この手の話題は時々出てきますが、
抱っこで自転車 違反です
抱っこで自転車 違反です 2割超、子ども落下や転倒経験 「多忙でやむなく」の声も - 日本経済新聞子どもを保育園や幼稚園に連れて行くのに便利な自転車。小さい子をひもで抱っこして運転し、けがをする事故が起きている。国民生活センターの調査では2割超が抱っこした子どもの落下や転倒を経験していた。法令違反と認識しながら他の手段をとるのが難しいと...
確かにそのようなルールで運用されています。
一例として神奈川県公安委員会規則を。
(1) 乗車人員
ア 二輪の自転車にあつては1人(道路法(昭和27年法律第180号)第48条の14第2項に規定する自転車専用道路又は自転車歩行者専用道路においては、乗車装置(幼児用座席を除く。以下アにおいて同じ。)に応じた人員)、三輪の自転車にあつては乗車装置に応じた人員を超えないこと。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
(ア) 幼児用座席を設け、当該幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者1人を乗車させ、16歳以上の者が運転する場合
(イ) 幼児1人をひも等で確実に背負つて16歳以上の者が運転する場合
(ウ) 幼児用座席を設け、当該幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者1人を乗車させ、及び幼児1人をひも等で確実に背負つて16歳以上の者が運転する場合
(以下略)
基本どの都道府県も同じルールですが、「背負って」なので抱っこ紐はNGになる。
なんで??
おんぶ紐は良くて抱っこ紐はダメなんておかしいジャマイカ!!と思うでしょうけど、一応理由があります。
Contents
抱っこ紐はダメ、おんぶ紐はOKな理由
理由はわりとシンプルで、子供が胸のところにあることにより手の動きが制限されてハンドル操作に支障を来す可能性があることや、視界を妨げるおそれがあるから。
おんぶ紐だとハンドル操作や前方視野に影響を及ぼす可能性がだいぶ違う。
これがメインの理由ですが、加えて自転車に乗っていて転倒した際に、抱っこ紐だとお母さんの身体で子供を押し潰すようになりやすいという報告もあります。
なお、抱っこ紐で自転車に乗った場合には道路交通法57条2項の違反になります。
法定刑は二万円以下の罰金又は科料。
ただまあ
現実世界では抱っこ紐で自転車に乗る人が普通にいるのも事実。
そして事故も起きているのが現実。
県警都筑署によると、母親は7月5日午前8時25分ごろ、同区の市道で、次男を抱っこひもで前に抱え、左手首に傘を提げた状態で電動自転車を運転。過失によって転倒して次男の頭を強く打ち付け、死亡させた疑いがある。雨が降っていて母親はかっぱを着ていたが、提げていた傘が自転車のフレームと前輪の泥よけの間に挟まったことで、ハンドルが動かなくなり、転倒につながったと署はみている。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASL9C5FHHL9CULOB019.html
なぜ法が抱っこ紐を禁じているかについては理由があるのですが、抱っこ紐を使う側にも理由があって抱っこ紐だったりするわけで、「法定禁止だから」ではあまり解決にはならないような気がします。
こういう子供2人が乗れる自転車もあるのですが、
日本の場合は「普通自転車」という規格があり、歩道通行するには普通自転車サイズを満たさないと使えない。
必然的に普通自転車サイズから外れたものは「売れない」のでメーカーもわざわざ開発しませんが、海外だとこのようなカーゴバイクに子供を乗せることはわりと珍しくなかったりします。
安定性などを考えれば明らかにこのようなカーゴバイクのほうが適していても、日本の場合は「普通自転車」の規格から外れるタイプは使いにくい。
誰がみても駐輪場にすら収まらないのは確実ですし。
ちなみに「普通自転車」は英訳すると「スタンダード自転車」であって、「ノーマル自転車」ではないらしい。
ノーマル自転車の反対語はアブノーマル自転車…になるとだいぶヤバいですし笑。
普通自転車という規格を昭和53年に定めた理由は、歩道を通行できる自転車の要件の明確化と、歩行者の保護です。
第84回国会 衆議院 地方行政委員会 第18号 昭和53年4月25日
○杉原政府委員 今度考えました自転車でございますが、自転車といいましてもいろいろな種類がございます。それから自転車の中に二輪も三輪もあるわけでございます。そこで、現行法ですと、たとえば歩道に上げる自転車というのは二輪に限る、こうなっておりますが、二輪であってもその構造あるいは大きさによっては歩道に上げると歩行者が非常に迷惑するというものがある反面、最近三輪の自転車で主婦が買い物に使われるものがあるわけですが、これなどはいまの規定ですと車道を走らざるを得ませんけれども、これは車の大きさも余り大きいものではございませんので、むしろ歩道に上げた方が安全だということで、二輪、三輪を通じて大きさ、構造を限定をしまして、この限定したものを普通自転車と称して、それを歩道の上に上げる条件にするというぐあいにしたいというのが今度の改正でございます。
(中略)
しかし、道路交通の安全というものを確保する、そういう二輪とか三輪で子供とか老人、歩道を歩いておられる人の妨害になってはいかぬということで、まず改正案におきましては、基本的にそういう構造とか大きさを特定をいたしますが、特定をした自転車、三輪についても、まず基本的に徐行義務を課する。要するに、何かがあったらいつでもとまれる状態、これはおのずと走行速度が決まるわけでございます。それで走行しておりまして、歩行者を妨害するおそれがあるときには一時とまる、これを義務づけることにいたしたわけでございます。そういう意味で歩行者への危険を排除していきたいというふうに考えております。
日本でカーゴバイクが普通に使われる日が来るには、いろいろ問題を解決しない限りは無理でしょう。
抱っこ紐は違反だ!と言っただけで違反者が減るのかは疑問がありますが、一応は理由があって法定禁止にしているので、なぜそういうルールなのかは知ることも大事だし、他に手段がないのかを考えることも必要になると思う。
どうしても普通自転車サイズから外れるものは使いにくいシステムですが、歩道通行要件自体は歩行者への危害を考えると制限する必要もあるわけで。
そして、激狭自転車道を乱立させているところをみても、
今のところ、このようなカーゴバイクなどは想定してないのかと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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