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横断歩道で自転車に優先権はなくても、事故を起こせば有罪ですよ。

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こちらについてご意見を頂いたのですが。

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

読者様
読者様
平成22年5月22日東京高裁の判決。
「38条は横断歩道では自転車に適用されない」とした弁護人の主張を退けて控訴棄却だから、自転車にも優先権があるとした判例だと説明しているYouTuberの人がいますよ。
ちゃんと確認したほうがいいのではないでしょうか。

リンク先でも取り上げてますが、判例の意味が違いますよ…
「38条は横断歩道を横断する自転車には適用されない」で間違いありませんが、だからといって事故を起こしていい理由にはなりません。

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平成22年5月22日東京高裁の判決

この判例については、「交通事故 事件捜査〜過失認定と実況見分」(立花書房)に掲載されています。
図書館などに行けばあると思いますが、こちらに書いてあるのでこちらから。

 

【判例】自動車対自転車〜横断歩道上での事故(平成20年6月1日道路交通法改正後の判例) | 交通事故の弁護士相談は慰謝料協会|妥当な慰謝料を。
道路交通法2条において、「横断歩道」とは「道路標識又は道路標示により歩行者の横断 …

 

この判例は過失運転致死罪の成立について争ったものになりますが、過失運転致死罪はこちら。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

「道路交通法違反により人を死傷」ではなく、「運転上必要な注意を怠り人を死傷」です。
成立要件はこちら。

予見可能な事故を回避せずに人を死傷させた場合

予見可能なのであれば、事故を回避するために注意義務が課されるわけです。

 

そもそも、そのYouTuberの人が言っているというこれ。

「38条は横断歩道では自転車に適用されない」とした弁護人の主張

これが既に間違い。
弁護人の主張は「歩行者に向けた38条1項を流用して予見可能性を認定したのは不当」です。

 

過失運転致死罪は「予見可能な事故」を「回避しなかったこと」で有罪なので、予見可能かどうかが一つのポイントになります。

 

被告人が控訴を申し立て、控訴審では、弁護人が、「道路交通法38条1項は、歩行者が横断歩道を利用して道路を横断する場合及び自転車が自転車横断帯を利用して道路を横断する場合の安全をそれぞれ保護したものであって、自転車が自転車横断帯のない横断歩道を利用して道路を横断する場合まで想定していないから、本件において、被告人には同条項による徐行義務及び安全確認義務は課されていない、また、横断歩道の周辺には歩行者がいなかったのに、歩行者に対して要請される前記の各義務を流用して、被害者車両が横断する予見可能性を認定するのは不当である。」などと主張した。

 

「交通事故 事件捜査〜過失認定と実況見分」(立花書房)

ようはこのように横断歩道があるのに対して、

横断歩道がある以上、歩行者が横断することは予見可能ですよね。
道路交通法上も38条の義務(減速接近義務)を課している。

 

じゃあ自転車が横断することも予見可能なのか?という話になりますが、弁護人からすると

 

「歩行者に向けた減速接近義務を流用して、自転車が横断歩道を横断することの予見可能性を認定したのが不当」

 

だという主張。

 

裁判所の判断は、「そもそも38条を流用して予見可能性を認定していない」として弁護人の主張を退けています。

なお多くの自転車が歩行者と同様に自転車横断帯の設置されていない横断歩道を利用して横断しているのが交通の実情である。

平成20年6月1日施行の改正後の道路交通法施行令2条1項をみると、例外的に歩道を通行することができる自転車の範囲を明確化したことに伴い、自転車横断帯が設置されていない交差点において、これらの自転車が横断歩道を進行して道路を横断することが見込まれていることを踏まえ、横断歩道を進行しようとする自転車については、人の形をする記号を有する信号に従わなければならないと規定している。

また、それに伴い、国家公安委員会告示第3号「交通の方法に関する教則」も、自動車の安全な通行について、「横断歩道は歩行者の横断するための場所ですので、横断中の歩行者がいないなど歩行者の通行を妨げるおそれのない場合を除き、自転車に乗ったまま通行してはいけません」(第3章第2節1(5))、「横断歩道を進行する場合は、歩行者信号機の信号に従わなければなりません」(同3(1))とそれぞれ改められ、自転車が一定の場合に横断歩道を利用して道路を横断することを想定している。

被害者は、本件当時84歳であったが、自転車の運転者が70歳以上の高齢者である場合については、自転車が歩道を通行することができる場合の一つとされており、正に自転車横断帯の設置されていない横断歩道を利用して道路を横断することが想定されていたといえる。自動車運転者としても、このような交通の実情を踏まえれば、歩行者はもちろん、歩行者の通行を妨げることのない場合に徐行して自転車が横断歩道を利用して道路を横断するかもしれない、と予見することは十分に可能である。

(中略)

所論がいうように歩行者に対して要請される道路交通法38条1項による徐行義務等を流用して、被害者車両の予見可能性を認定しているわけではない

 

平成22年5月22日 東京高裁

争点は「38条1項の解釈」ではなくて、予見可能性をどのように認定したのかです。
弁護人からすると歩行者に向けた義務を流用して予見可能性を認定しているように思ったみたいですが、あくまでも日常的に見かける行動だし予見可能なんだと裁判所が判断している。

 

なので控訴理由、控訴を棄却にした理由についても、そのYouTuberとやらがきちんと読んでないのでは。
道路交通法違反について争っているわけじゃなくて、「予見可能な事故を回避しなかったのか?(過失運転致死罪)」を争っている判例ですから。

 

判決文にも「道路交通法違反について争っているわけじゃない」ことは書いてある通り。

自動車運転者としては、同法70条による安全運転義務があるのはもちろん、交通の実情を踏まえた注意義務が求められるのは当然である(所論は、道路交通法上の義務と自動車運転過失致死罪における注意義務を同一のものと理解している点で相当でない。すなわち、信頼の原則が働くような場合はともかく、前者がないからといって、直ちに後者までないということにはならない。)

 

平成22年5月22日 東京高裁

※所論とは弁護人の主張を意味します。

 

なので、そのYouTuberとやらが語っている内容はそもそも前提から間違ってますし、全く読んでないか、もしくは過失運転致死罪の成立要件を理解してないのではないでしょうか。
38条の解釈については、裁判所と弁護人の間で争いがないのも明らかかと。

この判例は、横断歩道を横断する自転車には38条1項に基づく優先権がないことを明らかにし、しかし「歩行者に向けた減速接近義務」を免れないし、予見可能だから回避する義務を怠ったことで有罪にしたもの。
自転車には優先権がないけど、予見可能な事故を回避する義務を怠ったという話です。

予見可能な事故を回避

このように横断歩道があった場合、歩行者が横断することは当然予見可能。
そして道路交通法上も38条1項前段で「減速接近義務」を課しています。

 

そして横断歩道を横断する自転車なんていくらでも見かける日常風景なわけで、「予見可能」ですよね。
自転車が横断することが予見可能な以上、道路交通法上は自転車に優先権がなくても、クルマには注意義務、事故回避義務が生じるのは当然。

 

自転車が横断歩道を横断することが予見可能な以上、歩行者に向けた38条1項前段の減速接近義務と同様の注意義務があるのは当然だし、減速接近している段階で自転車が飛び出してきたらブレーキで事故を回避できます。

「交通事故 事件捜査〜過失認定と実況見分」(立花書房)の解説にもそのあたりの説明が書いてあります。
過失運転致死罪の注意義務を認定する上では、歩行者の場合と同様の注意義務(減速接近)を認定して有罪にできるという話。

 

道路交通法の義務違反について争っているわけじゃないので、前提を理解してないと判例の意味がわからないのではないでしょうか。

ついでに

先日、判例を載せているページに別の方からご意見を頂いたのですが。

 

とある第38条の解説動画においてあまりに法解釈が酷く、判例などないかと思い、ちょっと調べてみたらたどり着きました。

 

裁判所のサイトでも調べることができない判例も紹介されており、確認したいと思っていたことがわかりました。こうしたちゃんとエビデンスがある情報は大変助かります。

 

当然、判例もさまざまなケースがありますし、多角的に紹介されている点もすばらしいです。

 

根拠など示さず、身勝手な法解釈を広めている人、それを妄信的に信じてしまう人がいるのをみると、この問題だけでなく、世の中いろいろ大変だなあと思います

 

さらにそれを見た人が突っかかってくるとなると、困ったものですね。。。

 

良い情報、ありがとうございます。お疲れ様でございました。

要は、横断歩道と自転車の関係を考えたときに、

○38条1項は、横断歩道を横断する自転車に優先権を与えていない。
○しかし歩行者が明らかにいない場合以外に課される「減速接近義務」は免除されない。
○事故を起こせば有罪。

それを下記にまとめてます。

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

道路交通法の具体的義務以外にも、予見可能な事故があるなら注意義務が課されるのは当然の話。
よく言われる「かもしれない運転」にも繋がりますが、予見可能な事故を回避しなかったら有罪(過失運転致死傷罪)なんですよ。
道路交通法の義務に関係なく。

 

これらをきちんと説明しているYouTuberを見たことがないのですが、自分の勉強と安全運転のために、過失運転致死罪でどのような注意義務違反が認定されているか見ておいた方がいいかと思う。
道路交通法の具体的義務以外にも、予見可能な事故を回避する注意義務があるので。

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

そもそも、誰がこんな間違った話を動画にしているかも多数の人から聞いてますが(あの人の話ですよね…)、その人は「歩道を横切って道路外に出る際に、歩行者の妨害をしなければ一時停止しなくても違反じゃないし、誰も一時停止なんてしてないだろ!」などとデタラメ解釈を流しているみたいですね。
交通安全とは程遠い「自分都合の解釈」をするだけの人みたいですし、そんなもんを信じるよりもこちらをオススメしておきます。


コメント

  1. upmoon より:

    その人かは知らないけどコメント欄で「歩行者は法で定義されてない。歩道通行の自転車は歩道を通行する者だから歩行者だ。」って書いてる動画作成者が居てびっくりしました
    その歩道通行の根拠の条文においてですら自転車は歩行者と別物として書かれているのによくそんな解釈がてきるなと

    法どころか日本語すら捻じ曲げてまで嘘を流布したい原動力はなんなんでしょうね

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      同一人物なのかは知りませんが、その主張を真顔で言われたら話し合う価値がないように思います笑

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