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北九州、横断歩行者(小学生)事故と問題点。

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昨年11月になりますが、このような事故がありました。

 

「以前から危ないと思っていた」 男の子がはねられた”抜け道下り坂“の道路 対策求める切実な声 | TBS NEWS DIG (1ページ)
福岡県北九州市で16日、小学5年の男の子が軽乗用車にはねられ、意識不明の重体となっている事故についてです。事故が起きた道路は、近隣住民が以前から危険を感じていた場所で、対策を求める切実な声があがって… (1ページ)

 

この事故について、小倉簡裁は過失運転致死罪として罰金50万の略式命令を出したと。

去年11月、福岡県北九州市八幡西区で、道路を歩いて渡っていた小学5年の男の子を乗用車ではね、死亡させた派遣社員の女(26)について、小倉簡易裁判所は罰金50万円の略式命令を出した。検察は先月21日、女を過失運転致死の罪で略式起訴していた。起訴状によると、女は男の子が横断を開始することを予見できたにも関わらず、安全を確認しつつ進行するべき注意義務を怠り、時速およそ37キロメートルで進行。9メートル手前で急ブレーキをかけたものの男児を転倒させ轢いたとされる。

 

登校中の小5男児死亡事故、過失運転致死罪で起訴の女(26)に罰金50万円の略式命令(RKB毎日放送) - Yahoo!ニュース
去年11月、福岡県北九州市八幡西区で、道路を歩いて渡っていた小学5年の男の子を乗用車ではね、死亡させた派遣社員の女(26)について、小倉簡易裁判所は罰金50万円の略式命令を出した。検察は先月21日、

この事故について、報道に疑問が残る点がありまして。

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なぜ「義務」を取り上げないのか?

事故現場はこちらの交差点になります。

歩道が左側にあり下り坂、右に凸のT字路になります。
指定最高速度は30キロ。

 

この場合「時速37キロで進行」というのは7キロオーバー…というわけではなくて、この交差点は見通しが効かない交差点、かつ信号がなく優先道路の設定がないので徐行義務になるわけ。

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

優先道路とは交差点内にセンターラインがある場合を意味しますが、この交差点にはセンターラインがありません。

(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条
2 優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう以下同じ。)

事故後の映像をみても、交差点を通過する車両が徐行している様子はない。
徐行とは概ね10キロ以下を意味しますが、時速37キロということはだいぶ速度が速すぎることになる。

 

なお、42条でいう「左右の見とおし」とは、左右いずれかの見とおしが悪いだけで成立します。

この見とおしは、もとより左右いずれか一方がきかないもので足りる。

 

名古屋高裁 昭和44年2月6日

以前も書いてますが、見通しが効かない交差点で徐行義務を課す理由の一つとして、「歩行者」の存在を最高裁も認めています。

本件のように、あまり広くない道路で、しかも交差点の見とおしのきかない場合には、歩行者の安全も考慮しなければならないことは、原判決も説示するとおりであり、このことも前記解釈の根拠となり得るであろう。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日

同法第42条は左右の見とおしのきかない交差点に進入する車両に対し総べての通行者との間の危険防止を目的として制定されたものであり、同法第35条第36条のように歩行者を除いた車両相互間の関係のみを規制したものではないのである。従つて、右法意に照らすと、たとえ、交差する車両に対しては優先する場合であつても、そのために同法第42条の一般徐行義務が解除されるものではなく、又同法第43条も公安委員会が特に必要があると認めて指定する交差点において、車両等に対して一時停止義務を課し(通行人にはその効力は及ばない)、これと交差する道路の車両等に優先通行を認めたに過ぎず、そのために優先車両に対し同法第42条の徐行義務までも解除したものとは解し難い。

 

東京高裁 昭和41年11月22日

「交差道路に一時停止規制がある場合には、法43条の徐行義務がないと解釈すべきだ!」という主張は昭和40年頃の判例でやたら見かけるのですが、最高裁は一蹴。
ただし最高裁が出した判決を受けて徐行義務の除外事由が見直され、昭和46年改正時に「優先道路の場合」も徐行義務がないことになっています(それ以前は信号がなく見通しが効かない交差点には全て徐行義務がありました)。

 

なぜ?優先道路を進行中なら見通しが悪い交差点でも徐行義務がない理由。
読者様から質問を頂きました。 だいぶマニアックな話ですね。 見通しが悪い交差点での徐行義務 左右の見通しが悪い交差点では徐行義務がありますが、42条1号では交通整理と優先道路の場合が除外されています。 (徐行すべき場所) 第四十二条 車両等...

