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救護義務の「直ちに」とは、どのくらいの範囲を指すのか?

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昨年、「事故直後に飲酒運転発覚回避のためにコンビニにブレスケアを買いに行った事件」で東京高裁が救護義務違反の成立を否定して無罪にしましたが(最高裁に上告中)、

「ひき逃げ無罪」、東京高裁はなぜ飲酒運転発覚回避でコンビニに行ったのに無罪にしたのか?
ちょっと前に、横断歩道を横断中の歩行者をはねた後、被害者の捜索よりも自身の飲酒運転発覚を回避するためにブレスケアを購入するためコンビニに向かった被告人に対して無罪(道路交通法違反、救護義務違反)とした件が報道されましたが東京高裁はなぜ救護義...

もし最高裁が上告棄却するなら、そろそろなんじゃないかと。
最高裁は判決を変えるときのみ口頭弁論を開きますが、この事件はいろいろ問題があると思う。

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「直ちに」の範囲

要はこの事件、飲酒運転発覚回避目的でブレスケアを買いにコンビニに行った点が「直ちに救護し」に反するというのが検察官の主張。

(交通事故の場合の措置)
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。

「直ちに」についてはいくつか判例があります。

判例 状況 判決
最判昭42.10.12(大阪高裁昭41.9.20) 自動車の運転中に人身事故を惹起したことを知りながら、救護の措置をとることなく自宅に向う途中、事故現場から約7.7キロメートル離れた地点でもはや逃げ切れないと観念し、事故現場から手近なまたは最も便宜な警察署もしくは派出所が他にあるのに、事故発生の約20分後現場から約14.3キロメートル離れた警察署の警察官に事故発生等の報告 有罪(報告義務違反)
名古屋高裁金沢支部昭52.8.30 事故を起こし80m逃走したところで後続車のクラクションを聞き逃げられないと観念し、事故現場に戻った 有罪(救護義務違反)
東京高裁平29.4.12 事故現場から150m進行後に停止 無罪(救護義務違反)

右報告が果して道路交通法72条1項後段所定の報告をした場合にあたるかどうかについて案ずるに、右にいう「直ちに」とは、同条1項前段の「直ちに」と同じくその意義は、時間的にすぐということであり「遅滞なく」又はというよりも即時性が強いものであるところ、同条1項前段の規定によれば交通事故であつた場合、事故発生に関係のある運転者等に対し直ちに車両の運転も停止し救護等の措置を講ずることを命じているのであるから、これと併せてみると同条1項後段の「直ちに」とは右にいう救護等の措置以外の行為に時間を籍してはならないという意味であつて、例えば一旦自宅へ立帰るとか、目的地で他の用務を先に済すというような時間的遷延は許されないものと解すべきである。
蓋し同法が右報告義務を認めた所以は、交通事故の善後措置としては、先ず事故発生に関係のある運転者等に負傷者の救護、道路における危険防止に必要な応急措置を講ぜしめるとともに、これとは別に人身の保護と交通取締の責務を負う警察官をして負傷者の救護に万全の措置と、速やかな交通秩序の回復につき適切な措置をとらしめるためであるから、現場に警察官がいないときの報告も、時間を藉さず直ちになさねばならないからである。

 

大阪高裁 昭和41年9月20日

被告人が、原判示のような経過で、本件交通事故の約二〇分後に、事故現場から約一四・三キロメートル離れた堅田警察署の警察官に事故発生等の報告をしたのは、事故発生後直ちにもよりの警察署の警察官に報告したことにあたらないとした原判決の判断は相当である

最高裁判所第二小法廷 昭和42年10月12日

救護義務及び報告義務の履行と相容れない行動を取れば、直ちにそれらの義務に違反する不作為があったものとまではいえないのであって、一定の時間的場所的離隔を生じさせて、これらの義務の履行と相容れない状態にまで至ったことを要する

 

東京高裁 平成29年4月12日

名古屋高裁金沢支部判決に、80m逃走したことで救護義務違反の成立を認めたものがありますが、最近の判例の傾向は東京高裁 平成29年4月12日。
今回の「飲酒運転発覚回避ブレスケア事件」でも、弁護人は東京高裁 平成29年4月12日判決を引用してますが、個人的にはだいぶ違和感。

 

速やかに救護できない事情があるならともかく、救護義務とは違う目的をすることが「直ちに」の範囲とはなかなか考えにくい。
そろそろ最高裁がきちんと「直ちに」の解釈について判断した方がいい気がするけど、そもそもの問題点は検察にもあるのよ。

本来であれば

そもそも、過失運転致死のみ起訴して救護義務違反について不起訴にしていたから、後になって話がややこしくなっただけにも思う。
良くも悪くも、検察は無罪リスクがある事案は起訴しないのが通常。
過失運転致死罪は確実に有罪になるとはいえ、救護義務違反についてはチャレンジしなかった検察官の姿勢にも問題がある。

 

確実に有罪になるもの以外は起訴しないのが通例ですが…

 

とはいえ、コンビニに立ち寄ることが「直ちに」に反しないとする解釈が正当とは思えないので、そろそろきちんとした方がいい。

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