こちらの続きです。
調べてみたら面白い事実が判明しました。
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車両通行帯は存在するか?
まずこちらに「車両通行帯」が存在するか?
車両通行帯を勘違いしている人は多いけど、片側に複数車線があり、かつ、公安委員会が「車両通行帯」だと意思決定した部分を車両通行帯と言います(法2条1項7号、4条、令1条の2第4項、標識令別表第9)。
これは最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日判決でも明らか。
しかしながら,一件記録によると,本件道路は,埼玉県公安委員会による車両通行帯とすることの意思決定がされておらず,道路交通法20条1項の「車両通行帯の設けられた道路」に該当しない。
最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日
さて。
管轄署に確認をしたところ、当該道路は車両通行帯の規制が掛かっており(約450m)、かつ、進行方向別通行区分の指定はされていない。
ここで大問題発生。
公安委員会の意思決定では「車線数が2ないし3」になっているらしく、対応した人は左側一車線を潰して自転車ナビラインとボラードを設置したことを把握してないっぽい。
Googleマップで見てもらい確認。
管轄署の見解としては、交差点手前は2車線(車両通行帯)+自転車ナビライン( ボラードで仕切りあり)。
「車線数が2ないし3」という意思決定は、車線数が途中で変わるからという話でしたが、あまり深いことは詮索しません笑。
ボラードで区切った左側(自転車ナビライン)も車両通行帯(第一通行帯)と見なした場合、原付や車も第一通行帯もしくは第二通行帯の通行義務(20条1項)があり、やや問題になる。
しかも「普通自転車専用通行帯」の指定もないし、やや意味がわからない。
「車線数2」が正解だとした場合、自転車ナビラインは車両通行帯最外側線の外側を通行することになり、自転車が通行帯違反(20条1項)になるという珍事を巻き起こします。
しかし「車線数2+自転車ナビライン(通行帯の外側)」という見解。
もちろん、自転車ナビラインを通行する自転車が取締り対象になることはあり得ませんが、道路交通法ってス☆テ☆キですよね笑。
ボラードで区切った部分を自転車道(2条1項3号の3)とみなすのはさすがに無理がありますが、道路交通法上、自転車道には標識の設置は不要です。
なので恣意的解釈をすれば、自転車道と車両通行帯(2車線)という見方も出来なくはない。
そもそも、いかなる理由で車両通行帯の規制を敷いたのかわかりません。
違反になるか?
右側に進行する自転車は違反なのか?については、管轄署の見解として
前回書いた通りでした。
右側に進行することは違反ではないけど、車線を跨いで右側に進行する際に、車線に従い通行する車両が優先します。
進路変更とみるか、横断とみるかはどちらもあり得ますが、結論は同じです。
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
「横断」とは、道路の反対側の側端または道路上の特定の地点に到達することを目的として、道路の進行方向に対し、直角またはこれに近い角度をもって、その道路の全部または一部を横切ることをいい、必ずしも道路の反対側の側端に到達することを必要としない。
木宮高彦, 岩井重一、詳解道路交通法、1977、有斐閣ブックス
これらの規制に反しない形で右側車線を通行する分には違反になりません。
けど何度も書いたように、「違反にならないこと」と「安全上推奨されないこと」は別。
道路管理者、警察ともに左側の歩道から進行して欲しいことは明らかだし、左側から進行することを推奨します。
荒北仮面氏理論の問題点
荒北仮面氏は「通行帯違反」「チャリカス」と断言していますが、彼の理屈はそもそも崩壊しています。
車両通行帯(車線数2)があり、交差点には進行方向別通行区分が無いことが前提で検討します。
クルマが右側車線を通行してもいい根拠がない
まず荒北仮面氏の理屈によると、クルマが右側車線を通行してもいい根拠がないことになる。
クルマだろうと第一通行帯の通行義務があるので、クルマが右側車線を通行してもいい根拠がない。
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。(略)
3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
20条3項の場合(1項の除外)はこちら。
・25条1、2項→道路外への右左折
・34条→交差点の右左折
・35条→進行方向別通行区分
・26条の2第3項→進路変更禁止(イエローライン)
・40条2項→緊急車両に譲る場合
・道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき
除外事由 | 当てはまるか? |
追い越しするとき | ✕(追い越しではない) |
25条1、2項 | ✕(道路外に右折ではない) |
34条 | ✕(明らかに直進になる) |
35条 | ✕(進行方向別通行区分がない) |
26条の2第3項 | ✕(イエローラインがない) |
40条2項 | ✕(緊急車両は来てない) |
道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき | ?(基本的には道路工事や事故の場合と解釈される) |
荒北仮面氏の理屈を用いて「自転車は通行帯違反」とした場合、右側に進行するクルマも第二通行帯を通行してもいい根拠がなく、なぜ荒北仮面氏は自転車のみを通行帯違反だとしたのか理解に苦しむ。
「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」を適用しているか、なんとなく実情に合わせて解釈するかしかない。
別道路と見なすべき
通行帯の有無にかかわらず、「首都高入口」と「一般道」の分岐と見なすべきであって、荒北仮面氏はそもそも何を言ってるのかよくわからないとしか言えません。
センターラインは右側道路に延びているのは明らかですし、右側道路に進むことは「優先道路を直進」と見るべきかと。
「道路交通法違反」と「安全上推奨されないこと」は分けて
荒北仮面氏の理解では「通行帯違反」「チャリカス」認定にされますが、正しい法律解釈では進路変更ないし横断時に妨害しなければ違反になることはありません。
「道路交通法違反」と「安全上推奨されないこと」は分けて考えましょう。
というよりも荒北仮面氏は動画をみても違反がいくつか散見されますが、
違反=チャリカスなら、自らに向けるべきとしか言えず。
見通しが悪い横断歩道にダンシングアタックを決めてますが、歩行者の有無にかかわらず38条1項前段の違反が成立します。
ほかにも横断歩行者妨害している動画をアップしてましたが、編集していて違反に気がつかないのでしょうか?
