普段バスに乗って移動することが多いのですが、まあまあ見かけるのが隣の車線を通行する車両の「ながらスマホ」。
いわゆる前方不注視になりますが、本当にやめてくれとしか言いようがありません。
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ながらスマホによる前方不注視
一時期はやたらと「ポケモンGO」が流行りましたが、ポケモン事故ってまあまああります。
そのうちの一つが名古屋地裁 平成29年5月11日判決。
事故の態様は,被告人が,スマートフォンに充電コードを差し込むことに気をとられて前方左右を注視せず,前方の横断歩道上を横断中の自転車の存在に衝突直前に至ってようやく気付き,急制動の措置を講じたが間に合わずに同自転車に衝突したというものである。被告人は,自動車の運転を開始するに当たってスマートフォンのゲームアプリであるポケモンGOを起動し,運転の途中にその操作を繰り返して,事故現場の約200メートル手前の地点でも操作をしていた。そして,その後,電池残量が50パーセントを切ったとして,前方に横断歩道があるのを知っていたにもかかわらず,スマートフォンの充電を行おうとしていたというのであって,この操作地点付近及びその後事故現場に至るまでの被告人車両の走行は,大きく左右にふれ,対向車線にはみ出していたことも認められる。また,被告人は,被害者の自転車のすぐ前を走行し,被告人車両との衝突をわずかに免れた被害者の知人の自転車の存在は気付いておらず,被害者の存在に気付いたのも,窓の外から何か音が聞こえたことを契機に前を見たためであるという。
これによると,被告人は,自動車の運転中は運転動作に集中するという自動車運転者としての基本的な姿勢をないがしろにして,スマートフォンの操作や機能維持を優先させた末に,著しい前方不注視の状態で本件事故を惹起したものといえ,本件は単純な過失による事故とは一線を画する事案である。なお,弁護人は,本件はスマートフォンの画面を凝視する,あるいはゲームの操作をする等の悪質な態様の過失による事案ではないと主張し,関係証拠上も,被告人が,事故時にスマートフォンの画面を操作していた,あるいはポケモンGOの操作時に画面を凝視しながら運転を続けていたとまでは認められない。しかし,被告人車両の事故直前の走行態様や事故の状況をみると,この間,被告人の注意が運転動作よりもスマートフォンに向けられていたことは明らかである上,運転の途中にポケモンGOの操作を行い,さらにこれを続けようとすることがなければ,被告人が電池残量を気にするべくもなかったことも考慮すると,スマートフォンへの注意の向け方が画面の凝視等といった態様でなかったにしても,これらの態様に比べて被告人の過失の悪質性が大きく減じることにはならない。
名古屋地裁 平成29年5月11日
なお、控訴審も原判決を是認して控訴棄却。
被告人は,スマートフォンの充電作業に気を取られ,前方左右を注視するという自動車運転者としての基本的な注意義務をないがしろにした結果,本件死亡事故を引き起こしたものである。また,本件犯行時の被告人の運転状況(過失の内容を含む。)を具体的にみてみると,以下のような点を指摘できる。すなわち,被告人は,被害者と同じく横断歩道上で,被害者のすぐ前を自転車で走行していた被害者の知人については全く気付いておらず,被害者についても衝突直前になってようやく気付いたというのであるから,この点のみをとっても,過失の程度が非常に大きいといえる。しかも,被告人は事故直前に大きく蛇行運転をし,対向車線にもはみ出すなどという危険な態様で走行しており,そのような危険な態様で走行していることを当然に認識したはずであるのに,スマートフォンの充電作業を続けた末に本件事故を惹起したのである。被告人の運転行為の危険性は明らかであり,本件は,たまたま一時的に脇見をしてしまった結果起きた事故というようなものではなく,原判決が指摘するとおり,被告人の注意が自動車の運転よりもスマートフォンに向けられていた結果起きた事故であって,いわば起こるべくして起こったものと評価されてもやむを得ない。所論が,態様の悪質性は高いとはいえないとして種々指摘する点を考慮しても,本件が単純な過失による事故とは一線を画する事案であるとする原判決の認定,評価に何ら誤りはない。
