まあ、綾人サロンさんはビミョーに道路交通法解釈がおかしいのですが。
さて、こちらの動画。
綾人サロンでは、「自転車レーンから逸脱」として「道路交通法違反」と糾弾していますが。
道路交通法違反?
まず場所ですが、神奈川県の大和市。
中央林間です。
まず大前提。
①「普通自転車専用通行帯(交通法20条2項)」は、標識令2条、別表第一(規制標識)により、標識で示した場合のみ有効になる。
第二条 道路標識の種類、設置場所等は、別表第一のとおりとする。
種類 | 番号 | 表示する意味 | 設置場所 |
普通自転車専用通行帯 | 327の4の2 | 交通法第二十条第二項の道路標識により、車両通行帯の設けられた道路において、普通自転車が通行しなければならない車両通行帯(以下この項において「普通自転車専用通行帯」という。)を指定し、かつ、軽車両以外の車両が通行しなければならない車両通行帯として普通自転車専用通行帯以外の車両通行帯を指定すること。 | 普通自転車専用通行帯の前面及び普通自転車専用通行帯内の必要な地点における左側の路端 |
②車道の定義は交通法2条1項3号にて、縁石や柵などの工作物か、道路標示で示した部分となる。
車道外側線は、標識令別表第三(第五条関係)に規定されているが、区画線であって道路標示ではないため、道路交通法上は何の意味もない「法定外のお絵描き」に過ぎない。
第五条 区画線の種類及び設置場所は、別表第三のとおりとする。
以上がまず大前提。
その上で検証します。
疑問 | 正解 | 補足 |
①自転車専用通行帯は存在するか? | 存在せず。自転車通行帯を意味する標識がない。 | 片側一車線道路(車両通行帯がない) |
②車道外側線は道路交通法上意味があるか? | 仮に「歩道」が存在しなければ路側帯表示線になるが(標識令7条)、歩道があるため無意味な線になる。 | 車道の境界は歩道の縁石まで。 |
まあ、分かりにくいよね。
プロのドライバーが豪快に法律解釈を間違う程度に分かりにくい。
自転車の通行位置は違反なのか?
この場合、自転車専用通行帯(車両通行帯)が存在しないため、自転車は道路交通法18条1項に従って通行する必要があります。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
この道路、動画だと分かりにくいけど車道外側線の外側がやや広い。
普通の二輪自転車が普通に通行できる程度の広さがあり、路肩のエプロン部も全部ではないけど省略されていたり、側溝などもほとんどない。
18条1項でいう、「車道の左側端」とは、路肩のエプロン部や側溝などの通行に適さない部分を除いた上で左側端に寄ると解釈されてますが、こちらの動画。
オバチャンが乗ってるのは三輪自転車ですかね。
しかもビミョーに左右に動揺しているのが、車道外側線と自転車の距離感の変化から見てとれる。
車道外側線の内側だの外側だの言う人は法律を理解していないナンセンスな人としか思いませんが(そもそも無意味な線だし。笑)、この動揺性、不安定性からするとこれ以上左側に寄ると、下手すりゃ後輪を縁石に引っ掛けて転倒するリスクがある。
それプラス、道路の端は少し傾斜があるわけで、三輪自転車って傾斜にシビア。
要は「見てとれる不安定性」+「三輪自転車の不安定性」からすれば、この位置を通行すること自体が直ちに18条1項に違反するとは言えないわけ。
ビミョーにマンホールを避けている場面なんかは、18条1項但し書きの「やむを得ない場合」ですし。
ところどころ、やたら中央寄りに来ているのは、言い方は悪いけど自転車運転技術の問題でしょう。
低速+不安定性を見れば、悪意ではなく下手なんだろうなと見てとれます。
なので、しょうがないとしか言いようがない。
車道外側線は
そもそも「車道外側線」は道路交通法上、全く意味がない法定外お絵描きなので、この線を基準に内側だの外側だの言うこと自体が無益、無意味、無味、無臭。
18条1項の規定って、軽車両とクルマの通行位置を仮想の通行帯とみなして分離していますが、実情としては「重なる」。
