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バス発進妨害とその範囲。

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読者様からバス発進妨害(31条の2)について質問を頂いたのですが、ちょっと分かりにくいのでイラスト化します。

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バス発進妨害とその範囲

複数車線の道路にて、バスが停留所から発進しようとしているとして。

31条の2では「乗客の乗降のため停車していた乗合自動車が発進するため」と限定しているわけで、発進するだけなら第一車線のまま発進進行すればよい
しかし第二車線に進路変更しようとしている場合、31条の2の適用があるのか?という話です。

(乗合自動車の発進の保護)
第三十一条の二 停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車の進路の変更を妨げてはならない。

発進目的ではなく、進路変更目的とみなせば第二車線の後続車にはバスを優先させる義務がないのか?という話ですね。

 

これ、「義務はあるけど違反の成立は別問題」なんだと思われます。
というのも、あくまでも後続車に課された義務なので後続車視点で検討することになりますが、仮にですよ。

バス停のすぐ前で何らかの道路の障害(工事、違法駐停車、事故など)があった場合、バスが第二車線に進路変更しようとするのは「発進目的」と言えることになります。
第二車線に進路変更しないと発進できませんから。

 

ところが、バスは車高が高いので、後続車からするとバス前方に何が起きているのかはわからないのですよ。
あくまでも後続車の義務なので後続車視点で検討する必要があり、「発進目的の進路変更合図」なのか「それ以外の目的(直後に右折等)での進路変更合図」なのかはわからない以上、義務自体は免れないかと。
最終的に違反になるかは結果論とも言えるので、「義務自体は免れないけど、違反として成立するかは別問題」としか言えないことになります。

 

結果論で考えるとわからないわけで、後続車視点から検討することが大事。

合図車妨害

事例はだいぶ異なりますが、ちょっと参考になるかなと思う判例があります。
判例は最高裁判所第一小法廷  昭和46年10月14日。

 

まずは概要。

一 被告人は、昭和42年1月4日午後3時15分ころ、普通貨物自動車を運転して、川口市c町d丁目e番地先にある京浜東北線線路の東側と西側とを結ぶ通称西川口陸橋上の幅員約9.6メートルの取付道路を、川口市a町方面から同市b町方面に向け、時速約35キロメートルで西進し、右陸橋西端にある、右陸橋取付道路とその南北両側にこれと並行してはしる幅員各約6.2メートルの道路とが、東西約43メートルにわたつて交わる交通整理の行なわれていない変形交差点において、同交差点で前記陸橋北側の併行道路へUターンをする形で進入するため、車両の回転軸を中心とすれば、ほぼ180度となるような右折をすることとなつた。

三 被告人は右陸橋出口(交差点入口)より約7~80メートル手前で右折の合図をしたが、それより前、交差点入口より約8~90メートルの地点で、後方約70メートルの地点に、自車と同方向に進行してくるA運転の小型四輪貨物自動車を認めた。右Aの車両は車巾約1.69メートル、車長約4.33メートルであるところ、被告人が自車を時速約20キロメートルに減速しつつ陸橋出口より約十数メートルの地点に達した際には、右Aの車両は、被告人車両の右斜後方約十数メートル付近に、かなりの高速で接近しつつあるのを認めた。
四 このような後続車両の状況を認識しており、このような道路状況の下で、このような交差点を180度に右折しようとする自動車の運転者としては、道路の総幅員が約22メートルに広くなつている交差点内に、後続車において自車の左側を通過できる余地あるまでに前進して、右折を開始するかもしくは後続車の通過をまつて、右折するなどして、後続車との衝突による危険の発生を未然に防止し、もつて他人に危害を及ぼさないような方法で安全に運転すべき注意義務があるのにこれを怠たり後続するA運転の車両が自車に接近する前に右折し終るものと軽信して交差点入口(陸橋出口)から約2.1メートル交差点内に進入した地点で右折を開始した過失により、被告人車両との衝突による危険を避けようとして急ブレーキを踏みつつ右へ避譲の措置を講じたA運転の車両の左前部を、自車右側部ドア付近に衝突せしめて、もつて過失により道路、交通及び当該車両、後続車両等の状況に応じ他人に危害を及ぼさないような方法で運転しなかつたものである。」との事実を認定判示し(なお、弁護人の主張に対する判断の中に、被告人の右折開始地点は中央線から1.6メートル左寄りの地点であり、右地点が被告人の運転席の位置であるとすれば、車両右側から中央線までにはほぼ1メートルくらいの間隔があつたと認めるのが相当であるから、被告人の車両は道路の中央線に寄つていなかつたと認める旨の判示がある。)、右事実は道路交通法70条、119条2項、同条1項9号のいわゆる過失による安全運転義務違反の罪にあたるとして、被告人を罰金千円に処した。

