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死角を通行する車両と、道路外から進入する車両の関係性。

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先日の件。

 

その義務を果たしても。
これな。 「歩道の前で一時停止義務があるだろ!」と主張する人が多い。 その義務を果たしてもな 歩道を横切る際に一時停止義務があるのは当然のこと。 (通行区分) 第十七条 2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、...

 

もちろん、対向右折車は25条の2第1項により、正常な車両の進行を妨げるときには道路外に右折することは違反です。
では仮に対向右折車も2輪車で、対向2輪車が怪我をした場合には「正常な交通である2輪車」は過失責任を問われるのでしょうか?

25条の2第1項と、反対側の関係性

Twitterの件とは状況が異なりますが、このような判例があります(業務上過失致死罪)。

ちょっと分かりにくいけど、左側から合流する道路は私有地の通路
なので赤(原付)は、道路外から右折して車道に進行した扱いです。

 

青(自動2輪車)は路上駐車車両を避けるために道路中央寄りに進路変更し、速度を60キロから50キロに減じて進行。
赤(原付)が道路外から右折進入したために、衝突して赤原付が死亡。

 

青自動2輪車が業務上過失致死罪に問われた事件です。

しかして、原審で取調べた関係各証拠によれば、被告人は自動二輪車を運転し、新潟市ab番地先県道(幅員7.25mで道路中央部分に白破線のセンターラインが設けられている)上センターラインの左側部分(以下進行車線という)を三菱ガス化学方面より国道7号線方面に向け進行中、進路左側の同番地土建会社甲組正門通路から県道に進入し、対向車線に入るため被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車と、右正門前県道上において衝突したことが認められる(被害者の甲組正門通路か
ら県道上への進出が交差点内への進入ではなく単なる横断であることは、右正門から甲家の屋敷内に通ずる幅員約4mの通路が道路交通法2条1項1号にいう道路に当たらない
旨原判決が正当に説示したところから明らかである)。したがつてこの場合、原則的には所論のとおり、車両を運転して県道を横断しようとする者は、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負う(道路交通法25条の2第1項参照)のであつて、県道上を進行する被告人としては、特段の事情がない限り、横断車両が右安全確認義務を遵守することを信頼して自車を運転すれば足り、この義務を怠つてその進行車線を横断しようとする車両のあり得ることまで予想すべき注意義務はないものといえるであろう。
しかしながら、本件においては、原審で取調べた各証拠並びに当審で取調べた検証調書及び証人丙の尋問調書を総合すれば、以下の事実が認められる。すなわち、被告人が自動二輪車を運転して県道上を前示甲組正門付近に差しかかつた際、同正門手前の進行車線左側端に正門の方から普通貨物自動車(パネル車)、大型貨物自動車(8トン車)の順序で2台の車両が相接して駐車していたこと(2台の車両の順序については、もし認定とは逆の順序で駐車していたとすると、実況見分ないし原審及び当審の検証の際における被告人の指示説明どおり、被告人が「2」地点において「A」地点の被害車両を最初に発見することができるためには、大型貨物自動車は極端に道路左側端に寄つて駐車していたとみなければならず、不合理である)、被告人は同正門手前で右駐車車両を認めたが、そのまま進行すればこれに追突することは確実であり、またこれに遮ぎられて同正門前はもとより進行車線前方の道路状況を見とおすことは全く不可能であつたこと、そこで被告人は、漸次、自車の速度を従前の時速約60キロメートルから45ないし50キロメートルに減速するとともに、自車をほぼセンターライン寄りに移行させて自車の進路を変更したうえ、駐車車両の右側方を通過しようとしたところ、大型貨物自動車の右後方(前示「2」地点)において、前方23.3m位の地点(前示「A」地点)に、甲組正門通路から県道に進入し、前示のように、被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車を発見し、急拠、ハンドルをやや右に切ると同時に、急制動したが間に合わず、自車を右原動機付自転車に衝突せしめたこと、被告人は自動二輪車等を運転して同所をしばしば進行していたもので、前示駐車車両の前方に甲組正門及び同正門から甲家屋敷内に通ずる通路があり、仕事関係の車両または歩行者が、日頃、同正門を通つて通路から県道に出たり、県道から通路に入つたりしているのを知つていたことが認められる。そして、同正門通路から被告人の進行車線を横断しようとする者にとつても、右のように、同正門右側に相接した2台の駐車車両があると、横断の際は歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負うとはいえ、被告人において駐車車両に遮ぎられて、同正門前はもとより進行車線前方を見とおすことが不可能であつたと同様、横断開始に先き立ち同正門通路のところに車両を停止させた位置から右方の交通の安全を確認することは、駐車車両に遮ぎられて全く困難であつたから、右車両の中には、右方の交通の安全を確認するため、同正門から県道内に横断を開始し、被告人の進行車線上、駐車車両に妨げられずに右方を見とおせる地点まで進出する車両のあり得ることはもちろん、その際、右方の交通の安全を十分確認することなく、漫然、横断を開始し、駐車車両の陰から、突如、対向車線に入ろうとする車両(本件被害車両がその例であることは原審で取調べた各証拠から明らかである)のあり得ることも、現在のわが国の道路交通の実情からいつてあながち否定できないところである。しかも、被告人は同正門から県道に出入する車両等のあり得ることを知つていたというのであるから、これら車両の中には、右で説示した本件被害車両のごとき車両のあり得ることも十分予見可能であつたはずであり、且つ、被告人が、警音器吹鳴義務はともかく、原判示の減速徐行義務を尽しておれば、本件衝突を回避することも十分可能であつたと思われる。したがつて、以上の諸事情のもとでは、駐車車両の側方を通過しようとする被告人において、横断車両が、横断開始に先き立ち、前示安全確認義務を尽すであろうことをあてにしても、右信頼は社会的に相当であるとは認められない。
右諸事情は、前示信頼の原則の採用を否定すべき特段の事情に当たるというべきである。論旨は理由がない。

