人車を追尾してその走行速度を測定するに際し、赤色警光燈を点燈しなかつたことは違法であるが、その測定結果を記載した本件速度測定カードの証拠能力が排除されないことは、第17回公判における当裁判所の証拠決定のとおりであるから、検察官が右の速度測定カードその他の関係証拠に基づき被告人の最高速度違反の犯罪事実を認定し、これを起訴した公訴提起の手続に何らの違法もないというべきである。そして、実体的にみても、その犯罪事実というのは、最高速度が50キロメートル毎時と指定されている道路で、その最高速度を35キロメートル超える85キロメートル毎時で普通乗用自動車を運転したというもので、決して軽微な違反であるとはいえないのみならず、被告人が右のような高速運転をした動機においても何ら酌むべきところは認められないのであるから検察官が、これに刑罰を科するのを相当と認めて本件公訴を提起したのはむしろ当然のことというべきである。なるほど、被告人を検挙した覆面パトカーの警察官にも被告人車を追尾するに当たり、法令に違反するところがあつたが、それは赤色警光燈を点燈して緊急自動車としての要件を具備すべきであつたのに、これを点燈しなかつたというにすぎず、しかも赤色警光燈を点燈しなかつたについては無理からぬ一面もあつたと考えられるのであるから被告人の道交法違反を検挙するのに警察官も等しく道交法違反を犯したとはいつても、両者の違反の実質的内容は根本的に異なるものというべきであり、これを等しくみて、警察官の違反を不問に付し被告人のみ起訴することが許されないという主張自体失当であるといわなければならないが、そもそも、本件覆面パトカーが赤色警光燈を点燈せずに被告人車を追尾したからといつて、これがために被告人が本件の違反行為を誘発されたとか、あるいは、パトカーの不当な追い上げによつて違反速度が倍化してしまつたというのならともかく、かような事情は全く認められず、かえつて被告人は覆面パトカーの追従走行とは何の関係もなく前述のとおり、先きを急ぐあまり自ら高速走行に及んだことは明らかなのであるから、本件覆面パトカーの警察官が法令に定められた赤色警光燈を点燈しなかつたことと被告人に対する公訴提起の当否とは別個の問題であつて、右警察官に対する道交法違反の起訴、不起訴は被告人に対する本件公訴提起の有効無効に何ら影響を及ぼすものでないことは明らかであるといわなければならない。

 

水戸地裁 昭和59年3月15日

「被告人の道交法違反を検挙するのに警察官も等しく道交法違反を犯したとはいつても、両者の違反の実質的内容は根本的に異なるもの」という当たり前の話をしてますが、結局のところ正当業務行為なんだという言い訳も可能。

 

パトカーの違反とお前の違反は意味が違うだろ!という話なんですね。

 

結局のところ、検察官もこういう事情がある場合にまで警察官を起訴しないわけで、違法だけど実質的には何ら処罰されない結果になる。

 

これが一歩間違うと公権力の濫用に繋がりますが、被告人の違反と追いかけたパトカーを同視できないし、ましてや被告人の違反とパトカーの違反を同列に扱うわけではない。

 

どちらにせよ、細則は法定最高速度までは赤色灯なしでかまわないよとするだけの規定なので、無制限に速度を許す規定ではありません。
要は非緊急自動車特例なんですね。

第3条の2 法第4条第2項の規定により交通規制の対象から除く車両は、道路標識等により表示するもののほか、次の各号に掲げるとおりとする。
最高速度の規制の対象から除く車両
専ら交通の取締りに従事する自動車(高速自動車国道の本線車道にあっては100キロメートル毎時、その他の道路にあっては60キロメートル毎時を超える最高速度の規制を除く。)

カッコ書きの意味を考えても明らかかと。
仮に一般道で70キロの標識があるときに、カッコ書きがないと一般車両が70キロまで許されているのに、「専ら交通の取締りに従事する自動車」は法定最高速度の60キロに従わないと違反になるという不合理な事態を除外するためにカッコ書きを置いている。

論点が変

ところでこの件。

 

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を10

 

北海道警、白バイに「最高速度は時速100キロの通達(一般道)」を出していた…
ちょっと前になりますが、時速約120キロで交差点を直進していた白バイと対向右折車が衝突した事故について、右折車のドライバーが「過失運転致死罪」に問われ裁判が始まったという報道がありました。 弁護側は「時速120キロという高速のバイクの接近を...

 

白バイが時速118キロであることが「法律上問題ない」と言えるには、速度超過車を現に取締りしていたか、何らかの正当業務行為じゃないとダメ。

 

ただし、仮に白バイが合法だとしても、右折した被告人の過失とは関係ないのです。
白バイが合法なら被告人が有罪になるわけではないので。

 

なので何か論点がおかしいと思うけど、報道から読み取れる事故の態様からすれば速度超過車を追尾していた可能性は無さそうだし、検察官が主張する「法律上問題ない」についても誤りとみるのが自然かと。

この中で検察は、事故直前の白バイの速度118キロについて、警ら中で、法律上は問題ないとしながらも北海道警察は事故防止に向け、最高速度は100キロの通達を白バイにしていたことも新たに明らかにしました。

当時、この通達を20キロ近く超える速度で走行するほどの緊急性が白バイにあったのかなどは、説明されていません。

 

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を10

 

指名手配犯をたまたま発見して応援がくるまでバレないように距離を置いて追尾していたとかなら正当業務行為になる(?)のかもしれませんが、仮に白バイの速度が問題ないと仮定しても、右折車の注意業務とは関係ないのよね。
あと、検察が必ずしも正しい主張をするとは限らない。
人間ですから間違うことはあるし、それこそ自転車横断帯が赤信号なのに「被告人は道路交通法38条1項の義務を怠った」と主張して惨敗している判例とかあるわけだし。

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

なんで対面信号が青(交差道路が赤)なのに、38条1項前段に基づいて減速するのかさっぱり意味がわからない主張をしている判例とかあるのですよ。
検察官の主張が通っていたら、対面信号が青で徐行しない車両は全部違反扱いになってましたが…


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