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道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?

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ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

※直進車が違法走行した事例をメインにします。

37条でいう直進車の範囲

最高裁判所 昭和46年7月20日(刑事)

道路交通法37条1項にいう「当該交差点において直進し………ようとする車両等」とは、右折しようとする車両等が右折開始まで進行して来た道路の進行方向、その反対方向およびこれと交差する道路の左右いずれかの方向へ直進する車両等をいうものと解すべきであるから、本件のトの字型の三叉路交差点を右折しようとする被告人運転の自動車と、それが進行して来た直路と交差する道路を、被告人運転の自動車が右折後に進行すべき方向と同一の方向へ交差点を直進すようとするA運転の自動車との間に、同条項の適用があり、A運転の自動車の進行を妨げた被告人に同条項違反の罪が成立するとした原判断は、正当である。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和46年7月20日

赤信号で交差点に進入した事例

当たり前ですが、赤信号無視して直進した車両には優先権はありません。

東京高裁 昭和38年11月20日(刑事)

道路交通法第37条第1項所定の交差点における直進車の右折車に対する優先は、直進車が交差点に適法に入ったときだけに限るのであって、信号を無視して不法に交差点に入った場合には認められない。

 

昭和38年11月20日 東京高裁

広島高裁 昭和43年10月25日(刑事)

本件事故につき被告人に業務上の注意義務を欠いた過失があつたかどうかの点について考察する。自動車の運転者が交差点で右折しようとする場合、単に自車を方向転換させようとする右方のみならず前方(左方)の交通状況に十分注意し、安全を確認して進行し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があることは原判決の指摘するとおりであつて、ことに、交差点において直進し又は左折しようとする車両があるときはその進行を妨げてはならないことは道路交通法37条1項の明規するところである。しかし、本件交差点のごとく信号機の表示する信号により交通整理が行われている場合、同所を通過するものは互いにその信号に従わなければならないのであるから、交差点で右折する車両等の運転者は、通常、他の運転者又は歩行者も信号に従って行動するだろうことを信頼し、それを前提として前記の注意義務をつくせば足り、特別の事情がない限り、信号機の表示する信号に違反して交差点に進入してくる車両等のありうることまで予見して、このような違反車両の有無にも注意を払って進行すべき義務を負うものではない

 

広島高裁 昭和43年10月25日

直進車が速度超過で交差点に進入

スピードオーバーで直進する車両については、制限速度から10~20キロオーバーまでは注意する義務がありますが、それ以上の速度超過では直進車に優先権を認めない傾向にあります。
ただし、普段から速度超過の直進車が多いことを知っていた場合には別です。

最高裁判所 昭和47年4月7日

ところで、車両が、幅員約10.1メートルの車道を進行して交差点に進入し、幅員約17メートルの交差道路へ右折のため一時停止している場合、対向直進車との距離がなお70メートル以上もあるときは、対向車が異常な高速を出している等の特別な事情がないかぎり、右折車の運転者は、対向車の運転者が交差点進入にあたり前方を注視し法規に従つて速度を調節する等正常な運転をすることを期待しうるのであり、そうであるとすれば、右折車が対向車の到達前に右折し終わることは通常容易なことと認められるから、仮に被告人が同様の判断をもつて右折を開始したとしても、これをただちに軽率な行為として非難し、対向車との安全確認を怠つたものと断定することはできないものといわなければならない。
また、原判決の判示によれば、被告人は右折開始後道路中央線より約1メートル対向軍線上に自車を進出させたとき星車が約24.9メートルの距離に迫つたのを認めて停止したというのであり、第一審判決の判示によれば、その際被告人車の右方(北方)の道路部分にはなお幅員4メートル以上の余裕があり、他に何らの障害物もなく、交差点に進入する時の被害車の速度は時速50キロメートルであるというのであるが、もしそうであるとすれば、被告人車が約1メートル中央線を越えたとしても、被害者において、急制動の措置をとるなり、僅かに左転把をしさえすれば、容易に衝突を回避できたはずであり、被告人としても被害者がそのような適切な措置を講ずるであろうことを期待しうる状況にあつたというべきであるから、原判決判示のように、被告人が自車を対向車線上に約1メートル進出させたことをもつて本件事故の原因となる過失にあたるものと解するのも相当でない。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和47年4月7日

