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優先道路と自転車横断帯の話。

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まあまあどうでもいい話ですが、みんな大好き過失割合の話。

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優先道路と自転車横断帯

以前このような事故の場合、あくまでも優先道路対非優先道路の過失割合(50:50)をベースにし、自転車が横断歩道を通行した分として「-5%」すると書きました。

クルマ 自転車
基本過失割合 50 50
自転車の横断歩道通行 +5 -5
55 45

これがもし自転車横断帯だった場合どうなるのか?という話。
これなんですが、横断歩道通行は「-5%」なのに対し、自転車横断帯通行は「-10%」なのよ。

クルマ 緑自転車
基本過失割合 50 50
自転車横断帯通行 +10 -10
60 40

ただし若干疑問なのは、優先道路に交差する形で自転車横断帯が設けられた交差点って見たことがないという…

優先道路=交差点内にセンターライン又は車両通行帯がある道路

どこかにあるのかな?

 

これが広路車狭路車関係(優先道路無し)だとこうなる。

 

クルマ 緑自転車
基本過失割合 70 30
自転車横断帯通行 +10 -10
80 20

類型上はこのように、あくまでも交差点の過失割合をベースにし、横断歩道通行は「-5%」、自転車横断帯通行は「-10%」にする。
なので左折巻き込み的なタイプとは全く違う過失割合になります。

左折巻き込み的な横断歩道事故の場合、自転車過失は5~10%。
同じく左折巻き込みタイプで自転車横断帯がある場合だと0~5%程度。

 

「横断歩道上で事故に遭った」というケースで、事故の態様によって過失割合が全然違う理由は、そもそも類型になる事故態様が違うからです。

 

先日の件で弁護士さんが、基本過失割合は70:30と説明していた理由も、あくまでも広路車と狭路車の類型をベースにしたからだと思われます。

ところで、過失割合はそもそも「どっちが悪いか」を表す指標にはならないです。
「平等に」ではなく「公平に」責任を分配するのが過失相殺なので(民法722)。

 

ついでにいくつか質問を頂いたのでお答えしますが、自転車が罪に問われたりするのか?について。
一応理屈の上では、クルマの運転者が急ブレーキを掛けた際に負傷したなら自転車が過失傷害罪になる可能性はありますが、過失傷害罪は親告罪なので刑事告訴がないと警察も動きませんし、ちょっとぶつけた、足を捻った程度ならそもそも相手にされないかと。
重過失致傷に問えるかはやや謎ですが、自転車がノールック横断して起こした事故について、重過失致死罪を適用して有罪(執行猶予なし)にした判例もあります(大阪地裁 平成23年11月28日)。

 

クルマの運転者が罪に問われるかについては、過失運転致傷罪に問われる可能性はありますが、ケガの程度によります。
過失運転致死傷罪はこのようになっているので

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

たまにあるのですが、軽症事案を起訴しても「有罪だけど刑を免除する」という判決になる。
わざわざそういうものを起訴しないのが通常。

 

ただし若干疑問なのは、仮にクルマが徐行(10キロ以下)だったとして、自転車が横断開始した時点で回避可能なんすかね?
あくまでも刑事責任としてこの事故を考える場合、自転車が横断開始した時点での自転車とクルマの距離をベースに、その距離で徐行だった場合の回避可能性を争うことになる。

 

そうすると刑事責任としては難しいような気もしますが。

なかなか不思議な世界

クルマは減速する、自転車は横断前に確認することがそれぞれの義務ですが、一方に責任を求めたがる人が多いんですかね。

ちなみにこの事故については優先道路がないので自転車過失が相対的に小さくなりますが、仮にセンターラインがあって優先道路の設定があれば自転車の過失が大きくなります。

 

双方ともに義務違反、過失がある事故について一方に責任を求めたがる心理はさっぱりわかりませんが、後続車も自転車だった場合には横断自転車が加害者になる事案。
単にこの事故だけを見ている人と、全ての可能性から事故を防ごうと考える人の差なんですかね。

 

