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自転車に乗っているときに飼い犬が飛び出してきて事故が起きたらどうなる?

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ええと、表題の件。

読者様
読者様
自転車に乗っているときに飼い犬が飛び出してきて事故が起きたら過失割合はどうなるとか基準があるのですか?

知らん!笑
けどまあ、気になったのでちょっと調べてみました。

飼い主の責任

当たり前ですが犬に賠償能力はありませんから(笑)、飼い主が責任を負うかどうかの話になります。
一応法律上は、民法に規定があります。

(動物の占有者等の責任)第718条
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない

基本、飼い主が責任を負うことになりますが、但し書きの免責理由があるときは別。
まあ、何らかの事情で飼い主が飛び出したなら、基本的には飼い主に責任があるんでしょうけど。

 

判例はいくつもありますが、最高裁判例を2つ挙げます。

最高裁判所第一小法廷 昭和56年11月5日

この判例は犬を散歩に連れていこうと檻から出したところ道路に飛び出していき、原付と接触し原付運転者が怪我した事故。

 

二審(東京高裁 昭和56年2月17日)の判決文より事実の確認をします。

被控訴人は、自宅敷地内に鉄製の檻を設け、前記シェパード犬(体長約一メートル、体重約15キログラム)をその中で飼つていたが、本件事故時刻直前頃、右犬を散歩に連れていこうとして檻から出したところ、犬は同家東側の本件県道に飛び出していき、折柄同所県道東端を立科町方面から上田市大屋方面へ向け歩行中の訴外Aに対し道路中央部付近において吠えかかり同人と約2.6mの距離にまで接近したこと、右県道は幅員5.25mのアスファルト舗装で平担であり、車歩道の区別はなく、路上の見とおしは良好であること、控訴人は、前記のとおり原動付自転車を運転して時速約40キロメートルで進行中、前方約41.6mの地点で犬を発見し、犬が前記の如く訴外Aに吠えかかつているのを見ながら約16mの距離に至つて速度を30キロメートル毎時程度に減じ道路中央部付近にいた犬のすぐ後方を通り抜けようとしたところ、犬は突然後方へ向きを変えて進もうとしたので控訴人は危険を感じ制動をかけたが間に合わず、原動機付自転車の前輪部が犬と接触して路上に転倒し、左鎖骨及び左踵骨骨折の傷害を負つたこと、以上の事実を認めることができる。右認定に反する原審証人Aの供述部分は前掲各証拠と対比して措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

 

右事実によると、本件事故は、通行人に向つて吠えていた犬が、時速30ないし40キロメートルで排気音を立てて(原動機付自転車がその進行中かなりの排気音を発することは経験則上明らかであり、原審証人Aの証言によれば、同証人も控訴人の原動機付自転車の排気音をはつきりと耳にしていたことが認められる)接近してくる原動機付自転車に驚き転進して右自転車の直前を横切ろうとしたのと、控訴人が、路上で、犬が通行人に向つて吠えている状態にあることを視認しながら時速を約30キロメートルに減じた程度で敢えて原動機付自転車を運転して犬の至近後方を通過しようとしたこととが競合して発生したものであることは明らかなところ、被控訴人としては、右犬が普段はおとなしい性質であつたとしても、原動機付自転車の高い排気音を聞き、かつ右自転車に急速に接近された場合、驚いて不測の行動をとることのあるべきことは当然予測しなければならず、したがつて、犬のけい留を解くときは本件の如き事故の発生する虞れのあることは十分認識すべきものであつたのに拘らず、けい留を解き、その結果として本件事故を惹起したことは、犬の保管について相当の注意を欠いたものというべきであるから、民法718条に則り本件事故により控訴人の被つた損害の賠償責任があるものというべきである。他方、控訴人としては、体長1mもあるシェパード犬が通行人に吠えつき気を荒立てている折に原動機付自転車で接近するときは、右犬が驚いて向きを変え原動機付自転車と衝突することの起り得べきことは十分に予想できるのであるから、犬の手前で一旦停止するか又は何時でも停止できる程度に徐行して犬の動静を見極め安全を確認してから犬の側方を通過すべき注意義務があるのにこれを怠り、前記のとおり漫然時速30キロメートルで排気音を発しつつ犬のすぐ後方を通過しようとしたことに過失があり、右過失が本件事故の発生に寄与したことは否定できないところである。

 

東京高裁 昭和56年2月17日

ということで双方の過失を認めています。
最高裁もこれを是認。

犬の飼い主 原付
60 40

 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし肯認することができ、右事実関係のもとにおいて、原審が上告人に民法718条による損害賠償責任を認めたことは正当であり、また、上告人の過失を6割、被上告人の過失を4割として過失相殺した原審の判断を違法とすべき理由もない。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和56年11月5日

まあ、原付運転者の過失としてはこれ。

シェパード犬が通行人に吠えつき気を荒立てている折に原動機付自転車で接近するときは、右犬が驚いて向きを変え原動機付自転車と衝突することの起り得べきことは十分に予想できるのであるから、犬の手前で一旦停止するか又は何時でも停止できる程度に徐行して犬の動静を見極め安全を確認してから犬の側方を通過すべき注意義務がある

予見可能なことに対し、時速30キロに「減じて」通行したことは過失だという話。
原付の法定速度は時速30キロですが、「減じて」ですから笑。

 

