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大学構内も道路交通法の適用があるはずですが…

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こちらについて。

 

ヘルメットの問題ではなく、左側通行義務の問題では?
ちょっと気になる報道。 20日午前7時55分ごろ、鳥取市湖山町南4丁目の鳥取大構内で同大の男子学生(20)と女子学生(19)の自転車が正面衝突し、女子学生が救急搬送されたが意識不明の重体。男子学生はひざに軽いけがを負った。 鳥取署などによる...

 

いろいろコメントを頂いたのですが、ちょっと認識が違う点について解説。

はじめまして。
考察はごく自然だと思いますが、気になったことをひとつ。
鳥取大学構内は、文部科学省の私有地なので、道交法の対象外と思われます。←以前5年間通ってました。
河川整備道も同様に、国土交通省の私有地です。
公道でも私道でも、事故が起きたら困ります。
この事故の場合、公道・私道を問わず、「見通しの悪い坂道は注意して走行しましょう」くらいが妥当ではないでしょうか。
重体となった女子大生の回復を祈っています。

しかし鳥大構内が「一般交通の用に供するその他の場所」に直ちに該当するとは思われません。

まず鳥大には警備員が在中する門があり、鳥大関係者以外は通行できません。また、自動車、オートバイは最短距離で所定の駐車場、駐輪場に停めることとなっています。
ですから、鳥大構内を自由に通行できるのは、大学関係者の歩行者及び自転車のみです。
コンビニの駐車場とは違います。

自分は、「左側通行しようぜ」との主旨は賛同します。
その根拠は道交法ですが、自転車に乗る人のマナーだと考えます。

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大学構内

まず、道路交通法上の道路は私有地だから適用外ではなくて「一般交通の用に供するその他の場所」(2条1項1号)であれば適用されます。

道路交通法は、2条1号で「道路」の定義として、道路法に規定する道路等のほか、「一般交通の用に供するその他の場所」を掲げており、たとえ、私有地であつても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は、同法上の道路であると解すべきである

 

最高裁判所第二小法廷 昭和44年7月11日

凄く不思議に思ったのは、鳥取大学って大学構内に入るのに大学関係者かどうか確認されるのでしょうか??
どこの大学も例えば図書館の一般利用を認めていたりするし、一般人が歩くことを禁じた大学があるとは思えず。

道路交通法2条1号にいわゆる「一般交通の用に供する場所」とは、それが一般公衆に対し無条件で開放されていることは必ずしもこれを要しないとしても、道路交通法1条の道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図るという目的に照らし、現に一般公衆および車両等の交通の用に供されているとみられる客観的状況のある場所であつて、しかもその通行することについて、通行者がいちいちその都度管理者の許可などを受ける必要のない場所をいうものと解するのが相当である

 

仙台高裁 昭和38年12月23日

イチイチ学生証やらで身分確認しないと大学構内を通行できないというなら道路交通法の適用はないと考えられますが、だいぶ違和感。

 

ちなみに仙台高裁 昭和38年12月23日判決については、許可が必要であっても現に多数の人や車両が通行していた客観的実態があったことから、道路とみなすべきだったとする見解もあります。

 

ただまあそもそもの話でいうと、「道路交通法が適用される私有地」だとしても、大学構内を警察がパトロールして右側通行の取締りをするわけもないので、事実上は民事責任を検討する上で道路交通法の義務違反や注意義務違反があったかの話。
違反したから検挙対象というような話ではない。

 

左側通行を「マナー」と捉える点については正直どうかと思ってしまいますが、この方がいうように大学関係者以外通行不可能で許可が必要だというなら、確かに道路交通法の適用はありません。
国立大学でイチイチ許可を取らないと通行(歩行者含む)できない大学があるとは思っていなかったので、そっちのほうが不思議です。

 

けど、道路交通法の適用が仮にない場合でも、民事責任上は「左側通行すべき注意義務」を元に検討するわけで、そもそも分けて考える必要性もないんですけどね。
道路交通法の適用があったとしても、私有地だからイチイチ自転車について検挙対象なのではなく、民事責任を検討する上でしか判断材料にはならないので。

そもそもなぜ「一般交通の用に供するその他の場所」を含むのか?

