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違反の認定と「やむを得ない場合」。

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道路交通法って、分かりにくいよね。

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

自転車の歩道通行

自転車が歩道を通行できる要件の一つに、「やむを得ないと認められるとき」というのがあるのはよく知られた事実。

車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

ぶっちゃけた話、ほぼ無意味な規定です。
理由は後述します。

 

さて、この規定が出来たのは平成19年改正道路交通法。
当時の国会議事録によると、このような説明になっています。

第166回国会 参議院 内閣委員会 第9号 平成19年4月17日

 

○亀井郁夫君

国民新党の亀井でございますが、道交法というのは非常に一般の人たちに密着した法律ですから、もっといろいろな点で、今日も指摘ありましたけれども、分かりやすく作っていく必要があると思いますから、いろいろ研究してほしいと思うんですけれども、今日これから何点か、私も素人でございますけれども、常識の観点からお聞きしたいと思うわけでございますが。
普通自転車については、児童や幼児については車道又は交通の状況に照らして歩道を通行することができるということになっておるんですけど、普通自転車がね、普通自転車が歩道を走ることができるということになっているんだけれども、ほとんどの人が今ごろは交通事情が厳しいからみんな歩道を走っている人が多いんですけれども、どういう場合に歩道を走ることができるか。その認定はだれがするんですか。そして、それはどういう形で表示されているんですか。どこにもそういうことは書いてないんで、その辺がどうなっているんでしょうか。

 

○政府参考人(矢代隆義君)

お答え申し上げます。
現在の道路交通法では、自転車は車道を通行することが原則と、それから都道府県の公安委員会が普通自転車歩道通行可の規制、これは標識を立てますが、した場合には車道を通っても歩道を通ってもいいということになっております。したがいまして、基本的には各都道府県公安委員会がそれを判断して歩道通行のできる場所を決めていくと、これが大原則でございます。
そこで、今回の改正ではこれに加えまして、児童、幼児等が運転する場合、あるいは車道の交通の状況に照らしまして自転車の通行の安全を確保するため当該自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合ということでございますが、このやむを得ないと認められる場合というのは、これは客観的に決まるというふうなものでございまして、道交法でやむを得ない場合というのは極めて限定的な意味でありまして、言い換えますと、どうしてもそうせざるを得ない状況のことを言っております。
したがいまして、例えば道路工事が行われておってそこを通れない、あるいは駐車車両が連続的に存在しているというような場合、あるいは狭い車道で大型車が連続してどんどん来る、通れない、進めないと、そういうような場合が想定されるわけですが、これを一つ一つずっと書き出すのはなかなか容易でないわけですけれども、交通の方法に関する教則、これは国家公安委員会が定めておりますので、その中でこのやむを得ないというのはこういうことなんだということをよく示していく考えでございます。だれが決めるかということになりますと、これは客観的にもう決まってくるものであると、こういうことでございます

 

○亀井郁夫君

どうも分かったような分からないような、客観的に決めるというんだけれども、決める人がたくさんおるわけだから困っちゃうわけですね。そうすると、道路を走るんだといっても、普通自転車を運転している人が危ないと思ったら歩道を走っていいんですね。そうすると、おかしいじゃないかと言っても、それは自分がそう思っていたからと言えばいいんであれば、そんなふうにだれでも決められるようになってはいかぬし。また、国家公安委員会が決めたというんだったら、決めたところをある程度はっきりしておけばいいと思うんだけれども、そういう点でもおかしいと思います。その辺どうなんですか。

 

○政府参考人(矢代隆義君)

このやむを得ない場合について、自転車の利用者の方が自分で判断して、言葉を換えて言えば勝手に判断していいというわけではありませんで、やはりそういう客観的に先ほど私が申し上げましたような状況でないにもかかわらず、自分はやむを得ないと思ったんだと、こういうふうに言われましても、それはやはりそこで現場では、それでは違反になるということで指導することになると思います。
それで、なぜそのようにせざるを得なかったかと言いますと、公安委員会の規制というのは標識を立てるわけですので、この道路はいいか悪いかと決めますと、これは二十四時間三百六十五日もうオール・オア・ナッシングでございまして、それで、交通の道路の変化というような状況ですとか、交通の状況にちょっと対応できない場合がやっぱりあるわけなんですね。そういうことを考慮いたしまして、そこで先ほど申し上げましたように、大原則は公安委員会が決めていきますけれども、それによることができない場合があるであろうから、それについて法定事項とさせていただくと、こういうことでございます。

「やむを得ない場合」の具体例は「交通の方法に関する教則」で示すとしている。
では教則ではどうなっているのか?

