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自転車に対する追越しは、側方距離を取っていても過失が大きくなる判例。

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自転車を追い越すときには、十分な側方間隔を取り、減速するというのが本来の法律(28条4項)。
今回は十分な側方距離を取っていたのでは?と思う判例です。

自転車を追い越す際に衝突事故

事故の前提です。

・道路は片側1車線、左右に路側帯あり
・先行自転車は左路側帯付近を時速約5キロで走行していた
・後続オートバイは、追い抜きのためセンターライン付近を時速約20キロで走行した
・先行自転車が合図もなく急に右に進路を変えたため、後続オートバイと衝突した

つまりはこういう状況。

一般的にはそれなりに側方間隔を取った追越しと評価されるような気もします。
オートバイも高速度というわけでもありません。
さて、この判例での過失割合はどうなるでしょうか?

 

答えは、自転車:オートバイ=30:70です。

本件事故は、先行する自転車と後方から進行した二輪車の事故であるところ、追越ししようとする車両は、前車の進路等に応じて、できる限り安全な速度と方法により進行しなければならない義務があるにもかかわらず(道路交通法28条4項)、被告は、原告車を追い越すに際し、原告車の動静を注視せず、原告車を追い越そうとした過失がある。
他方、自転車は、同一方向に進行し、進路を変えるときには、合図をし、進路変更が終わるまで当該合図を継続しなければならない義務があるにもかかわらず(同法53条1項)、原告は、合図をせず、後方を注視することなく原告車を右方に進路変更させ、被告車の進行を塞いだ過失がある。これらを総合考慮すれば、原告の過失割合を30%、被告の過失割合を70%とするのが相当である。

 

平成26年1月16日 東京地裁

なお被告側(オートバイ)の主張としては、75:25が相当だと主張していたので、まさかのビックリ30:70というところでしょうか。

(追越しの方法)
第二十八条
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない
(合図)
第五十三条 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。

判決文には出てきませんが、「右方に進路変更させ、被告車の進路を塞いだ」という部分は26条の2第2項の違反と考えられます。

(進路の変更の禁止)
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない

状況にもよるでしょうけど

この判例では、後続オートバイが十分な側方間隔を取っていた上に、時速約20キロ程度と決して高速度だったわけでもないですが、追越し時の後続車の責任を重く見たということでしょうか。
ノールックで突如進路変更されると、さすがに対処できない可能性はあるとは思いますが、優者危険負担の原則もあるのでこのような結果なのかもしれません。

 

優者危険負担の原則。強い人が大きな注意義務と責任を負う。
先日もちょっと上げた事例ですが、 これは優者危険負担の原則なので、しょうがないです。 優者危険負担の原則 簡単にいえば、強者が弱者よりも大きな注意義務を負い、大きな責任を負っているという原則なので、基本強者のほうが過失が大きくなる原理です。...

 

28条4項では「前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」とあります。
できる限りというのは、このように判示されています。

できる限りとは道路や交通の状況等をかんがみ支障のない範囲における可能な限度を意味すると解され、単に運転者の主観において可能な限度を持って足りると解すべきではない

 

昭和46年9月14日 名古屋簡裁

上の判例でいうと、具体的な側方距離は記載されていませんが、2m以上は空いていたのではないかと想像できます(自転車は左路側帯付近、後続オートバイは中央線付近)。
後続オートバイの速度も約20キロなので決して高速度というわけではないですが、このように追越し時の後続車の責任を重く見た判例もある。
(注:全てのケースで同じような過失割合になるとは限りません)

 

こういう判例を見れば、自転車の横ギリギリで追越し、追い抜きする車って危険なことは勿論として、相当なリスクを背負って実行しているとも言えます。
当たり前の話として、ロードバイク乗りは進路変更する際には後方確認してから実行すると思いますし、このケースでは前方に障害物があったための進路変更というわけではなさそうです。
なのでロード乗りであれば進路変更することなく道路に沿って進行する人が圧倒的多数だとは思います。

 

ただまあ、ロードバイクがママチャリを追い越すときであっても、似たような判断が下される可能性もあるので、ママチャリについては相当注意して追越ししないと自らの責任が大きくなり得るということです。

 

なおこの事故、まだ路側帯の左側通行義務ができる前の判例なので、もしかしたら反対側路側帯に横断したかったのでは?と思いますが、原告の主張としてはそもそも進路変更をしていない、後続車が勝手に突っ込んできたという主張になってます。

 

追越し時に側方距離をしっかり取る、減速するなど安全確保に努めるのは後続車の義務ですが、割としっかり目に側方間隔を取っても、自転車の過失は小さくなり後続車の責任が大きくなる可能性はあるという話です。
ですがこの事故を防ぐとしたら、側方間隔はこれ以上取りようが無いですし、自転車の速度(約5キロ)に近い速度まで減速していないと衝突を避けることが困難だったようにも思えるので、現実的ではないような気もします。
確かに安全性重視で言うならば、この道路はさほど広いわけではないので、時速10キロ程度まで後続オートバイが減速していれば回避できたとは思いますが・・・

 

こういう判例を見ると、後続車はより慎重に、側方間隔を取り、自転車の速度に近いところまで減速していないと自らの責任が大きくなっちゃいますね・・・
ロードバイクの横スレスレをビューンと飛ばして追い抜きする車とかいますが、仮にそれで事故を起こした場合は後続車の責任が重大というわけです。




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