道路交通法上の道路には「一般交通の用に供するその他の場所」を含みますが、一つ興味深い判例を。

質問です。
小学校の校庭は道路交通法上の道路でしょうか?
道路交通取締法時代の判例ですが、以下のモノがあります。

道路交通取締法は道路における危険防止及びその他の交通の安全を図ることを目的とするものであり(同法第1条参照)、本件運転の場所は小学校校庭であること所論の通りであるけれども、道路交通取締法第2条第2項によれば同法に所謂「道路」とは道路法による道路、自動車道のみならず一般交通の用に供するその他の場所をも包含すること明かであるから、学童その他一般公衆の多数出入する小学校校庭の如も道路交通取締法にいう「道路」の中に包含されるものと解するを相当とする。従て被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで原判示小学校校庭において本件貨物自動車を運転した以上かかる所為もまた道路交通取締法第7条第1項第2項第2号、第28条に該当するものと謂うべきであつて、原判決には法律の解釈適用を誤つた違法はなく、論旨は採用し難い。

 

高松高裁 昭和27年3月29日

道路交通取締法7条2項2号は無免許運転禁止の規定です(同28条は罰則規定)。

第七条 車馬又は軌道車の操縦者は、無謀な操縦をしてはならない。
2 前項において無謀な操縦とは、左の各号の一に該当する行為をいう。
二 法令に定められた運転の資格を持たないで諸車又は軌道車を運転すること。

小学校の校庭は道路交通(取締)法の道路と解釈し、無免許運転の罪として有罪です。

 

スーパーの駐車場やら小学校の校庭やらは、いわゆる道路として一本の筋状になっているわけではないので、左側通行だのは基本関係ない。
無免許運転、酒気帯び運転、安全運転義務などの問題を取締りするためには道路と解釈しないと不都合が起きるからなんじゃないかと。

 

荒川下流は緊急用河川敷道路なので、国土交通省が管理する私有地で、しかも道路法とは関係がない。
仮に荒川下流を道路交通法上の道路ではないと解釈した場合、暴走族がウェーイ系に騒いでいたとしても取締る根拠がなくなってしまい、不都合なんだろうなと。

 

ちなみに、校庭だから必ず道路交通法の適用があるとは解釈できなくて、結局は実情を検討した上での話になります。
また、一部解説書では校庭を道路交通法上の道路と捉えると、運動会をするのに警察署の道路使用許可を得なければ出来ないことになり不合理という見解もありますが、それを言い出したらスーパーの駐車場を工事するのに警察署の道路使用許可が必要なのか?というあり得ない話にしかならないので、道路使用許可については公道なのか私有地なのかは別に考えるべき問題かと。

 

道路交通の安全と円滑を確保するために行う道路使用許可の問題と、具体的危険を防止するために無免許運転や酒気帯び運転を禁止する目的で道路性を認めることは別問題。

 

とりあえず冒頭の件については、仮に道路交通法の適用がないにしても左側通行すべき注意義務は免れませんし、そもそも、道路交通法上の道路に該当するかどうか疑わしいとしても、道路交通法の適用がある前提で行動することは変わらないと思ってしまうのですが。

ある意味では「小児用の車」とも似ていて、最終的に小児用の車(歩行者)になるか自転車扱いなのかなんてわからないのよね。

 

結局、「小児用の車」とはなんなのか?
何回も取り上げていますが、おおよそ6歳未満、16インチ以下、時速4~8キロ程度の自転車については道路交通法上は「小児用の車」となり、歩行者として扱われます。 明確な基準はありません。 それと同時に、意外なほど「知られていない」のも事実。 気...

 

わからない以上は歩行者(小児用の車)として扱うのが筋だと思うけど、道路交通法の適用があるかないかわからないにしても、道路交通法の適用がある前提で行動すべきなんじゃないかと。
「私有地だから対象外」と最初にコメントを頂いた件については私有地かどうかは直接的な判断材料にはならないことをご理解頂ければ。


コメント

  1. noName より:

    大学構内は「大学の自治」っていう権利振り回して警察の介入を極力拒んでるのと、研究の一環で試作車の走行テストなんかしてるので道交法の適用はグレーな気がしますね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      これはなかなか難しいですが、大学敷地の一部を封鎖して実験する分には、その場所については道路交通法の適用がないと見なせるわけで、個別に考えるしかないと思われます。大学の自治ガー!についてはまたちょっとビミョーな問題です。

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