富山地裁  昭和47年5月2日(刑事)

直進車は時速100キロをくだらないと認定された事故での37条に関する判断です。

昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。けだし、直進車が制限速度をはるかに越えた速度で進行するような場合に迄右折車をして右直進車の進行を妨げてはならぬものとすれば、右折し終る迄に物理的に交差点に達し得る直進車がある限り、右折車はいつ迄も右折進行することができず、かくては、交通渋滞を招く反面、暴走車の跳梁を許す結果となり、到底安全円滑な道路交通を維持することにはならないからである。
従つて、右折車としては、直進車が制限速度内またはそれに近い速度で進行することを前提に、直進車と衝突する危険のある範囲内の前方の状況を確認し、かつ、その範囲内に進行する直進車の避譲をすれば、足りるのであつて、これ以上に制限速度をはるかに越える速度で進行する車両等のあることを現認している場合は格別、これに気付かない場合に迄そのことを予想して見とおしのきく限り前方の状況を確認し、かつ、全ての直進車を避譲しなければならぬ業務上の注意義務はない。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

最高裁判所第二小法廷 昭和52年12月7日(刑事)

指定最高速度を10~20キロ越えた直進車と、右折車の事故です。

原判決が認定したところによると、被告人は、午後11時55分ころ、普通乗用自動車を運転し、原判示交差点を東から北へ右折しようとして青信号に従って同交差点に進入し、同交差点で一時停止し、直進車の通行が途切れたとき西方を見たところ、被告人車より約53メートル西方に、青信号に従い同交差点に向って進行中の対向車を認めたが、同車の通過に先だって右折することができるものと判断し、低速度で発進進行したところ、右直進対向車が指定最高速度(時速40キロメートル)を時速10ないし20キロメートル超過する時速50ないし60キロメートルの速度で進行してきたため、被告人車と直進対向車が衝突し、被告人車の乗客に原判示傷害を負わせたというのであり、右のような原判示の事実関係のもとでは、被告人には直進対向車が指定最高速度を時速10ないし20キロメートル程度超過して走行していることを予測したうえで、右折の際の安全を確認すべき注意義務があるとした原判断は、相当である。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和52年12月7日

仙台高裁 平成13年12月4日(刑事)

指定最高速度を10キロ越えた直進車に対しても37条の義務があるとした判例です。

道路交通法37条は,直進車の右折車両に対する優先を定めているのであって,それは,直進車が制限速度を時速10キロメートル程度を超えた速度で進行する場合であっても適用されるというべきであるから,右折車両としては,直進車が制限速度を時速10キロメートル程度超えた速度で進行してくることを予測して,その進路を妨げることがないようにすべき義務があり,直進車からいえば,その程度の制限速度を超えて進行することを右折車両が予測して行動するものと期待してよいといえるのである。
さらに,例え被害車両が交差点に進入する時点で時速40キロメートルの制限速度に減速していたとしても,上記の被告人車と被害車両との相互の位置及び距離関係などからして,衝突が避けられた,あるいは被害者に衝突回避の措置を期待できたとはいえないのである。したがって,本件被害者が,制限速度を時速約10キロメートル超える速度で交差点に進入したからといって,本件衝突について被害者に過失があるとはいえない。

 

仙台高裁 平成13年12月4日

東京高裁 昭和60年3月18日(刑事)

右折車と直進オートバイの事故について、路側帯を時速50キロで通行したオートバイ(直進)は37条の優先権がないとした判例です。

路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点ということ、道路交通法37条は路側帯を含む交差点通行車両全体についてその進行上の優先関係を規定していること、同法37条にいう車両等には軽車両を含むこと及び路側帯を通行する車両についても直進車優先が適用されることは原判決の判示するところである。従って、右折車は、路側帯を適法に通行する自転車等の軽車両の直進車の通行を妨げてはならないことは明らかである。

 

しかし、路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているもの(ただし、歩行者の通行が禁止されている自動車専用道路の場合を除く。)であって、軽車両だけが、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除いて、通行を許されているにすぎず、この場合においても軽車両は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければならないもの(同法17条の2第2項)とされているのである。ところで、路側帯の通行を許された軽車両とは、人又は動物の力により運転する車両に限られる(同法2条1項11号、16条2項)のであって、これらの車両は自動車や原動機付自転車と異なりその性質上低速のものであり、かかる軽車両だけが歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することを許されているにすぎない路側帯は、本来高速の車両の通行を全く想定していないものと考えられる。もっとも、現実には法律上路側帯の通行を禁止されている原動機付自転車や自動二輪車が路側帯内を通行する事態が時にみられるのであり、このような現実を全く無視することはできないが、このような場合であっても原動機付自転車や自動二輪車の側では適宜速度を調節して進行するのが一般的であり、これらの車両が時速50キロメートルもの高速度で路側帯内を通行することは通常予想されないところといわなければならない。そうすると、このような異常な走行をする直進車については、交差点における直進車優先の規定の適用はなく、右折車はかかる直進車に対してまでその通行を妨げてはならない義務があるものとは解されない。

 

東京高裁 昭和60年3月18日

仙台高裁 平成5年2月5日(刑事)

この判例は制限速度40キロのところを時速70~80キロで直進した2輪車に対し、右折車が衝突。
右折車を有罪(業務上過失致死)としていますが、普段から60~70キロで直進する車が多いことを知っていたことや、時速70キロ超で直進する車があることを知っていたとして信頼の原則を否定しています。

司法警察員作成の前記実況見分調書及び平成4年2月10日付け捜査報告書によれば、本件事故現場付近の国道は、最高速度が時速40キロメートルと指定されているものの、本件事故は前記のとおり午後10時8分ころに発生したものであり、この夜間の時間帯は、交通量が閑散としており制限速度を遵守せず、時速60ないし70キロメートルで進行する車両も稀でなく、時速70キロメートルを超過している例も認められる。被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書によれば、被告人は本件事故現場を日頃頻繁に通行しており、このような交通事情については知つていたものと推認される。

 

4  本件において、前述のとおりA車は時速70ないし80キロメートルで進行してきたものであり、被告人が当初〈3〉地点で〈ア〉地点にいたA車を認めた時点で直ちに右の高速走行まで予測すべきであつたと断定するのは躊躇されるとしても、右折車の運転者たる被告人としては、対向直進車であるA車の動静を注視すると共にA車の接近にもかかわらずなお安全に右折できるか否かを確認すべきであり(本件当時は夜間で、二輪車の対向直進車の速度の確認は昼間に比べてより困難であるから、一層その必要性があるといえる。)、しかるときは、A車が右のような高速走行をして更に接近することも当然認識し得るに至ると考えられるから、A車が通過するまで進行を一時差し控えて事故の発生を回避すべきであり、これを要するに被告人には〈3〉地点で〈ア〉地点のA車を認めた際その動静に注視し、一時停止して同車の通過を待つなどA車の進路を妨害しないようにして右折進行すべき業務上の注意義務が課せられていたといわざるを得ない。なお、この場合、右のように高速走行車とはいえ優先通行権のあるA車の接近する状況下にあつては、いわゆる信頼の原則を認めて右折車の運転者たる被告人にA車の動静注視等の注意義務を免除するのは相当でない。しかるに、関係証拠によれば、被告人は、A車に対する十分な動静注視を怠り、A車が二輪車か四輪車かの識別もせず(被告人の原審及び当審公判廷における各供述参照)、その速度の確認も十分しないままA車の到達前に右折を完了することができると安易に思い込み、そのまま右折・進行したため本件事故に至つたことが明らかであるから、被告人にはA車に対する注視を怠つた過失があるというべきである。

 

仙台高裁 平成5年2月5日

浦和地裁 平成2年2月16日(民事)

指定最高速度を40キロオーバー(時速90キロ)で直進するオートバイと右折車の事故について、過失割合は直進オートバイ:右折車=100:0とした判例です。

原告は、指定速度を40キロメートルも超過する時速約90キロメートルの高速度で、しかも前方不注意のまま漫然と進行するという過失をおかしたため、本件事故を回避できなかったことは前記事実関係から明らかである。

 

ハ また、《証拠省略》を併せれば、被告は被告車の運行に関し、注意を怠っておらず、被告車には、何らの構造上の欠陥及び機能の障害はなかったことが認められる。

 

4  結論

そうすると、本件はまことに不幸な出来事であるが、被告には、自動車損害賠償保障法第三条ただし書の免責事由があることになる。

 

浦和地裁 平成2年2月16日

大阪高裁 昭和51年6月17日(民事)

制限速度を40キロオーバーした直進車と右折車の事故について、直進車:右折車=100:0としています。

控訴人が右折を開始した際には単車は未だ現認されていないのであり、西進先頭車が約90m東方に位置していたのであるから、西進車が前記制限最高速度の時速40キロ(秒速11.11m)で進行すれば、先頭車が本件交差点に到達するまでに8.1秒を要するのに対して、前記認定のとおり、控訴人佐々木が西進先頭車を約90m東方に確認してから衝突するまでに15.2m進行し、更に西行車線の約1mを残していたのであり、前顕甲第22号証、乙第1号証、当審における控訴人本人尋問の結果によれば、事故車の車長は8.8mであることが認められるから、同控訴人が西進車両を現認してから西行車線を通過し終るまでには約25m進行すれば足りるのであり、仮に最も遅い時速約15キロ(秒速4.17m)で進行したとしても約6秒で足りるのである。しかも、前記説示のとおり、本件の如き各車両の位置関係に徴すれば、事故車に優先権が認められるのである。右の諸事実に照らせば、控訴人が右折開始時点において事故車が西進車より先に交差点を右折通過可能と判断したことは正当である。けだし、交通関与者は、他の交通関与者が交通秩序に従つた適切な行動に出ることを信頼するのが相当な場合には、たとえ他の交通関与者の不適切な行動によつて結果が発生したとしても、これに対しては責任を負わないと解するのが相当である(信頼の原則)ところ、本件被害車両が自動二輪車であることは当事者間に争いがなく、その運転には運転免許が必要であるからその運転者には交通法規を遵守することが期待され、その適切な運転を信頼するのが相当な場合であるというべきであり、控訴人としては単車が制限速度の約二倍の高速度で猛進して来ることまで予想すべき注意義務を肯定することは不当であるからである。
次に、前記認定のとおり、控訴人は単車を約55m東方に発見してから単車が東方約27mに接近して来たのに気付き急制動の措置をとるまでに4.2m進行しているが、最も遅い時速15キロで進行したとしてもその間約1.0秒であつて、単車を55m東方の地点に発見した時点において単車の光芒の動きを見てその異常な高速度を予見すべきことを期待することは不可能を強いるものであり、その1秒後に単車の異常な高速度に気付いて急制動の措置をとつたことを以て同控訴人の措置が遅きに失したものということはできない。のみならず、前記のとおり事故車は西行車線中、約1mを残して停止し、事故車の停止後に単車が事故車の最前部に衝突しているのであり、しかも前顕甲第14、第20号証によれば、衝突地点附近においては分離帯が途切れていることが認められるから、単車の通行方向左側には空間があり、その運転者たる被控訴人において僅かに左へ転把すれば衝突直前の段階においてもなお本件衝突を回避することは可能であつたものと認められる。

 

以上の次第であるから、本件事故発生は、もつぱら、制限速度の時速40キロをはるかに超える時速約80キロで猛進し、しかも前方を注視しなかつた被控訴人の無謀運転に基因するものであり、控訴人には何らの過失はないものと認められる。

 

大阪高裁 昭和51年6月17日

優先規定の原則

道路交通法の優先規定には原則があり、法律を守っている者を優先する。
37条については制限速度から+10~20キロくらいまでを右折車が注意する義務がありますが、高速度進入する直進車を優先する規定ではありません。

 

ただし、普段から高速度進行する車両が多いことを知っていたなら、信頼の原則は否定される可能性もあります。

 

民事でも、制限速度から40キロオーバーの直進車に全責任があるとした判例が複数あることに注意。
まあ、なぜそんなにスピードを出すのか理解に苦しみますが。





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