ついでにちょっと面白いというかヤバい話を読者様から聞いたのですが、「自転車は横断歩道をノールックで横断してもよい」とホンキで信じる人がいるらしい。

 

なんで道路交通法を曲解するのか知りませんが、そのようなデタラメ解釈をホンキで信じる人が普通にいること自体が脅威なのかもしれませんね。
車両が横断する際に安全不確認で横断することは25条の2第1項で禁止されていますが、なぜか以前から認めない人がチラホラいてビックリします。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

 

原告は、自転車に乗って本件横断歩道上を横断するに当たり、左右を確認し、南北道路を通行する車両の有無、動静に注意して横断すべきだった(同法25条の2第1項)にもかかわらず、これを怠り、左方への注意及び安全確認が不十分なまま本件横断歩道上を横断したものであり、過失が認められる。

 

平成21年12月15日 名古屋地裁

「自転車はノールックで横断してもよい」と考える人がいることが最大の脅威なのかもしれませんが、なんで自転車にまつわる道路交通法になるとおかしな解釈をする人が増えるのかよくわかりませんね。

 

ついでに勘違いしている人が多い気がするけど「過失運転致死傷罪」とか「過失致死傷罪」、民事の「過失」って、道路交通法違反のことを指すとは限りません。
むしろ法令上は道路交通法とは無関係。
過失=不注意のことを指しているのに、「それって道路交通法何条ですか?」と言われてもそもそも的外れとしか。

 

道路交通取締法が自動車を操縦する者に対し特定の義務を課しその違反に対して罰則を規定したのは行政的に道路交通の安全を確保せんとする趣旨に出たもので刑法211条に規定する業務上の注意義務とは別個の見地に立脚したものであるから道路交通取締法又は同法に基づく命令に違反した事実がないからといって被告人に過失がないとはいえない。

東京高裁 昭和32年3月26日

一般的にみて、道路交通法所定の義務と業務上過失致死傷罪における業務上の注意義務とは、一応別個に考えなければならない

最高裁判所第一小法廷  昭和48年3月22日

所論は、道路交通法上の義務と自動車運転過失致死罪における注意義務を同一のものと理解している点で相当でない。すなわち、信頼の原則が働くような場合はともかく、前者がないからといって、直ちに後者までないということにはならない。

東京高裁 平成22年5月25日

道路交通法の義務違反と過失運転致死傷罪(過失致死傷罪)の注意義務は別問題。
民事の過失も同じ。

 

ちなみに優先道路を交差する形で設けられた自転車横断帯をご存知の方がいたら教えてください。
今までみてきた判例って、自転車横断帯があっても優先道路に「沿う形」になっていても、優先道路に交差する方向には自転車横断帯がないケースしか見たことがないので。

コメント

  1. マイクロシフト より:

    例えノールック横断が法律的に許されていたとしても、我が身の安全を考えたら左右確認をする、というのが健全な思考かと思いますが、無邪気に信じる人にとってはそうではないのでしょう。
    本当に公道を走るのは怖いもんです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      世の中にはいろんな人がいますが、極論を語る人もいますからね…

  2. upmoon より:

    https://news.yahoo.co.jp/articles/f904b934caed949da9a6b37447658ebfd4c52718

    先日起きた事故です
    丁字路交差点において優先道路を自転車が横断した形になりますが非優先道路がない方から横断したと思われます

    この場合も交差点扱いなんですかね?
    それとも交差点以外での横断?
    というか交差点以外での横断と優先道路を含む交差点での事故の過失割合が違うのが謎すぎるんですよね

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      交差点扱いになると思いますが、事故態様から多少修正して調整するんじゃないですかね。
      交差点とそれ以外を分ける理由は…よくわからない部分もあります。

      • upmoon より:

        交差点は横断自転車以外にも注意を払わざる得ないから、その分直進車両の責任が軽くなるって感じなのですかね

        なんと無く交差点以外の方が責任が軽くなりそうな感じもしますが

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          たぶんですが、交差道路から飛びだしてくる類型を流用しているからやや話がおかしくなるのではないですかね。
          交差道路から飛びだしてくる車両にも注意義務が大きいので。

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