読者様からこのようなメールを頂いたのですが。
あるYoutuberが警察に直接聞いた自転車交通ルールとして以下を発信していました。
・1車線目が左折レーン、2車線目が直進レーンの場合、2車線目を走行して良い
・交差点で二段階右折しなくても良いYoutube内でも「もっと調べる必要があるかも」と書いてあり、この方も悪意は無さそうなのであげつらう気は無いのですが、方々で見かける自転車交通ルールと真逆でとまどっております。
改めてこの辺り、運営主様の知見をもとに整理をお願いできませんでしょうか。YouTube作成した動画を友だち、家族、世界中の人たちと共有
最近思うのは、こういうのは質問の仕方が悪いのか、回答者の知識がヤバイのか、どっちなんだろうかという話。
間違いだらけでお話になりません…
以下、間違いポイントを解説します。
自転車専用道路?
2:46あたりから。
「自転車専用道路の通行義務」について質問したようですが、映像で流れているのは「自転車道」(交通法2条1項3号の3)。
○自転車道の例
自転車専用道路というのはいわゆる「サイクリングロード」(道路法48条の13)のことで、道路交通法上は「歩道と車道の区別がない道路(交通法2条1項1号)」。
○自転車専用道路の例(正確には歩行者自転車専用道路、いわゆるサイクリングロード)
別物について質問しているので、質問と回答が食い違いを起こしています。
自転車専用道路 | 自転車道 | |
根拠法 | 道路法48条の13 | 交通法2条1項3号の3 |
意味するもの | サイクリングロード | 車道と歩道にサンドイッチされたような工作物で区切った場所 |
通行義務 | なし | 普通自転車は通行義務(交通法63条の3) |
映像で流れているのは「自転車道」なのに、「自転車専用道路」について質問するから質問と回答が食い違いしてますが、自転車道がある道路では自転車道を通行する義務があります。
第六十三条の三 車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽けん引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
直進レーンOK?
5:30あたりから。
左折レーンがあるときに直進レーンを自転車が通行することはOKと言われたそうですが、
では根拠。
左折レーンや直進レーンは指定通行区分(進行方向別通行区分)といいますが、指定通行区分がある場合、軽車両は指定通行区分に従う義務がない(35条1項)。
第三十五条 車両(特定小型原動機付自転車等及び右折につき一般原動機付自転車が前条第五項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする一般原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、同条第一項、第二項及び第四項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。ただし、第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないときは、この限りでない。
※18条1項に[特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)]とある通り。
軽車両は指定通行区分に従う義務がないため、20条1項により第一通行帯の通行義務が適用されます。
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
従ってこうなる。
二段階右折は任意?
6:05あたりから二段階右折してもしなくてもどっちでもいいみたいに言われたそうですが、デマです。
どちらもアウト。
自転車の右折方法は34条3項にあります。
第三十四条
3 特定小型原動機付自転車等は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
交差点の側端に沿って徐行。
なおここで右折先信号に規制される理由は、施行令2条。
信号の種類 | 信号の意味 |
青色の灯火 | 三 多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車(法第十七条第三項に規定する特定小型原動機付自転車をいう。以下この条及び第四十一条の三第一項において同じ。)及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。 |
赤色の灯火 | 五 交差点において既に右折している多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両は、その右折している地点において停止しなければならないこと。 |
要は一段階目の青信号で、軽車両ができるプレイはこれ。
・右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折すること
・左折
クルっと右を向いた赤信号では「その右折している地点において停止しなければならない」になるため、青信号に変わるまでは進行できません。
軽車両に二段階右折義務を課している意味は、速度が遅い軽車両が道路中央に寄ることが危険なので、「歩行者の横断に近い動きをさせることで安全確保すること」と言われてますが、例外規定がないので二段階右折以外は違反です。
ただし、以前も書いたように変形交差点では若干話が変わるので、原則と構造的例外をきちんと理解する必要があります。
変形T字路において交差点の側端を合理的に定めることが困難な場合があるのですが、それは構造的な例外。
「警察に聞きました」はあてにならない
警察は自転車の道路交通法についてやたら弱い場合がありまして、「歩道の逆走」として指導警告票を発布した事例や、
最近だと、神奈川県警では「電動キックボードは玩具だ」という奇跡的な見解を披露したりします。
なんかおかしな回答をする警察官もいるし、こちらから間違いを指摘したこともありますが、質問の仕方が悪いのか、回答者の知識がヤバイのかについてはケースバイケースです。
なので詳しく知りたいなら、警察に聞くのではなく専門書を読んだり判例と整合性を取るしかないのよ。
以前質問した警察官なんて、自転車が路側帯を通行可能かどうかすら知りませんでしたが、いわゆるYouTuberで自転車のルールをきちんと解説できている人って残念ながらほとんどいない。
クルマ系YouTuberだと、自転車ルールの解説はほぼ間違ってますし。
得意の「歩道逆走違反」とか。
こんなメチャクチャな状態だから、そりゃ間違った解釈をして違反者が続出するのはよーく理解できます。
けどまあ、このYouTuberの方については「ハズレの警察官」に聞いてしまったのかと。
裁判官でもいますよ。
ハズレの裁判官は。
「防犯カメラでは痴漢した証拠がないが、防犯カメラの映像が途切れた数秒間に痴漢した可能性を否定できない」として有罪にした裁判官とかいますが(二審で逆転無罪)、推定無罪の原則すらわかってないなら迷惑なんですよね。
インターネット上には怪しい解説をしている動画がウヨウヨしてますが、そりゃ世の中おかしくなるよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
所轄に行っても所轄の人が大概県警本部の交通課に電話して回答するんですが、大阪だとその辺雑に回答しそう
「法ではこう規定されてるので警察としては法律通りしてくれとしか言えないけど、実際は云々」こう答えたのを受け取った方が変に解釈した場合もありそう
コメントありがとうございます。
正直な話、県警本部レベルでも支離滅裂な話をする人はいますし、あまり期待しないほうが良かったりします。