そういえば、これに関係した話。
明らかに広い場合
第三十六条
2 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
明らかに広い場合とは、このように解釈されています。
なお、道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和45年11月10日
交差点手前から徐行になるために必要な制動距離手前の時点で「かなり広い」と一目で判断できる場合を意味します。
具体的にはこんな感じ。
判例 | 道路幅 | 明らかに広いか? |
最高裁s45.11.17 | 5.6m対2m | ○ |
最高裁s45.12.22 | 9.6m対3m | ○ |
最高裁s46.6.23 | 14+10+14m対3.95(4.8)m | ○ |
東京高裁s41.8.9 | 8.9m対4.4m | ○ |
高松高裁s43.8.8 | 7m対3.5m | ○ |
大阪高裁s43.9.1 | 10.07m対6.4m | ○ |
福岡高裁s43.11.16 | 6m対4.2m | ○ |
福岡高裁s45.1.26 | 10.5m対7.2m | ○ |
東京高裁S44.4.22 | 15.9m対6.5m | ○ |
最高裁s43.7.16 | 7.7m対7.6m | ✕ |
最高裁s45.11.10 | 7m対6.4ないし5.8m | ✕ |
最高裁s47.1.21 | 9m対7.9ないし5.8m | ✕ |
東京高裁s40.1.18 | 7.3m対5.5m | ✕ |
東京高裁s41.3.9 | 3.3m対2.7m | ✕ |
福岡地裁小倉支部s45.1.16 | 17.8m対14.6m | ✕ |
東京高裁S44.4.15 | 5.4m対4.8m | ✕ |
そもそもあんまり優れたシステムとは言い難くて、徐行義務があるほうに「徐行」と標識をつけたら一発解決しそうなんですが。
一例。
道路交通法42条は、交通整理の行なわれていない、かつ、左右の見とおしのきかない交差点における車両等の運転者の徐行義務を規定しているが、他方、同法36条2項には、車両等は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、その通行している道路の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならないとの規定をおいているから、これによつて、幅員の明らかに広い道路を通行する車両等の運転者は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合には、たとえ、それが、左右の見とおしのきかないものであつても、42条の規定する徐行義務を免許されることになる。しかし、そのためには、一方の道路の幅員が他方の道路の幅員より広いことが、車両等の運転者はもとより何人にとつても一見して直ちに、明瞭に確認される程度のものであることが必要であつて、単に検尺による算数上その広狭の差が明らかであるというだけでは足りないことはいうまでもない。いま、これを本件について考えてみると、被告人の進行した道路の幅員は、被害者の進行した道路と交差する手前附近において5.4メートルであり、後者の幅員4.8メートルより0.6メートル広いことは検尺上明らかであるが、両者とも、前記のとおり、アスファルト簡易舗装で歩車道の区別のない、きわめて似かよつた状況の道路であり、その道路幅員の広狭の差も一見してこれを識別することは、ほとんど全く不可能であるといわなければならない(そればかりでなく、本件交差点のある箇所は、前述のとおり、変形十字路になつていることと、その十字路の東南角道路ぎわいつぱいに人家が建てられているため、その相互の道幅それ自体を一見看取することさえなかなか困難な状況である。)。
所論は、被告人の進行した道路の道幅は5.4メートルではなく、6.3メートルであるというけれども、6.3メートルの幅員のある道路は、被告人の進行したものではなく、本件交差点を通過してから進入しようとする道路であるから、その道路の幅員と対比して立論することは妥当でないと思われるが、仮に所論の立場に立つて考えてみても、前記実況見分調書および各検証調書によつて認められる叙上のような道路状況にかんがみ、やはり、両者の間に一見明瞭な広狭の差があるものとはいい難い。したがつて、いずれにしても、被告人の車両が、本件交差点に入ろうとするときは、道路交通法42条の規定に従い徐行しなければならないことは、明らかである。
東京高裁 昭和44年4月15日
最高裁判所 昭和45年11月10日
36条2項にいう「明らかに広いものであるとき」については、最高裁が以下のようにしています。
なお、道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和45年11月10日
この判例はちょっと複雑な経緯を辿っているようです。
また、争っている内容に疑問を持つ人もいると思うのですが、ネタバレは後で。
事件は道路交通法違反(42条)。(事故判例ではありません)
裁判所 | 事件番号 | 判決 |
墨田簡裁S42.3.17 | 昭和41年(ろ)867号 | 有罪 |
東京高裁S42.11.14 | 昭和42年(う)883号 | 控訴棄却 |