(4) 普通自転車は、次の場合に限り、歩道の車道寄りの部分(歩道に白線と自転車の標示(付表3(2)22)がある場合は、それによつて指定された部分)を通ることができます。ただし、警察官や交通巡視員が歩行者の安全を確保するため歩道を通つてはならない旨を指示したときは、その指示に従わなければなりません。
(中略)
ウ 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場所を通行する場合や、著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合など、普通自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき。

例示列挙されているのは以下の場合。

①道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場所を通行する場合
②著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合
③など

まあ、だいぶ曖昧な規定です。
例示された内容を見る限り、車道左側に路上駐車があれば「やむを得ない」に該当しますが、歩道に柵がある場合や縁石の切れ目の位置などを考慮すれば、交差点~交差点間に路上駐車があるだけでもその区間は「やむを得ない」に該当する。

「著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合など」と言うのも、「など」がついているので物理的な道路の幅員の狭さだけでなく、車が渋滞していて実効幅が狭い状況も含む。

「など」としているので、もちろん限定列挙ではなく例示列挙。
つまりはこれら以外でも車道を通行することに客観的な危険があるなら歩道通行が認められると言えますね。

 

ところでこの規定、事実上違反認定することは非常に困難。
違反とするには、警察や検察が「車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」には当たらないことを立証しなければならない。
やむを得ない場合とは言えないことを立証するのはまあまあ難しい。

 

だからこういう逃げ道が用意されているとも取れる。

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。

結局のところ、違反だと認定することは困難なので警察官の指示権により必要に応じて指導するしかないよね笑。
ほぼ無意味な規定だと書いた理由はコレです。

 

ところで、道路交通法上「やむを得ない」とはどういう条文に使われているか。
一例を挙げます。

(通行区分)
第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる

一応、歩道等と車道の区別がない道路では歩行者は右側端を通行する義務があり、やむを得ない場合は左側端もOK。
実態はイチイチ気にしないと思われますし、警察官が指導しているのも見たことはない。

(急ブレーキの禁止)
第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

この場合は具体的な危険がない限り急ブレーキ禁止です。

「やむを得ない」を厳格に解釈しようとすると個別に検討するしかありませんが、自転車の歩道通行における「やむを得ない」は違反として認定することは困難。
だから警察官の指示権を定めて、あくまでも歩道は歩行者の場所なんだとアピールしているんでしょうね。

 

ちなみに、歩道通行自転車が「やむを得ない」に該当しないとして違反になった事例は全く知りません。
存在するのかすら怪しい。

徐行し、妨害しなければ文句のつけようがない

実際のところ、歩道通行自転車がきちんと徐行し、歩行者の妨害さえしなければ文句のつけようがないわけでして。
「やむを得ない」に該当しないことを立証するのはまあまあ困難。
国会議事録をみても、質問者が「どうも分かったような分からないような」という程度には曖昧。
罪刑法定主義の観点からみても、曖昧なものに違反として認定することは難しい。

 

警察的にも、「徐行し歩行者の妨害さえしなければ文句のつけようがない」のが現実。
実際そんな運用にしかなっていませんが、当然「やむを得ないに該当するかしないか」で赤切符を切られ裁判で争うこと自体があり得ないため、判例を探すだけ無駄です笑。

 

けど、「歩道の逆走違反認定」とか、「歩道通行は違反」などと脳内道路交通法違反の創作活動はインターネットのお家芸ですし、しまいには

読者様
読者様
歩道右側を通行していた自転車が、歩行者を避けるために車道に降りたら逆走で違反だろ!

などと語り出す。
そりゃ「車道に降りたら」という条件下では違反だろうけど、「車道に降りてない」なら違反じゃないし。
歩行者の邪魔になる可能性があるなら一時停止したり、押して歩けばよい。
なぜ無理矢理な脳内設定を創作するのでしょう笑。

 

どちらにせよ、「やむを得ない」に当たらないことの立証はまあまあ難しいのは明らかなんで、「やむを得ない」で違反を取るのは現実的ではない。
実際は「警察官の指示に従わない場合」や、徐行義務違反、歩行者妨害などしか違反を認定できないシステムなんでしょうね。

 

わかってない人ほど、違反認定したがるけど。
違反の創作活動はインターネットのお家芸です。
当たり前ですが、非普通自転車は徐行しようと歩道通行は違反ですが、これも現実的には徐行して歩行者の妨害さえしなければ文句のつけようがないのです。
湘南のほうに行けば、非普通自転車のビーチクルーザーが歩道通行してますし、警察官は注意すらしません。

 

どうでもいい話ですが、ビーチクルーザーを略してビーチクにするといろいろマズイんだなと理解しました。
「お前何に乗ってるの?」「ビーチクだよ」みたいな会話は積極的に控えるべきです。





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