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愛媛県自転車条例と、側方間隔の保持。

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こちらの続きになります。

 

自転車を追い越し・追い抜きする際の「側方間隔案」、大失敗に終わる予感。
既に警察庁の有識者会議の内容は書いてますが、 有識者会議の内容には書いてない内容が報道されています。 追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける...

 

これが報道されてから「側方間隔1.5m空けてないと違反で罰則になる」みたいな意見を見かけますが、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

いったいどういう読み方をするとそう読めるのか不思議です。
むしろ逆で、十分な側方間隔がないときは減速すれば通過できることを容認しているようにしか見えませんが、有識者会議の中間報告をみると愛媛県自転車条例をベースに「具体的数値は法令では規定しない」ものを作るのだと。

 

愛媛県自転車条例を確認してみましょう。

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愛媛県自転車条例と疑問点

愛媛県自転車条例は罰則がない努力義務ですが、このように定めています。

(自動車等運転者の責務)
第6条 自動車等の運転者は、自転車が車両であることを認識し、歩行者、自転車及び自動車等が共に道路を安全に通行することができるように配慮するよう努めなければならない。
2 自動車等の運転者は、自転車の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行するよう努めなければならない。
・これとの間に安全な間隔を保ち
「又は」
・徐行

ずっと勘違いしていたのですが、愛媛県自転車条例の条文上は具体的な数値を示していない。

Q5 「条例」では、自転車との安全な間隔を具体的に“1.5 メートル以上”と規定しているのですか。

A5
いいえ。「条例」においても“安全な間隔を保ち、又は徐行するよう努めなければならない”(第6条第2項)と規定するに止まっており、“1.5 メートル以上”等と具体的な数値を示していません。
なお、国外では、法令で具体的に“1.5 メートル以上”等と規定している国や地域もあります。

https://www.pref.ehime.jp/h15300/1-5m/documents/15qa2807.pdf

有識者会議の中でこのような意見が出ています。

○ 愛媛県等で実施されている「思いやり 1.5m 運動」は全国にも広げていくべきと考えているが、自動車と自転車との間に 1.5m の間隔を確保することができない場合には徐行する、としている点については検討が必要である。自動車に徐行させるとなると、自動車は自転車を追い抜くことができない。

https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf

時速15キロで通行する自転車を後続車が「徐行」(10キロ以下)で追い抜きできるはずがないのは物理的に当たり前で、後続車のほうが遅ければどんどん後ろに下がっていくだけ。
当たり前のツッコミが入ってますが、そりゃそうだとしか言いようがない。

 

なお、有識者会議で「側方間隔」に関わる部分を抜粋すると、この程度しかない。

(2) 車道を通行する自転車の保護に資する取組

愛媛県においては、「シェア・ザ・ロード」の精神を基本理念とする条例「愛媛県自転車の安全な利用の促進に関する条例」を平成 25 年に制定しており、同条例においては「自動車等の運転者は、自転車の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行するよう努めなければならない。」と規定している。加えて、自転車の保護に係る取組をより一層強化するべく、条例に規定する「安全な間隔」を具体的に示すことで条例の基本理念の実践を促すことを目的とした、「思いやり 1.5m 運動」を平成 27 年から実施している(参考資料 10)。

(4) 現状の取組における課題
警察庁が令和5年に実施したアンケート調査結果によれば、自転車の運転中に自動車と接触したり、接触しそうになったりした経験がある者が全体の 36%を占めており、自動車と接触したことがある自転車の運転者に限っては、その4割以上が隣を通行する自動車に横から距離を詰められた経験をしているという結果が得られている(参考資料 11)。この結果を踏まえると、一部の地方自治体で実施されている車道を通行する自転車の保護に資する取組については、国としても推進していくことが必要であると考えられる。

 

2 有識者検討会において委員から出された主な意見

本有識者検討会において、警察における自転車通行空間の確保に向けた取組の現状やアンケート調査の結果を踏まえ、自転車が通行しやすい交通規制の在り方について議論を行ったところ、各委員から次のような意見があった。

○ 自転車にこどもを乗せて車道を通行している際に、自動車から幅寄せをされることがあり、そのような状況下では安心して車道を通行することができな
い。自転車が安全に車道を通行することができるよう、自動車の運転者に配慮を求めることも必要ではないか。

○ 愛媛県等で実施されている「思いやり 1.5m 運動」は全国にも広げていくべきと考えているが、自動車と自転車との間に 1.5m の間隔を確保することができない場合には徐行する、としている点については検討が必要である。自動車に徐行させるとなると、自動車は自転車を追い抜くことができない。

○ 「思いやり 1.5m 運動」については、道路が狭く、自動車と自転車との間に1.5m の間隔を確保することができないことから、導入をためらっている自治体もある。また、「シェア・ザ・ロード」という表現についても、その趣旨が全ての方に正しく伝わるとも限らない。このような取組を広く浸透させていくためには、1.5m という距離にこだわるよりも、「自転車の横を通過するときはしっかりと間隔を空けて、お互いが気持ちよく使えるように」といった単純明快なメッセージでアピールをしていただきたい。

