先日、自転車が歩行者に衝突した事故について、報道では書いてないものの「自転車の赤信号無視なのでは?」と書きましたが、
やはり普通に赤信号無視の模様。
小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀県警は19日、重過失致死の疑いで警視を書類送検した。警視は同日付で本部長訓戒を受け、依願退職した。
県警によると、事故では警視が進行方向の赤信号に気付かずに自転車で県道の路側帯を走行し、横断歩道を歩いていた70代男性に衝突した。男性は搬送後に入院し、昨年12月中旬に死亡した。警視は「前をよく見ていなかった」と供述していて、県警は前方の確認不足という重大な過失があったと判断した。
自転車死亡事故、警視を書類送検 佐賀県警、重過失致死容疑で(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀県警は19日、重過失致死の疑いで警視を書類送検した。警視は同日付で本部長訓戒を受け、依願退職した
まず、事故当時の報道(2023年10月)から。
佐賀県警は26日、県警本部に勤務する50代の男性警視が自転車で通勤中、小城市で歩行者の70代男性に衝突する事故が起きたと発表した。70代男性は転倒して頭の骨折やくも膜下出血などの重傷を負った。事故の詳しい状況や原因を調べている。
県警交通企画課によると、警視は刑事部に所属。25日午前7時40分ごろ、小城市三日月町金田の県道で路側帯をスポーツ自転車のクロスバイクで走行中、前方にいた男性に衝突した。現場は片側1車線で、近くには横断歩道があった。警視が110番し、男性は佐賀市内の病院に搬送された。26日に病院から検査結果の報告を受け、命に別条はないが、うまく会話ができない状態という。
警視はけがはなく、当時ヘルメットを着用していた。「朝日がまぶしくて前が見えなかった」と話しているという。
佐賀県警の警視、自転車で通勤中に歩行者と事故 小城市、70代男性が重傷(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース佐賀県警は26日、県警本部に勤務する50代の男性警視が自転車で通勤中、小城市で歩行者の70代男性に衝突する事故が起きたと発表した。70代男性は転倒して頭の骨折やくも膜下出血などの重傷を負った。事故
昨年事故当時の報道内容からすると、朝日がまぶしくて「歩行者を」見えなかった事故なのかなと思ってました。
そして先日報道された内容。
佐賀県警の50代の男性警視が、去年10月、自転車で出勤中に歩行者の男性をはね、その後死亡させた事故で、警察は男性警視を重過失致死の疑いで19日、書類送検しました。
警視は19日付けで辞職しています。
重過失致死の疑いで書類送検されたのは、佐賀県警の刑事部に所属する50代の男性警視です。
警察によりますと男性警視は去年10月、佐賀県小城市三日月町の県道を自転車で通勤中、前方確認が不十分なまま、横断歩道を歩いて渡っていた70代の男性をはね、死亡させた疑いがもたれています。
事故当時、押しボタン式の歩行者側の横断歩道は青だったとみられています。
佐賀県警警視“重過失致死”送検 自転車ではねる(九州朝日放送) - Yahoo!ニュース佐賀県警の50代の男性警視が、去年10月、自転車で出勤中に歩行者の男性をはね、その後死亡させた事故で、警察は男性警視を重過失致死の疑いで19日、書類送検しました。 警視は19日付けで辞職しています
前方不注視のまま横断歩行者に衝突し、しかも横断歩道が青信号、かつ昨年の事故当時の報道を組み合わせたら「自転車の信号無視」なんじゃないの??と思ってました。
そして結局、元警視が運転した自転車が赤信号無視して横断歩行者に衝突したのだと…
県警によると、事故では警視が進行方向の赤信号に気付かずに自転車で県道の路側帯を走行し、横断歩道を歩いていた70代男性に衝突した。
自転車死亡事故、警視を書類送検 佐賀県警、重過失致死容疑で(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀県警は19日、重過失致死の疑いで警視を書類送検した。警視は同日付で本部長訓戒を受け、依願退職した
確かに信号無視は故意ではなく過失扱いになるとはいえ、「信号無視して横断歩行者に衝突」であることには変わりない。
なぜにビミョーに濁した報道になるのか意味がわからない。
今回の事故って警視が起こした事故だから改めて発表がありましたが、交通事故報道って初期報道と実態がだいぶ乖離していることが度々見られます。
昨年の報道だと前方不注視で歩行者を見逃したのかと思われましたが、実態は前方不注視で信号も歩行者も見逃した事故の模様。
ちなみにこちらで理由を説明した通り、路側帯を通行する自転車も車道の信号に従う義務があります。
○交差点の場合
路側帯は「交差点」に含まれ(法2条1項5号)、車道の赤信号は「交差点を越えた進行」を禁止している(令2条1項備考1)。
○交差点ではない横断歩道の場合
車道の赤信号は「横断歩道の直前」で停止するように定めている(令2条1項備考2)。
路側帯のところまで横断歩道の標示があるのが普通なので、路側帯を通行する自転車も赤信号に従う義務があります。
重過失致死容疑とのことですが、そもそも路側帯の扱いを間違って報道しているケースもあります。
1:18あたりから。
おもいっきり間違った解説をしてますが、路側帯通行自転車は車道の信号に従う義務があることは条文上明確なのよね。
路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点という
東京高裁 昭和60年3月18日
動画の場合、路側帯通行自転車の停止位置は「横断歩道の直前」、「交差点の直前」になります。
信号の種類 | 信号の意味 |
赤色の灯火 | 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。 |
備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
二 交差点以外の場所で横断歩道等又は踏切がある場所にあつては、横断歩道等又は踏切の直前
歩道と路側帯ではだいぶ意味が変わりますが、メディアが豪快に間違う程度に知られていない。
今回は「警視」とのことですし、「まぶしかったです」と言われても何の言い訳にもならないし、警視が信号規定を理解してないならだいぶ問題ですが、もっと不思議なのは報道。
「信号無視して横断歩行者に衝突した」
と
「前方不注視のまま横断歩行者に衝突した」
ではなんか違うイメージになりますが、前方不注視のために信号無視したのだから同じという話なのだろうか?
これらを総合すると
「前方不注視により赤信号を見落とし、しかも横断歩行者も見逃したために衝突した」というほうがより正確なんじゃないかと思いますが、もっとややこしいのは路側帯通行自転車が車道の赤信号に従うというルールが知られていないこと。
自転車のルールが難解とは言え、このあたりを細かく警察庁でまとめて図示してくれないかな。
なお、重過失致死罪の「重過失」とはこういう意味です。
刑法209条、210条が通常の過失により死傷の結果を発生させた場合の規定であるのに対し、同法211条後段は重大な過失により右と同じ死傷の結果を発生させた場合に前2条に比し刑を加重する規定であり、右にいう重大な過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠つて結果を発生させた場合をいい、その要件として、発生した結果が重大であることあるいは結果の発生すべき可能性が大であつたことは必ずしも必要としないと解するのが相当である。
東京高裁 昭和57年8月10日
起こした結果が重大かどうかではなく、注意義務違反が著しい場合が重過失。
県警幹部が自転車に乗って信号無視し、しかも横断歩行者に衝突したという事故ですが、そのまま報道したら炎上必須みたいな事故。
誰であろうとダメなものはダメなんだし、ビシッと報道すべきなんじゃないかな。
そして路側帯通行自転車と信号の関係を間違っている内容が多いし、警察庁が実例に合わせて解説すべきかと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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