所論は,ポケモンGOを操作中に死亡事故を起こした別事件を挙げて,これとの比較の観点から,被告人はスマートフォンの画面を見てポケモンGOの操作をしていたわけではないとか,本件は夜間の交通閑散な状況での事案であり,交通量の多い時間・場所でのものでないなどといって,原判決の評価を争うようである。しかし,原判決も,被告人が,事故時にスマートフォンの画面を凝視したり,ゲームの操作等をしていたと認めているわけではないから,所論と異なる前提に立つものではない。また,本件時は暗くて視認状況はよくなく,前方左右の注視義務の程度が特段軽減されるような事情も認められない上,被告人がよく通る道で進行方向に横断歩道があると知っていたことや,スマートフォンの充電作業により蛇行運転にまでなったことからすると,当然その作業を中止し,前方左右を注視する必要性は高かったといえるのに,それを続けた点で,非難の程度は相当強いというべきである。
名古屋高裁 平成29年9月26日
暗くて視認性が良くない横断歩道に向けて、スマホの充電のために前方不注視で運転したらそりゃ事故る。
他にもポケモン事故はあります。
被告人の過失ないし本件事故の態様等を見ると,事故のあった現場は住宅街の中にある信号機のない交差点で,入口付近に横断歩道が,その手前には停止線があり,また,時刻は午後4時8分頃で小学生らが下校する時間帯であった。このような特に注意すべき時間帯及び場所付近であるにもかかわらず,被告人は,その数分前に「ポケモンGO」と呼ばれるゲームアプリを起動させたスマートフォンを運転席横のシート上に置いた状態で,自らトラックを運転して所属する建設会社から工事現場に向かって出発し,時折そのスマートフォンの画面を見てはゲームのために必要な操作を繰り返し,上記横断歩道の約35.3m手前で同横断歩道の存在及びそのすぐ右方の路側帯上に下校途中の小学生らがいることに気づきながら,対向車両もあったので小学生らが横断歩道を横断することはないものと勝手に決めつけ,横断歩道手前の停止線で停止しようとしないばかりか,ゲームのためにスマートフォンの画面の方に視線を移し,左手の人差し指でその画面に触れて画像を切り替えた上その指を画面上で左右に動かすなどして,約3秒間も前方不注視の状態を続けたため,その後視線を前方に戻した際には横断歩道上を横断歩行していた被害者が既に眼前に迫っていて,急ブレーキをかけたものの間に合わず,トラックを被害者に衝突させることとなったのである。このように,被告人は,特に注意すべき時間帯及び場所であって,横断歩道脇に小学生らがいることに気づいていたにもかかわらず,自動車の運転には全く必要のないゲームをするために,前方注視という自動車運転者として最も基本的な注意義務を怠り,本件事故に至っているのであるから,その過失の態様は非常に悪質といえる
名古屋地裁一宮支部 平成29年3月8日
もう、話にならないですよ。
前方不注視の脅威
自転車による事故でも前方不注視によるものはありますが、前を見ないまま進行すればたまたま衝突しない可能性があるけど普通に事故るわけで、前を見ないまま進行することがどんだけ恐ろしいことなのか理解していない人もまあまあいるのはビックリします。
たまたま衝突しなかったことがある種の成功体験になってズルズルと繰り返す結果になるのかもしれませんが、事故のほとんどって極論すれば前方不注視かスピード超過。
両方重なればもう事故回避可能性なんてほとんどない。
しかしまあ、運転しながらゲームをする人の心理はよくわからない。
同時に複数のことができるわけないよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
自動車の運転時にはリアガラス越しに前や、バックミラーで後続車の運転手の顔の向きをチラ見してるのですが、
スマホ片手に通話しながらの運転が未だに多いんですよねぇ。
耳に当てるんだけじゃなく、スマホ下部を口の前に持ってくスタイルも。
スマホゲーっぽいのは減った気がしますが、ナビや次の目的地確認的な挙動をしてる人は時々います。
一番怖かったのはハンドルに雑誌置いて読みながら運転してるトラックで、
チラ見したときほとんど顔が下を向いていた奴ですね。器用すぎる。
わき見の結果、信号が赤になるだろうなというタイミングでアクセルオフして予備制動しても、
車間がどんどん詰まってくるので再加速せざるを得ない事が稀に有ります。
予備制動のような注意喚起手段も、バックやサイドミラーがなく、
運転手が自分や前を見ているかを簡単に確認できない自転車の方は後方にご注意ください。
脅威度的には居眠り運転と一緒だよね。
大抵ラインはみだしもセットだし。
コメントありがとうございます。
無くならないですよね。
スマホ運転は。
自爆装置をつけるしかないです笑