 

3 自転車が通行しやすい交通規制の今後の方向性 ~自転車が安全・安心に通行できる環境の整備~

本有識者検討会において議論した結果、それぞれの内容について次の方向性が取りまとめられた。

(1) 車道を通行する自転車の保護
自転車の車道通行を徹底するためには、前提として自転車が安全に車道を通行することができる環境を創出することが必要であり、そのためには、車道を通行する自転車の保護に資する取組を全国規模で推進していくことが適当である。具体的には、愛媛県等の取組事例も参考にしつつ、「全ての交通主体がお互いに思いやり、共に道路を安全・快適に利用する」という理念を国民に浸透させるためのキャンペーンを展開していくほか、車道を通行する自転車の保護に関する法制上の措置を講ずることが考えられる。

 

https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf

愛媛県自転車条例をベースに考えつつ、「徐行で追い抜きできるわけもない」という当たり前の話を直したのが報道された内容だと思われますが、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

素直に読めばこうなる。

・改正道路交通法では「十分な間隔」又は「安全な速度」と規定するものと考えられる(報道内容と愛媛県条例をベースに考えると)。
・「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定しない。
・「十分な間隔」の目安は1~1・5メートルとする予定。
・「安全な速度」の目安は、時速20キロで通行する自転車を想定した場合に、自転車よりも5~10キロ上回る速度とする予定。

十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」なので、改正道路交通法では十分な側方間隔を保てなくても、自転車の速度+5~10キロであれば通過してもよいとするわけで、例えばこのようなイメージですよね。

報道内容からすれば、これらが「合法」なんだと裏付けることになる。
時速20キロで通行中に時速30キロで通過って、自転車の立場からするとまあまあ速く感じると思うのですが、「十分な間隔がないとき」にこれを問題としないわけですよね。
大丈夫か?

 

ただしあくまでも道路交通法上の義務違反が成立するかしないかの問題でしかなくて、事故が起きた場合の過失運転致死傷罪の注意義務違反は別問題になるとは思いますが。

 

条文が発表されてない中で語るのも気が引けますが、報道内容からすれば最低側方間隔を定めたわけではなく、むしろ至近距離の側方通過であっても自転車の速度に合わせて減速すればOK…という大変まずいルールになりそうですが、

いろんな人
いろんな人
側方間隔1.5m空けてないと違反で罰則になる!

全く違う意味に捉えた方々がおかしな解釈からトラブルを起こすだけなんじゃないかと心配になる。

 

大丈夫なのだろうか?
実際のところ、違う報道では「間隔に応じた安全な速度」と表現していますが、要は側方間隔を義務付けしたというよりも至近距離の高速度通過を禁止したに留まり、「至近距離の速度差が少ない通過」は認容しているようにしか見えませんが…

車が自転車を追い抜く際に「間隔に応じた安全な速度」で進行するよう義務づける規定は、車と自転車双方に意識と行動の変化を促す狙いだ。

自転車追い抜き、車に「安全速度」義務化の理由 青切符導入の法改正:朝日新聞デジタル
自転車の安全確保に向け、警察庁は、自転車の交通違反で青切符を受けて反則金を納めれば刑事罰を科されない制度の導入など、道路交通法の改正原案をまとめた。中でも、車が自転車を追い抜く際に「間隔に応じた安全…

「追い越し、追い抜きを差し控える注意義務」

以前も少し書いてますが、業務上過失致死傷判例の中では「追い越し、追い抜きを差し控えるべき注意義務違反」として有罪にしたものがいくつかあり、具体的に挙げると以下が該当します。

 

・最高裁判所第一小法廷 昭和60年4月30日
・大阪高裁 昭和43年4月26日
・東京高裁 昭和44年4月28日
・福岡高裁 昭和30年3月2日

判例 後続車の速度、側方間隔 具体的内容
最決S60.4.30 60~70センチ、時速5キロ 自転車(老人)は有蓋側溝上に避譲。左側に民間のブロック塀、右側を大型車で圧迫。約20m先は道が広くなる。
大阪高判S43.4.26 片側3mの狭い橋で自転車を追い抜き中に、対向車が迫ってきて進路を左に変え自転車と接触
東京高判S44.4.28 至近距離通過
福岡高判S30.3.2

逆に「追い越しを差し控えるべき注意義務違反」を認めなかった判例は下記。
側方間隔50センチ、時速10キロの追い越しは無罪という判例。

前方約12mの道路上を自転車に乗車して進行中の被害者の姿を認めるや時速を約10キロに減じ警笛を数回吹鳴したところ、同人が道路左側から約0.45m中央寄りに避譲しそのまま異状なく進行を継続したので、自己の進路をも可及的に左側に寄せた上これを追越そうとしたものであること、その際における被告人の運転する貨物自動車と鍬の柄との間隔は約50センチで、道路左側との間にはなお少くとも約1.64mの幅員があり、通常自転車に乗車した者が進行するには十分であったこと、被告人において自転車の後方からそのハンドル上の鍬の柄の長さや荷台の積荷の重量を測定することは極めて困難な状況であったこと、本件事故発生直後ほぼそのままの位置に停車していた被告人の貨物自動車の左側を自動三輪車が難なく通過した事実があり、現に右鍬の柄が上述のように貨物自動車が進行し得たものであること、被告人の目撃し得た範囲においては被害者はふらついている様子もなく且つ進路上に何等の障害もなかったこと、前記鍬の柄が貨物自動車の車体後部左側底部に接触して被害者が転倒に至ったのは被告人操縦の貨物自動車のせいではなくその予想に反し被害者が自らよろめいたことの特別事情に因るものであったことがそれぞれ認められる。

 

広島高裁 昭和32年1月16日

広島高裁 昭和32年1月16日判決については、最高裁判所第一小法廷 昭和60年4月30日の「上告理由:判例違反」として被告人が挙げたものですが、最高裁は「事案を異にする」として広島高裁判例を否定したわけではない。

 

「追い越し、追い抜きを差し控えるべき注意義務違反」を認めた判例ってそんなには多くないのですが、要は報道された内容は「きちんと側方間隔を開けるか、又は十分な間隔がないときは減速すればOK」という従来の判例を踏襲しただけなんじゃないかと心配になります。
「追い越し、追い抜きを差し控えるべき注意義務違反」を認定した判例って、基本的には「もう少し先に行けば道が広くなるだろ!」みたいな内容が多いですし…

 

しかし、「法令では具体的な数値を規定しない」「十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」、これらが示すものは結局「側方間隔を必ずしも義務付けせず、減速すれば通過可能」としか読み取れませんが、

追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。

「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。

 

自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル
警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…

有識者会議と報道を見る限り、結局は最低側方間隔を定めていないものと思われますが、だいぶ心配になる内容に思えてなりません。

 

そして側方間隔1.5mを義務付けしたとは読み取れませんが…いろいろ不思議です。
現状の報道内容と有識者会議の中身からすれば、「減速すれば至近距離通過が可能」となる可能性が高く、最低側方間隔を定めたものには見えませんが…これを喜んでいる人たちは何を見ているのだろうか。


コメント

  1. 遊月 より:

    これなら自転車の追い越し時のみ、対向車がいない時に限りイエローのセンターラインを超えてもOKにしたほうがまだ良かった気が…

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      実際には条文を見ないとわかりませんが、今のところは減速したなら至近距離通過を容認しているようにしか見えません…
      なぜこれに喜びの声を挙げる人がいるのかも理解し難いところです。

      • 遊月 より:

        横風でハンドル取られたり路面状況悪くてバランス崩したら終わりですよね…
        ここまで議論進んでるとやっぱりナシは無さそうで事故多発しそうで怖いです

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          結局「法令では具体的数値は書かない」なので、良くも悪くも今と変わらない気もしますし、受け取り方次第ではむしろ悪化です。
          しかしなぜかネット上では「1.5mが義務になった」と捉えている人もいますし、重大なトラブルになりそうな予感。

  2. 元MTB乗り より:

    ふと思いましたが、有識者の頭の中、自転車の速度を15km/hのママチャリ程度の認識ではないですかね。そうすると、追い抜く車の速度は20-25km/hとなるので、まぁまぁゆっくりしているように見えるので、大丈夫ではという判断しているのではという気がしてきました。そうであれば、至近距離の追い越しは、上限速達も定めてほしいですね。
    あと、これ、自転車側が減速したら、それに応じて車も減速してくるれるんですよね、と斜め読みして、並走に入られる前に減速して相対速度オーバーで訴えるというのアリですかね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      自転車の速度は20キロ想定になってますね。

      >自転車側が減速したら、それに応じて車も減速してくるれるんですよね、と斜め読みして、並走に入られる前に減速して相対速度オーバーで訴えるというのアリですかね。

      これはさすがに理不尽ですよ笑。
      刑法なのでそういう場合には違反が成立しません。
      けどこの報道内容、かなりヤバイ内容にしか思えなくて、なぜ喜んでいる人がいるのかさっぱりわかりません。

      • 元MTB乗り より:

        20km/h想定でしたか。30km/hなら、ゾーン30とかありますから、そこまで危険じゃないと言う判断ですかね。とは言え、至近距離での追い抜き速度の上限は設定して欲しい所ですね。
        後半部は、ある意味冗談の所もあるので、あまり真に受けないでいただけると(笑。速度出ている時に至近距離の追い抜きされるとたまったものではない、という思いから溢れた戯言でした。

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          とりあえず現状では詳細がわからないので様子見するしかありませんね。
          後半が冗談なのはわかってます笑

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