なかなか凄まじい意見だなぁと思うのですが
これ、歩行者妨害とするのは少々無理がある。
・自転車は路側帯を走行
・歩行者が立ってる場所は緑色ペイントされてない道路外に立っている。
・歩行者は道路外から路側帯を横断して横断歩道を横断しようとしたので、自転車が慌てて車道側に避けた恰好。
だがそれでも自転車が危ないのは言うまでもない— 住みよい未来環境を目指して (@TechnoMirai) June 7, 2023
この方が何を言いたいのかということと、致命的な間違いを。
路側帯を通行する自転車と、道路交通法38条の義務
まずは道路交通法38条。
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
この規定、17条4項にこれがある以上、
道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)
あくまでも車道を通行する車両に課された義務で、歩道又は路側帯を通行する自転車には課されていない義務と解釈されます。
なんですが、この方が致命的に見逃している点。
結局、最終的には自転車は横断歩道上(非路側帯部分)を通過している。
なので38条1項でいう「横断歩道に接近する場合」に当たるので、当然のように後段の一時停止義務が生じることになります。
横断歩道上を通過せずに、路側帯のまま進行していたら38条の義務がないと解釈できますが、この幅の路側帯を進行するにあたり、歩行者がいたら一時停止しない限りは路側帯のまま進行することも不可能。
第十七条の二 軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、道路の左側部分に設けられた路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたものを除く。)を通行することができる。
2 前項の場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。
なのでどのみち一時停止義務があったと言えます。
なお、路側帯には横断歩道用の停止線がないため、この場合は一時停止義務としては停止線手前ではなく、横断歩道直前と捉えるしかないでしょう。
また、この規定からみてもだいぶまずい。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
安全側方間隔を取ったようには見えませんし、徐行にも見えない。
なのでどのみち違反は成立するので、どれを選択的に違反と捉えるかだけの問題。
ちなみにですが、路側帯と横断歩道の関係。
横断歩道部分のみ路側帯線がなく、道路全幅に横断歩道が描いてあるケースのほうが多い気がするのですが、
そうであれば路側帯を進行しながらも「横断歩道に接近する」ことになるため、38条の義務は生じます。
上のように、横断歩道部分だけ路側帯が途切れているケースがほとんどじゃないかと思うのですが、そうであれば路側帯を通行しながらも「横断歩道に接近」するので38条1項の義務があると解釈することになるかと。
路側帯って単なる線なので、変な話、自由自在に行ったり来たりできちゃうのよね。
なので道路交通法の義務を検討する意味ではやや疑問がありますが、最終的に横断歩道上を通過した以上は言い訳は不可能です。
本来であれば
本来であれば38条2項の問題が先に来ますが、
第三十八条
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。
これについても17条4項の問題から、路側帯を進行する自転車には義務がないとなってしまう。
けど結局、道路交通法上の義務がなくても注意義務があることは明白で、事故が起きれば何ら言い訳の余地がない。
38条2項は昭和42年に新設されたものですが、自転車の歩道通行解禁が昭和45年、路側帯の新設が昭和46年。
そういう経緯から、路側帯を進行する自転車には必ずしも38条の義務があるとは言えないものの、動画では最終的に横断歩道上を通過しているので何ら言い訳の余地がない。
個人的には、こういうケースでも38条2項の対象にしたほうがいいと思いますが、38条2項って空気を読めないバカが大量発生したことから新設した規定。
しかしながら、横断歩道において事故にあう歩行者は、跡を絶たず、これらの交通事故の中には、車両が横断歩道附近で停止中または進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見が遅れて起こしたものが少なからず見受けられた。今回の改正は、このような交通事故を防止し、横断歩道における歩行者の保護を一そう徹底しようとしたものである。
まず、第38条第2項は、「車両等は、交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、当該横断歩道の直前で一時停止しなければならない」こととしている。
もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。
警察学論集、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月
横断歩道の手前に停止車両がいれば横断歩行者を優先中なんだとわかるはずなのに、空気を読めない方々が事故を起こしまくったため38条2項を新設して強制的な一時停止にしたということ。
昭和42年以降は空気を読む必要がなく強制一時停止ですが、この違反って2輪車に起こりやすいので注意が必要です。
このルールを知らない人も、自転車に乗るなら知っておくことがベスト。
ちなみにちょっと前に、横断歩道で一時停止しなかった自転車が横断歩行者と衝突した事故について、ウーバー運転者だったことから業務上過失致死罪を適用した判決もありました。
自転車であれば通常、過失致死罪になるところウーバーの業務中とみなし業務上過失致死罪を適用して有罪。
1 本件は、判示の食品配達業を営んでいた被告人が、自転車を運転中、交通整理の行われていない丁字路交差点入り口の横断歩道に差し掛かった際、速度調節及び前方左右注視の業務上の注意義務を怠り、折から同横断歩道を歩行中の被害者に自車を衝突させて死亡させた事案である。
2 被告人は、夜間降雨があった中、前照灯の装備がなく、眼鏡に雨滴が付着して前方左右が見えにくい状態にあったにもかかわらず、時速約20ないし25キロメートルという自転車としては相応に高速度のまま、横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないままに走行したために本件を惹起した。被告人は、高速走行可能なロードバイク型の自転車を運転するなどして、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を継続的に効率よく得ようと食品配達業に従事しており、そのような業務者の負う基本的な注意義務に違反したものであって、その過失は重い。
東京地裁 令和4年2月18日
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
引用元のツイートを書いたのは私です。
この場で取り上げて頂き有難うございます。
本文にて一点だけ気になった点がありましたので、その点についてご報告致します。
この発端となったツイートは、信号のない横断歩道に止まってた車のドライバーが、その側方の路側帯を通過した自転車を注意したという内容です。
なので、路側帯は停止義務はなく、自転車の違反はあくまでも路側帯を横断しようとした歩行者に対するものである、というのが私が指摘した内容です。
つまり、私のツイートは自動車側の道路に適用させる道路交通法第38条の違反ではないのと、自転車は自動車側とは無関係な別な違反をしていることを指摘するものです。
結果、意に反した意図的な切り取りで、私が「致命的な間違い」とされてしまってる格好です。
TwitteというSNSの性質上、勘違いする人も多いので、その部分についてフォローなり訂正をして欲しいと思います。
この別々の違反を一緒くたにしているドライバーが多いですが、私の発言は少なくとも自転車の違反行為を是としているものではなく、あくまで交通ルールに則って発言してます。
恐れ入りますが、記事に書いたように、違反事実としては38条1項後段、119条1項5号が成立することは明らかなので、何を訂正なりフォローするのかがわからないのですが。