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見通しが悪い交差点を左折時に、逆走車がきた場合。

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こういうのを見ていてちょっと思うのですが、自転車が逆走していなければ事故は起きてないという意見もその通り。

実際の判例から検討してみます。

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見通しが悪い交差点と、逆走車の事故

状況は上の動画とは異なりますが、判例は高松高裁 昭和49年10月23日。
業務上過失致傷被告事件です。

 

事故の概要。

路側帯が2ないし2.5m込みで幅員10.8mの道路(つまり車道幅員が6.3m)と、幅員が4.8mの見通しが悪い交差点。
被告人は見通しが悪い交差点を約15キロで左折したところ、逆走車と衝突した事故です。
なお、逆走車が進行した道路の制限速度は30キロ。

 

※イラストに間違いがあり、横断歩道から左側は中央線がイエローではなく白線と思われます。

 

一審は以下の判示から無罪としていますが、検察官が控訴した事案です。

徐行義務の懈怠は、本件事故発生についての注意義務違反にはあたらず、ないしは相当因果関係を欠くものと評価するのが相当であり、被告人としては、本件の具体的状況のもとにおいて、被害者が横断歩道の直前で先行車両を追越すため、中央線右側部分に進路を変更して、そのまま進路を維持したうえ、制限速度を超える速度で対面進行してくることを予見すべき特段の事情の認められない本件においては一時停止の義務も認められないので、被告人に過失の責を問うことはできない

高松高裁は以下の理由から有罪に。

ところで、徐行とは、車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう(道路交通法2条1項20号)ことはいうまでもない。しかし、論旨も指摘するとおり、およそ、徐行とは、見とおしの難易等具体的状況に応じ、その制動距離、惰力前進距離を考慮に入れても事故の発生を避け得る速度で進行することをいうものと解するのが相当であつて、場合によつては、時速10キロメートル以下の速度で進行しなければ徐行とはいえないこともあるわけである。そして、本件において被告人がかりに時速5キロメートル程度に減速して徐行したならば本件衝突事故を優に回避することができたと認められるから、原判決が被告人の徐行義務違反と本件衝突との間には相当因果関係がないとしたのは、徐行の解釈を誤り事実を誤認したものというべきである。

 

原判決は、更に、「被告人としては、被害者が横断歩道の直前で先行車両を追い越すため、中央線右側部分に進路を変更して、そのままの進路を維持したうえ、制限速度を超える速度で対向進行してくることは、特段の事情のない限り、予見すべき義務にあたらず、従つて一時停止の義務も認められないところ、本件においては、右特段の事情の存在を認めるべき証拠は発見できない。」旨認定判示している。被害者が事故直前横断歩道の東側側端から東方約5mの地点で先行車を追い越すため、進路を右に変更し、道路の右側部分を進行していたことは前記説示のとおりである。なるほど、横断歩道及びその手前の側端から前に30m以内の部分において追い越しのため、進路を変更することは禁止されている(道路交通法30条3号)。しかし、この規定は、もともと、横断歩道及びその手前における追い越しは、先行車に視界をさえぎられるため、横断歩道上の歩行者の発見が遅れ、歩行者に危険を及ぼすおそれが極めて大であるところから、これを禁止しようとする趣旨のものであつて、反対方向から進行して来る他の車両との関係を考慮した規定ではないのである。のみならず、被害者の右違反は、本件交差点東側入口から東方約17mの地点に設けられた横断歩道(幅員約2.4m)の東側側端よりも更に東方約5mの地点におけるものであるが、右横断歩道の西側側端から以西では、追い越しのため中央線から道路右側部分にはみ出して進行することは後記説示のとおり適法なのであるから、右横断歩道があることを根拠にして、道路右側部分を西進する車両はないと判断するのは当然であるとは断定しがたいというべきである。また、被害者が、東西道路の右側(北側)部分の進行を続けたとの点については、車両は道路の左側部分を通行しなければならないとする道路交通法17条3項所定の左側通行の原則には反していたものではあるが、しかし、同条4項4号によれば、道路の左側部分の幅員が6mに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするときは、当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対方向からの交通を妨げるおそれがない場合には道路右側部分にはみ出して通行することが認められているのである。そして、原審検証調書、原審第三回公判調書中の証人の供述部分によると、被害者の進行した東西道路の左側(南側)部分の幅員は約3.35mであり、道路は直線で前方の見とおしはよく、同人が追い越しを開始した当時、反対方向から進行して来る車両もなく、反対方向からの交通を妨げるおそれもなかつたことが認められ、しかも東西道路は優先道路であつて、被害車のように右道路を西進する車両にとつては、本件交差点は追い越し禁止の場所にはあたらない(道路交通法30条3号)のであるから、被害者が追い越しのため、前記横断歩道の西側側端以西において、東西道路の右側部分を進行したことは違法とはいえない。ところで、同人が制限速度30キロメートル毎時を約10キロメートル越えた時速約40キロメートルで進行したことは前記説示のとおりであり、同人に速度違反があることは明らかである。しかし、その違反速度の程度はわずかに約10キロメートルにすぎないのであるから、被害車の右程度の速度違反をもつて、東西道路の北側部分を進行して来る車両はないと判断する資料となし得ないことは明らかである。

そこで、以上説示のような状況のもとにおいて、本件交差点で南北道路から左折して東西道路を東進する場合、左方道路から進行して来る車両のあることを予見できるかどうかについて検討するに、被害車のように東西道路を西進する車両は、前記横断歩道及びその東側側端から東方30m以内の部分においては追い越しのために進路を変更し、又は右30mの部分で追い越しのため道路右側部分にはみ出して通行することが禁止されていることは前記説示のとおりであるが、右横断歩道の西側側端から以西においては追い越し禁止が解除され、しかも追い越しのため道路右側部分にはみ出して進行することができるのみならず、追い越し禁止が解除されるとその直後において追い越しを開始する車両があることは容易に考えられるところであるから、本件交差点において、被告人のように左折しようとする場合、左方道路から追い越しのため中央線を越えて西進して来る車両のあることは当然予見できるところである。このことは、本件交差点で左折東進するとすれば、昼間は一時停出して左方及び右方の各道路の交通の安全を確認した後でなければ左折できないとする原審証人の供述(第二回公判調書中の同証人の供述部分)によつても十分裏付けられるのである。したがつて、被告人は、交通整理が行なわれておらず、かつ、左右の見とおしがきかない本件交差点に進入するに当つては、一時停止又は徐行して左右道路の交通の安全を確認したうえ進行すべき業務上の注意義務があつたというべきである。しかるに、被告人は、右本件交差点を、南北道路から優先道路である東西道路に左折進入するに当つて、一時停止をすることなく、しかも時速約15キロメートルの速度のまま、右方道路の交通の安全を確かめただけで、左方道路の交通の安全を確認しないまま交差点に進入したため、左方道路から中央線を越えて進行して来た被害車と衝突し、その結果被害者が公訴事実記載のとおりの傷害を被つたのであるから、被告人に右注意義務違反があることは明らかである。

 

高松高裁 昭和49年10月23日

この場合、見通しが悪い交差点の徐行義務(42条1号)と左折時の徐行義務(34条1項)、優先道路の進行妨害禁止(36条2項)などがありますが、時速15キロは徐行とは言えず、時速5キロ程度なら事故を回避できたとして有罪に。

 

まあ、横断歩道で追い越し(違法)をしている被害者に同情の余地がない気がしますが、被告人の徐行義務違反がなければ余裕で回避できたとして有罪。
今の時代にも起訴するかはビミョーですが、何かを怠って事故が起きれば有罪になるリスクがあります。

 

そもそも、刑事事件の意味を混同している人も多い気がしますが、「どっちが悪いか?」を決めるのではなく、被告人の過失と被害者の死傷に因果関係があるか?の問題。

結果論の話をしない

見通しが悪い交差点での事故映像が出てきたときに結果論で考えるか、見通しが悪い前提で双方の義務を考えるかではだいぶ開きがあって、結果論で考える人って事故の防止には役立たない。

 

まあ、時々おかしな判例があることは否定しません。
ちなみに左方優先については本来、「左側通行だから」左方優先にしているわけなので、逆走してきた車両が優先権を主張できる立場にはないと思いますが、それと左折時に徐行&安全確認する義務は別問題なのよ。

 


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