まあ、こういうのって小さな子供が相手でも同じことで、進路前方に不穏な状況があれば一時停止又は徐行しろという話ですね。

最高裁判所第二小法廷 昭和58年4月1日

この判例は犬を運動させるため鎖から外したところ道路に飛び出し。
たまたま自転車に乗り通りかかった小学生2年生が犬嫌いのため犬を避けようとしたところ、運動操作を誤り川に転落し左目を失明したという事故です。

 

二審(福岡高裁 昭和57年5月27日)は、以下の理由から過失割合はこのようにしています。

犬の飼い主 小学生2年生の自転車
10 90

1  控訴人は事故発生当時小学二年生(7才)で、当日は近所の同級生訴外Aと各自の自転車に乗つて遊んでいた。

 

控訴人は、4才のころから子供用自転車を買つてもらつて乗つていたが、小さくなつたため、事故の約10日前に買い替えてもらつたばかりであり、当日乗つていた右自転車は車長約1.4m、サドルの高さ約0.75m、ハンドルの高さ約0.9mで、控訴人の身体にはやや大きめで、ペダルに充分足が届かなかつたものの、当日まで転倒等の事故を起こしたことはなかつた。

 

2  本件犬は被控訴人が愛玩用に飼つていた体長約40センチメートル、体高約20センチメートルのダックスフント系雄犬で、被控訴人は、通常は庭に鎖でつないでいたのを、当日運動をさせるつもりで首輪から鎖を外したため、犬は一旦被控訴人方前の幅員約3mの舗装道路の中央付近まで走り出た。

 

ところが、たまたま右道路の中央よりやゝ椎原川寄り(進行方向に向つて左側。)を自転車に乗つた控訴人が通りかかり、犬との距離が約8.5mになつたころ、右のとおり走り出た犬は吠えることなく歩いて川の方に寄りながら2m程控訴人の方に近付いたので、控訴人は道路の端に寄つて通り抜けるため、ハンドルを左に切つた際操縦を誤り、右道路に沿つて流れる椎原川に自転車もろとも転落した。なお、控訴人が転落した頃本件犬は控訴人の転落地点道路上から前方約3ないし4mの道路中央よりやや左寄に佇立しており、控訴人が運転を誤らなければ、本件犬の左側を通り抜けて走行することは可能であつた。

 

3  控訴人は日頃から犬嫌いであつた。

本件犬は大型ではない愛玩犬であつて、一般的には人に危害を加えたり畏怖感を与えるおそれはないものということができるが、しかし子供にはどのような種類のものであれ、犬を怖れる者があり、犬が飼主の手を離れれば本件のような事故の発生することは予測できないことではないから、犬を飼う者は鎖でつないでおくなど常に自己の支配下においておく義務があるものというべく、本件事故時運動させるため鎖を外した被控訴人は犬を飼う者としての右注意義務を欠いたものであつて、民法718条による責任を免れることはできない。

 

(中略)

 

前記認定のとおり、控訴人がペダルに足が届かずしかも乗り慣れない自転車に乗つていたことが本件事故の一因と考えられるので、被控訴人との過失割合は1対9とみるのが相当である

 

福岡高裁 昭和57年5月27日

ペダルまでも十分足が届かない自転車で、自転車の操作を誤ったことを主な過失としています。
最高裁もこれを是認。

右事実関係のもとにおいて、7歳の児童にはどのような種類の犬であつてもこれを怖がる者があり、犬が飼主の手を離れれば本件のような事故の発生することは予測できないことではないとして、上告人に民法718条所定の損害賠償責任があるものとした原審の判断は、正当として是認することができる。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和58年4月1日

ただし、反対意見もついてます。

本件犬は、上告人が愛玩用に飼つていた前記のような小型の犬であり、しかも本件記録によれば生後半年くらいの子犬であつたことが窺われ、咬癖や加害前歴等は認定されておらず、一般的には人に危害を加えたり畏怖感を与えるおそれはないものということができることは、原判決自体これを認めているところである。そして、被上告人が本件犬の姿を認めてから前記のように転落するまでの間に本件犬がとつた動作としては、自転車に乗つた被上告人が約8.5mの距離に近付いたころ、それまでいた道路中央付近から吠えもせず歩いてやや左寄りに2m程被上告人の方に近付いたということだけである。それ以上接近したわけでもなく、また被上告人の進路を妨げたわけでもなく、いわんや被上告人に危害を加えるような動作は何一つしていない。本件犬の右のような動作があれば一般に本件のような転落事故が発生するであろうなどとは、健全な常識に照らしてこれを認めることができないのである。原判決が認定した前記(六)の被上告人が運転を誤らなければ、本件犬の左側を通り抜けて走行することが可能であつたとの事実は、このことを裏付けるに十分であろう。
原判決のような立場をとるとすれば、本件犬の代わりに、兎や猫を置いたとしても、それらを嫌いな子供が本件のような事故を起こした場合には、理論上、その飼主に民法718条の責任を認めることにならざるを得ないこととなろうが、それがいかに不当であるかについては、今更喋々するまでもあるまい。

結局のところ

車両運転者としては犬が飛び出してこようと人間が飛び出してこようと、事故を回避する必要がある上、人間よりも行動パターンが読めないなら一時停止又は徐行する必要がある。

 

まあ、他には不可解な判例も見つかりますが、自転車に乗っているときに犬に飛びかかられて転倒し頭部や顔面を地面に強打し死亡した事故などもあるにはあります。
あんまり参考にはならないので取り上げませんが、自転車乗りは動物も人間も大切にしましょう。

 

そういや自転車乗りが猫を投げて炎上したのって、結構前ですよね。
全然事案が違いますが、そんなんあったなと思い出しました。
もちろんそれはアウトです。

 





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