 

東京高裁  昭和50年12月11日

道路外から横断(右折進入)する車両が25条の2第1項に従うことはもちろんだけど、駐車車両に遮られて視認できないことや、駐車車両の陰から漠然横断する車両は予見可能だとし、道路外から右折進入する車両との関係性で信頼の原則を否定し有罪としています。

この場合、優先にある立場の自動2輪車には減速徐行義務があったとしています。
警音器吹鳴義務については、公訴事実に含まれてない上、訴因変更もなかったとして一審の認定を破棄しています。

すり抜ける際の注意義務

上の判例とは事案が異なりますが、このTwitter。

判例とは位置関係は異なるものの、25条の2第1項により道路外に右折する車両は、歩道前の一時停止義務の前に、正常な車両の進行を妨げるおそれがあるときには右折禁止です。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

ただまあ、死角を進行する車両にも注意義務があるのは明白かと。
過失の大小という観点だけで見るなら、民事では対向右折車の過失が80~90%くらいでしょうか。

 

仮に対向右折車が2輪車でこのような事故が起きた場合、どっちが怪我をするかはなんとも言えません。
とはいえ、対向2輪車側が怪我や死亡に至ったときに、「正常な交通」である左側からすり抜ける2輪車側が罪に問われる可能性もゼロとは言い切れないことは、上判例からも読み取れるかと。

 

そういうこともあり、基本的にはすり抜けて進行することは推奨してません。
この場合も、先行する車が不自然に車間距離をとっている時点で対向右折車が進行する可能性が予見可能なので。

 

道路交通法って難しいけど、道路上の視界が十分効かない状況では適宜速度を調節しながら進行する義務があると解釈されますし(70条)。

 

過失の大小ですが、相手の過失が大きいことにより自分の過失まで消し去るわけじゃないのね。
相手が25条の2第1項により、正常な車両の進行を妨げるおそれがあるときには右折禁止なのはもちろんだけど。

 

上判例でも仮に減速せずに事故が起きなかった場合には何ら道路交通法違反にはなりません。
どっちが怪我をしたか次第では、過失致死傷の過失にはなりうるため有罪となる可能性もあります。
また、歩行者が横断していたために先行車が停止していた可能性まで含めるなら、なおさら「すり抜けしない」もしくは「すぐに停止できる速度で進行する」かのどちらかになる。
歩行者が横断していたために停止していた場合、ぶつかればやはり罪に問われることでしょう。

 

最終的にたまたま何も起きなかったことと、最終的にたまたま右折車両だったことと、最終的にたまたま歩行者だったことで「それ以前」の注意義務が変わるわけではないし。

 

「どっちが悪い」という観点も大事なんだけど、相手がはるかに悪くても自分が有罪となる可能性は十分あることを理解して、道路交通法だけが道路上の義務を形成しているわけじゃないことは理解したほうがよい。
過失運転致死傷(自転車なら過失致死傷)の過失は、道路交通法違反だけではありませんし。

 

そういうことからすり抜けは推奨しません。





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