一審と二審は取付道路と並行する道路の交点を交差点と解釈し、右折時に注意を尽くさなかったとして「過失の安全運転義務違反」として有罪。

 

最高裁は同所を「交差点ではない」とした上で破棄差戻しにしてますが(破棄差戻しにした理由は割愛します)、一つ注目すべき説示をしている。

およそ右折しようとする車両の運転者は、その時の道路および交通の状態その他の具体的状況に応じた適切な右折準備態勢に入つたのちは、特段の事情がないかぎり、後続車があつても、その運転者において交通法規に従い追突等の事故を回避するよう正しい運転をするであろうことを信頼して運転すれば足り、それ以上に周到な後方の安全確認をつくして後続車の追突を避
けるよう配慮すべき注意義務はない
ものと解するのが相当である(昭和44年(あ)第1833号同45年9月24日第一小法廷判決・刑集24巻10号1380頁参照)。
これを本件についてみると、第一審判決の前記判示によれば、本件道路および現場付近には当時被告人の車とAの車以外に通行する車両はなく、被告人は陸橋出口より約7~80メートル手前で右折の合図をし、時速約20キロメートルに減速しつつ進行し、陸橋出口から約2.1メートル進入した地点で前示右折を開始したというのであるから、その右折準備態勢に特段の落度はなく、後続車の運転者Aが前方注視義務を怠りさえしなければ容易に追突等の事故を回避できたものであることがうかがわれる。

(中略)

なお本件事故の場所が交差点ではないとし、被告人の本件所為は正確には右折ではなく、道路交通法25条の2にいう転回にあたるとしても、右の結論に差異を来さない。何となれば右に転回するときの合図の方法およびその時期は右折の時と同じである(道路交通法施行令21条参照)からである

 

最高裁判所第一小法廷  昭和46年10月14日

右折ではなく転回だと解釈したとしても、後続車からすると右折ウインカーを出した先行車の意図が

 

①交差点右折
②道路外右折
③転回

 

これらのどれなのかはわからない
①と②では合図車妨害禁止(現行34条6項、25条3項)が定められていて、先行車の転回動作に関する合図車妨害禁止規定はないものの、後続車からすると先行車の右折ウインカーの意図が①~③のうちどれなのかはわからないのだから、分けることが不可能な話。
なので同じく合図車妨害に関する信頼の原則の対象だとしているわけです。

 

話を戻すと、これ。

バスが第二車線に進路変更しようとしている合図が、「発進目的」なのか「進路変更目的」なのかは後続車からするとわからない。
バス直前に何らかの障害があって第二車線に「発進目的で」進路変更しようとしている可能性を排除できない以上は、第二車線を通行する後続車は「その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き」、バスを優先させる義務があると解釈するしかないでしょう。

 

バス前方の状況が見えない以上、義務はあるけど違反の成立は別問題としか言えないと思う。

 

最終的に違反になるかについては、バス前方の状況次第による結果論です。
そして34条6項、25条3項で左側端に寄れない大型車について、以前書いた記事のような解釈になる理由についても、

 

合図車妨害と左折巻き込みの話。
2輪車がよくあるタイプの事故ですが、左折巻き込みがありますよね。 ちょっとこれについて。 左折巻き込み これが問題になるのは物理的に左側端寄れない大型車のケースになりますが、左折方法は「できる限り左側端に寄って」なので、大型車が左側端に寄り...

 

これに近い理由。
合図を出し後続車が気がついた時点から後続車には妨害禁止義務があるわけですが、そこからさらに左側端に寄るのか、左側端に寄れない大型車特有の事情があるのかは後続車が判断することではない。
なので左側端に寄れない大型車であっても、それが「できる限り左側端に寄った」状態なのであれば後続車には合図以降の動作について進路変更を妨害してはならないと解釈するしかない。

「できる限り左側端に寄って」を満たさない違法左折の場合には合図車妨害禁止は働かないとされます。

34条6項で「前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては」と規定した意味、合図車妨害を適用した2つの最高裁判例、一見すると最高裁判例に反するかのような東京高裁46.2.8判決、信頼の原則を排除した最高裁判例を全て整合性取らないとなかなか分かりにくいかもしれませんが、条文たけ見ると間違いやすい。
いつ、誰に義務付けした規定なのか考えればわかる気がしますが…

 

変に条文のみにこだわると真意が見えないわけで、具体的状況を後続車の立場でイメージしないと見えないかもしれません。

 

まあ、バス発進妨害なんて日常茶飯事レベルな上、もはや義務ではなくマナー程度に格下げされている気もしますが。


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