定期的に似たような事案がTwitter上に上がりますが、
殺されかけました。このトラックを擁護したいという方、居られましたら前方及び後方は360度で録画してますので、ご希望なら全映像お見せできますよ。左足あげてないと縁石にペダルが当たって転倒→巻き込み→即死でした。#ひかり陸運 #煽り運転 #幅寄せ #なにわナンバー #拡散希望 pic.twitter.com/ApZkKYWnuj
— kurosuke (@whitekurosuke) March 20, 2023
法の不備なのか?
警察の怠慢なのか?
Contents
自転車への危険追い越し
この場合、追いついてから「わずかに」進路を変えているので追い越しとみなせますが、
第二十八条
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
被追い越し車の速度、進路、状況に応じて「できる限り」安全な速度と方法で追い越しするルール。
問題になるのは「できる限り」。
できる限りとは道路や交通の状況等をかんがみ支障のない範囲における可能な限度を意味すると解され、単に運転者の主観において可能な限度を持って足りると解すべきではない
名古屋簡裁 昭和46年9月14日
古い判例で、自転車を「追い越し」する際にこういう説示をしたものがあります(道路交通取締法時代の判例なので追い越しのルールがちょっと違います)。
安全確認とは運転者の主観と客観的事実とが相俟つて絶対に交通事故発生の虞がない場合を指すものであると解せらるる
行橋簡裁 昭和33年6月21日
※この判例は「絶対に」などとしているわりには無罪。
警察の対応って、こうなんですよ。
いやいや、アホか!?とツッコミしたくなるのは当然の話。
一部では刑法208条「暴行罪」を適用する向きもありますが、不起訴がせいぜい。
以前から「道路交通法に2輪車の側方通過(追い越し、追い抜き)する際の側方間隔の具体的数字を定めるべき」と書いてますが、要は具体性がない「できる限り」だから事故未発生事案については警察もやる気なし。
こちらはオートバイの事案ですが(2:25あたりから)、
2輪車は生身なので、至近距離側方通過されたらビックリするし危険なのは当たり前でしかなくて。
なお、事故が発生した事案(業務上過失致死傷、過失運転致死傷)で有罪になる側方間隔の目安は1m以下です。
○刑事責任
裁判所 | 自転車の動静 | 車の速度 | 側方間隔 | 判決 |
広島高裁S43.7.19 | 安定 | 40キロ | 約1m | 無罪 |
東京高裁S45.3.5 | 安定 | 30キロ | 1~1.5m | 無罪 |
最高裁S60.4.30 | 不安定 | 約5キロ | 60~70センチ | 有罪 |
高松高裁S42.12.22 | 傘さし | 50キロ | 1m | 有罪 |
東京高裁 S48.2.5 | 原付二種 | 65キロ | 0.3m | 有罪 |
仙台高裁S29.4.15 | 酒酔い | 20キロ | 1.3m | 有罪 |
札幌高裁S36.12.21 | 安定 | 35キロ | 1.5m | 無罪 |
高松高裁S38.6.19 | 子供載せ | – | 約42センチ | 有罪 |
仙台高裁秋田支部S46.6.1 | – | 45キロ | 20~40センチ | 有罪 |
※これらは側方間隔のみで有罪にしたわけではない。
1m+減速と解釈している判例や、フラツキ自転車には1.3mでも足りないとした判例など。
なお大型車が追い抜きする際に自転車が避譲しても、追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務違反を認めた判例もあります。
なお、原判決の認定によると、被告人は、大型貨物自動車を運転して本件道路を走行中、先行する被害者運転の自転車を追い抜こうとして警笛を吹鳴したのに対し被害者が道路左側の有蓋側溝上に避譲して走行したので、同人を追い抜くことができるものと思つて追い抜きを始め、自車左側端と被害者の自転車の右ハンドルグリツプとの間に60ないし70センチメートルの間隔をあけて、その右側を徐行し、かつ、被害者の動向をサイドミラー等で確認しつつ、右自転車と並進したところ、被害者は、自転車走行の安定を失い自転車もろとも転倒して、被告人車左後輪に轢圧されたというのであるが、本件道路は大型貨物自動車の通行が禁止されている幅員4m弱の狭隘な道路であり、被害者走行の有蓋側溝に接して民家のブロツク塀が設置されていて、道路左端からブロツク塀までは約90センチメートルの間隔しかなかつたこと、側溝上は、蓋と蓋の間や側溝縁と蓋の間に隙間や高低差があつて自転車の安全走行に適さない状況であつたこと、被害者は72歳の老人であつたことなど原判決の判示する本件の状況下においては、被告人車が追い抜く際に被害者が走行の安定を失い転倒して事故に至る危険が大きいと認められるのであるから、たとえ、同人が被告人車の警笛に応じ避譲して走行していた場合であつても、大型貨物自動車の運転者たる被告人としては、被害者転倒による事故発生の危険を予測して、その追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであり、これと同旨の見解に立つて被告人の過失を肯認した原判断は正当である。
昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷
事故が起きれば当然側方間隔が問題になるとはいえ、事故が起きなければセーフ扱い。
法が悪いのか?
法の運用(警察)が悪いのか?
法が悪い
まず曖昧な法が悪いのだから、28条に5項を新設すべき。
例
「最低1mかつ速度差5キロ」であればたいがい十分ですが、子供や高齢者、明らかにフラツキがあるなら1.5mでも足りない。
「自転車は車道が原則」だと盛んに広報しますが、どこのバカがTwitter動画のような現実をみて車道を走るのですか?と。
警察庁長官様や最高検察庁の検事総長様がこんな至近距離追い越しされたら、どうせ全力を挙げて検挙するだろうし、全力で起訴するんでしょ。
激オコして特別捜査本部でも作るのかな?
まあ、どちらも自転車には乗らなそうだけど笑。
たぶん現行法でも対応できるはずですが、曖昧なルールだから末端の警察官は扱わない。
曖昧なルールがダメダメなんだから、明確化することが第一歩なのではなかろうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
空気抵抗の低減のためか見た目のためかわかりませんが、スカートが下まである大型トラックとのすれ違いは1.5mくらいあっても、かなり身体を持っていかれる感じがあります。
速度差や相手の車種によっても側方間隔の影響が大幅に異なるので、余計に揉めるような気がします。
コメントありがとうございます。
それも含め、減速して速度差を減らすという話です。
まずは交番の警官のチャリを、歩道走行禁止にして
車道走行義務化することから。
僕は歩道走行の警官見たら、スマホ向けながら「車道走りなさい!」と注意します。
歩道通行は禁止されてませんよ。