 

で。
理屈の上からすれば、徐行義務を果たしていれば事故は起きなかった、もしくは軽症で済んだ可能性が残ります。
徐行していても直前横断ならさすがに100%事故を防げないにしろ、時速37キロと時速10キロ以下でダメージが違うのは当然。

 

しかし見通しが悪い交差点の徐行義務なんてだいぶ軽視されているのが実情。

 

この事故、被害者遺族の方が以前から「X」で発信しているのですが、加害者は任意保険未加入、謝罪もなし。
それを罰金50万の略式ではなかなか納得いかないのではないでしょうか。

 

徐行義務がある場所においてそれを取り上げず、せいぜい「かもしれない運転をしましょう!」程度になる。
推奨事項ではなく義務ですけどね…

 

「徐行義務があった」と書くメディアはまずいませんが、そもそもこの交差点を通過する車両のうちどれくらいの人が「徐行義務」(法42条1号)があることを認識しているかすら疑わしいわけで、徐行義務があったことを報道しないと同じことの繰り返しになる気がします。

任意保険未加入…

被害者遺族の方の発信によると、加害車両は被害者を下敷きにした後、5分放置したとあります。
被害者遺族の方の発信によると、被害者は飛び出したような形になっているものの、十分止まれる距離があったのだと。

 

だから起訴状の内容が「徐行義務を怠った過失」ではなく、前方注視義務をベースにしているのでしょうか。

去年11月、福岡県北九州市八幡西区で、道路を歩いて渡っていた小学5年の男の子を乗用車ではね、死亡させた派遣社員の女(26)について、小倉簡易裁判所は罰金50万円の略式命令を出した。検察は先月21日、女を過失運転致死の罪で略式起訴していた。起訴状によると、女は男の子が横断を開始することを予見できたにも関わらず、安全を確認しつつ進行するべき注意義務を怠り、時速およそ37キロメートルで進行。9メートル手前で急ブレーキをかけたものの男児を転倒させ轢いたとされる。

 

登校中の小5男児死亡事故、過失運転致死罪で起訴の女(26)に罰金50万円の略式命令(RKB毎日放送) - Yahoo!ニュース
去年11月、福岡県北九州市八幡西区で、道路を歩いて渡っていた小学5年の男の子を乗用車ではね、死亡させた派遣社員の女(26)について、小倉簡易裁判所は罰金50万円の略式命令を出した。検察は先月21日、

刑事責任は罰金50万、民事責任は任意保険未加入…
謝罪も無し。

 

なんか切なすぎて話になりませんね。

 

ところで見とおしが悪い交差点での徐行義務が遵守されるようにするには、どうするのがベターなのでしょうか?
結構不思議なのは、最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日判決って事故判例ではなく道路交通法違反の判例でして、昭和40年頃って徐行義務違反も取締りしていたわけ。
今は…全く聞きませんよね。

 

昭和の時代って「今の時代なら間違いなく取締りしてない」みたいな判例がいくつもありますが、以前から危ない道というイメージがあっても、具体的に事故が起きない限りは警察も動かないのが実情。

事故が起きた場所は中央線のない道路で、小学校の通学路となっています。警察によりますと、過去5年間に付近で事故は起きていないということですが、近所の人に聞いてみると以前から「危ない道」というイメージがあったといいます

 

「以前から危ないと思っていた」 男の子がはねられた”抜け道下り坂“の道路 対策求める切実な声 - RKBオンライン
事故の翌日 現場の道路は RKB 浅上旺太郎記者「事故があった時刻と同じ時間の平日の朝です。坂を降りてこようとする車とのぼろうとする車がすれ違う場所となっていて、交通量は多く感じます」 近くの人は「危

「徐行義務がある交差点ですよ」とアナウンスしない限り、徐行義務があることすら気がついていない人が多いままなんじゃなかろうか?

 

なぜ?見通しが悪い交差点で徐行義務がある理由。
一時停止って大切ですよね。 そもそも、一時停止とは「止まる」だけが義務ではない。 一時停止の意味 一時停止って「止まったか」だけの問題ではなくて、交差道路の進行妨害もしちゃいけないので、 (指定場所における一時停止) 第四十三条 車両等は、...

 

横断歩道がない交差点での歩行者優先義務(38条の2)って、ある意味では徐行義務があることを前提にしているのではないかと思うのよね。

(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。

見とおしが悪い交差点なら徐行義務があるから、歩行者が横断しても事故になりにくいみたいな。
もちろん見とおしがいい交差点なら歩行者が横断しようと接近しているのが見えるわけだし(予見可能)。

コメント

  1. 山中和彦 より:

    これは、事故の発表の際に警察が出す資料に、「徐行義務があった」と書かれてないから、マスコミも書かないのだと思います。資料に書かれてないことを書き加えて、間違っていたら困る。ということなんだと思います。更に裏取りのために時間を使って、「徐行義務がありました」とかく、ちゃんとした記者は少ないでしょう。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      事故直後の報道ならそれでもいいのですが、だいぶ経ってからの検証としては載せて欲しかったところです。

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