セラミックベアリング。
この単語はロードバイク界では高価なパーツという印象を持つ方が多いのではないでしょうか?
セラミックベアリングにすると回転性が上がると言われたりしますし、自転車ではセラミックベアリングの効果はほとんどないよという人もいます。
結局のところ、何が正しいのでしょうか?
セラミックベアリングって?
セラミックベアリングは窒化ケイ素セラミックスを使ったベアリング玉で、主に以下のメリットがあるとされています。
・軽量化
・硬く、剛性が高い
・伝熱性が低い
・熱変形が起こりにくい
・錆びない
・焼き付きが起こりにくい
様々なメリットがあります。
セラミックベアリングにすると回転性能が上がると言われますが、上記のようなセラミックベアリングの特性が、どのように回転性能に関わっているかです。
ベアリングの回転では、機械的な摩擦と熱による損失が抵抗となります。
その他、ベアリング自体の精度やベアリングの剛性もエネルギー損失になるわけですが、熱に強く、剛性が高いセラミックベアリングは、スチール製ベアリングに比べて優位にあるということにあります。
問題になるのはボールレース
セラミックベアリングは剛性が高い、つまり硬いのです。
硬いものを回し続けるわけですから、ボールレース側にも剛性が求められます。
セラミックベアリングに対応したボールレースは、特殊なコーティングなどを施してセラミックベアリングの玉に負けないようにしてあります。
そうじゃないとボールレース側が削れてしまい、ロスが生じるからです。
わかりやすいところでいうと、カンパニョーロのUSBとCULTがあります。
カンパニョーロのホイールのベアリングは、鉄玉の普通のベアリング、USB、CULTの三種類があります。
USBは【Ultra Smooth Bearings】の略です。
USBベアリングと書くのは間違いで、ウルトラスムーズベアリングベアリングになってしまいますw
CULTは【Ceramic Ultimate Level Technology】の略です。
こちらはCULTベアリングと書いても問題はありませんね。
USBとCULTはどちらもセラミックベアリングなのですが、違いはボールレースのほうです。
USBではボール側はセラミックなのですが、ボールを受けるボールレースが通常の金属製です。
このままだとセラミックベアリングの硬さにボールレースが負けてしまい削れてしまうので、グリスを使って摩耗を抑えます。
一方のCULTですが、こちらはボールレース側に特殊な処理をしています。
レース部分を特殊な熱化学処理をして強化しているので、セラミックベアリングの硬さに負けてしまうことがありません。
なのでCULTではグリスが不要なのです。
グリスが不要というだけで回転抵抗が減るので、カンパニョーロでは通常のベアリングに比べてCULTは約9倍回転性能が上がるとしています。
ちなみにUSBでも通常のベアリングより回転性能は上がるとされています。
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これらのことから言えることですが、世の中にはセラミックベアリングと謳う商品がたくさんあります。
その中で大切なのは、ボールの素材がセラミックなのかではなく、ボールレース側がどうなっているのかです。
安価なセラミックベアリングのパーツというのは、ボールレース側が通常のモノだったりするため、効果としては微妙です。
安価と言っても導入にはそれなりの費用が掛かる場合もあり、またモノによっては防水防塵性が低いパーツもあるため、高頻度でのメンテナンスが要求される場合もあります。
ロードバイクでセラミックベアリングは効果があるのか?
よく言われることですが、セラミックベアリングが効果的な分野としては、高回転が要求されるような場面とされます。
工場などで毎分1万回転するようなパーツだと、熱の発生の問題などからセラミックベアリングにすると効率が上がるとされます。
さてロードバイクでの回転は、そういう工場のパーツに比べると低いのは明白です。
試しに書きますと、アウター×トップでケイデンス100で回した場合、ホイールの回転数は毎分どれくらいでしょうか?
53×11のアウタートップだと、ギア比は4.82。
それがケイデンス100だと、ホイールの回転数は毎分482回にしかなりません。
BBはどうでしょうか?
ケイデンス100で回せば、BBの回転数は毎分100回ですよね。
所詮はそんなもんです。
回転数が毎分万単位になるようなモーターなどではセラミックベアリングの効果は高いと言えますが、ロードバイクではベアリングの回転数は低いので、顕著な効果があるとは言いづらいパーツです。
違う視点から見ていきましょう。
ロードバイクで走る場合、様々な抵抗がかかります。
空気抵抗、タイヤの転がり抵抗、駆動系の抵抗などなど様々ですが、その中で最も大きな要素はもちろん空気抵抗です。
一説によると、時速30キロで走行しているときの抵抗の80%は空気抵抗と言われます。
ハブの回転抵抗やBBの回転抵抗が、走行中の何割を占めるのかという数字は見たことがありませんが、恐らくですが空気抵抗と比較した場合にはほとんど無視できる数字なのではないでしょうか?
何かで【コンポの駆動抵抗は、タイヤの転がり抵抗の数百分の一以下】というのを読んだ気がしますが、ソースが怪しいので何とも言えません。
ハブの回転性能が9倍になったとしても、そもそもハブの回転抵抗は走行中の抵抗の何割を占めているのかということのほうが重要な気がします。
実際のところ、スタンド上でCULTハブのホイールを空転させると、とんでもなく長い時間グルグル回っています。
BBやプーリーでもそうですよね。
手で回したらセラミックベアリングってすごいでしょ!という動画はそれなりにあると思います。
しかし実走ではどうなのかというほうが重要なわけです。
スタンドで回すとか手でパーツ単体を回すというのは、空気抵抗はほぼゼロですので、実走とは根本的に違います。
マヴィックのホイールは、スタンド上で回すと回転が悪いとよく言われます。
マヴィックホイールは防水性や防塵性を重視して強固な接触シールを採用していますので、どうしても重いです。
でも実走では、他社と比べて著しく回転が重いということはありません。
CULTハブのホイールも、下りでかなりのスピードが出ているときなどに、よく回る感じがします。
ところが平坦ですごくペダリングが軽いとか回るのかというと、そこまで顕著な差ではありません。。
他社のホイールと比べて【普通】もしくは【ちょっといいかも】な感じがします。
要は実走では空気抵抗が主で、その次にタイヤの転がり抵抗、ハブやコンポの抵抗はかなり微々たるものだということになるのです。
値段の割には微妙な効果です
例えばカンパニョーロのCULTベアリングではないホイールをCULT化する場合、工賃など込みで5万円くらいします。
確かにCULT化すると回転が上がりますが、費用対効果で見るとちょっと悪い部類かなと。
ロードバイクでは様々な抵抗を減らすことが速さにつながります。
BBもハブもプーリーもセラミック化で回転抵抗を軽減していくということも重要ですが、全部やればそこそこお金がかかってきます。
それなら空気抵抗のほうを弄る、つまりエアロ性能が高いパーツを導入したほうが効果的かもしれませんね。
マヴィックのハブも、メンテナンスした直後はすごくよく回ります。
セラミック化で抵抗の軽減を図るというのも一つでしょうし、メンテ頻度を上げてみるというのも抵抗の軽減にいいでしょうし。
ただ一つ言えるとしたら、安価なセラミックベアリングパーツは、ボールレース側が微妙なので買う価値が少ない気がします。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
こんにちは
自分も気になっていたので軽く計算をしたことが有ります
前提として
・リムハイト40ミリ
・リム重量400g
ハブの回転性能として、ホイール単品で時速40km/h相当から30秒で停止(ちょっと大げさですが)
この場合の回転ロスをワット換算したところ0.1W以下となりました、ハブの回転性能の寄与度は低いと思っていたので想定通りの結果でした
一般ユーザー目線でもタイヤのヒステリシスロスや空力の方がよっぽど効いているという印象です
数字自体は計算の前提条件を色々立てているので絶対値は異なると思いますのであくまでも参考でしか有りません
ここで興味を持ったのが、CULT化等で回転性能が上がったのが実感出来たという意見が多い事です、数万掛けた結果なので効果が有って欲しい!というバイアスも有るのでしょうが、本当にそれだけだろうか?とも思っています。人間の感覚って数字に出ないものを当ててしまう事も多々有るので・・・
コメントありがとうございます。
難しいところですが、数字の大小と、体感が一致しない可能性もあります。
数字で見るとわずかなことでも、体感だと大きな差に感じる場合もあるかと。