うちのブログの件を取り上げているようだったので。
制限速度云々に関しては、「27条適用されない派」のブログに、「自転車に27条が適用されることを認める判例」が載っている(1次ソースなし)が、「適用されない判例」を求めるも返答なし。多分ないから妄想で語ってるのでしょう。あるなら出してるだろうし
— いべ (@stvSpring) October 10, 2021
たぶん、理解していないんだろうなと思う点があるので。
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一次ソース
一次ソース無しと書かれてしまいましたが、判決文の一次ソースって判決正本になってしまうので、当事者か裁判所で複写した人しか持ってないと思いますよ。
判例検索ソフトから引っ張ってきているのですが、判例検索ソフトは二次ソース。
ちなみにですが、裁判所のHPでも多少は判例を調べることができます。
あれは本当にごく一部の判例のみで、基本は民間の判例検索ソフトなどを使って調べることになっります。
こういうのを使いたいなら自分で契約するか、公立の図書館でも使えることがありますので頑張ってください。
私は自力で裁判をしていた関係である程度調べることが可能な環境にいますが、間違ってもグーグルとかで検索しても出てきませんよ。
弁護士さんのHPとかでも判例をごく一部紹介しているケースもあるでしょうけど、あれも二次ソース(判例検索ソフトなど)から引っ張ってきているはず。
判例時報とか判例タイムズとか、雑誌関係でも調べることは出来るでしょうから、そういうのは大きな図書館に行けばあると思います。
判例の紹介で一次ソースという人って、そもそも判決文ってどうなっているか理解していないのかと。
判決文の一次ソースを出せなんて言われたら困っちゃいますよね。
どうでもいい話として。
判決文って平成13年までは縦書きでした。
それ以降は横書きになっています。
判例検索ソフトなどを使っていると、古い判例だと誤記ってそこそこ目立ちます。
誤記というよりも誤字なんでしょうけど、通算2回見かけた間違いは、【自転軍】。
おいおい、軍隊扱いかよwと噴出しそうになるのですがこれは誰かが間違って入力した結果ということなんでしょうか。
それともスキャナかなんかで読み込んでいるのかわかりませんが、手作業だと軍隊扱いにはしないでしょうし・・・謎。
ほかにも時々、判決文を写し間違えているのでは?と思うような意味不明な判決文も見かけるのですが、ああいうのは誰かチェックしないのだろうか?と不思議に感じます。
そういえばの話ですが、昨年までしていた行政訴訟について、ある会員制の判例公開サイトさんとひょんなことから縁が出来まして、求めに応じて判決文や一部の準備書面、訴訟で使った証拠類など提供しました。
別に提供する義務もないし、本来であれば彼らが裁判所で情報を掴んで閲覧謄写申請をして得るものだと思うのですが、恩を売っておいたほうが後々いいことがあるかもwというだけの理由で提供しました。
判決が確定しているので、持っておいても私にとってはただのゴミでしかないし、活用したい人がいるなら預けてしまったほうがいい。
けどああいうのもどうも手作業で入力し直しているっぽい。
民事と刑事の差
これもちょっと誤解を生みかねないので難しいのですが、27条の判例を紹介したのはあれは民事なのは誰でも理解できると思います。

さて、ここからが問題です。
①刑事事件として道路交通法違反を争ったケース。
②刑事事件として自動車運転処罰法違反を争ったケース。
③民事事件として過失割合を争ったケース。
これ、微妙に意味が違うんですよ。
民事の場合、道路交通法違反を争っているわけではなくて、民法709条による不法行為責任を争っています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この場合の過失って、道路交通法違反がそのまま過失になることもあれば、事故とは無関係の違反であれば過失にならないこともあるし、そんでもって道交法の刑罰規定を超えた部分も過失になりうるということ。
27条の判例のケース、双方がどのように主張したのかイマイチはっきりしませんが、そのあたりについてはこちらに書いておきました。

