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逆走と妨害運転罪。

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ちょっと前にあった報道ですが、片側三車線の幹線道路を自転車で逆走した事件がありましたよね。

 

自転車による妨害運転で逮捕!?逆走による妨害運転罪。
ちょっと前に、自転車を逆走し車道に自転車を放置したドラレコ映像が話題になっていましたが、道路交通法違反(妨害運転)で逮捕だそうな。妨害運転罪で逮捕逆走した上に車道に駐輪する謎プレイですが、なんとびっくりの妨害運転罪。第百十七条の二の二十一 ...

 

まさかの妨害運転罪(逆走)を適用したわけですが、逆走違反と、逆走による妨害運転罪は明確に分けられています。
もちろん刑罰の重さは圧倒的に妨害運転罪のほうが上。

 

何を基準に分けるのでしょうか。

逆走による妨害運転罪

妨害運転罪の成立は主に三点。

①妨害運転に規定された違反(この場合17条4項)であること
他の車両等の通行を妨害する目的
③当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるもの
第百十七条の二の二
十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為

結局、単なる逆走違反と妨害運転罪の差は、②と③を認定できるかどうかになります。

 

追い越しのためにセンターラインを越えたことを妨害運転とみなした判例があります。

本件事故当時、対向車線には相応の交通量があり、被告人がこれを認識できなかったというような事情も窺えない。そうすると、被告人は、対向車線に自車を進出させれば、対向車の通行を妨害することになることは当然認識していたというべきである。
(中略)
このような場合、被告人は、自らの運転が、対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり、対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認め

 

熊本地裁 令和元年12月20日

要は交通量が多い幹線道路で逆走すれば、それだけで妨害する未必の故意を認定できるという意味なんでしょう。

 

ところが自転車って、車幅が車よりもだいぶ「薄い」。
なので逆走しただけで必ず「妨害する目的」だとは認定できないと思われますが、車道外側線の外側が十分広いにもかかわらず、第一車線の中を逆走した。

たぶんこれ、車道外側線の外側を逆走しただけなら妨害運転罪までは適用できないと思う。
言い方はビミョーだけど、車道外側線が広いので、車道外側線の外側を逆走する分にはそこまで「妨害意志」を認定できないのね。

 

結局のところ、こんな理屈なのでは?

①交通量が多い幹線道路なのは見りゃわかる
②その道路を逆走すれば、妨害することになるのも認識できる
③車道外側線の外側を逆走したなら単なる「逆走」、車線内を通行すれば妨害する結果になるのは認識していたから妨害運転罪

単なる逆走なのか、妨害する目的の逆走なのかは道路状況や逆走していた位置などを含め判断されることになると思われます。

どうでもいい話ですが

「道路の中央を走っていた」とか「自転車通行可の歩道があるのに車道を走っていた」などと報道したことにやたら噛みついていた人とかいますが、もちろん意味としては上で書いた通り。

 

「真ん中」の意味をそのまんま受け取ったりする人は大変だよなと思うけど、マスコミの報道なんて「いつも一言足りない」のが常。

 

あんな報道に噛みついたところで、逆走自転車を擁護していると取られかねないこともわからないのか不思議です。
何ら擁護する点はないので。

 

ちなみに「歩道を通行できるのに」という点については、あえてマスコミ風に「一言足りない」引用しますがこんな判例があったりする。

本件道路においては自転車も歩道を通行することができるから、車道や本件路肩部分を通行する必要はない

 

平成31年4月12日 広島高裁岡山支部

歩道を通行できるから、車道を通行する必要はない!と高等裁判所が述べてます。
あっ、もちろん控訴人や被控訴人の主張ではなくて、裁判所の説示。
被控訴人(原告)はロードバイクです。

 

一言足りない報道って確かに良くないよね。
誤解を生むことがあるから。

 

ところでこの判例、なぜこうなるのかについてはあえて書かないというサプライズをしてみます。
何について争ったのかと、義務と必要性の違いを理解すればおかしな引用されても反論できますが、確かに「一言足りない」のって誤解を生み、間違った引用されるよね。
ここだけを引用されたら、「自転車は歩道走れ!」と言い出す人は出てきそうな予感。

 

まあ、義務と必要性の違いなんですよ。
歩道を走る義務があるとした判例なわけもないし、何について争った結果なのかの問題でもある。

 

「自転車は歩道走れマン」が現れて判例のこの部分だけを引用されても反論できるし、そういうことを言い出す奴はそもそも自転車にネガティブな意見を言うためだけに粗捜ししてるだけなんで、常識的感覚を持つ人なら意味わかるでしょ。

 

話を戻しますが、逆走による妨害運転罪と、逆走は刑罰が違います。
ではどのような観点で「妨害する目的」を認定するのかというと、このケースで言えば車道外側線の外側を逆走していたなら妨害運転罪までは難しいのかなと思われます。
もちろん、道路構造の違いにより変わるから、車道外側線の外側を逆走していても妨害運転罪になることもあるでしょう。

 

車道外側線の位置関係次第と交通量で、妨害意志は変わりますな。





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