PVアクセスランキング にほんブログ村
スポンサーリンク

横断歩行者事故と、刑事責任の話。

blog
スポンサーリンク

夜間に横断歩行者とクルマが衝突した死亡事故があったそうですが、

女性が軽自動車にはねられ死亡 福井市(日テレNEWS NNN) - Yahoo!ニュース
16日夜、福井市内の市道で事故があり、道路を歩いていた女性が軽自動車にはねられ、まもなく死亡しました。事故があったのは福井市の市道で、警察の調べによりますと、16日午後8時すぎ、道路を歩いていた

読者様から、つい先日取り上げた札幌高裁判例に似ていると言われまして。

情報との向き合い方。
こちらについてご意見を頂いたのですが、それと関係して情報との向き合い方について。過失運転致傷罪が不起訴になる理由を説明してますが、運転レベル向上委員会より引用検察官向けの解説書をみるとわかるんだけど、運転レベル向上委員会が説明する「これが一...

確かに夜間、街灯がなく暗い、片側一車線など事故態様は似てますね。
細部まで似たような事故なのかは報道からは全くわかりませんが。

 

さて先日取り上げた札幌高裁判例。
この事故は当初「被告人車の速度は時速45キロ」である前提で、①ハイビームにして進行すべき注意義務、又は②ロービームであれば照射範囲で制動可能な速度に減速して進行すべき注意義務、を検察官が主張していた。
検察官は途中で訴因変更し、「被告人車が時速60~65キロ」だという前提で最高速度(50キロ)を遵守していれば(+旧訴因のハイビーム/ロービームも含め)回避可能だったとも主張。

原審において、検察官は、当初、被告人車両が時速約45キロメートルで進行していたことを前提に、本件道路は夜間のため見通しが悪かったのであるから、前照灯を上向きにするか、前照灯を下向きにして走行する場合は、その照射距離に応じて適宜減速した上、前方左右を注視し、進路の安全を確認しながら進行すべき注意義務があるのに、被告人はこれを怠った旨主張していた(旧訴因)。その後、検察官請求のE鑑定に依拠して訴因変更がされ、被告人車両が時速60ないし65キロメートルで進行していたことを前提に上記注意義務違反に加えて、被告人が本件道路の指定最高速度(時速50キロメートル)を遵守する義務も怠った旨主張するに至った(新訴因)。

裁判の結果は既に書いた通りで、結局は「被告人車の速度は45キロ」だという前提で「回避可能性に合理的疑いが残る」として無罪に。

 

さて、検察官が主張していた注意義務違反には「ロービームで進行するのであれば、照射範囲で制動可能な速度に減速して進行すべき」がある。
これはいくつかの判例で認定されてきた注意義務です。
例えば東京高裁 昭和51年7月16日判決は、時速60キロでロービームのまま進行したことを過失としている(ただし横断歩道事故です)。

以上の考察を前提として、乾燥した平坦な舗装路面である本件現場において、被告人が自車の前照灯を下向きにして時速約60キロメートルで走行したことが過失としてとらえられるべきであるか否かについて検討する。前記のとおり、特殊の事情のない限り、運転者は、前照灯を下向きにしながら時速約60キロメートルで走行する場合、30メートルを超える前方にある障害物を確認することはできないことを前提として、速度を調節すべき注意義務があるところ、スチールラジアルタイヤを装着すれば、運転者が危険を感じてから停止するまで約29メートルを要するのであるから、運転者が前方注視を厳にし、障害物を約30メートル前方に発見して直ちに制動の措置を講ずれば、その直前において停止し、これとの衝突を回避することが不可能であるとはいえない。しかしながら、運転者は絶えず前方注視義務を十分に果すことが理想であっても、長い運転時間中に一瞬前方注視を怠ることもありえないとは言えず、あるいは前方注視義務を十分に果していても急制動の措置を講ずることに一瞬の遅れを生ずることもないわけではなく(たとえば本件の場合、証拠省略によれば、被告人が危険を感じた地点とスリップ痕の始点との間の距離が16.2メートルもあり、制動初速度60キロメートル毎時の被告人車としては、空走時間が約一秒もあったことになり、このことは、被告人のブレーキの踏み方が遅かったことを示している。)、さらに運転者がその注意義務を果そうとしても外部的事情により義務の履行が困難となる(たとえば本件の場合、証拠省略によれば、被告人車と被害者の間を横断する車両があったことが認められる。)ことがありうることを考えると、運転者としては、車両の性能と義務の履行につき限界すれすれの条件を設定して行動すべきではなく、若干の余裕を見て不測の事態にも対処できるような状況の下で運転をすべき業務上の注意義務があるといわなければならない(東京高等裁判所昭和42年4月3日判決、東京高裁時報18巻4号1109頁参照)。このように考えると、本件の場合、前照灯を下向きにして時速約60キロメートルで走行することは、主観的事情および客観的事情がすべて順調に進行することを前提としており、その条件のいずれかが崩れた場合の配慮が欠けているものであって、前方約30メートルの障害物の発見が瞬時遅れた場合はもとより、そうでなくても急制動の措置を講ずることに一瞬の遅れを生じた場合にも、これと衝突の危険がないとはいえない状況にあったものと認められ、とくに進路前方に交差点および横断歩道が存在する本件場所の地理的条件のもとで安全な運転をはかるについて、注意義務に欠けるところがあったものといわなければならない。

してみると、被告人が前照灯を下向きにしながら時速約60キロメートルで走行した点においても、被告人には過失がなかったものとはいえない。そして、被告人自身も、被告人の司法巡査に対する供述調書および当審公判廷において、本件事故の原因は前方注視の不十分と速度の出し過ぎであることを認めているのみならず、原判決挙示の証拠を総合すれば、被告人が前照灯を下向きにしながら時速約60キロメートルの速度で進行し、しかも前方に対する十分な注視を欠いた過失により、本件事故を惹起したものであることが明らかに認められ、これと同趣旨に出た原判決に所論の事実誤認はない。論旨は理由がない。

東京高裁 昭和51年7月16日

ロービームの照射範囲で制動可能な速度に減速して進行すべき注意義務があるとし、さらにその減速具合は「限界停止速度」より余裕を持った速度であるべきとする。

ハイビームorロービームのアホ理論。
道路交通法52条によると、夜間等はライトをつけ、対向車とすれ違うときや他の車両の直後を通行するときなどにはロービームにするように書いてあります。ちょっとこれについて。極端な論とにかくハイビームにすべき、みたいなアホ理論がありますが、判例から...

冒頭の事故については詳細がわからないので回避可能性があった事故なのかはわかりませんが(視認可能距離は被害者の服装にも左右される)、わりと大事な概念なのよね。
ロービームであれば、視認可能な範囲で制動できる速度に減速して進行すべき注意義務は。

 

ちなみに、この手の事故について刑事責任がどのように問われるかは説明した通りですが、相変わらず根拠がない憶測が飛び交うのがインターネットらしさなんですかね。
「速度超過していたはずだ!」みたいな根拠がない憶測も見ましたが…わからないものをムリに認定する必要なんてないのよね。

 

致死率の統計データから速度を推測するとか、どんだけ発想が偏っているのだろうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました