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間違いを起こした「後」の責任。

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交通事故を起こした場合には何らかの過失(不注意)が原因にありますが、事故を起こさないように注意することは当たり前。

 

しかし事故を起こしてしまったなら、きちんと誠意を尽くすしかありません。

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横断歩行者妨害

判例は仙台高裁 平成14年3月25日。
事故の概要ですが、被告人が交差点を右折した際に確認不十分だったため、青信号で横断歩道を通行する歩行者に衝突してしまった事故です。

本件での被告人の過失が,上記のとおり,交差点で右折進行するに当たり,信号に従って横断中であった横断歩行者に対する注意を怠ったというものであり,自動車運転者として求められる基本的な注意義務を怠ったもので,決して軽いものではなく,被害者である横断歩行者は,青色信号に従って横断し,横断歩道の半ば以上まで進んでいたもので,被害者には何ら過失はなく,本件が被告人の一方的過失によるものであることは明らかである。

仙台高裁 平成14年3月25日

しかも時間帯は日曜日の朝7時前という比較的閑散とした時間。
何ら被告人に言い訳の余地がない一方的な過失ですが、通常であれば懲役又は禁固になるところ(執行猶予がつくのはお約束みたいなもんですが)、一審の山形地裁米沢支部が罰金刑を選択。
量刑不当として検察官が控訴した事件です。

 

そもそもなんで禁固刑の求刑なのに罰金刑を選択したかですが、被告人は公務員なので、禁固以上は失職する。
しかし、一審裁判所が独断で「公務員だから」と忖度したわけでもなくて、被害者遺族の希望として「被告人の失職を望んでいない」という事情があります。

 

これはどういった話なのでしょうか?

被告人の本件に対する態度やその反省の状況を見ると,被告人は,衝突後直ちに自車を止めて,携帯電話で110番通報とともに救急車の出動を要請し,救急車の到着するまで被害者の側で声を掛け続け,現場で現行犯逮捕されて翌日釈放されると,妻とともに早速被害者の自宅に赴いて,被害者の母親ら遺族に謝罪し,葬儀に参列して,被害者の亡き姿に接して改めて自己の責任の重さを痛感し,その後は毎日霊前にお参りをし,その他初七日や四十九日の法要にも参列するなどし,香典や弔意の印などで合計140ないし150万円を出費している。そして,被告人は,本件後は精神的動揺もあって,しばらく教壇を離れて自宅謹慎をし,その間真剣に教員を辞職することを考え,一方で,生徒の保護者らが嘆願書を集めるとの話を聞いて,遺族の心の整理がつかないうちに行うことに反対をするなど,被害者遺族に対する慎重な心配りをし,その後,生徒のこともあって,四十九日の法要過ぎに被害者遺族の了解を得て,職場に復帰したが,自らの責任を考え,学年末の平成13年3月末に辞職を申し出たが,周囲の者や生徒の保護者らから慰留されたこともあって教職にとどまり,起訴から原審を経て現在に至っている。このように被告人は,本件を犯した自らの責任を自覚し,被害者及びその遺族に深くわびるとともに,誠意を尽くして謝罪と慰謝に努めているものであり,その態度には十分な責任の自覚と真しな反省が認められるといえる。
被害感情の点を見ると,被害者は,上記のとおり,長年の勤務生活を終えて,b市に戻って住宅を建て,念願であった故郷での生活を実現して一人静かな余生を楽しんでいたところ,突如その生命を奪われたものであって,その無念さは甚だ大きいと容易に推測できるところである。しかしながら,被害者の遺族は,そうした被害者の無念さに思いやりながらも,事故発生から約3か月後に,逸失利益及び慰謝料として合計3100万円を受領することで示談をし,のみならず,被害者の弟は,本件事故後間もないころから,警察官に対し,「刑事罰はできるだけ軽くしてほしいと考えており,それは被害者や母親も同じ考えである。その理由は,被告人の誠意が十分すぎるほど感じられるからである。また,被告人の良い人柄もうかがえる。被告人には早く立ち直って教壇に立ってもらいたい。」旨述べ,検察官に対しても,「被告人が十分誠意を示してくれているので憎しみはなく,罪は軽くしてほしい。」旨述べ,その上,被害者の遺族である母及び弟は,本件起訴前にも,「被害者も失職することを望んでいないと思いますし,私どもも失職することは望んでおらず,生徒や父兄の希望どおりに今後とも教師として能力を発揮してくれることが,最大の供養であると考えている。」旨の検察官宛の嘆願書を作成して,被告人が教職を続けられるような寛大な処分をすることを願っているのである。このように,被害者遺族の被害感情は,既に慰謝されて宥和的であり,被告人に対する厳しい処罰感情はなく,むしろその誠意ある態度と人柄に感心して,寛大な処分を一貫して求めているのである。
上記考察したとおり,被告人の過失は決して軽いとはいえず,被害者の死亡という結果も重大であるが,被告人の過失について一定の斟酌すべき事情があり,強い非難に値するとまではいえないこと,被告人の本件に対する態度及び反省の状況,さらには被告人の被害者遺族への謝罪の態度,被害者遺族の被害感情に照らすと,本件についての被告人の責任が,相当に重く厳しい非難に値するとまでは認められない。

