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酒気帯び運転で懲戒免職になり、懲戒免職処分が取消された理由。

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今回取り上げるのはこちら。

「酒気帯び運転で懲戒免職」取り消しと150万円の支払いを市に命じる…岡山地裁判決「故意があったとは認められず、懲戒事由がない」
【読売新聞】 酒気帯び運転などを理由に懲戒免職とした岡山県高梁市の処分は違法だとして、同市の元市消防本部職員の男性が処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟で、岡山地裁(森実有紀裁判長)は25日、懲戒処分の取り消しと150万円の支払いを

事実関係が判然としない報道にも思えるし、報道の内容からするとなぜ懲戒免職処分にしたのか不思議に思ってました。
判決文が公開されたので確認してみよう。

⑵ 本件処分の対象となった運転行為及びその経過(甲4、17、乙2、3、原告本人、証人A(以下「A」という。))
ア 原告は、令和4年8月10日、友人であるAを自動車に乗車させて岡山市内に向かい、自動車をコインパーキングに停め、午後9時頃から、居酒屋(たん屋びぜん)で夕食を摂りつつビール3杯ほどの飲酒をし、その後、午後11時頃から相席バー(ジックスザラウンジ)で果実酒2杯ほどの飲酒をした。さらに、同月11日午前0時頃、相席バーで一緒になった女性とともにナイトクラブ(ベスティ)に入店し、カクテル1杯とシャンパンのグラス1~2杯ほどの飲酒をした。
原告は、令和4年8月11日午前1時30分頃、上記ナイトクラブを退店したが、3人組の若者に因縁をつけられて言い争いになり、警察に通報した。数名の警察官が臨場し、警察官は、同日午前2時30分頃、原告に対し、飲酒の状態を確認するため飲酒検知(呼気検査)を実施したところ、呼気1リットルにつき0.05ミリグラムのアルコール濃度が検出された。
ウ 警察官は、原告に対し、上記若者3名からの暴行につき被害届を提出するかどうかは、改めて、翌朝の午前9時頃に岡山中央警察署にて決めることを提案し、原告は、午前3時頃、Aとともに近隣のネットカフェ(快活クラブ岡山駅東口店)に入店した。原告は、同店において喫煙所でタバコを吸い、コンソメスープやコーラなどを飲んで過ごした後、シャワーを浴び、午前4時頃に就寝した。
エ 原告は、令和4年8月11日午前8時頃に起床し、午前8時20分頃、コインパーキングに停めていた自動車を運転して岡山中央警察署に向かい、午前8時30分頃、同署に到着した(以下、この運転行為を「本件運転行為」という。)。原告は、前夜に対応した警察官と面会し、暴行にかかる被害届の提出について相談していたところ、車で同署まで来訪した旨を聞いた警察官から酒臭を指摘され、飲酒検知(呼気検査)を受けることとなり、同検査の結果、呼気1リットルにつき道路交通法施行令が定める数値(0.15ミリグラム)を超える0.17ミリグラムのアルコール濃度が検出された。
オ 原告は、令和4年8月11日、道路交通法違反(酒気帯び運転)の容疑で逮捕され、同月12日から同月26日までの間、勾留されたが、同月26日、嫌疑不十分のため不起訴処分となり、釈放された。
カ なお、原告は、令和4年11月8日、本件運転行為が酒気帯び運転に当たるとして、同日から90日間、免許の効力を停止する行政処分を受けた

岡山地裁 令和8年2月25日

先に説明。
要するに、午前2時半に飲酒検査をしたときは0.05ミリグラムなので酒気帯び運転として検挙されるラインに達していない(なおこの時点ではクルマは駐車場にあり運転していない)。
そして揉め事について翌朝警察署で相談することにしていたのだから、クルマを運転し警察署に到着したところ、なぜか今度は酒気帯び運転の基準値を越える0.17ミリグラムが検出された。

 

午前2時半の飲酒検査以降に酒を飲んでないのだから、本来ならこの結果はあり得ない。
そして午前2時半の時点では、酒気帯び運転の基準値以下であることが証明されていた以上、原告には酒気帯びである認識があるわけもなく、酒気帯びの認識がないからクルマで警察署に行ったわけ。

 

酒気帯び運転罪は故意犯のみが処罰対象だから、このケースで「嫌疑不十分」となるのは妥当でしょう。
なお、以前書いたけど酒気帯び運転の行政処分に「故意」は不要なので、行政処分は可能。

前夜の酒が残っていて酒気帯び運転として検挙。
今回取り上げるのはこちらです。石川県警の巡査部長が2025年12月、酒気帯び運転をしたとして書類送検され、16日付けで依願退職しました。自宅で缶酎ハイ4本を飲み翌朝、警察署のアルコールチェッカーで発覚したということです。石川県内の警察署で勤...

さて。
個人的に不思議に思っていたのは、なぜこれが懲戒免職処分になるのかという点。
酒気帯び運転罪の故意が罪に問えない事案に懲戒免職処分をするのは、処分取消訴訟を提起されたら負けるリスクが高い。
なぜ懲戒免職処分にしたのか不思議に思ってましたが、

裁判例結果詳細

そういうことなのか、と納得した。
要するに、過去に5回の交通違反と、2回の懲戒処分があり、それらを今回の件と合わせて加重的に処分したわけか。

 

で。
これらをみると色眼鏡で見てしまうかもしれないけど、あくまでも今回の処分が正当と言えるには酒気帯び運転の件が非違行為と言えるかの問題になる。

⑵ 以上を踏まえて、本件運転行為が、本件規程上の「酒気帯び」に該当するかについて検討すると、まず、原告は、令和4年8月11日午前8時20分から30分頃までの間、自動車を運転して岡山中央警察署に赴いており、その頃、同署で実施された呼気検査の結果、政令で定める程度以上の数値である呼気1リットルにつき0.17ミリグラムのアルコール濃度が検出されているところ(前記前提事実⑵エ)、本件運転行為は、客観的には、道路交通法65条1項及び同法117条の2の2第3号が定める酒気帯び運転違反に該当し、本件規程上の酒気帯び運転にも該当すると認められる。この点、原告については、同日午前2時30分頃に実施された呼気検査において呼気1リットルにつき0.05ミリグラムのアルコール濃度しか検出されていないのであり(前記前提事実⑵イ)、そのため、原告は、2回目の呼気検査に信用性がないとして、本件運転行為時に、原告がその身体にアルコールを保有した状態ではなかったとも主張する。しかるところ、原告は、同月10日午後9時頃から同月11日午前1時30分頃までの間、断続的に飲酒をしていたもので(前記前提事実⑵ア及びイ)、1回目の呼気検査では基準値以上のアルコールが検出されず、その後、原告が飲酒をしたとはうかがわれないにもかかわらず、翌朝に実施された2回目の呼気検査で基準値以上のアルコールが検出されるという事態は、いずれの呼気検査も正しくアルコール濃度を測定したものであるとすれば、不可解である。しかし、1回目の呼気検査前の原告の酒量(前記前提事実⑵ア)を踏まえると、同検査において正しくアルコール濃度を測定できていなかったなどの可能性も十分に考えられ、したがって、本件運転行為当時、原告が身体にアルコールを保有する状態でなかったとまでは認められない。
⑶ もっとも、上記⑵判示のとおり、原告については、令和4年8月11日午前2時30分頃に実施された1回目の呼気検査において、基準値以下のアルコール濃度(呼気1リットル当たり0.05ミリグラム)しか検出されていなかったのであり、その後、原告は、インターネットカフェに入店し、仮眠をとった上で、本件運転行為をしているところ(前記前提事実⑵ウ及びエ)、この間、原告が重ねて飲酒をした事実は認められない。
一般に、飲酒から時間が経過するほど体内のアルコール成分の分解が進み、保有濃度は低減していくのが通常の経過であるから、1回目の呼気検査で基準値以上のアルコール濃度が検出されず、その後、仮眠等を経て、同検査から約6時間が経過した後に本件運転行為を行った原告においては、1回目の呼気検査時よりもさらに体内のアルコール濃度が低減し、既に酒気を帯びた状態ではなく、少なくとも基準値を上回る濃度のアルコールは保有していないと考えるのが通常であろうし、そのように認識することもやむを得ない状況であったというべき
であって、原告は、上記認識の下、自動車を運転して岡山中央警察署まで赴いたことは明らかである。
また、岡山中央警察署の警察官は、原告から酒臭がするとして2回目の呼気検査を実施したようであり(前記前提事実⑵エ)、同検査当時、原告から酒臭がしていた可能性は否定できない。しかし、当該警察官は、原告が前夜に飲酒をしていた事実を把握していたから、念のため呼気検査を実施したなどの可能性も否定できず、実際にどの程度の酒臭があったのかは明らかではない上、原告自身は、酒臭を自覚しておらず、体のだるさや頭の重さ等の自覚もなかったというのであり(原告本人18、21~22頁)、上記判示のとおり、酒気帯び状態ではないと考えることがやむを得ない状況であったことを踏まえると、酒気帯び状態であることや、その可能性を認識し、これを認容しつつ本件運転行為に及んだものと認めることはできない。 ⑷ 以上によれば、本件運転行為につき、原告に酒気帯び運転の故意があったとは認められず、原告が交通法規違反(酒気帯び運転)を犯したものではないから、本件規程上の「酒気帯び」運転をしたものとも認められない。したがって、原告は、本件規程が定める非違行為(酒気帯び)を行ったものではなく、本件処分は、懲戒事由がないにもかかわらず、原告を免職に処したものとして、争点②及び③について検討するまでもなく、違法であって取消しを免れない。

