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右折車と直進車の優先(37条)。

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以前もチラっと書いてますが、まとめておきます。

直進車と右折車の関係性

道路交通法では、右折車よりも直進車が優先します。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

自転車は二段階右折なので、この関係性では直進車の立場以外はあり得ません。
直進2輪車の距離感を見誤った右折車が、直進自転車にアタックするわけなので、実質的には被害者の立場以外はあり得ない。

 

ところで直進車の優先とは、直進車なら必ず優先されるわけではありません。
道路交通法の優先規定の当たり前の原則ですが、適法に進行する場合のみ優先されます。
なので、信号無視した直進車が優先されるわけは無い。

 

まずは刑事事件の判例から。

道路交通法第37条第1項所定の交差点における直進車の右折車に対する優先は、直進車が交差点に適法に入ったときだけに限るのであって、信号を無視して不法に交差点に入った場合には認められない。

 

昭和38年11月20日 東京高裁

信号に従って進行した場合でも、速度超過が著しい直進車も37条による優先権はありません。

昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。けだし、直進車が制限速度をはるかに越えた速度で進行するような場合に迄右折車をして右直進車の進行を妨げてはならぬものとすれば、右折し終る迄に物理的に交差点に達し得る直進車がある限り、右折車はいつ迄も右折進行することができず、かくては、交通渋滞を招く反面、暴走車の跳梁を許す結果となり、到底安全円滑な道路交通を維持することにはならないからである。
従つて、右折車としては、直進車が制限速度内またはそれに近い速度で進行することを前提に、直進車と衝突する危険のある範囲内の前方の状況を確認し、かつ、その範囲内に進行する直進車の避譲をすれば、足りるのであつて、これ以上に制限速度をはるかに越える速度で進行する車両等のあることを現認している場合は格別、これに気付かない場合に迄そのことを予想して見とおしのきく限り前方の状況を確認し、かつ、全ての直進車を避譲しなければならぬ業務上の注意義務はない。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

原判決が認定したところによると、被告人は、午後11時55分ころ、普通乗用自動車を運転し、原判示交差点を東から北へ右折しようとして青信号に従って同交差点に進入し、同交差点で一時停止し、直進車の通行が途切れたとき西方を見たところ、被告人車より約53メートル西方に、青信号に従い同交差点に向って進行中の対向車を認めたが、同車の通過に先だって右折することができるものと判断し、低速度で発進進行したところ、右直進対向車が指定最高速度(時速40キロメートル)を時速10ないし20キロメートル超過する時速50ないし60キロメートルの速度で進行してきたため、被告人車と直進対向車が衝突し、被告人車の乗客に原判示傷害を負わせたというのであり、右のような原判示の事実関係のもとでは、被告人には直進対向車が指定最高速度を時速10ないし20キロメートル程度超過して走行していることを予測したうえで、右折の際の安全を確認すべき注意義務があるとした原判断は、相当である。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和52年12月7日

直進車の速度について、概ね10~20キロの速度超過は右折車がケアする必要がありますが、それ以上になると37条による直進車規定は無効。
ちょっと前に、時速194キロで直進した加害車両と、交差点を右折した被害車両の事故の報道がありましたが、あれを「直進車優先」という人がまあまあいることに驚きます。
もちろん、時速194キロで交差点を直進するクルマは優先権がありません。

 

その他では、路側帯を時速50キロで進行したオートバイと右折車が衝突した事故について、「路側帯は軽車両のみが歩行者の通行を妨げない範囲で通行可能な場所」として「高速度の車両の進行は想定されていない」とし37条の優先権がないとした判例があります。

 

路側帯を通行する自転車は、どの程度の速度まで認められているのか?
自転車は路側帯を通行可能ですが、ちょっと前の記事についていろいろ質問を受けていたので。路側帯の定義と自転車路側帯と路肩を混同すると話がおかしくなるので、まずは定義から確認します。三の四 路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つた...

 

状況は、オレンジの大型車が右折車両に進路を譲ったところ、路側帯を時速50キロで通行してきたオートバイと衝突。

路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点ということ、道路交通法37条は路側帯を含む交差点通行車両全体についてその進行上の優先関係を規定していること、同法37条にいう車両等には軽車両を含むこと及び路側帯を通行する車両についても直進車優先が適用されることは原判決の判示するところである。従って、右折車は、路側帯を適法に通行する自転車等の軽車両の直進車の通行を妨げてはならないことは明らかである。

 

しかし、路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているもの(ただし、歩行者の通行が禁止されている自動車専用道路の場合を除く。)であって、軽車両だけが、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除いて、通行を許されているにすぎず、この場合においても軽車両は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければならないもの(同法17条の2第2項)とされているのである。ところで、路側帯の通行を許された軽車両とは、人又は動物の力により運転する車両に限られる(同法2条1項11号、16条2項)のであって、これらの車両は自動車や原動機付自転車と異なりその性質上低速のものであり、かかる軽車両だけが歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することを許されているにすぎない路側帯は、本来高速の車両の通行を全く想定していないものと考えられる。もっとも、現実には法律上路側帯の通行を禁止されている原動機付自転車や自動二輪車が路側帯内を通行する事態が時にみられるのであり、このような現実を全く無視することはできないが、このような場合であっても原動機付自転車や自動二輪車の側では適宜速度を調節して進行するのが一般的であり、これらの車両が時速50キロメートルもの高速度で路側帯内を通行することは通常予想されないところといわなければならない。そうすると、このような異常な走行をする直進車については、交差点における直進車優先の規定の適用はなく、右折車はかかる直進車に対してまでその通行を妨げてはならない義務があるものとは解されない。

 

東京高裁 昭和60年3月18日

制限速度50キロ道路を時速80数キロで直進してきた車両を37条にいう直進車優先に当たらないとした判例(大阪高裁 昭和50年9月16日)もありますし、直進車優先といっても「せいぜい10~20キロオーバーまで」。
それ以上は双方に安全運転義務として前方注視を果たしたかの問題になります。

 

次に民事事件。
民事上の責任でも、指定最高速度を40キロオーバーの時速90キロで直進してきた自動二輪車と右折車の衝突事故について、右折車の過失は0%とした判例(浦和地裁 平成2年2月16日)などがあります。

原告は、指定速度を40キロメートルも超過する時速約90キロメートルの高速度で、しかも前方不注意のまま漫然と進行するという過失をおかしたため、本件事故を回避できなかったことは前記事実関係から明らかである。

 

ハ また、《証拠省略》を併せれば、被告は被告車の運行に関し、注意を怠っておらず、被告車には、何らの構造上の欠陥及び機能の障害はなかったことが認められる。

 

4  結論

そうすると、本件はまことに不幸な出来事であるが、被告には、自動車損害賠償保障法第三条ただし書の免責事由があることになる。

 

浦和地裁 平成2年2月16日

民事責任でも、路側帯を直進してきたオートバイは優先ではないとしているものもあります。

 

路側帯を通行する自転車は、どの程度の速度まで認められているのか?②
前回の続編です。前回は業務上過失致死傷容疑の刑事事件。このように路側帯を時速50キロすり抜けして交差点に進入したオートバイについて、37条の直進車優先はないとした判例です。今回は民事で、状況はほぼ同じですがオートバイの速度は30キロ、対向右...

 

自転車の場合は路側帯を通行することが認められていますが、上判例から考えると「路側帯を高速度直進」した場合には自転車の過失が増えるかもしれません。

 

民事上では、自転車の速度が時速30キロ以上だと自転車側に過失を増やすのが慣例です。

2輪車の距離感問題

対向2輪車の距離感が分かりにくい問題はどうしてもあるので、ライト(デイライト含む)で存在感をアピールするしかありません。
このあたり、対向右折車を信頼するしかないワケですが、交差点進入前にある程度は右折車の確認しながらやや減速気味に進行するしかない。

 

ほぼ右折車の責任とはいえ、民事上では直進自転車側にも過失がつくという不思議ではありますが、何とかの早曲がりとか、何とかダッシュみたいなローカルルールを使いたがる人もいますしね。

 

道路交通法の解釈は地域によって異なるなんて大胆な見解を発表する人もいますが、もちろんそんなことはあり得ません。
ギリギリの距離感で右折したがるバカがいることに問題がありますが、その意味では「右折分離信号」はありがたい。

 

早い漢は嫌われるというのが、道路交通法やその他でも常識です。
右折車は、すぐに発車しちゃダメなんですよ。
対面している相手を先にイカせてから自分が発車する。
直進車と右折車の関係性では常識。





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