イエローのセンターラインの際に、「法律上は」自転車を追い越すときもはみ出てはいけないことは条文を読めばわかるような気がしますが、なぜか納得しない方々がいたりする。
警察庁や裁判所、検察庁などの見解を見て見ましょう。
①正しい法律解釈を理解する。
②実際の運用を理解する。
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警察庁や裁判所、検察庁などの見解
自転車を追い越す時にはみ出てもいい?
警察庁丁規発第4号 令和4年1月28日
警察庁交通局交通規制課長
追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制は、「「交通規制基準」の改正について(通達)」(令和3年11月30日付け警察庁丙規発第27号)の別添第12のとおり、見通しのきかないカーブ等の道路構造上危険な区間のほか、交通量が多く、追越しのための右側部分はみ出し通行による交通事故が多発し、又は多発することが予想される区間等で実施することとされている。
当該規制の実施区間においては、車両は自転車を追い越す場合であっても道路の右側部分へはみ出すことが禁止されることから、自転車の車道通行が多い区間において当該規制を実施した場合には、右側部分へのはみ出しを避けるため自転車との接触事故が発生するおそれがあるほか、自転車を追い越すための右側部分へのはみ出し通行による交通事故の発生も懸念される。https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20220128.pdf
問 法17条4項4号の「はみ出し禁止」は、軽車両を追越す場合にも適用されるのか。
答 適用されます。
法17条4項4号の「はみ出し禁止」は、追越し時における対向車との衝突事故を防止するために、道路の右側部分にはみ出すことを禁止したものです。したがって前車の種類に関係なく適用されます。
これに対して法30条の「追越し禁止」は、追越し行為に伴う危険を防止するため、追越しのための進路変更または前車の側方通過を禁止したものですから、前車が小さく、遅いもので、見とおしにさほど影響を与えない場合には、特に禁止する必要がありません。このことから法30条は前車が軽車両の場合、これを追越し禁止の対象から除外しています(前同質疑回答集9ページ)。
東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974
※改正前なので項数が違う点に注意
自転車は「障害物」扱いでは?
走行中の先行車両が道路交通法17条4項3号にいう「その他の障害」にあたらないとした原判断は正当である
最高裁判所第二小法廷 昭和39年12月24日
ちょっとはみ出たくらいなら良くね?
論旨は、要するに、原判示第一事実について、被告人車は低速の先行車両が先に行くように指示して道を譲つてくれたため同車を追越すため道路右側部分に進出して進行したものであつて、その進出部分も僅かであり、何ら危険を伴うものではなく、かつ、巷間多く見られる通行方法に従つたものであるから、可罰的違法性がないのに、原判決が道路交通法17条3項に違反するとして同法119条1項2号の2を適用し、被告人を処断したことは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。
しかしながら、道路交通法17条3項、4項3号は、右側通行によつて具体的に交通の危険又は妨害が生じたか否かを問うことなく、所定の事由が存在する場合に限り右側通行を許容し、その他の場合の右側通行はこれを禁止し、もつて道路交通の安全と秩序を全体として確保しようとする趣旨の規定であると解されるから、右の禁止に違反する行為は、そのことだけで法の予定する違法性を具備するものというべきである。また、同法17条4項4号は、左側部分の幅員が6メートルに満たない道路において、他の車両を追越そうとする場合について、反対の方向からの交通を妨げるおそれがないなどの一定の要件のもとに特に右側部分の通行を許容しているけれども、同時に、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている本件のような道路については、右の通行は一律にこれを禁止する旨を明文で定めているのであるから、交通を妨げるおそれがないという理由で右側通行の違法性がないとの所論は、法に明示された趣旨に反するものというほかはない。したがつて、被告人車の追越しのための右側通行は違法というべきであるから、原判決が被告人の行為を同法17条3項違反とし、同法119条1項2号の2を適用して処断したことは、正当であつて、所論のような法令解釈適用の誤りはない。論旨は理由がない。
大阪高裁 昭和53年6月20日
※当時の17条4項は現行の17条5項とほぼ同じなので、判決文中の17条4項4号の除外事由というのは、現行法の17条5項4号のことを指す。
法律上はアウト、実態は?
法律上はアウトだし裁判所的にもアウトですが、現実的な話をすると、見とおしがよく危険性がない場合には警察は取締りしないことが多い。
パトカーさん…
17条5項4号って、左側通行の例外について規定していますが、左側が6m以下の場合には「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限り」右側にはみ出てもいいけど、右側にはみ出てもいいという話は「イエローラインの時は無しね!」という分かりにくい規定です。
第十七条
5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
四 当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき(当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限るものとし、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。
実務上の話だと、自転車を追い越す時に以下を遵守していれば取締り対象にしてないことが多い。
ただし法律上はアウトなので、取締りされても文句を言える立場ではない。
冒頭の警察庁の通達にもあるように、規制解除など見直しを進めています。
追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制は、「「交通規制基準」の改正について(通達)」(令和3年11月30日付け警察庁丙規発第27号)の別添第12のとおり、見通しのきかないカーブ等の道路構造上危険な区間のほか、交通量が多く、追越しのための右側部分はみ出し通行による交通事故が多発し、又は多発することが予想される区間等で実施することとされている。
当該規制の実施区間においては、車両は自転車を追い越す場合であっても道路の右側部分へはみ出すことが禁止されることから、自転車の車道通行が多い区間において当該規制を実施した場合には、右側部分へのはみ出しを避けるため自転車との接触事故が発生するおそれがあるほか、自転車を追い越すための右側部分へのはみ出し通行による交通事故の発生も懸念される。
このため、自転車の車道通行が多い区間において当該規制が実施されている場合には、道路交通状況に見合った必要な規制区間となっているか改めて点検を行い、自転車の追越しのための距離を確保できる場合には当該区間において規制の解除を検討すること。また、追越しに必要な距離を確保できない道路の区間が連続している場合には、歩道の幅員に応じて自歩可規制を行うことや、道路管理者に対し、追越しのための車道の拡幅を働き掛けるなど、実態に即した見直しを検討すること。
悪いのは道路なんです。
つまり、内閣が悪い。
個人的には「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合」であることを確認した上で自転車を追い越すためにイエローのセンターラインを越えることはパトカーもやっているしいいんじゃないか?と思いますが、法律上はアウト、実務上は取り締まり対象ではない(ことが多い)。
なお、自転車やバイクを追い越す時の側方間隔はきちんとお願いします。
法律上の話と実務上の話に差があるから混乱を招いている気がしますが、法律と実務に差があるなら意味がない気がします。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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