最高裁S43.11.15 | 昭和42年(あ)211号 | 破棄差戻し |
東京高裁S44.3.26 | 昭和43年(う)2549号 | 控訴棄却(有罪) |
最高裁S45.11.10 | 昭和44年(あ)878号 | 上告棄却 |
42条の違反(徐行義務違反)が成立するか否かで二回も最高裁に審理してもらえるなんてなかなかない経験をされているようです。
なぜ破棄差戻しになったか。
現場の見取り図です。
一審(墨田簡裁)は交差道路両側に石垣、ブロック塀があり見通しが悪く、かつ制限速度30キロの道路を時速30キロで通過したことは徐行とはいえないとして有罪。
二審(東京高裁S42.11.14)では、交差道路(北千束、昭和医大方向)に一時停止規制があることは交差道路に対する規制であって、被告人が通行する進行方向に対し徐行義務を免除するものではないとして控訴棄却。
ところが最高裁(S43.11.15)は、審理が足りないとして破棄差戻しにしています。
しかしながら、職権によって調査すると、原判決が、本件交差点を「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に該当するとした判断は、これを是認することができるが、右のような交差点においては、いかなる場合にも道路交通法42条により当然に徐行すべきであるとした判断は、これをただちに是認し難いものと考える。すなわち、右のような交差点であっても、その車両の進行している道路が同法36条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度(同法2条20号)にまで減速する義務があるとは解し難い(昭和42年(あ)第211号同43年7月16日第三小法廷判決参照)。
これを本件についてみると、原判決の認定するところによれば、被告人の進行していた道路は、幅員約7メートルの歩車道の区別のない舗装道路であり、これと交差する道路は、幅員6.4ないし5.8メートルの同じく歩車道の区別のない舗装道路であったというのである。また、第一審証人の尋問の際、提出され、本件記録に編綴されている被告人作成の見取図で、同証人も現場の状況と大体一致する旨供述しているもの(2通)によれば、被告人の進路と交差する左方(西側)の道路は先方で幅員が約4メートルになっている事実もうかがわれるのである。そして、これらの状況からみて、本件交差点は、被告人の進路のほうが明らかに広いと認められることになり、同法42条の徐行義務が免除される場合にあたる可能性が全く存しないわけではない。
しかるに、この関係の事実を確定することなく、交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないものにおいては、いかなる場合にも当然に徐行義務があるとし、第一審判決を維持した原判決には、法令の解釈適用をあやまった結果審理を尽くさなかった違法があり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
最高裁判所第二小法廷 昭和43年11月15日
内容に疑問を持つ人もいると思いますが、ネタバレはあとで。
差戻し後の東京高裁(S44.3.26)は以下のように判示して控訴棄却(有罪)。
優先通行権につき規定した道路交通法第36条第2項にいう車両等の通行している道路の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものとは、交差点に入ろうとする車両等の運転者が、交差点より少なくとも当該車両等の速度に対する制動距離に相当する距離だけ手前の地点から現認した右各道路の幅員線につき、前記のごとき実測と視覚の誤差を修正して判断した結果、車両等の通行している道路の実測上の幅員線の長さよりもこれと交差する道路の実測上の幅員線の長さが長いことが明らかに認められる場合をいい、かかる場合右交差する道路を通行している車両等に優先通行権が認められる反面、右の判断により、車両等の通行している道路の実測上の幅員線の長さがこれと交差する道路の実測上の幅員の長さより長いことが明らかであつて、後者の幅員より前者の幅員が広いと明らかに認められる場合においては、前者の道路を通行している当該車両等に優先通行権が認められるものと解するのを相当とするから、前記のごとき事実関係においては、本件道路の幅員が、これと本件交差点において交差する北千束方面から昭和医大方面に通ずる道路の幅員より明らかに広いものとはいうことができないので、被告人運転の自動車に本件交差点における優先通行権があるものとは認め難く、また、本件道路が同法第36条第1項により公安委員会の指定した優先道路であつたことの証拠は存しないばかりでなく、かえつて、差戻後の当審における事実取調べの結果によれば、かかる指定のかつてなされた事実のないことが明らかであるから、被告人運転の自動車には、本件の場合、優先道路の指定に基づく優先通行権もなかつたことが明らかである。はたしてしからば、本件交差点が交通整理の行なわれていない、左右の見とおしのきかないものであることはすでに説示したとおりであるから、被告人運転の自動車が本件交差点を通行するに当つて同法第42条に従い徐行する義務のあることも明らかであつて
東京高裁 昭和44年3月26日
