実証実験の電動キックボードについて、無免許&飲酒運転で逮捕された方が、不起訴になるというまさかの珍事があったわけですが、

報道を見る限り、証拠不十分で不起訴となっています。
実証実験の電動キックボードは、特例により小型特殊自動車とみなす規定なので普通自動車免許が必要。
自動車なので飲酒運転もアウトなはず。
無免許&飲酒検知という、客観的過ぎる証拠が揃っていても証拠不十分・・・
この理由は恐らくですが、無免許運転罪は故意犯しか成立しないからという事情なんだと思います。
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無免許運転罪は故意犯のみ
逮捕された方は、【免許が必要とは知らなかった】と供述しています。
無免許運転禁止については、道交法64条で定められています。
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
道交法は特別刑法になるわけですが、刑法にはこのような規定があります。
1,罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
過失致死傷など、過失犯を罰する規定もありますが、基本的には故意犯しか成立しない。
恐らくですが今回の件。
・実証実験の電動キックボードは期間限定の特例で、必ずしもルールが周知されているとも言えない
・知人が免許情報を登録して又貸ししたという事情から、又貸しされた人が免許保有が条件とは知り得なかった可能性もある
・実際に、【免許が必要とは知らなかった】という供述をしている
このような事情から、故意だと立証できないと判断したのではないでしょうか?
けどまあ、無免許運転に故意性がないと罰することが出来ないというのは知りませんでした。
判例をみても、確かに故意じゃないと成立していないんですね。
【要旨1】乗車定員が11人以上である大型自動車の座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった場合においても,乗車定員の変更につき国土交通大臣が行う自動車検査証の記入を受けていないときは,当該自動車はなお道路交通法上の大型自動車に当たるから,本件車両は同法上の大型自動車に該当するというべきである。そして,【要旨2】前記1の事実関係の下においては,本件車両の席の状況を認識しながらこれを普通自動車免許で運転した被告人には,無免許運転の故意を認めることができるというべきである。そうすると,被告人に無免許運転罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
最高裁判所第三小法廷 平成18年2月27日
こういう判例もありました。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/155/083155_hanrei.pdf
普通免許しか持たない外国人が、中型車運転できるのか警察署に確認した。
車検証と免許証を提示して、警察官が運転OKだというから運転したら、無免許運転だとされたという話。
無免許運転については不起訴になっているようですが、免許取消処分も取り消すように求めた事例。
けどまあ、実証実験ではない電動キックボードについても略式起訴された事例はあるわけで、

今回の不起訴は間違いじゃないかと思うんですよね。
1つ可能性があるとしたら、この逮捕された人、原付免許だけは持っていたとかそういうオチなのかもしれません。
(推測)
普通の電動キックボードであれば、原付免許を持っていていれば無免許にはならない。
けど実証実験の電動キックボードは、小型特殊自動車とみなす特例なので原付免許だけだと乗れない。
その場合、実証実験の件が必ずしも周知されているルールとも言えないし、又貸しという都合上なおさら分からない可能性もあるので故意が成立しないとか?
(推測終了)
けどこの推測通りだと、原付は飲酒運転不可なわけで、飲酒運転のほうは成立するはず??
なので単純に免許を持っていなかったけど故意の立証が出来ないと判断されてしまったのかと。
レアケースだと思われ
普通に販売されている電動キックボードの場合、説明書なり販売サイトで【公道走行不可】とは書いてあるはずなので、こっちは知らなかったという言い訳は成立しないのかもしれません。
ちなみに無免許運転は幇助でもアウト。
第六十四条
2 何人も、前項の規定に違反して自動車又は原動機付自転車を運転することとなるおそれがある者に対し、自動車又は原動機付自転車を提供してはならない。
こっちも処罰されていないっぽいので、これも成立しないと判断されたのでしょうか??
電動キックボードの実証実験が始まって以降、実証実験ではない電動キックボードの摘発事例の報道が増えていますw
ガンガン取り締まりすべきなんでしょうけど、あれも出力次第で原付扱いにもなるし、大型二輪扱いにもなるようなので、その電動キックボードの性能から調べないと処罰するのが難しいらしい。
大阪府警はこういうのを調べて、各電動キックボードのデータベース化しているような報道も出てましたが、販売時点で何らかの規制をしないと何の違反になるのかすら不明なわけで、いろいろ問題は多そうですね。
難しいのは、所有すること自体は何ら違法ではないので、販売側を規制出来ないという点でしょうね。
ある意味では輪行袋問題と似ている面があって、鉄道会社の規定サイズに収まらない輪行袋を販売すること自体は問題ないけど、使うのは鉄道会社の規則に触れる。
メーカー側が、鉄道会社の規定に抵触しているのを知っているケースもあるらしく、

メーカーの言い分って、

注意書きで「鉄道会社の規則に従って使ってね!」と書いてあるじゃん!
これが屁理屈ではないと思うなら話にならない。
所詮はこの程度のモラル。
屁理屈ばっかりで正当化するような人もいますしね。
けどまあ、無免許&飲酒で不起訴というのは良くないなぁ。
故意犯のみを処罰する規定なのでしょうがないですが、逮捕歴は残るわけである意味では社会的な制裁は受けているとも取れますが・・・
全然話は変わりますが、先日このような報道がありました。
おととし自転車で転倒し、道路に倒れこんだ当時87歳の男性を車ではね、そのまま逃走しました。
男性はその後、病院で死亡しています。
9日開かれた判決公判で、静岡地裁の鈴木悠裁判官は「自転車の転倒を瞬時に予知できた可能性は認められない」と過失運転致死については無罪としました。
一方でひき逃げについて「命が奪われたことは軽く見ることはできない」と指摘し、執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。
Yahoo!ニュースYahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。
これ、それなりに出ている意見として、

これなんですが、そもそも自転車の運転者には安全運転義務があるわけじゃないですか。
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
マナーや事故防止の観点でいうなら、倒れることも予見して側方距離を取るべきなのかもしれません。
けど犯罪として罰することができる過失なのかというと、自転車の運転者もハンドル操作が全然確実ではないから転倒しているわけで、安全運転義務違反とも取れる。
自転車の違反行為を予見して側方距離を取る義務があるのかというと、それは酷なんじゃないですかね。
これは信頼の原則にも関わるのですが、信頼の原則についてはまた後日。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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