仙台高裁 平成14年3月25日

事故は被告人の一方的な過失、しかも難しいことを怠ったわけではないミス。
こういう事故のときに、被害者遺族に誠意を見せない被告人もいますが(裁判の前に急に誠意を見せようとする人すらいますが)、きちんと誠意を尽くしていたことを量刑判断として評価した形ですね。
過失自体は重大なので、無罪にしたり不起訴にするのは問題がありますが。

 

よく「被告人は一度も来てない」とか「今まで連絡がなかったのに、裁判前に急に謝罪の申し出があった」みたいな不誠実な話を聞きますが、事故を起こさないよう運転することは当たり前としても、やってしまったなら誠意を尽くす。
当たり前のことをできるかできないかなのかもしれません。

とは言うものの

以前書いたけど、横断歩行者妨害事故の件。

JAFの横断歩道調査は、事故防止と関係するのか?
毎年のようにJAFが横断歩道での一時停止率を発表しています。 長野県が毎回のように1位になりますが、じゃあ長野県は横断歩行者妨害による事故が少ないのか?という話になりますよね。 それについて見ていきます。 長野県と新潟県の比較 比較的人口が...

JAFが発表する一時停止率調査結果と、横断歩行者妨害事故の件数は相関性がない。

長野県 新潟県
人口(R4年8月) 2,007,347 2,129,722
一時停止率(R5) 84.4% 23.2%
一時停止率(R4) 82.9% 25.7%
歩行者妨害事故(死亡者) 246(2) 204(2)

JAFの一時停止率調査方法だと、今回取り上げたような右折時一時停止率は調査対象ではない。

調査場所
センターラインのある片側1車線道路で、原則として、調査場所の前後5m以内に十字路および丁字路交差点がない箇所で、道路幅員が片側2.75m~3.5m、交通量が3~8台/分(目安)とし、制限速度が時速40~60km程度の箇所

調査対象
横断歩行者側の車線を走行する自家用自動車、自家用トラック(白ナンバー)

 

信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)
「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)」についてご案内します。

このような対向車線側のケースも調査対象ではない。

横断歩行者事故はどのような態様が多いのか謎ですが、JAFの一時停止率調査結果に一喜一憂しているうちは事故が減らないのではないかと心配になる。
真の一時停止率は別なんじゃないかと。

 

コメント

  1. きゃばりーのらんぱんて より:

    石橋和歩被告の真逆ですね

    運転の資格はもちろん、生きる資格すら疑われるような人だと思うのですが、キチンと人として裁判してもらって、日本はいい国だなあって思ってます。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      たまに被害者側から減刑の嘆願書が出ている事例がありますが、身内が死んでいて嘆願書になるのはよほどのケースなんですよね。
      むしろ逆に厳罰化の嘆願書も見かけますが。

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