なお、同市が定める懲戒処分規程はこちら。

高梁市職員の懲戒処分基準の運用規程(内規)(本件運用規程。甲9)
高梁市職員の懲戒処分の基準に関する規程に定める懲戒処分が厳正かつ公正に行われるよう、速度超過等その他の違反に対する懲戒処分の基準の運用を次のように定める。
第2 交通事故の処分の審査に係る事項
規程に定める交通事故の処分の審査は、次によるものとする。
「酒気帯び運転」とは、アルコール濃度呼気1リットル中0.15ミリグラム以上の場合をいう

原告が朝に警察署に行った際は0.17ミリグラムだから形式的には処分基準に合致するように思えますが、その数時間前の飲酒検査では基準値以下だったことと、飲酒検査以降に酒を飲んでないこと、何ら酒残りの自覚症状がないことを考えると、「酒気帯び状態ではないと考えることがやむを得ない状況であった」わけで、酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分は違法と判断。
その結果、処分加重理由の「以前の懲戒処分」の妥当性を判断するまでもなく懲戒免職処分は許されないことになる。

 

そしてもうひとつ謎なのは、12日に酒気帯び運転罪として逮捕され、26日まで勾留された点。
否認したから「証拠隠滅の可能性あり」と判断された可能性もありますが、数時間前に飲酒検査で基準値以下だったとしても、原告がさらに飲酒をしてないと言うならそれの裏付け捜査が必要だから仕方ないという見方もできる。
事案全体を見渡したときに二週間の勾留はやり過ぎ感もありますが、捜査機関は原告の主張をフル信用するわけにはいかず仕方ないのかな。

 

道路交通法117条の2の2第1項3号の「罪」が成立するには、故意(酒気帯びの認識)が必要。
酒気帯び運転として行政処分するには故意、過失を問わない。
懲戒処分規程を見る限り、「道路交通法117条の2の2第1項3号の罪にあたる場合」ではなく「アルコール濃度呼気1リットル中0.15ミリグラム以上の場合」としているから故意、過失を問わないとも言えますが、今回のケースでは過失すら認められない(飲酒検査で基準値以下、その後飲酒してない状況、かつ何ら酒残りの自覚症状がない状況で、過失を認めるのは困難)。

 

そもそも「過失酒気帯び運転」で懲戒免職は行き過ぎ感もありますが、今回処分に至ったのは、前処分歴があることが大きいのかもしれません。

コメント

  1. 山中和彦 より:

    懲戒免職も取り消しなので、復職するのでしょうね。消防士と言えば、チームプレイも重要と思うので、果たして大丈夫なのかが気になります。
    あと、訴訟費用の1/3は原告負担になっているということは、懲戒免職取り消しで慰謝料も取れてるのに、全面勝訴ではないんですね。
    どんな理由なのか気になります。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      請求額より裁判所が認容した額が低い場合には、費用負担は満額にはならないかと。
      訴訟印紙代は請求額をベースに計算されるため、満額認められると不合理なのです。

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