違反にならないから何をしてもかまわないとは考えていないので、あくまでも推奨は「左側の歩道から」。
なお、自転車ナビラインを「普通自転車専用通行帯」にする予定は全くなく、右側道路に「自転車通行止め規制」をする予定はないそうな。
しかし自転車事故が多発した場合には右側道路に「自転車通行止め」を掛ける可能性はあるわけで、自転車乗りの振る舞い次第と言えるかと。
なぜ450mを車両通行帯に指定したのかはわかりませんが、たまに上乗せ規制なしの車両通行帯があります。
自転車ナビラインを通行すると厳密には通行帯違反になりますが、それをツッコミしたらさすがに困ってました笑。
法律と実情が合わないからこうなる典型例だし、公安委員会も自転車のことを考えて法律上の整合性を取る気はないのでしょうけど、世の中そんなもんです。
もちろん、車両通行帯の外側にある自転車ナビラインを通行した自転車を違反として取り締まりすることは100%ありません。
でも不思議ですよね。
自転車のために作られたボラード区間を通行すると、厳密には違反になる。
道路交通法テロリストからしたら許し難いのかもしれませんが、私なりにいうならば「法律と実情の違い」としか言えないよね。
間違っても「自転車ナビラインを通行すると違反だ!」などとして第一通行帯を走るのはやめましょう笑。
けど、それをしても違反とは言えないしチャリカスとも言えませんので、ボラードで仕切りを設けた場所を「自転車道」(2条1項3号の3)と見なしたほうが適切な気もします。
仮に自転車道とみなしても、右側道路に分岐進行することは違反になりませんが(別道路扱い)。
そもそも、クルマと自転車を同じ規則で縛るからおかしくなるのでは?
仮に事故った場合
仮にこのようなプレイをして事故った場合。
民事の過失割合は道路交通法違反の程度を争うわけではなく、過失を争います。
過失とは広い意味での「不注意」を争うため、「自転車はナビラインに従って通行すべき注意義務があった」とか、「車両運転者はボラードで区切られた部分から進出する自転車を予見することは困難」として自転車側の過失が大きくなる可能性もあります。
状況はだいぶ違いますが、路側帯からノールックで進路変更した自転車と、警戒しセンターライン付近を通行したオートバイの衝突事故について、以下の判例があります。
自転車 | オートバイ |
30% | 70% |
一般的に自転車の速度が30キロ以上だと原付同様に見られて過失修正されることや、ボラードの存在から「自転車はそのまま左側端を通行すると期待されること」などを考えると、事故になればロードバイクの過失がまあまあ大きくなることも予想可能。
なのであくまでも推奨は歩道からとしか言えませんが、
違反にならないものを違反だのチャリカスだの言うのは、やめましょう。
こちらでも書いた尾根幹とかも荒北仮面氏に言わせると「通行帯違反のチャリカス」になるのかもしらないけど、違反にならない。
「道路交通法違反」と「安全上推奨されないこと」は分けて考えて欲しいのね。
そして初心者さんに推奨するのは当然こちら。
先日返信しましたが、なぜか不具合でアンデリバリーになってました。
申し訳ありません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
いつも楽しく拝見させていただいております。この界隈も日常的に走行していましたがナビラインに従った事は一度もありません。代官町が今の形式(一旦歩道にに入り又料金所を抜けてから歩道に入る形式、以前は料金所直前の横断歩道を渡る形式だった)になる前もエイヤと車道の右側車線に移って直進してました。
7月1日からタンデム自転車が都内でも解禁になりますが、この部分のナビラインの扱いがタンデム自転車等でどういう扱いになるのか気になります。
基本的に普通自転車通行帯においてもタンデム自転車は車道と普通自転車通行帯どちらを走っても良いという扱いのようなので、車道を堂々と走れば良いという事だと思うのですが、竹橋から代官町にかけては結構な上りなのでタンデムだとスピードが落ちがちで右側車線に移るのはタイミングを測るのが結構至難の技です。
いっそのこと左側の高速の入口を一つ潰して、自転車や特定原付等の低速中速車用の車線を通して欲しいです。
因みにタンデム自転車の場合は、30キロ以下であっても(該当箇所は竹橋からずっと上りなのでタンデム走行時に30キロ維持は絶対無理)自転車側の過失割合はロードより軽減されますでしょうかね?
7月1日よりタンデム解禁に伴い、イロイロと不具合出てきそうだなぁと感じます。
コメントありがとうございます。
まず、タンデムは普通自転車専用通行帯の通行義務があります。
標識令にてご確認ください。
なお、ここについてはちょっとややこしいので記事にて解説します。