刑事事件として道路交通法違反を争った場合は、法解釈は厳格になされます。
国家が刑罰を与えるのだから勝手に解釈を変えちゃダメなのは理解できる。
民事の損害賠償って、もうちょっと広い概念。
27条2項って左側端に寄って譲る義務が書いてあるわけですが、一時停止までは求めていない。
これは法律の条文を見れば理解できますね。
第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
できる限り左側端に寄ることは求めていますが、一時停止せよとは書いていない。
徐行せよとも書いていない。
1項の規定で加速してはならない義務があるが、2項では譲り方の具体例としては【できる限り左側端に寄ること】以外の方法を求めていない。
もし左側端に寄ることと一時停止することを求めているなら、こんなイメージの条文になる。
できる限り道路の左側端に寄つて、かつ道路状況により一時停止をしこれに進路を譲らなければならない
これであれば左側端に寄ることと、道路状況次第では一時停止も求めていることになる。
なので27条の刑罰規定としては、左側端に寄らなかった場合のみ違反となる。
ところが民事で事故の賠償責任を争うときには、事故回避のために一時停止して譲るという選択肢もあるわけ。
ずっと走行しつづけないといけない義務もないし、事故回避のために危ないと思えば適宜速度を調整して速度を落とすとか一時停止することで後続車を先に行かせるという選択肢もあるわけで。
左側端に寄った以上、停止しようと走行し続けようと追越しに必要な道路幅が増えるわけでもないけど、危険度としては先行車が一時停止なり徐行なりしてくれたほうが事故を回避できる可能性は増える。
こういうのって27条の概念を流用した事故回避義務について争っているとも言えるわけですが、刑事事件で違反ではない行為が、民事だと過失になることもあるということ。
こういうところまで理解していないと、意味を取り違えると思いますよ。
マジで。
例えばこちらでも紹介した判例。

片側2車線道路で車両通行帯ではない道路。
大型車が第1車線、原付が第2車線を通行していて、大型車が第2車線に進路変更したことで起こった衝突事故。
片側2車線道路でも車両通行帯ではないので、原付は18条1項に基づき左寄り通行義務があります。
とはいえ、どこまでが左側でどこからが左側端か明らかではない上に、18条1項には罰則がないので原付が違反とは言えない。
けどこの事故、原付に2割の過失を付けています。
その理由は上の中身で確認してもらえばいいですが、立法趣旨からいえば事故回避のために左側端を走るべきだったということで過失にしているわけです。
刑事では違反になることはありません。
罰則がない条項ですし。
けど民事では過失になる。
横断歩道を渡る自転車についても同様。
38条では横断歩道を渡る歩行者に対しての保護義務と、自転車横断帯を渡る自転車に対して保護義務を課しているわけなので、横断歩道を渡る自転車に対しての保護規定ではない。
なので刑事としては、横断歩道を渡ろうとする自転車に対して一時停止をしなくても違反が成立することはないけど、民事だと過失になることもある。

この中では民事過失割合の判例と、一部ですが刑事事件の判例も載せましたが、刑事事件についても道交法違反を争っているわけではないんですね。
今でいうところの自動車運転処罰法における過失運転致死傷罪について争っている。
なので刑事の判例でも、38条は横断歩道を渡る自転車に対して向けたものではないと判示しつつ、安全運転義務を怠ったというところから過失運転致死傷罪の成立を認めているということ。
この判例、重要な指摘が書いてあります。
自動車運転者としては、同法70条による安全運転義務があるのはもちろん、交通の実情を踏まえた注意義務が求められるのは当然である(所論は、道路交通法上の義務と自動車運転過失致死罪における注意義務を同一のものと理解している点で相当でない。すなわち、信頼の原則が働くような場合はともかく、前者がないからといって、直ちに後者までないということにはならない。)
【判例】自動車対自転車〜横断歩道上での事故(平成20年6月1日道路交通法改正後の判例) | 交通事故の弁護士相談は慰謝料協会|妥当な慰謝料を。道路交通法2条において、「横断歩道」とは「道路標識又は道路標示により歩行者の横断 …
当時だとまだ自動車運転処罰法が成立していない時期だったはずなので、刑法による自動車運転過失致死罪だと思うのですが、道交法の注意義務を果たしたところで、自動車運転過失致死罪の注意義務(過失)は同一ではないことを明確にしています。
これ、民事の過失割合(民法709条)も同じ。
こういうことを理解していないのだろうと思うので、
「27条適用されない派」のブログに、「自転車に27条が適用されることを認める判例」が載っている
こういう程度の見方しかできないのかと。
派って・・・
道交法の違反(刑罰)としては、自転車に対し27条が成立することはありません。
けど民事では過失になりうるという判例です。
個人的には主張内容が間違っているのでは?と思うのですが、あれは地裁ですが控訴審。
日本は3審制とは言え、上告って判決が不服というだけではできないシステムになっています。
そもそもあの判例って、27条が成立するけど義務を果たしたということで、そこに対しては自転車に過失を付けていない判例です。
過失が付いたのは全く別のポイント。
追いつかれた車両の義務は自転車には関係ないけど、事故が起こったときに過失として評価される可能性もありますよという意味での紹介でしたが、ここまで真意を理解できない人がいるとは思いもしませんでした。
だからツイッターは
ツイッターが時々、社会問題などでは有用なことは認めます。
けどこういう安易で、根拠がない不勉強な意見が飛び交うことが多いので好きではありません。
まずは執務資料道路交通法解説と注解道路交通法などの解説書を読んで、さらに判例なども調べた上で語ったほうがいいと思いますよ。
執務資料も時々怪しい記述があるので、鵜呑みにするのではなくて、複数の解説書を見たり国会議事録をみたり、法律の条文を検討したりしながら取捨選択して整合性を取ることが先。
まあ、27条の解釈は私もずいぶん前は間違えたので、【政令で定める最高速度】をしっかり考えないと意味を間違うとは思いますが。
弁護士さんでもここの意味を取り違えている人もいますし。
ちなみにですが、道交法違反として自転車に27条の適用があるか?なんて判例はあるはずも無いのです。
そもそも、道交法違反として刑事事件になるには、逮捕なり書類送検から起訴されない限りは判例になることもない。
そもそも適用外の条項の判例があるはずも無いのは理解できると思いますが、適用外なのに書類送検したらとんでもないことになります。
道交法違反って、車だと反則金制度があるので判例も少なく、自転車は反則金制度が無いからこそほぼ不起訴(99%程度)なので、探しても民事ばかりヒットします。
存在する確率がほぼ0%なのに判例を持って来い!という人って、ただのバカなんだろうなとしか思わないことにしているのですが、世の中って判例絶対主義者みたいな人もいるのでホントややこしいですね。
前もいたんだよなぁ。
法の条文で明らかなのに、判例を持ってこない限り認めないという人。
その時点で無能だと理解できるので、ある意味では便利なんですが。
こちらでも書いたのですが、

後続バスに追い抜かれた際に、事故回避義務があると言えばあるので、強いて言うならペダリングを止めて減速しておくと万が一事故った際には事故回避義務を果たしたと評価されるかもしれません。
けどこれ以上左側端に寄れる余地はないので、18条1項の違反も成立する余地はありません。
ほかにも事例を挙げておきます。
自転車のが逆走は違反ですが、自転車同士が衝突した場合の過失割合は、生活道路では50:50とされています。

逆走という重大な違反を犯したにもかかわらず、順走している自転車が痛み分けなんて酷い話ですよw
なぜこういう評価になるのかを考えてみれば、刑事と民事の差が理解できるかもしれません。
まあ当サイトを普段から見ている方は、義務だとかどうのこうのの前に、事故らないように気をつけている人が多いとは思うのですが。
ツイッターの動画の件も、黄色信号で止まらなかった理由として後続バスが迫っていたからだとしていますが、バスの接近を感知していたなら、私なら一時的にこっちに退避します。
これは法律上の義務ではなくて、単なる自己防衛。
自転車に接近するバスなんてろくなもんじゃない、と判断するので、どうせまともな追越しをしてくれないだろうと予測するので。
けどこれは単に自己防衛論の話であって、法律上の義務ではないことに注意。
義務を果たしても爆死したら意味がないと思っているので。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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