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自転車レーンと左折通行帯の交錯。

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これについては明確な規定がないように思っているのですが。

読者様
読者様
自転車専用通行帯と、左折通行帯がある交差点で、左折待ちの車がつながっているときに自転車通行帯を直進するときには、法的には道交法のどの条例に従い、どのように通行するべきか、教えていただけないでしょうか?
安全面からはその場の状況により車を待ったり、前に出たり、いろいろですが、法律はどうなっているか、ネットでの情報がうまく得られずにお伺いいたします。
よろしくお願いします。
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自転車レーンと左折通行帯の交錯

要はこういう意味ですよね?

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第一通行帯が「普通自転車専用通行帯」(以下、自転車レーン)、第二通行帯が左折通行帯。
進行方向別通行区分がなければ、左折車は自転車レーンに進入して左折することになりますが、

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左折通行帯がある場合は35条1項の規定から、左折通行帯を越えてはダメになる。

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「進路変更禁止」がある場合も同じです。

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左折通行帯と自転車レーンの関係をどの規定から順位付けるかについては、若干疑問はありますが26条の2第2項から類推するしかないんじゃないですかね。

(進路の変更の禁止)
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない

若干疑問があるというのは、「進路変更」とは右左折を含まないと考えられているからです。
強引に考えるなら、25条の2第1項でいうところの「横断」とも取れなくはないですが、

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

どちらを使っても、内容としては同じこと。
これについては判例タイムズ284号188頁「左折または右折方法(東京地裁判事 小野寺規夫氏)」、引用元の判例タイムズ263号佐野昭一判事の解説からするに、「進路変更」と捉えているのだと思います。
かなり長い内容なので引用は控えます。

 

「急ブレーキを掛けさせるようなら進路変更や横断するな」

 

なので、自転車が優先します。

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あくまでも急ブレーキを掛けさせるような危険な進路変更を禁じているだけなので、自転車からみて遠方の交差点がこのように「左折待ち、横断歩道の歩行者を優先させている最中」なら、自転車が劣後します。
(左折待ち車両の間から直進すること自体は違反にはならないですが、必ずしもオススメはしません。)

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絶対的に直進を優先させるような規定はありませんし、こちらの判例でも示したように、

 

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渋滞の隙間から「道路外へ右折」したクルマと、原付が衝突した判例。
道路外へ右折する際には、「正常な交通」を妨げてはならないという義務がありますが、 (横断等の禁止) 第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しく...

 

道路外へ右折するクルマと道路を直進する車両の関係性について、この関係性においては右折車が優先するとしている。

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本件車道部分の安全を確認するため一時第二停車地点にボンネツトが右車道部分に約70センチメートル出た状態で停車したことにかんがみれば、条理上すでに本件車道部分を直進して来る車両に優先して同所を横断することのできる立場にあつたものと解するのが相当である。

(中略)

被害者としては、減速ないし徐行しかつ進路前方を十分注視して、安全な速度と方法で進行しなければならなかつたものといわねばならない。

 

札幌高裁 昭和51年8月17日

ご質問の件については、26条の2第2項から考えるしかないと思います。
あくまでも「急ブレーキを掛けさせるような危険な進路変更」を禁じているわけで、直進車が常に優先するわけでもありませんが、このあたりの関係は旧37条2項の経緯からも読み取れます。

旧37条2項

以前も書いてますが、37条(右折より直進優先)の話。
昭和46年改正以前は37条には「2項」がありました。

(直進及び左折車両等の優先)
第三十七条 車両等は、交差点で 右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、第三十五条第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該車両等の進行を妨げては ならない。
2 車両等は、交差点で直進し、 又は左折しようとするときは、当該交差点において既に右折している車両等の進行を妨げてはならない。

右折車は、左折車と直進車を進行妨害してはダメ(1項)。
けど、左折車と直進車は「既に右折した車両」を妨害するのもダメ(2項)。

 

「既に右折した車両」とは「右折を完了している状態またはそれに近い状態にある車両」だと最高裁昭和46年9月28日判決で確定してますが、1項と2項では途中で優先関係が逆転するかのように読めます。

 

これについては佐野判事が指摘した論文の一部が判例タイムズ284号「交差点における他の車両等との関係(東京地裁 朝岡智幸氏)」にありますが、「1項の右折劣後が途中から右折優先に転じるのではない」とし、

2項は、1項による直進車の優先関係が発生する以前に既右折状態に入った右折車がその後に発生した事情によって直進車の進路上にとどまらざるを得なくなった場合には、直進車はそのような状態にある右折車の進行を妨げてはならないことを規定したもので、運転者が直進中に、自車進路上、制動距離外に障害物を発見したときには、これとの衝突を回避すべきは条理上当然のことで、成文による規定を待つまでもなく、2項は不要の規定である。

 

判例タイムズ284号「交差点における他の車両等との関係(東京地裁 朝岡智幸氏)」、佐野判事の論文からの引用

要はこのように、右折車が直進車の進行妨害にならない間に交差点に進入し右折したものの、何らかの事情で停止せざるを得ない状況になれば、

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直進車は遠くに見えている「既に右折した車両」との衝突を回避するために速度を調節して進行する(安全運転義務)。
そんな当たり前の話を37条2項で規定したために、右直関係の優先関係が途中で入れ替わるかのような誤解につながって混乱しているのだから、37条2項は削除すべきと結論付けてます。

 

結局、昭和46年改正で37条2項は削除され、36条4項に「交差点安全進行義務」が新設されました。

 

左折車と直進車の関係についても、直進自転車に急ブレーキを掛けさせるような危険な左折(進路変更)を禁じているわけで、

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仮に自転車レーンを通行する自転車がまだ遠く後方にいて、進行妨害する関係にない段階で左折を開始したものの横断歩行者等の関係性で停止したなら、

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自転車は自分の進路前方を注視して、衝突しないように速度を調節しながら進行する。
こういう場合には直進自転車が優先するわけでもなく、前方が詰まっていれば停止するしかないでしょう。
左折車と直進自転車が双方停止状態に陥った後は、双方に安全運転義務から得意の「譲り合いの原理」が働くだけですし。

 

こういう場合の直進自転車の速度調節については、札幌高裁判決も判例タイムズ(佐野判事など)も「条理上当然」と表現してますが、安全運転義務の範囲とも言えますし(安全運転義務「違反」になるかは別問題)、成文規定によらなくても「当たり前じゃん」とも言えます。
37条の矛盾について佐野判事が指摘した論文が一番分かりやすいかなと。

 

こういうときに「直進自転車の義務は道路交通法何条ですか?」などと屁理屈を言う人もいますが…「条理上当然」。
停止車両が自分の進路前方にいて、余裕で停止できる距離なのにそのまま衝突していい理由はない。

当たり前ですが、「余裕で停止できる距離なのにいろいろ怠り急ブレーキになった」は話が違います。そのような場合は直進車の違反(札幌高裁)。

 

なお、旧37条1項の「進行を妨げてはならない」と現行規定の「進行妨害してはならない」は意味が同じ。

二十二 進行妨害 車両等が、進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めることをいう。

26条の2第2項の「速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない」も意味は同じですが、「進行妨害」を規定した昭和46年改正時に「進行妨害は交差点の関係のみで使う」と決めたため、このように使い分けされています。

あえていうなら

左折通行帯の左側に自転車直進帯がある時点で構造的不備なんじゃないか?と疑問に感じます。
左側端に寄ることが禁止された状況では交錯するリスクが増えるだけ。

 

たぶんなんですが、それをおかしな方向で解決しようとしたからこれがあるんじゃないかと思うのですよ。

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歩車分離式にして、「歩行者自転車専用」を作れば車道の信号が青、横断歩道が赤なら、車道を通行する自転車は交差点に進入禁止になり「左折車と直進自転車は」交錯しなくなる。

 

とりあえず言えるのは、このような場合について

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直進自転車が優先するものの、状況次第ではそうではない。
あくまでも規制対象はこれ。

同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるとき

なのでこういう状況では自転車が劣後します。
(あくまでも急ブレーキなどを掛けさせる関係性ではないとき)

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自転車は速度を調節しながら進行し、衝突しないように停止するだけ。
そりゃ、進路前方がふさがっていたら速度を調節しながら進行するのは当たり前の話で「直進優先だぜドケや!」といって突っ込むバカはいない。

判例

第一通行帯が2輪車専用レーン、第二通行帯が車という事例について、左折車が左側端まで寄せずに左折したことから有罪にした判例があります。
ただし、昭和46年改正以前のもの。
つまり、「進行方向別通行区分」や「進路変更禁止」が誕生する前の判例。

被告人は、3個の通行帯に区分された道路の第二通行帯を進行し、徐行を始めていたものであり、しかも左折を開始する直前大廻りをして左折するため一旦右に転把し、その直後左折を開始たものである。このような場合右道路の第一通行帯を進行してきた自動二輪車その他の小型車の運転者(右の第一通行帯は、自動二輪車その他の小型車用のものである―昭和46年政令第348号による改正前の道路交通法施行令10条1項2号参照)は、被告人運転の車両が左側端に寄つたうえ左折するのが正常な左折であるのに、左側端に寄らずに(通行帯の区分がある道路についても、左折の場合、右の区分に関係なくできる限り左側端に寄るべきことについては、昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法20条4項、34条1項参照)、逆に右に転把しているし、すでに減速徐行を開始しているところから、被告人運転の車両が左折せず進路を変更し、または小型車を優先直進させてくれるものと誤信して、信号に従つて直進する可能性がある。従つて被告人としては、小型車の運転者が、その専用の通行帯である第一通行帯を進行してきて、被告人運転車両の左折合図に気付かず、あるいは気付いても、前述したような誤信をして直進することの可能性を考慮して、左後方および左側方の安全を確認する義務があるものと考えられる。

 

東京地裁 昭和47年8月1日

進行方向別通行区分や進路変更禁止ができる前の判例ですが、現在も進行方向別通行区分がなく進路変更禁止もなければ、左折車は自転車レーンに進入してから左折する義務があり、万が一寄せられなかったなら直進自転車を優先させることになります。

 

また、自転車は速度を調節しながら進行する義務があるのも当然。
絶対的に直進優先なんて規定もありません。
とりあえず、いろいろ見ている範囲では左折車と後続直進自転車の関係性(双方の注意義務)は、車両通行帯の有無に関係ないものと考えてよく、たまたま通行帯の境界線で分かれていても原理は変わらないと思います。

 

と、判例タイムズの論文を見る限りでは考えられますが、明確に何条の規定なのかと聞かれると若干疑問は残るのも確かです。
たぶんなんですが、それを解決するのは法よりも構造だと考えてまして、ダブル左折レーンとかも法解釈で解決しようとするとまあまあ疑問が残る。
自転車の直進を別導線(分離信号など)で動かさない限りはいつまで経っても「雰囲気による優先」でしかないと思います。
雰囲気による優先とは、結局両者の位置関係や速度を考えて決まる面が大きいという意味です。

 

ドライバーにも自転車乗りにも理解してもらいたい自転車のルール。僕たちは左折レーンから直進します。
自転車のルールって、正直なところあまり理解されていません。 自転車乗りが理解していないことも多いので余計混乱を招いている原因だと思いますが・・・ 自転車は第一通行帯以外は走れない 何度も引用して申し訳ないが、これ。 ...

 

なお、判例タイムズ284号は当時の現役裁判官が道路交通法の解説をしている珍しいモノ。
2096円で買えます。


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