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歩道を通行する自転車と、路外に出るために左折するクルマ。

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このような事故は悲しいところですが、

県道を走っていた車がこちらの駐車場に入ろうと左折したところ走ってきた自転車と衝突したということです

Yahoo!ニュース
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要は歩道通行自転車と、路外に出るために左折したクルマが歩道上で衝突した事故になります。

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一時停止

歩道を横切る前には、一時停止義務があります。

(通行区分)
第十七条
車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。

この規定、「歩行者の有無」にかかわらず強制一時停止することになってます。
このように強制一時停止義務を定めた趣旨を考えると、要は「見逃しリスク」を最大限減らす意味でしょう。

 

左後方が死角になる上、植え込みなどで子供が隠れて見えないリスクもあるので。

ところで17条2項の後段は「歩行者を妨害禁止」とあります。
じゃあ自転車を妨害してもいいのか?という話になりますが、道路交通法ハンドブック(警察庁交通企画課)によれば、歩道通行自転車と衝突した場合には「安全運転義務違反(70条)」を適用すると書いてあります。

 

17条2項は歩行者の有無にかかわらず強制一時停止義務。
要は一時停止して「歩行者がいないか確認」することになりますが、その段階で自転車が見えたら事故回避のために自転車を先に行かせるしかない。

 

「歩道を横切る前の安全確認義務」については重要な判例があるので、以前も取り上げた判例を再度取り上げます。

「一時停止では足りない」とした判例

判例は広島高裁 令和3年9月16日。
過失運転傷害被告事件です。

 

上の報道とは異なり、道路外から歩道を横切り車道に進出する際に、歩道通行自転車と衝突した事故

 

この判例、多少物議を醸した面もありますが、事故概要。

道路外のガソリンスタンドから進出する際に、歩道左側には高さ2.5mの壁があり左側が見えないにもかかわらず、徐行進行した。
そこに歩道通行する自転車(時速39.6キロ)が衝突した事故になります。

 

歩道通行自転車には徐行義務があるし、歩道でなんちゅうスピード出してんだ!となりますが一審は「歩道を横切る際に一時停止を怠った過失」として有罪。

 

一審が認めた「罪となる事実」がこれ。

被告人は,平成30年7月10日午後1時30分頃,普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を運転し,広島市a区bc丁目d番e号所在のガソリンスタンド(以下「本件ガソリンスタンド」という。)敷地内からその北方に接する歩道(以下「本件歩道」という。)を通過して車道(以下「本件車道」という。)へ向け進出するに当たり,本件歩道手前で一時停止し,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約5kmで進行した過失により,折から本件歩道を左から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転の自転車(以下「A自転車」という。)に気付かず,A自転車右側に自車右前部を衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせた。

ところが広島高裁は「是認できない」として一審判決を破棄します。

 

理由がこちら。

原判決は,その説示に照らし,本位的訴因の内容を⑴で当裁判所が理解したのと同様の趣旨で捉えた上でこれを是認し,そのとおりの犯罪事実を認定したものといえる。しかしながら,以下の理由からこの判断は是認することができない。

 

ア 被告人車両の進路に沿って本件ガソリンスタンド敷地内から本件歩道に進出しようとする場合,左方の見通しが不良であったことは原判決も説示するところである。4のとおり,本件においては,高さ2.5mの壁が本件ガソリンスタンド敷地の西端に南北方向に設けられ,本件ガソリンスタンド敷地と本件歩道との境界線上まで及んでいるのみならず,その北端付近には看板等も設置されている。加えて,被告人車両においては,車両先端からルームミラーまでの距離が約120cm,同じく運転席の背もたれまでの距離がおおよそ160cmであるから,本件歩道手前の地点に被告人車両を停止させた状態では,運転者である被告人は,本件歩道と本件ガソリンスタンドの境界線から1m以上手前(南側)の地点にいることになる。記録によれば,同地点からは,上記壁等遮へい物の存在により,本件歩道上の左方の状況については,視認することが困難な状況にあったものと認められる。
そうすると,被告人が仮に本件歩道手前の地点で一時停止をしても,左方から来るA自転車について視認することは困難であるから,本件歩道手前の地点で一時停止をして左右等の安全確認を行ったとしても,左方から来るA自転車を発見,視認して衝突回避措置を執ることはできなかったことになる。
したがって,本位的訴因において本件過失の根拠となる注意義務として行うべきとされた本件歩道手前の地点での一時停止及び左右等の安全確認措置は,本件事故の回避を可能ならしめる有効な措置とはいえず,本位的訴因における上記注意義務及びその違反は,被告人に過失責任を問うことのできないものであったといわざるを得ない。
原判決は,このような過失責任を問うことのできない注意義務を設定した本位的訴因をそのまま是認した点において,その事実認定は,論理則,経験則等に違反した不合理なものといわざるを得ない。

イ また,原判決は,本位的訴因における過失行為と本件結果との因果関係を肯定し,本件結果を本位的訴因における注意義務違反,つまり,本件歩道手前の地点における一時停止及び安全確認の各義務違反に帰責しているが,この判断についても是認することはできない。
すなわち,本件においては,上記のとおり,被告人には,本位的訴因に係る本件歩道手前の地点での一時停止義務及び安全確認義務を課すことはできず,本位的訴因における被告人の行為に,本件結果を帰責することは許されない。
また,仮に,被告人が,本位的訴因における本件歩道手前の地点での一時停止及び左右等の安全確認の各措置を執ったとしても,A自転車が左方から進行して来ることに気付くことができず,ひいては,本件結果を回避することができる有効な措置を執ることができなかったものと認められ,原判決は,当該各措置を履行したとしても,予見することも有効な回避措置を執ることもできないまま発生した結果を被告人に帰責するものであって是認することができない。
この点,原判決は,被告人が本件歩道手前の地点で一時停止をしていれば,被告人車両が本件衝突地点に到達する前にA自転車が同地点を通過し終えていることになるため,本件事故は発生しなかったことを指摘し,これを主たる根拠として,本件歩道手前の地点における一時停止及び安全確認義務違反と本件結果との因果関係を肯定している
しかしながら,上記のような理屈によって,本件において,被告人が本件歩道手前の地点に到達した時点で一時停止をしていたら,その分だけ本件衝突地点への到達が遅れ,本件結果を回避することができたとはいえるとしても,それゆえに,被告人に対し,本件歩道手前の地点での一時停止義務を課し,同義務違反と本件結果との間の因果関係を肯定することは許されない。
すなわち,本位的訴因にいう本件歩道手前の地点での一時停止義務は,飽くまで,本件歩道に進出するに当たって,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認するために課されるものであり,本件歩道上を左方から進行して来る自転車等との本件衝突地点における衝突を避けるために本件衝突地点への到達を遅らせることを目的として課されるものではない。後者の目的のために本件歩道手前の地点での一時停止義務を課すのであれば,本件歩道上を左方から進行して来る自転車等がいつ本件衝突地点に到達するか予見可能である必要があるが,本件において,本件歩道手前の地点からは本件歩道上の左方の見通しが不良であるため,そのような予見は不可能であるから,後者の目的のために本件歩道手前の地点での一時停止義務を課すことはできないというべきである。また,原判決がいう理屈で本件歩道手前の地点での一時停止義務違反と本件結果との因果関係を肯定することは,結局のところ,一時停止により本件衝突地点への到達が遅れることによって時間差が生じ,偶然に結果を回避できた可能性を根拠として被告人に本件結果を帰責することになり,ひいては,A自転車が本件衝突地点に到達した時点がいつであったかという偶然の事情によって結論が左右されることになって,妥当性を欠く。

そもそも壁で歩道左側が見えてないのだから、一時停止したとしてもやはり見えない。
一時停止したら「偶然」事故を回避できたかもしれないけど、そもそも見えてないのだから一時停止しても事故を回避する有効な方法にはならないとしている。

 

一審判決を破棄してますが、二審は新たに過失認定した上で有罪。
そこで新たに認定された注意義務違反がこちら。

本件ガソリンスタンド敷地内からその北方に接する本件歩道を通過して本件車道へ向け進出するに当たり,本件ガソリンスタンドの出入口左方には壁や看板等が設置されていて左方の見通しが悪く,本件歩道を進行する自転車等の有無及びその安全を確認するのが困難であったから,本件歩道手前で一時停止した上,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約4.2kmで進行した過失により,折から本件歩道を左から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転のA自転車に気付かず,A自転車右側に自車右前部を衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせたものである。

 

広島高裁 令和3年9月16日

一時停止したあとに、「小刻みに停止・発進を繰り返すなどして」安全を確認して進行すべき義務を怠った過失として有罪です。

 

一審 二審
本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約5kmで進行した過失 本件歩道手前で一時停止した上,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約4.2kmで進行した過失

このように見える範囲が狭いのだから、

一時停止しても安全確認できない。
死角に歩行者がいるかもしれないし、ジョギングしている人がいるかもしれないけど、どちらにせよ見えない。

なので、一時停止後にわずかに進行して一時停止するなど小刻みに発進と停止を繰り返す義務がある。

「小刻みに停止・発進を繰り返すなどして」安全を確認して進行すべき義務があるとしています。

自転車の異常な高速度については量刑判断の中で考慮されていますが、歩道の安全を確認して進行するのは当たり前だとしている。

冒頭の事故報道は自転車の速度について言及はありませんが(普通の速度だとは思いますが)、言いたいこととしては歩道を横切る際にはこれくらい慎重さが求められるということです。

 

この判例については裁判所ホームページに掲載されています。
時速40キロで歩道を通行する自転車もどうかとは思いますが、クルマが歩道を横切る際に安全確認せずに漠然進行することは別問題ですから…

 

※あくまでも「歩道を横切る際の安全確認義務」の一例として出した判例なので、冒頭の報道の内容とは異なります。

 

一時停止では足りない、とした点でこの判例の価値があると思う。
趣旨はあくまでも一時停止と安全確認ですから。

 

けど、一時停止もしないまま漠然進行して事故になるケースって多いのです。
報道の件にしても、一時停止かつ安全確認義務を果たしていれば起きない事故だったとしか言いようがないのですが、「ヘルメットガー!」というのは被害者遺族に対して失礼過ぎるとは思わないのでしょうか。

 

先日、下記についても「刑事責任を負う可能性がある」と書きましたが、

 

歩行者の直前横断…回避不可能なのか?
うわー、という感想しかありませんが… ちょっとだけ解説。 見ればわかる直前横断 この場合、道路交通法13条1項でいう「直前横断」。 (横断の禁止の場所) 第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道...

 

前科持ちの仲間入りをしたくない人は、我が身に置き換えて考えたほうがいいと思います。
どういう点を過失認定しているのか知ることは、安全運転の一助になりますから。
「そんな判決は理不尽だ!」と考えてしまうよりも、他人の失敗を我が身に活かすほうがいい。


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