車道を通行する自転車にとっては、斬新なプレイを強いる結果になる自転車横断帯。
バッカじゃねーの感溢れる構造です。
Contents
立法時の考え方
そもそも自転車横断帯を新設した理由はこちら。
第91回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 昭和55年4月1日
交差点における自転車利用者の保護と歩行者の保護を目的といたしまして、横断歩道における自転車と歩行者の競合を避けるために新たに自転車横断帯を設けたということでございます。
あくまでも横断歩道での歩行者との交錯を問題視していたようですが、じゃあなぜ63条の7を設けたのか?
「車道を通行する場合を除き」と加えれば済むのに。
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。
2 普通自転車は、交差点又はその手前の直近において、当該交差点への進入の禁止を表示する道路標示があるときは、当該道路標示を越えて当該交差点に入つてはならない。
「車道を通行する場合を除き」と加えなかった理由を考えると主に三点あると思われます。
①交差点進入禁止規制
まず一つは63条の7第2項との関係から「交差点進入禁止」の必要性との関係。
○阿部憲一君 警察庁にもう一問承りますけれども、大型トラックの左折時の事故防止の対策として交差点の停止線をずらすなどの措置がとられようとしていますけれども、現にとられておるようですけれども、現在どの程度それが進捗していますか、一言簡単に御返事願いたいと思います。
○政府委員(杉原正君) 左折の巻き込みにつきまして、先ほどの交差点の手前の二段停止線方式という、これはまあ東京その他各県でいま始めておりますが、この問題と並行しまして、今度の改正道交法の中であれしました自動車のトラックの多い交差点での交差点進入禁止の措置、交差点の手前で一遍歩道の上に上げる、それで自転車横断帯でその後渡ってもらうというふうなそういう措置等も並行してやっておるわけでございまして、そういう規制面からの対策をこれからさらに進めていきたいというふうに考えております。
第87回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 第4号 昭和54年2月28日
交差点進入禁止規制は「左折巻き込み対策」なんだそうな。
おそらく非普通自転車の保護も考えることになるし、そもそもは「自転車は歩道でも走ってろよ政策」の一部かと。
②交差点の範囲
交差点の範囲を勘違いする人がいますが、ここ。
なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
本件の事実関係は、右認定のとおりである。そして右のように車道と車道が交わる十字路において、四つ角の宅地または歩道の角を切り取つて歩道または車道としたことにより車道の幅員を拡大してある場合には、その拡大してある車道部分は道路交通法にいわゆる交差点に包含され、したがつて本件においては、右の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(イ)各点を順次直線で結んだ線内の車道部分全部が、双方の車道の交わる部分であつて、右の交差点にあたる、と解すべきである。故に右の(イ)点は、交差点の側端にあたる。被告人は、交差点の側端から5メートル以内の場所に自動車を駐車したことが明かである。
名古屋高裁 昭和37年11月26日
バカ正直に18条1項の「左側端に寄って」を解釈した場合、交差点を通行する自転車はこの交差点の側端に沿って通行するものだと解釈している判例もあるし、そもそも平成20年施行令改正以前は、横断歩道を通行する自転車は車道の信号に従うとしていたくらい。
それを踏まえて。
この自転車横断帯はどれにあたるか?
A、交差点内
B、交差点に接する
C、交差点の付近
AもしくはBなんだよね。
こんな位置でも。
道路交通法に忠実に従うなら、どの道「交差点を直進する自転車」はこのラインに沿うのだから、そこに自転車横断帯をつけただけとも取れる。
③自転車道の存在
自転車道は定義上「車道の部分」。
「車道を通行する場合を除き」と記述すると、自転車道と自転車道を結ぶ自転車横断帯の意味がイマイチわからなくなる。
なので「歩道等又は自転車道を通行する場合は」と規定すべきだったのかもしれません。
一部の道路交通法テロリスト以外は
そもそも、自転車横断帯の有無を確認しながら交差点に向けて進行するとなると、単なる前方不注視でしかないし、そんなもんを探しながら自転車に乗るよりも対向右折車や後続車に注意したほうが有意義でしかない。
「容易に視認可能な道路標識等じゃないと無効」(最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月15日)だし、気がついたときには既に通過し終わる自転車横断帯なんぞ気にする必要性もないでしょう。
一部の「法律を守る」と豪語する人以外は、前方をしっかり見て進行すればよい。
だいたいにして、「対向右折車に注意し」と規定されてるのに、なんで左側を注視しなきゃいけないのか意味がわからない。
故野村監督のように、左目で自転車横断帯を探し、右目で対向右折車を見るのかね。
プロのキャッチャーに求める技術を一般人ができるわけもない。
結局、「自転車は歩道でも走ってろよ政策」の名残りみたいなもんだし、そもそも不合理なルール。
交差点進入禁止規制を掛けたわりには自転車横断帯がない交差点すらあるし、
メチャクチャなんですよ、自転車横断帯は。
ちなみに「自転車横断帯があると自転車は快適になる」という昭和の時代の論文がありましたが…これはやめておこう笑。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント