自転車が右折する際には二段階右折になりますが、ルールとしては交差点の側端に沿つて徐行。
なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
ところで、自転車の台数が多いときに、対岸に渡りこのように二列になるのはアリでしょうか?
おそらくは
問題になるのは「並進」(19条)ですが、並進とは進行状態を意味するので、二段階右折の際にやむを得ない限度で二列になることまで禁止した趣旨とは解されない上(停止状態は進行ではない)、
18条1項でいう左側端寄り「通行」は、「通行」の中に停止状態も含むと考えられますが、18条1項但し書き「道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」からみても問題とは思えない。
「やむを得ない限度」と書いたのは18条1項但し書きに該当するような特殊な場合に限ると考えられるから。
というのも、自転車の並進を原則禁止にした昭和39年に警察庁から法令解釈通達が出てます。
これを見る限り、信号待ち停止状態については問題とはしていない。
自転車の並進禁止について
(昭和39.9.4 警察庁丁交企発第91号 警察庁交通局交通企画課長から愛媛県警察本部長あて回答)
2、追越し時の後車が前車に並行する段階は並進ではないと解すると、自転車が数列に並行するような場合で、それが追越しの段階にある限り法19条の違反は成立しないと解してよいか。
4、信号機によって交通整理の行われている交差点において信号待ちしていた自転車が「進め」の信号によって進行する場合、自転車が数列にわたって並行する状態が生じるが、このような場合法19条違反が成立するか。
答
2 (略)追越しまたは追抜きの過程において、追越しまたは追抜きに通常必要とされる短い時間、2以上の自転車が互に並ぶ場合には法19条にいう「並進」には該当せず、したがって同条の違反にはならないが、追越しまたは追抜きのため通常必要とされる時間を越える時間、2以上の自転車が並んで進行することとなる場合には法19条にいう「並進」となり、同条の違反が成立するものと考える。
4 質疑の内容は、実質的には所問2と同様と考えられるので2を参考にされたい。
質問4って、二段階右折のような状況をイメージしているのだろうと考えられます。
同時に進行しなければ並進にはならないし、18条1項但し書きや実情から、二段階右折など仕方がない範囲では二列になって信号待ちまで禁止してないのかと。
もちろん、並ばなくても問題ない場面で並ぶことは好ましくないのは当然。
ところで。
こんな感じで前が詰まっている段階で、交差点内で一列に停止することが許されるのか?について。
信号交差点においては交差点進入禁止になります。
50条については「交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれ」のみで足りるとの解釈なので、
第五十条 交通整理の行なわれている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点(交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分。以下この項において同じ。)に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない。
絶対に交差道路から進行してくる車両がいないと確信めいたものがない限りは違反になる。
50条は昭和46年に新設された規定ですが、この規定が「交通整理が行われている交差点」に限定した趣旨は、交通整理が行われていない交差点では他条の優先規定により交差点への進入が制限されたり、見通しが悪ければ徐行義務があるなど混乱しにくいものの、信号交差点では青信号に従ってそのまま進入しようとする車両が多いため事故リスクが高まることが理由です(昭和46年警察庁交通企画課「道路交通法の一部を改正する法律」より)。
青信号だからと減速せずに進入しようとしてしまいがちになるのが理由。
なので50条における「おそれ」とは、現に妨害がなくても広い意味での妨害になる可能性がある場合になります。
従って当然このような停止はダメ。
現実的には上の状態でト字路みたいになっていて、物理的に左側から進行してくる車両がいない場合とか以外には交差点進入禁止になるかと。
ちなみに、このように対岸に渡ってから一部「逆走風」になると思いますが、
どこまでが問題ないのかについては、社会通念で考えるしかないでしょう。
ところで
何回も書いてますが、二段階右折って変則的な交差点になると解釈上困難になる。
判例上はどちらもあるので、
私の意見としては、このような変形T字路については、安全そうなラインを選んでくださいとしか言えません。
本件においては、駅前通の車道と乙通の車道とが丁字形をなして交わる部分すなわち別紙図面AFBCDEA各点を順次直線で連結した範囲内の車道部分が交差点である。その部分の全部が交差点であることは、疑がない。
名古屋高裁 昭和38年12月23日
一方、広島高裁 昭和45年3月19日判決では、始端垂直方式を採用しています。
これについても社会通念で考えるしかないし、①のラインで進行した結果、すでに信号が見えない位置なら停止する必要性を感じませんが、横断歩行者妨害だけは注意。
ところで二段階右折とはいえ「右折」なので、理屈の上では37条の義務(直進・左折車妨害禁止)があることになりますが、いまだに二段階右折のどの段階で37条の義務があると解釈するのか、私にはさっぱりわかりません。
というのも、右折の定義ってこれ。
交差点において車体の向きが直進状態から変わりはじめ、交差道路の方向に完全に向きが変わる範囲をいう。
警視庁交通部 逐条道路交通法解説
なぜこのように解釈するかについては、旧37条2項の問題が大きいけど割愛します。
この定義に従うと、自転車にとって37条が関係するのは向きを変えるときのみになってしまうので、ちょっと意味がわからない。
ちなみに道路交通法を作った宮崎氏は、
なお、本項の規定は、すべての車両が右折する場合に適用されることになるわけであるが、実際には、右小回りをすべき車両について適用されることになろう。
宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966
このように述べてますが、二段階右折の自転車がいかなる場合に37条違反になるのか、私にはさっぱりわかりません。
小回り右折して直進車妨害したときに成立するのか?というと、そもそも右折方法違反が優先するのではないかと思いますし。
これについては警察本部に聞いてもわからないというし、私にもわかりませんが、自転車の違反講習行きの指定違反に37条が含まれているので、なおさらわかりません。
警察本部がわからないというルールに従うことは難しいですよね。
まあ、得意の「社会通念」で考えるしかないのかと思いますが、自転車のルールってみんな好き放題解釈しては支離滅裂になるのがオチなので、解説に困ることが多いです。
しまいにはこのように交差点内で停止することが問題ないと考えるアホすらいるみたいだし。
地獄だよね。
意味不明な解釈をする人が現れると。
これがダメな理由は他の条文からも導けますが…ワケわからない珍説を発表する暇があるなら、まずは調べて考えてみたらいいんだろうなと思ってしまう。
まあ、大量の自転車が同時に二段階右折するなんてことは、非クローズドのサイクルイベントか、最近話題の集団暴走行為中の方々くらいしか現実的には無さそうですが、アホを撒き散らして社会からダメ人間の烙印を押されることを目的にしていた…のでしたっけ??
私が知る限り日本では、何らかの主張をもって集団化し、違法走行行為を繰り広げる連中を総称して「暴走族」と呼んでいた気がします。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
自転車の二段階右折も右折であるため左折車を妨害してはならないとなると、同方向からきた左折自動車と二段階右折のために一旦交差点を直進したい自転車がいる状況では自転車は左折車を妨害しないために左折車を先に通してから直進しなければならないとも解釈できるのですが、そこはどうなのでしょうか。
コメントありがとうございます。
37条でいう左折車とは、対向左折車を意味すると解釈されているため、後続左折車を含まないことになります。
このあたりは執務資料や注解道路交通法など各種解説書に書いてあります。
ありがとうございます。