これに被告人が再度上告してますが、上告棄却で確定という流れです。
なお、道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和45年11月10日
徐行義務があったのかなかったのか二回も最高裁まで争うのもなかなかなんですが、「明らかに広い」がわかりにくいなら「徐行」という標識でも立てたほうがマシなんじゃないかとすら思えます。
まあ、全ての交差点に標識を立てることが現実的ではないからこういう規定なんでしょうけど。
事件発生が昭和41年12月11日になってますが、徐行義務の有無に4年近く争うのもなかなかですよね笑。
ちなみに純粋な道路交通法違反事件なので、事故が発生したわけではありません。
差戻し前最高裁判決で引用している最高裁判例はこれ。
車両等が道路交通法42条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その進行している道路が同法36条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度(同法2条20号参照)にまで減速する義務があるとは解し難いが、本件のように幅員約7.6メートルのあまり広くない道路で、これと交差する道路の幅員もほぼ等しいようなときには、これと交差する道路の方に、同法43条による一時停止の標識があっても、同法42条の徐行義務は免除されないものと解すべきである。なんとなれば、優先道路または幅員の明らかに広い道路を進行する場合には、その運転者にも、またこれと交差する道路を進行する車両等の運転者にも、当該交差点における優先通行の順位が明らかになっており、その間に混乱の生ずる余地が少ないが、本件のように、交差する双方の道路の幅員が殆んど等しいような場合には、一時停止の標識が存在しても、その存在しない方の道路を進行する車両等の運転者にとっては、その標識の存在を認識することは、必ずしも可能であるとは限らず、もし、右認識を有する者についてだけ、同法42条の徐行義務を免除することにすれば、当該交差点における交通の規整は一律に行なわれなくなり、かえって無用の混乱を生ずるであろうからである。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日
ところで、上の判例をみていると、優先道路ではなくても「明らかに広い道路」なら42条の徐行義務が免除されることになっています。
あれ?今の解釈とは違いますね。
42条と優先道路の定義を確認します。
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
見通しが悪い交差点の徐行義務は、優先道路の場合は免除だと規定され、優先道路は中央線がある交差点等になっています。
つまり、「明らかに広い」場合で中央線等がない交差点での徐行義務は免除していない。
ではなぜ上のような判例があるのかというと、当時の42条はこうだったからです。
第四十二条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの、道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近、勾配の急な下り坂又は公安委員会が道路における危険を防止し、その他 交通の安全を図るため必要があると認めて指定した場所においては、徐行しなければならない。
この時代は、優先道路なら徐行義務を免除する規定がない。
しかし、36条との関係性から、優先道路又は「明らかに広い道路」なら見通しが悪い交差点でも徐行義務を免除すると考えられていました(最高裁 昭和43年7月16日)。
上の墨田簡裁~最高裁の判例は、「交差道路に一時停止規制があるなら、一時停止規制がない側が事実上の優先となるから42条の徐行義務が免除されるべき」と被告人が主張していたわけです。
このあたりの曖昧さを立法で解決するため、昭和46年道路交通法改正により今と同じく「優先道路の場合」には徐行義務を免除すると定め、優先道路ではない広狭関係では見通しが悪いなら徐行義務を免除しないとしたわけです。
今回の改正により、道路標識等により優先道路として指定されている道路のほかに、「当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」を新たに優先道路とすることにした。その趣旨は、交差点において一方の道路に道路標識等によって中央線又は車両通行帯が連続して設けられている場合には、その道路のほうがより交通上の重要性があると認められるのが一般的であるから、このような道路を優先道路とすることによって、交差点における交通方法の合理化を図ることとしたのである。
この結果、中央線又は車両通行帯が連続して設けられている道路を通行している車両等については、交差点およびその手前の30メートル以内の部分での追い越し禁止(第30条第3号)および見とおしがきかない交差点における徐行義務(第42条第1項)は適用されないことになる。
なお、交差道路により幅員が明らかに広い道路を通行している車両等については、これらの義務の適用は、除外されない。
月間交通「道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)」、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月
