自転車ヘルメットの努力義務はもうウンザリするほどの話かもしれませんが、そもそも二年前に決まっていたことを今さら騒ぐほうが不思議です。


二年前にうちの記事で取り上げてますけどね。
ところで「努力義務」という言葉はそもそも何を意味するのでしょうか?
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努力義務の性質
例えばワクチン接種についても努力義務があります。
予防接種法
第九条 定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(B類疾病のうち当該疾病にかかった場合の病状の程度を考慮して厚生労働大臣が定めるもの(第二十四条第六号及び第二十八条において「特定B類疾病」という。)に係るものを除く。次項及び次条において同じ。)の対象者は、これらの予防接種を受けるよう努めなければならない。
これについて厚生労働省のサイトではこのような説明がある。
今回の予防接種は感染症の緊急のまん延予防の観点から実施するものであり、国民の皆様にも接種にご協力をいただきたいという趣旨で、「接種を受けるよう努めなければならない」という、予防接種法第9条の規定が適用されています。この規定のことは、いわゆる「努力義務」と呼ばれていますが、義務とは異なります。接種は強制ではなく、最終的には、あくまでも、ご本人が納得した上で接種をご判断いただくことになります。
今回のワクチン接種の「努力義務」とは何ですか。|Q&A|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省「接種を受けるよう努めなければならない」という予防接種法の規定のことで、義務とは異なります。感染症の緊急のまん延予防の観点から、皆様に接種にご協力をいただきたいという趣旨から、このような規定があります。
努力義務は義務ではなく、あくまでも本人が判断する問題だとしている。
あんまり書くとあれなんですが、私、ワクチンは一度も接種してません。
理由は反ワクチン派だから…ではなくて、単に体調不良が長引いてそれどころではなかったというだけになります。
努力義務の法的性質を考えたときに、強制力も罰則もないのは明らか。
その点、例えば道路交通法18条1項には罰則がありませんが、「努めなければならない」ではなく「しなければならない」なので、やはり意味が違う。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。
第六十三条の十一 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
罰則がないけど一定の作為を義務付けする18条1項と、罰則もなければ作為を義務付けせずに「努める義務」とする63条の11。
「義務」と「努力義務」は明らかに違うものなのに、なぜこのように「義務である」みたいなミスリードが起きるのかのほうが不思議です。
一例。
自転車に乗る際にヘルメットの着用が義務か否かを示した世界地図。 https://t.co/kGbSZGFDRF 赤は義務かつ罰則ありで、南半球で多い。オレンジは義務だが罰則なしで、南アに次いで今月日本で導入。黄と青は低年齢者や特定の場所のみで義務。綠は義務なしで、現時点での大多数。 (credit: statista) pic.twitter.com/dKlxUJOQhZ
— Oguchi T/小口 高 (@ogugeo) April 11, 2023
「義務だが罰則なし」ではなく、「努めるように促したものの判断は本人任せ」が正解なんだけどな…
こちらもそう。
「推奨」と「努力義務」ではたいして変わらないと思うかもしれませんが、全く性格が異なります。例えば歯磨きなら、厚生労働省が「毎日歯磨きをしましょう」というキャンペーンをやったところでまあ当然だよなと思うだけですが、「毎日の歯磨きを法律で努力義務にします」と言ったらどうでしょう。努力義務とはいえ個人の判断に帰すべき領域に法律で縛りをかけることへの違和感はないでしょうか。
なぜ自転車のヘルメットは努力義務になったのか|T.Goto|note道路交通法改正により2023年4月より自転車のヘルメットが努力義務になりました。 ヘルメットをかぶった方が安全性が高まるのは間違いないし、決まった以上「かぶるよう努める」のは当然なのですが、多くの人にとっては急に決まったような印象ではないでしょうか。なぜ法改正してまでヘルメットを努力義務にしたのでしょうか。 ヘルメッ...
作為を義務付けしていない=法律による縛りを掛けてないになるのだが、ミスリードしているだけなんじゃなかろうか。
なぜ義務でもなく、法規による縛りもないのにミスリードした上で批判活動をするのか、意味がわかりません。
「自ら歯科疾患の予防に向けた取組を行う」ことも努力義務に含まれてますので、具体的に書いてないだけで歯磨きも法律上は努力義務だと読み取れます。
「生涯にわたって日常生活において自ら歯科疾患の予防に向けた取組」に歯磨きが含まれないと思う人がいるのだろうか。
(国民の責務)
第六条 国民は、歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、生涯にわたって日常生活において自ら歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、定期的に歯科に係る検診(健康診査及び健康診断を含む。第八条において同じ。)を受け、及び必要に応じて歯科保健指導を受けることにより、歯科口腔保健に努めるものとする。
こんなのも努力義務。
(国民の責務)
第二条 国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。
(国民の責務)
第二条の四 国民は、廃棄物の排出を抑制し、再生品の使用等により廃棄物の再生利用を図り、廃棄物を分別して排出し、その生じた廃棄物をなるべく自ら処分すること等により、廃棄物の減量その他その適正な処理に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。
(国民の努力)
第五条 国民は、第二条の基本理念にのっとり、相互扶助と連帯の精神に基づいて、被災者への支援その他の助け合いに努めるものとする。
なぜ「努力義務」を「義務」だと誤認させるようなことを前提にするのか不思議です。
努力義務でいうならば、香川県ゲーム条例なんかも努力義務だし、世の中探せば腐るほど存在する努力義務。
イチイチ発狂するほうが不思議でならない。
作為を義務付けせずに任意性を担保しているのだから。
こんなマスコミ報道があったら、さすがにビビる。
昨晩未明、自転車に乗る男性が転倒し意識不明の重体です。
男性は口腔定期検診を受けていなかったものとみられています。
口腔定期検診は努力義務です。
マスコミなんて警察のプレスリリースをそのまま流すお仕事ですし、プレスリリースで口腔定期検診の受診状況なんて出さないし捜査しないわな笑。
けど「個人の判断に帰すべき」ワクチン接種や口腔定期検診、ゲームなど探せばいくらでも存在する努力義務について今さら「ヘルメット」だけを騒ぐことは全く理解できないし、しまいには「罰則がない義務」などと誤った解釈すらされているほうが不思議です。
電動キックボードのヘルメット
電動キックボードについて、ヘルメットが努力義務になることを「規制緩和」と捉えることにも違和感があります。
というのも、海外では事実上ノーヘルで乗れた電動キックボードについて、日本では道路交通法上「原付」に当てはめることで海外からみれば「過剰規制」していたのが今まで。
なので特定小型原付になり「ヘルメットが努力義務」になることは単に「規制の正常化」(海外基準と比較して)だと思う。
ただし、海外ではコケちゃいました事故はまあまあ多かったことも鑑みての「努力義務」だと思う。
2年も前に電動キックボードとともに自転車のヘルメットが努力義務になる予定だと発表されていたにもかかわらず、

今さら大騒ぎするほうが不思議でならない。
なお、努力義務化について「どうせ口ではグダグダ言う人がいるだろうけど、リアル社会にはほぼ影響しない」と予測していました。
予測通りとしかいいようがないですが、「努力義務化されたら自転車乗らない!」などと発狂していた人が本当に乗らなくなったのか?というと、リアルな世界では聞いたことはないし、肌感覚として自転車が減ったようには今のところ見えません。
努力義務化とは、「ヘルメットの必要性を各自考えるもの」だと考えてましたが、必要性を感じるか感じないかは人それぞれ。
その結果についても自己責任なのは今も昔も変わりません。
最近、「ヘルメットをかぶってなかったから」みたいに受け取れなくもない報道がありますが、そもそもの話として。
以前から「マスコミ報道」と「事実」が違うなんて事例は多々あって、おかしな報道により間違った世論が形成されるなんてことは日常茶飯事です。
例えばこちら。

名古屋市内の国道302号を走行中、車を道路の左橋に寄せた際に車線左側を走行していた自転車に接触して発生したという死亡事故の裁判で、名古屋地裁が運転手に対し「過失は認められない」として無罪を言い渡したという(中日新聞、毎日新聞)。
名古屋の交通事故、道路事情から「自転車の通行が想定されていない」と判断 | 財経新聞名古屋市内の国道302号を走行中、車を道路の左橋に寄せた際に車線左側を走行していた自転車に接触して発生したという死亡事故の裁判で、名古屋地裁が運転手に対し「過失は認められない」として無罪を言い渡したという。
判決文(刑事)を読めばわかるように、そもそも幅寄せしたとする鑑定自体が明らかにおかしいから「幅寄せはなかった」と判断された事例なのに、おかしな報道をするから「幅寄せしても無罪」などという間違った世論が形成される。
なお当該事故については、民事でも「幅寄せはなかった」と判断されていますが、現在控訴中の様子(おそらく幅寄せの有無が争点ではないと思われます)。
なので左側に寄せたとする証拠すらない。
マスコミがおかしな報道をした結果、ネット上でおかしな世論が形成されるなんてことは今までもたくさんありました。
「ヘルメット努力義務化」については、マスコミがおかしな報道をし過ぎてむしろまともな方向に向かっているような気がします。

ヘルメットが1mmも関係しない事故について「ヘルメットをかぶっていませんでした」などと報道すれば、まともな人からすれば違和感しかない。
歯科定期検診は努力義務だし、ワクチン接種も努力義務だし、自転車ヘルメットも努力義務。
この国は「努力義務」という名の「形」が好きなだけなので、今までもこれからも、自分で判断しましょう。
歯磨きも法律上は努力義務なんだろうな。
具体的に書いてないだけで。
いっそのこと、歯科口腔保健の推進に関する法律にならい具体的な例示をせずに、道路交通法63条の11についても、アバウトにするとどうなるのだろう?
第六十三条の十一 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
第六十三条の十一 自転車の運転者は、頭部を保護するよう努めなければならない。
このようにアバウトにしたらどうなるのだろうか。
もちろん、頭皮のケアとは異なることは明らかですが、義務ではないのに義務であると捉える人がいたり、法律による縛りを掛けてないのに「縛りがある」と捉える人のほうに問題があるのではなかろうか。
そもそも「乗車用ヘルメット」とは何か?すら規定がない。
そして2年も前に発表されていた内容を今さら騒ぐとか…
コメント
ワクチンに関していえば、射たないと非国民的な空気を作って射たせるけど、何かあっても個人の責任と責任逃れをするためだと思います。
コメントありがとうございます。
その側面は否定できません。