立法趣旨は、あくまでも遅い車両をなるべく左側にして右側からの追い越しを促す点にありますが、逆説的に言えば、左側から自転車が追い抜きできない程度に寄れば済むとも言えます。
自転車が左側から追い抜きできる程度に開けているなら明確に違反と言えますが、綾人サロン動画のオバチャンって、見てわかる程度に「不安定」。
よく言えば「不安定」だし、悪く言えば「下手」。
単にそれだけです。
もっとも、厳密に述べるならば、「道路の左側」は「道路の左側端」を含むので、「道路の左側端に寄って通行する」ことは、「道路の左側に寄って通行する」こととなる。したがって、当該道路を軽車両が通行していない場合、自動車及び原動機付自転車は、道路の左側端に寄って通行することも差し支えない(もっとも、自動車や原動機付自転車は、軽車両に比べて走行速度も速いので、あまり左側端に寄り過ぎると交通安全上適切とはいえない)。
そもそも「キープレフト」の原則は、道路の中央部分を追越しのために空けておくという考え方によるものであり、道路の幅員が不十分な場合には、自動車等は相対的に左側端に寄ることになるであろうし、幅員が十分であれば、左側端側にそれなりの余裕を持って通行することとなろう。また、現実に軽車両が通行しているときは、自動車等は左側端に寄り難く、相対的に道路の中央寄りの部分を通行することになろう。このように「道路の左側に寄って」とは、あくまでも相対的な概念であり、具体的な場所が道路のどの部分を指すかは、道路の幅員及び交通状況によりある程度幅があるのである。
道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房
なお、18条1項の判例はこちら。
罰則がない規定なので、ある程度柔軟に対応する必要があるし、低速で走るママチャリとそれなりの速度で走るロードバイクでは左側端に寄る「具合」が変わりうるし、三輪自転車のように横傾斜に弱い自転車やお年寄りは左側端に寄りすぎると縁石に引っ掛けて転倒するリスクがある。
なので、「一律にどこまでとは論じ得ない」。
ただたあ、自転車が普通にアスファルト舗装部分を通行できる程度に車道外側線と歩道の間にスペースがあることは確かです。
「自転車通行帯から逸脱」というのは間違いだし、「車道外側線ガー」というのも間違い。
その場における合理的左側端を自分で考えるしかありませんが、事故ったときには裁判所はまあまあ冷たい。
なお動画の歩道には「自転車通行可」の標識がありますが、警察官が任意的指導として「歩道を通行するように指導」することはあり得ます。
ビミョーにフラフラしているので。
ただまあ、これを見て「自転車が妨害している」と考えるのは無し。
妨害しているというのは、こういう奴。
逮捕されましたが笑。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
管理人様
お世話になっております。
ちょっと疑問がありますので質問させていただきます。
>工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。
ラバーポールは構造物に当たるのでしょうか?
私は、大阪空港勤務なのですが、南東方面から空港ロータリーへ左折するとラバーポールがあります。ラバーポールの左側を進むと案内板が中央やや左にありますので通過するのには邪魔になります。
また、ロータリー北側の阪神高速11号線下の道路には同様にラバーポールがありますが、こちらにはラバーポールの左側を通るように書かれています(こちらは自転車道?)
よくわからないので教えていただけると助かります。
具体的な場所がわからないので何とも言えませんが、要件は「工作物」だけでなく「区間する」と「車両の通行の用に供するため」も含まれますので、区間された部分なのか?「誰(車両、歩行者、自転車など)のために区間された」と合理的に判断できるかどうかになるかと思います。
歩道が別に存在する(縁石や柵)のであれば、車道上に設置された工作物とは言えても、区間したとは言えませんし。
なのでラバーポールだからなのかが問題ではないように感じます。