上告趣意は、判例違反をいうが、所論のうち、原判決が昭和42年(あ)第211号同43年7月16日第三小法廷判決・刑集22巻7号813頁に違反するという点については、右判決は昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法36条、42条について示された解釈であつて本件の先例とはなり得ないものであり、その余の引用にかかる判例は本件とは事案を異にして適切でなく、いずれも適法な上告理由にあたらない。
最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月7日
道路交通法42条によれば、車両等が同条1号にいう「左右の見とおしがきかない交差点」に入ろうとする場合には、当該交差点において交通整理が行われているとき及び優先道路を通行しているときを除き、徐行しなければならないのであつて、右車両等の進行している道路がそれと交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであつても、徐行義務は免除されないものと解するのが相当である。
最高裁判所第二小法廷 昭和63年4月28日
昭和46年改正以降は、42条の徐行義務について優先道路ではない「明らかに広い道路」でも免除されない。
なのでこちらでも触れた報道。
※交差道路右側は実際には狭くなっています。
報道内容からすれば、見通しが悪い交差点になり、交差点内に中央線がないことから優先道路にも該当せず42条による徐行義務を免れない。
オートバイが一時停止をしたのかは不明ですが、一時停止義務を果たしたかを問わず加害車両には徐行義務が課されているのは明白。
報道内容からすると、逮捕された理由は「徐行義務を怠って交差点に進入した過失がある可能性と、それによる死傷事故の疑い」なんじゃないかと思いますが、詳しい逮捕理由までは発表されてないのでわかりません。
脱線しますが、中央線が削れて視認不可能で消失している場合には、中央線がない道路扱いになるため優先道路にはならなくなる点も注意。
ちょっと前に読者様に聞いて調べたところ、視認できない「元中央線跡」は中央線がない道路扱いになります。
徐行の意味
ついでなので、徐行の意味。
事故当時の被告人の農耕車の速度は時速約10キロメートルであつたと認められ、右速度は、道路交通法2条20号の「直ちに停止することができるような速度」と認められるから、被告人には同法42条の徐行義務違反の事実はない。
最高裁判所第二小法廷 昭和44年7月11日
本件において右徐行義務を尽くしたと言い得るためには、少くとも時速10キロ以下で進行することを要するものと認められる。しかるに、被告人は、右時速を約10キロも超える時速約20キロで本件交差点に進入したのであるから、被告人に右徐行義務違反の過失があったことは明白であるといわなければならない。
名古屋高裁 昭和41年12月20日
被告人は右交差点に入るに当り横断歩道手前附近で前後左右の安全を確認し且つ自車の約20m位先を先行する軽四輪車が交差点を通り抜けるのを見乍ら、約40キロメートルの時速を約30キロメートルに減速して交差点に進入したのであつて、進入の時点において被告人は、交通安全確認の義務を尽し黄色点滅信号に従い注意進行を行つたものと認められるが、道路交通法42条にいう徐行義務を尽したものとはいえない。
東京高裁 昭和44年10月20日
基本的には10キロ以下を指すと考えていい。
本件交差点が前説示のように左右の見通しの困難な、交通整理の行なわれていない交差点であるから、車両の運転者に道路交通法上の徐行義務があることは明らかであるが(道路交通法42条)、さらに進んで一時停止の業務上の注意義務があるかはにわかに断定できず、本件交差点は一時停止の交通規制は行なわれていない場所であるから、業務上の注意義務としても特段の事情なき限り、一時停止義務はないものというべきである。
(中略)
さらに進んで被告人の徐行の注意義務違反の有無について考察すると、道路交通法上徐行とは車両が直ちに停止することができるような速度で進行することをいうと定義されている(道路交通法2条1項20号)が、具体的に時速何キロメートルをいうかは明らかではないとしても、前記認定の時速5キロメートル程度であれば勿論、時速10キロメートルであつても徐行にあたるものというべく、本件において業務上の注意義務としての徐行としても、時速5キロメートル程度のものであれば、これにあたると解するのが相当である。原判決は本件のような交差点に進入する車両には単なる徐行より一段ときびしい最徐行義務があるかの如き説示をしているのであるが、最徐行とは具体的にいかなる速度をいうのかの点は暫らくこれを措くとしても、前記のように被告人が時速5キロメートル程度の速度で進行していたとするならば、被告人において徐行(最徐行を含めて)の注意義務はつくしているものと認めるのが相当である。従つて、被告人には公訴事実にいう徐行の注意義務を怠つた過失はないというべきである。
大阪高裁 昭和59年7月27日
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント