読者様数名から、フレームのBB下がりについて質問を頂いてました。
私が分かる範囲と、正直わからない範囲があるのですが、むしろ誰か答えを持っていたら教えて欲しいところですw
二つほど頂いているのですが、長くなるので今回は前編。
BB下がりについて
まず、BB下がりとは何者か?について。
前後の車輪の中心を結んだ線から、BB中心がどれくらい下がっているかの数字がBB下がりです。
似たような用語で【BBハイト】というのもあるのですが、BBハイトは地面からBB中心までの距離です。
ほとんどのメーカーは、BB下がりの数字を公表していて、一部メーカーだとBBハイトを公表してます。
タイヤサイズの考慮
前に、各社のBB下がりについてまとめたのですが、
これについてご意見頂きました。
重心という意味で比較するのであれば、BB下がりの数値だけを比べても意味はないのではと思います。(記事中でも触れられていますが)BB下がりが同じでも、想定されているタイヤ外径が違えば地上高は変わりますので。当たり前ですがミニベロのBB下がりはたいていマイナスです。って本当に当たり前ですよねすみません。
ひと昔前ならロードのタイヤは700×23Cが標準、チューブラーで21やそれ未満の太さもあり得ましたが、昨今は25が当たり前、ともすれば28などという場合もあるようですので、どのタイヤサイズを基準値としているかで当然設計も変わっていると思います。ましてグラベルロード だと32とかそれ以上だったりすると思うので、BB下がりの数値が異なるのは当然と言えます。ロードと比べて高い場合と低い場合があるようですが、オフロードを意識して地上高を稼いでいるか、あくまでロードに近い重心になるようにタイヤの厚みの分下げているか、の違いだと想像しますがそのあたりは分かりません。
重心が高い方が/低い方が安定する、という話に関しては、重心が変化しにくい=安定と取るか、重心を変化させやすい=コントロールしやすい=安定と取るかの話だと思いますが本筋から逸れるので割愛します(需要があれば書きますが)。
ただ実際同じ700×25Cのタイヤでもメーカーによって実測の直径は違いますし、フレーム販売のみの車種だと「想定されるタイヤ外径」と言われても一概には言えないですよね…。特に複数のホイールサイズに対応と言われると、設計上どのサイズを基準にしたのか、あるいは間を取ったのか、そこまではメーカーも公表していないですよね。
これはその通りでして、タイヤサイズが変わればタイヤの直径が変わります。
完成車に付けるタイヤの実測値まで考慮して選んでいるのかというと、たぶんそこまでは考えていないのではないでしょうか?
25cなら25cの標準値を元にフレーム設計しているのかなと・・・
タイヤもメーカーによってバラツキはありますが、一般的に言われるタイヤ周長から、タイヤの半径を計算するとこうなります。
タイヤサイズ | タイヤ周長 | タイヤ半径 |
700×23c | 2096mm | 333.8mm |
700×25c | 2105mm | 335.2mm |
700×26c | 2117mm | 337.1mm |
700×28c | 2136mm | 340.1mm |
700×32c | 2155mm | 343.2mm |
700×35c | 2168mm | 345.2mm |
700×38c | 2180mm | 347.1mm |
700×40c | 2200mm | 350.3mm |
円周=2πrなので、π=3.14で計算。
23cと28cだと、おおよそ6mm半径が違うわけです。
つまり、【BBハイト】という観点で見ると、23cタイヤを履いた場合に比べ、同じフレームなら28cにすると6mm上がると言えます。
それを踏まえて、前に各社のBB下がりをまとめた表に、完成車で付いているタイヤサイズを追記してみます。
完成車には、きっとそのフレームに適したタイヤサイズが付いているだろうと仮定してます。
(フレームセット販売は、MAXタイヤサイズがわかったものだけ掲載)
メーカー | 車種名 | タイプ | タイヤサイズ | BB下がり | ||
小さめサイズ | 真ん中サイズ | 大きめサイズ | ||||
スペシャライズド | S-WORKS TARMAC SL6 DISC | レーシング | 26c | 74mm | 72~74mm | 72mm |
S-WORKS VENGE DISC | エアロ | 26c | 74mm | 72mm | 72mm | |
S-WORKS ROUBAIX | エンデュランス | 28c | 77.5mm | 76mm | 74.5mm | |
S-WORKS DIVERGE | グラベル | 38c | 85mm | |||
LOOK | 795 BLADE RS | エアロ | – | 65mm | ||
785 Huez RS | レーシング | – | 65mm | |||
765 OPTIMUM | エンデュランス | 25c | 68mm | |||
トレック | MADONE SLR9 DISC | エアロ | 25c | 72mm | 70mm | 68mm |
EMONDA SL | レーシング | 25c | 72mm | 70~72mm | 68mm | |
DOMANE SL | エンデュランス | 32c | 80mm | 80mm | 75mm | |
CHECKPOINT SL | グラベル | 40c | 78mm | 76mm | 74mm | |
ピナレロ | DOGMA F12 | レーシング | 28C? | 67mm | 72mm | 67mm |
DOGMA FS | エンデュランス | – | 72mm | |||
GREVIL+ | グラベル | – | 67mm | |||
コルナゴ | C64 | レーシング | 28cまで | 65mm | 70mm | 70mm |
CONCEPT | エアロ | 28cまで | 65~69mm | 70mm | 70mm | |
G3-X | グラベル | 40c | 70mm | |||
キャノンデール | システムシックス | エアロ | 23c | 74~79mm | 72mm | 69mm |
スーパーシックスEVO | レーシング | 25c | 74mm | 72mm | 68mm | |
シナプスカーボン | エンデュランス | 28c | 75mm | 73mm | 70mm | |
トップストーンカーボン | グラベル | 37c | 69mm | 61~64mm | 59mm | |
ラピエール | XELIUS SL | レーシング | 25c | 67mm | ||
AIRCODE SL | エアロ | 25c | 67mm | |||
PULSIUM | エンデュランス | 25c | 72mm | 69~72mm | 69mm | |
メリダ | Scultura Limited | レーシング | 25c | 66mm | ||
REACTO DISC | エアロ | 25c | 70mm | 66~70mm | 66mm | |
RIDE | エンデュランス | 25c | 65mm | |||
SILEX | グラベル | 38c | 75mm | |||
YONEX | AEROFLIGHT | エアロ | – | 68mm | ||
CARBONEX HR | レーシング | – | 68mm | |||
ビアンキ | スペシャリッシマ | レーシング | 25c | 58mm | 68mm | 68mm |
オルトレXR4 | レーシング | 25c | 58mm | 68mm | 68mm | |
インフィニート CV DISC | エンデュランス | 28c | 68mm | |||
IMPULSO ALLROAD | グラベル | 35c | 68mm | |||
スコット | FOIL | エアロ | 28c | 66mm | ||
ADDICT RC | レーシング | 28c | 70mm | |||
ADDICT | エンデュランス | 32c | 67mm | |||
SPEEDSTER GRAVEL | グラベル | 35c | 67mm | |||
サーベロ | S5 DISC | エアロ | 25c | 72.5mm | 70~72.5mm | 70mm |
R5 DISC | レーシング | 25c | 74.5mm | 72~74.5mm | 72mm | |
ASPERO DISC | グラベル | 40c | 78.5mm | 76~78.5mm | 76mm | |
BMC | TIMEMACHINE ROAD | エアロ | 25c | 70mm | ||
ROADMACHINE | レーシング | 28c | 71mm | |||
ROADMACHINE X | グラベル | 34c | 71mm | |||
TEAMMACHINE SLR | レーシング | 25c | 69mm | |||
※ピナレロGREVIL+は、適合タイヤが【25c以上】(700cの場合)
※キャノンデール システムシックスは【700 x 26mm (23c)】とスペック表にあり。
こう羅列してみても意味が分からないので、同じカテゴリ同士で比較してみます(レーシングモデル)。
メーカー | 車種名 | タイヤサイズ | タイヤ半径 | BB下がり(フレームサイズ別) | ||
小さめ | 中間 | 大きめ | ||||
スペシャ | S-WORKS TARMAC SL6 DISC | 26c | 337.1mm | 74mm | 74~72mm | 72mm |
トレック | EMONDA SL | 25c | 335.2mm | 72mm | 72~70mm | 68mm |
ラピエール | XELIUS SL | 25c | 335.2mm | 67mm | ||
メリダ | Scultura Limited | 25c | 335.2mm | 66mm | ||
ビアンキ | オルトレXR4 | 25c | 335.2mm | 58mm | 68mm | |
スコット | ADDICT RC | 28c | 340.1mm | 70mm | ||
サーベロ | R5 DISC | 25c | 335.2mm | 74.5mm | 74.5~72mm | 72mm |
BMC | ROADMACHINE | 28c | 340.1mm | 71mm |
レーシングカテゴリのロードバイクだけを抽出してみました。
スペシャのS-WORKS TARMAC SL6 DISCとトレックのEMONDA SLの小さめサイズだけの比較でいうと、ターマックのほうが2mmほどBBは下がっているけど、タイヤ半径は約2mm大きいので、両者の比較でいうとほぼ同じと言えます。
これらアメリカンブランドと比較すると、メリダのスクルトゥーラあたりは、かなりBB位置が高めです。
BB下がりが小さいうえに、タイヤも25cなので、完成車同士の比較でいうと、こうなります(小さめサイズの話)。
・対ターマックSL⇒BBが8mm高く、タイヤ半径が2mm小さいので、トータルでいうと6mm高いイメージ
ビアンキのオルトレXR4の最小サイズもかなりBB位置は高めかと。
このあたりの設計思想は、よく言われるように、
・BB下がりが大きい=安定性重視
・BB下がりが小さい=機敏性重視
このようなフレームの設計思想なんでしょうけど、どのタイヤサイズをセットするか、ある程度メーカーが意識しているのだろうと思われます。
ただし何か法則性があるのかというとそういうわけでもないようで、26cとか28cの太めのタイヤを標準装備している完成車だと、BB下がりを大きく取っている傾向(S-WORKS TARMAC SL6 DISC、ADDICT RC、ROADMACHINE)で70mm以上のBB下がり。
これは重心を下げる方向なんだとわかります。
BB下がりが小さい車種は、大きなタイヤサイズを使うと足つきは良くなるでしょうけど、ペダルと地面の距離がかなり近づく印象です。
BB下がりをどう見るか?
LOOKとかは、BB下がりが小さい(BB位置は高め)です。
この辺りは乗り味の好みなのかなと思うのですが、このような意見も頂いてます。
私はジオメトリの中でBBドロップを特に重視していて値が異なる三つのフレームを持っているのですが、BBの高さがそのまま重心の高さに比例していると感じます。
所持しているのは66mm(ディスク)、70mm(リム)、76mm(ディスク)ですが現在はリムは乗っていなくて66mmと76mmを乗るので76mmを長く乗ったあとに10mmも違う66mmを乗ると慣れるまですごくヒラヒラしていて真っ直ぐ走るのが難しく感じます。(もちろんそれ以外の要素もあると思いますが)
最近はディスクブレーキだと重心が下がるという記事を見ますが、BBドロップの影響のほうがはるかに大きく感じるので、ブレーキ位置はそれほど関係ないのではと思っています。最近のフレームがBB下がりを大きく取るのが流行なのがディスクブレーキの重心と混ざって評価されているような感じを受けます。
BB下がりを重視しているという方のご意見です。
ヒラヒラするというのも、純粋にBB下がりだけが関係しているとも言えないので難しいですが、結構乗り味に影響を与えうる要素なことには間違いなさそうです。
そして付けるタイヤサイズ次第でも、変わってきます。
タイヤサイズが変わると、純粋な高さだけの要素以外にも、タイヤの太さによる安定感もあるので、一つの要素だけで語ることも難しい。
さきほどの表を、グラベルロードだけでやってみます。
メーカー | 車種名 | タイヤサイズ | タイヤ半径 | BB下がり(フレームサイズ別) | ||
小さめ | 中間 | 大きめ | ||||
スペシャ | S-WORKS DIVERGE | 38c | 347.1mm | 85mm | ||
トレック | CHECKPOINT SL | 40c | 350.3mm | 78mm | 76mm | 74mm |
コルナゴ | G3-X | 40c | 350.3mm | 67mm | ||
キャノンデール | トップストーンカーボン | 37c | 69mm | 64~61mm | 59mm | |
メリダ | SILEX | 38c | 347.1mm | 75mm | ||
ビアンキ | IMPULSO ALLROAD | 35c | 345.2mm | 68mm | ||
スコット | SPEEDSTER GRAVEL | 35c | 345.2mm | 67mm | ||
BMC | ROADMACHINE X | 34c | 71mm |
こうみると、やっぱスペシャライズドは断トツで低重心化したい傾向が強いですね。
このあたりは、太いタイヤを履くことが前提の設計でしょうから、間違っても細いタイヤを履くと無理が生じるかと・・・
同じ40cを履くグラベルロードでも、トレックのチェックポイントSLとコルナゴのG3-XはBBの高さがだいぶ違う。
このように、同じカテゴリの【レーシング】とか【グラベル】でも、選ぶフレーム、選ぶ完成車次第で、乗り味は結構変わってきます。
同じグラベルというカテゴリ内でもこれだけBB下がりに幅があるのが現状。
自分にベストなのがどこなのかというのは難しいところですが、試乗車に乗ったときに、ジオメトリを見てBB下がりをチェックしておくのもいいかもしれません。
ジオメトリの中では脚光を浴びにくいポイントですし、純粋なフレーム選びだとリーチとスタックあたりに目が行きますが、リーチとかスタックはサイズ選びのため、BB下がりとかチェーンステイ長とかは乗り味にかかわるので、試乗車で気に入ったものがあれば、即座にメモっておくといいかも。
最近のトレンドとしては、BB下がりを大きく取って低重心化・・・なのかなと思うのですが、必ずしもそうではなかったりすします。
また、リムブレーキ車とディスクブレーキ車でBB下がりを変えている車種もあるのかなと思っていくつか確認したのですが、オルトレXR4とか同じですし、スコットのアディクトも同じ。
BMCも同じでリムブレーキ車とディスクブレーキ車で、BB下がりを変えているというわけでもなさそうです。
(同じ車種同士での比較)
ちなみに後編なんですが、こっちのほうが私には難しい話題です。
多くのメーカーは、フレームサイズが大きくなるにつれて、BB下がりが小さくなります。
そんな中、フレームサイズが大きくなるにつれて、BB下がりも大きくなる車種があるが、どのような効果を狙っているのか?という質問です。
この質問はやや降参気味ですw
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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