先日ですが、ウーバーイーツの配達員が、路肩に停車中の軽トラに接触してミラーを破壊みたいな記事が出ていました。
そもそもの話として、自分の自転車の幅(荷物など含む)と軽トラの距離を考えて、ドアが突然オープンになる可能性まで考えたら最低でも1.5m以上は車間(横)を開けて通りなよとしか思わないのですが。
このウーバーの人は当て逃げなどするつもりはなく、【しまった】と思った矢先にクラクション鳴らされて停止しているので、逃げようという意思は全く無いのは誰でも分かると思います。
逃げる気なら、クラクションごときで怯まずに逃走しますし。
ただこういう場合、法的解釈を大きく間違っている人もいるような気がします。
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【もし仮に】当て逃げした場合
こういうケースで【もし仮に】当て逃げした場合、いったい何の容疑で捜査対象になるのか?という話です。
※繰り返しますが、ニュースの事例では逃走していません。
ミラーが破損しているから器物損壊容疑・・・と考える人もいるのかもしれませんが、器物損壊は基本的に無いです。
ありえないと言ってもいい。
この場合、交通事故があったにもかかわらず、警察への通報を怠ったということで道路交通法72条違反の容疑として捜査対象になる。
事故があったときには警察への通報義務がありますので、逃げるということはそれを怠ったことになる。
器物損壊を勘違いしている人は多い気がするのですが、器物損壊は刑法261条。
刑法は原則として故意犯じゃないと成立しない(刑法38条)。
こういう場合、故意ではなく過失なので器物損壊は成立しないことが普通です。
というよりも、ほぼ100%、器物損壊は成立しない。
未必の故意も成立しないです。
当然ですが、秘密の恋でもない。
単に民法709条の不法行為による損害賠償となるだけの話です。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
他人が所有権を持つミラーを壊してその利益を侵害したわけで、それに対する賠償責任が生じる。
器物損壊にはなりません。
言い方は荒っぽいものの、単に不法行為による損賠賠償請求権を行使しただけですし(民法709条)、過大な額を請求したわけでもないので恐喝等に当たる可能性もない。
器物損壊で思い出した事例があるのですが、駐輪場に置いておいたママチャリがなぜか戻ってきたら破損していた事例。
こういうの、すぐに【器物損壊だ!】と騒ぎ出す人がいるのですが、実際に防犯カメラで映像を確認したところ、地震?何らかの建物の揺れ?で隣の自転車が倒れてきて、隣の自転車の突起物がチューブのバルブにヒットして折れた、みたいな話だったとか。
これは故意には当たらないのは誰でもわかる。
秘密の恋、いや未必の故意も成立する要素が無い。
隣の自転車の所有者の過失になるのか・・・というと、まず難しいでしょう。
元々スタンドが破損していたとかなら話は変わりますが、元々壊れていたかどうかの立証責任も被害者側にあるわけで、事実上不可能に近い。
故意ではない以上、器物損壊にはならない。
過失でもないなら、損賠賠償請求権も発生しない。
示談が済んでいるわけで
先ほどのウーバーイーツの事例。
本来は当事者二人ともに、警察への通報義務を怠っていると言えるのですが、実際に通報したと仮定します。
警察官が来てお互いの話を聞いて現場検証して、器物損壊でもなければ道路交通法上も特に違法な行為があるわけではないので、あとはお互いに納得行くまで話し合って解決してくださいとなります。
警察から【いくら払うべきだ】という話には絶対にならない。
これは民事不介入の原則ですね。
警察は事故自体については、報告書などを作成する必要があります。
警察内部での報告書などを作成したら、それ以上のことは民事なので警察が介入できない。
この場合、軽トラとウーバー配達員の間で示談が成立していると見なされるので、本来は通報義務があるので問題なんですが、まあとりあえずは解決している。
そもそも論ですが、停車中の車の横を通って前に出るときは、ドアが開く可能性まで視野に入れて1.5mは最低でも車間を開けるのが基本。
ドアがいきなり開いたら、自転車側は爆死しちゃいますので。
ちなみにですが、ちょっと前に、信号待ちで停車中、クロスバイクに当て逃げされたのですが、
これも本来は警察への通報義務がある・・・と言いたいところなんですが、相手のクロスバイクは当たったことを認識していない。
こっちもハンドルが当たったような感触で左に切れたけど、どこにも傷がなければ、明確にどこに当たったかどうかは全くわからない。
相手が当たってないと主張している以上、事故が本当にあったのかどうかの立証責任は私のほうになります。
なので相手が事故なんて起きていないという姿勢な上に、こっちもどこかに当たったような気もするが明確ではない、という感じなので、そもそも事故があったのか?というところになってしまうわけです。
なので必ずしも通報義務があるとはいえない。
今回のウーバーの件を見る限り、根本的な問題としては、軽トラ運転手が吐いた言葉。
これが全てだと思うんですよね。
そんな至近距離で横を通れば、当たる可能性は普通に出てくる。
自転車乗りとしては初歩中の初歩の技術というか、技術というほどのことでもないわけですが、停車中の車の横を通過して前に出るときは、最低でも1.5mは開いていないと、ドアが突然開いて爆死するというのが基本。
1.5mでも開いていれば、ミラーに引っ掛けることもありえないですし。
誰かに何かを壊されたときに、それが故意であれば器物損壊ですが、故意による破壊行為というのは、例えば蹴るとか殴るとか。
大きく振りかぶって殴ったのに、間違いました、過失ですということはあり得ないので。
秘密の恋、いや未必の故意も成立するようなものではないので、民事上の不法行為による損害賠償請求だけなんですよね。
今回は警察への通報義務も怠っているわけですが、当事者は逃げたわけでもないですし。
どうでもいいですが、秘密の恋ってなんかエロイですね。
一回言ってみたいんですよね。
法廷のような厳粛な場で、【ひ、ヒミツの恋が成立する!!】と。
ウーバーって何か好きにはなれませんが、停車中の車の横を通って前に出るときは、車間距離(横)を開けるのは鉄則。
器物損壊だ!と騒いでいる人を見ると、それはさすがに酷いなと思うのですが。
犯罪事案ではなく不法行為事案であって、弁済して和解しただけの話だと思うのですが。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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