こちらについて質問を頂いたのですが、

そもそも行政処分と「第一当事者」「第二当事者」は何の関係もない話でして、あれは運転レベル向上委員会が創作した架空の話。
例えばなんだけど、

赤信号で停止している四輪車Aに対して、後続2輪車Bが追突したとする。
この場合第一当事者が2輪車Bなのは言うまでもないんだけど、理屈の上ではどちらも負傷する可能性があるし、2輪車ならなおさら重症リスクが高いですよね。
2輪車Bに追突された四輪車Aは、追突された衝撃で事故発生を認識する。
事故発生を認識したにもかかわらず青信号で発進して逃走したら救護義務違反が成立する。
仮に四輪車Aが加療15日以内のケガ、2輪車Bが加療3ヵ月以上の重症だとした場合、点数はこうなる。
| 四輪車A | 2輪車B | |
| 安全運転義務違反 | – | 2 |
| 付加点数 | – | 3 |
| 救護義務違反 | 35 | – |
| 計 | 35 | 5 |
四輪車Aが第二当事者だからという理由で点数は免除されないわけで、違反があれば加点する。
2輪車Bは四輪車Aを負傷させたことに対する救護義務が生じますが、本人が重症なら履行不可能な上、四輪車Aが逃走したことにより「救護の放棄」に当たるから救護義務違反は成立しない。
事故の発生と事故後の責任は別だし、施行令では救護義務違反単独に付加点数を加点できないと規定している。
場合によっては第二当事者のほうが点数は高くなりえます。
要は第一当事者、第二当事者であることと行政処分の有無には何の関係もない。
当たり前ですが救護義務違反があると第一当事者、第二当事者が入れ替わるわけもない(第一当事者第二当事者は「事故の発生」についての分類であり、事故後の救護義務違反は別問題)。
次。
最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日の事件を行政処分として考えてみます。
この判例は左右の見通しがきかない交差点で徐行義務を怠って進行したところに、交差道路から著しい高速度の車両が一時不停止で突っ込んできた事故。
赤車両は速度超過、一時不停止、著しい前方不注視。
青車両は徐行違反です。

| 赤車両 | 青車両 | |
| 速度超過(30キロ以上) | 6 | – |
| 一時不停止 | 2 | – |
| 徐行 | – | 2 |
| 付加点数 | 13 | 13 |
| 計 | 19 | 15 |
※速度超過と一時不停止は「同時に」にあたると考えられ、点数が高いほうのみ加点。
最高裁は青車両について、「徐行義務を果たしていても回避可能だったか疑問」として無罪(業務上過失致死傷)を言い渡してますが、

刑事の最高裁判決が出るより前に行政処分は先行すると思われ、双方ともに行政処分の対象。
ただし最高裁判決を踏まえるなら、下記になるのが筋とも言える。
| 赤車両 | 青車両 | |
| 速度超過(30キロ以上) | 6 | – |
| 一時不停止 | 2 | – |
| 徐行 | – | 2 |
| 付加点数 | 20 | – |
| 計 | 26 | 2 |
最高裁も青車両に徐行義務違反が成立することは指摘してますが、違反行為と致死傷に因果関係がなければ付加点数は加算しないことと警察庁が通達を出しているのだし、本来ならこうなるほうが筋。
とはいえ刑事処分と行政処分は別だし、刑事最高裁判決が出るより前に行政処分が先行する可能性があるので、現実的には双方ともに「専ら不注意以外」の加算になるかと。

そもそもなぜ行政処分の有無と「第一当事者」「第二当事者」が関係すると考えるのかよくわかりませんが、専門書にそのような説明はないし、条文にもそのような規定はなく、何より警察に聞くと「何の関係もない」と断言される。
あれは運転レベル向上委員会の創作した作り話に過ぎないので、現実的な話をしたほうがいいと思う。
違反があれば違反行為について加点するし、付加点数については除外事由にあたる「予見可能性、回避可能性がない」なら加算しない。
単にそれだけの話。
そもそもこの件について「警察に確認しました」が発動しない理由もよくわかりませんが、間違いが発覚したら過去の解説が全て間違っていることになってしまうのだから、警察に確認するわけにはいかないでしょうね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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